2015/10/18(日) - 17:02
宇都宮森林公園に詰めかけた観客は過去最高の8万2千人。古賀志林道で生き残った4名によるスプリントが繰り広げられ、トレックファクトリーのバウク・モレマが勝利。悲鳴にも似た大声援を受けた新城幸也が3位に入り表彰台を確保した。
昨年に続き、最高気温が25℃に迫ろうかという絶好の好天に恵まれた24回目のジャパンカップ。既報の通り大雨の影響で短縮コースが選択されたものの、公式発表によれば沿道に詰めかけた観客数は過去最多の8万2000人。コース短縮の影響を感じさせないほどの声援が選手たちを後押しした。
数多くのファンが詰めかけたスタート地点に号砲が鳴ったのは午前10時ちょうど。すぐに始まる古賀志林道の急勾配で例年通りアタックが発生し、スタートサイン時に逃げる宣言をした宇都宮ブリッツェンらが積極的に動く。海外チームが集団にフタをしたため、KOMを越える頃にはあっさりと7名の逃げが容認された。
土井雪広(チームUKYO)、青柳憲輝(宇都宮ブリッツェン)、安原大貴(マトリックス・パワータグ)、鈴木龍(那須ブラーゼン)、エリック・シェパード(オーストラリア、アタック・チームガスト)、ルー・シァオシュアン(台湾、アタック・チームガスト)、マルティン・フェルスホール(オランダ、ノボノルディスク)という7名がレースの大半をリードすることとなる。
逃げを見送り展開が落ち着つこうかというタイミングで、会場に響いたのは「下りで落車発生」の一報だった。古賀志林道の乾きらない苔むした下りでクラッシュが起き、5、6名がここに巻き込まれた。
ダミアーノ・クネゴとジャコモ・ベルラート(共にイタリア、ヴィーニファンティーニNIPPO・デローザ)が激しくクラッシュし、その場でリタイアという憂き目に。同じく落車したブリヂストンアンカーのトマ・ルバ(フランス)は集団復帰したものの、次の周回で遅れリタイアを選択した。
落車をやりすごした集団はペースダウンし、快調なペースを刻む先頭7名は一気に差を開いていく。例年は5〜6分差まで開くことが通例だが、今年は最大でも3分半ほど。ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、トレックファクトリーレーシング)とベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームスカイ)、フェン・チュンカイ(台湾、ランプレ・メリダ)がローテーションを回し、先頭グループとの間隔を固定した。
淡々とペースを刻み続けるメイン集団を背に、先頭グループでは山岳賞争いが3周毎に巻き起こる。3周目はシェパードとの一騎打ちで青柳が獲得し、宇都宮森林公園のボルテージを一気に上げてみせる。次いで6周目は1回目を逃したシェパードが先着。すると「30秒程のリードを得たし、身体も好調だったのでそのまま逃げることにした」と言うシェパードは3周を一人で逃げ、9周目の山岳賞も獲得してみせた。
レースが動いたのは中盤を過ぎ、残り4周に入る時点から。先頭のシェパードと土井、青柳、フェルスホールという4名の背後に迫った集団から、宇都宮ブリッツェンが4名(増田成幸、鈴木譲、鈴木真理、堀孝明)で加速した。
「海外チームの後ろにいるだけでは何もチャンスを見いだせない」というこの動きに対してはランプレ・メリダが追走に回る。頂上に到達する頃には増田、鈴木、そして初山翔(ブリヂストンアンカー)という3名が追走グループを作り、逃げ続ける4名に代わって先頭に立った。
しかしメイン集団もこの動きを逃がすまいと、急速に人数を絞り込みながら追走する。初山は最後の山岳賞を獲ると同時に集団に飲み込まれ、レースは振り出しに戻った。
すると平坦区間でマティ・モホリッチ(スロベニア、キャノンデール・ガーミン)と山本元喜(ヴィーニファンティーニNIPPO・デローザ)がカウンターアタックで先行し、10秒差で残り2周回のコントロールラインを通過する。
そして各チームが警戒していた残り2周回の古賀志林道。標高差185mの登りで仕掛けたのはランプレ・メリダだった。ディエゴ・ウリッシ(イタリア)とヤン・ポランク(スロベニア)が先行し、ここに新城幸也(日本ナショナルチーム)とバウク・モレマ(オランダ、トレックファクトリーレーシング)、セバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ)もジョイン。下りでベンジャミン・プラデス(マトリックス・パワータグ)、ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)、そしてモホリッチも追いついてみせる。
ランプレ・メリダとチームスカイが2名ずつを送り込んだ8名の逃げグループ。献身的にポランクが牽く後ろでは、頭一つ抜けたスプリント力を持つスウィフトとウリッシが心理戦を繰り広げる。後方からはフローリス・ゲルツ(オランダ、BMCレーシング)も追いつき、先頭は9名で最終周回のジャンを聞いた。
最後の古賀志林道でアタックしたのもウリッシだった。しかしエナオゴメスとモレマが追い、悲鳴にも近い声援を受けた新城も10秒遅れでKOMを通過し、下りで合流に成功する。そのままゴールに向かいたかった4名だがローテーションが思うように回らず、その間にゲルツとポランクも復帰。献身的に牽いたポランクとエナオゴメス、モホリッチが千切れ、残った4名が一塊で最終コーナーを駆け抜けた。
観客たちが固唾を飲んで見守るホームストレートで先頭に立ったのはモレマだった。ウリッシは2番手から、スローパンクを抱えていたという新城は後方からゲルツをパスしたものの、先頭で突き進むモレマの勢いは一向に衰えない。結局「ラスト3周で脚を攣っていたので自分でも驚いた」という伸びを見せたモレマが先着。トレックファクトリーレーシングのジャージが2日連続でゴールラインを先頭で駆け抜けた。
今年のツール・ド・フランスを総合7位で終え、9月前半のツアー・オブ・アルバータでも総合優勝しているモレマ。「スプリント力で言えばフミだが、最終盤の展開は自分向きだったので逃げ切りを目指した」と語り、日本のファンに対しては「シーズン終盤だったけれど、たくさんの声援のおかげで気持ちよく走れた。ツール以外で一番観客が多いレースだった」とメッセージを残した。
そしてウリッシに次いで3位に入った新城はアジア最優秀選手賞に。「スプリントには自信がありましたが、足が残っていませんでした。最後は僕も足を攣っていたので最後の1周は苦しみました。後で気がついたら自転車の前輪がスローパンクしていた。脚が重いのかと思ったら自転車が重かった」とレース後の会見でコメントした。
また日本人選手としては畑中勇介(チームUKYO)が後続集団の頭を獲って10位に入りUCIポイントを獲得。同タイムの14位には初山翔(ブリヂストンアンカー)が入った。
その他の写真はフォトギャラリーを、また上位3選手のコメントは追って掲載する記事をご覧下さい。
ジャパンカップ2015ロードレース結果
1位 バウク・モレマ(オランダ、トレックファクトリーレーシング) 3h53'40"
2位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)
3位 新城幸也(日本ナショナルチーム)
4位 フローリス・ゲルツ(オランダ、BMCレーシング) +1"
5位 ヤン・ポランク(スロベニア、ランプレ・メリダ) +11"
6位 マティ・モホリッチ(スロベニア、キャノンデール・ガーミン) +16"
7位 セバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ) +22"
8位 ベンジャミン・プラデス(マトリックス・パワータグ) +44"
9位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ) +1'22"
10位 畑中勇介(チームUKYO) +1'54"
11位 ミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング)
12位 マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
13位 ピエルパオロ・デネグリ(イタリア、ヴィーニファンティーニNIPPO・デローザ)
14位 初山翔(ブリヂストンアンカー)
15位 ハビエル・メヒヤス(スペイン、ノボノルディスク)
16位 ホセ・ヴィセンテ・トリビオ(マトリックス・パワータグ)
17位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
18位 伊藤雅和(愛三工業レーシング)
19位 リュウ・シュウミン(台湾、アタック・チームガスト)
20位 早川朋宏(愛三工業レーシング)
山岳賞
3周目 青柳憲輝(宇都宮ブリッツェン)
6周目 エリック・シェパード(オーストラリア、アタック・チームガスト)
9周目 エリック・シェパード(オーストラリア、アタック・チームガスト)
12周目 初山翔(ブリヂストンアンカー)
text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji
昨年に続き、最高気温が25℃に迫ろうかという絶好の好天に恵まれた24回目のジャパンカップ。既報の通り大雨の影響で短縮コースが選択されたものの、公式発表によれば沿道に詰めかけた観客数は過去最多の8万2000人。コース短縮の影響を感じさせないほどの声援が選手たちを後押しした。
数多くのファンが詰めかけたスタート地点に号砲が鳴ったのは午前10時ちょうど。すぐに始まる古賀志林道の急勾配で例年通りアタックが発生し、スタートサイン時に逃げる宣言をした宇都宮ブリッツェンらが積極的に動く。海外チームが集団にフタをしたため、KOMを越える頃にはあっさりと7名の逃げが容認された。
土井雪広(チームUKYO)、青柳憲輝(宇都宮ブリッツェン)、安原大貴(マトリックス・パワータグ)、鈴木龍(那須ブラーゼン)、エリック・シェパード(オーストラリア、アタック・チームガスト)、ルー・シァオシュアン(台湾、アタック・チームガスト)、マルティン・フェルスホール(オランダ、ノボノルディスク)という7名がレースの大半をリードすることとなる。
逃げを見送り展開が落ち着つこうかというタイミングで、会場に響いたのは「下りで落車発生」の一報だった。古賀志林道の乾きらない苔むした下りでクラッシュが起き、5、6名がここに巻き込まれた。
ダミアーノ・クネゴとジャコモ・ベルラート(共にイタリア、ヴィーニファンティーニNIPPO・デローザ)が激しくクラッシュし、その場でリタイアという憂き目に。同じく落車したブリヂストンアンカーのトマ・ルバ(フランス)は集団復帰したものの、次の周回で遅れリタイアを選択した。
落車をやりすごした集団はペースダウンし、快調なペースを刻む先頭7名は一気に差を開いていく。例年は5〜6分差まで開くことが通例だが、今年は最大でも3分半ほど。ヤロスラフ・ポポヴィッチ(ウクライナ、トレックファクトリーレーシング)とベルンハルト・アイゼル(オーストリア、チームスカイ)、フェン・チュンカイ(台湾、ランプレ・メリダ)がローテーションを回し、先頭グループとの間隔を固定した。
淡々とペースを刻み続けるメイン集団を背に、先頭グループでは山岳賞争いが3周毎に巻き起こる。3周目はシェパードとの一騎打ちで青柳が獲得し、宇都宮森林公園のボルテージを一気に上げてみせる。次いで6周目は1回目を逃したシェパードが先着。すると「30秒程のリードを得たし、身体も好調だったのでそのまま逃げることにした」と言うシェパードは3周を一人で逃げ、9周目の山岳賞も獲得してみせた。
レースが動いたのは中盤を過ぎ、残り4周に入る時点から。先頭のシェパードと土井、青柳、フェルスホールという4名の背後に迫った集団から、宇都宮ブリッツェンが4名(増田成幸、鈴木譲、鈴木真理、堀孝明)で加速した。
「海外チームの後ろにいるだけでは何もチャンスを見いだせない」というこの動きに対してはランプレ・メリダが追走に回る。頂上に到達する頃には増田、鈴木、そして初山翔(ブリヂストンアンカー)という3名が追走グループを作り、逃げ続ける4名に代わって先頭に立った。
しかしメイン集団もこの動きを逃がすまいと、急速に人数を絞り込みながら追走する。初山は最後の山岳賞を獲ると同時に集団に飲み込まれ、レースは振り出しに戻った。
すると平坦区間でマティ・モホリッチ(スロベニア、キャノンデール・ガーミン)と山本元喜(ヴィーニファンティーニNIPPO・デローザ)がカウンターアタックで先行し、10秒差で残り2周回のコントロールラインを通過する。
そして各チームが警戒していた残り2周回の古賀志林道。標高差185mの登りで仕掛けたのはランプレ・メリダだった。ディエゴ・ウリッシ(イタリア)とヤン・ポランク(スロベニア)が先行し、ここに新城幸也(日本ナショナルチーム)とバウク・モレマ(オランダ、トレックファクトリーレーシング)、セバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ)もジョイン。下りでベンジャミン・プラデス(マトリックス・パワータグ)、ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ)、そしてモホリッチも追いついてみせる。
ランプレ・メリダとチームスカイが2名ずつを送り込んだ8名の逃げグループ。献身的にポランクが牽く後ろでは、頭一つ抜けたスプリント力を持つスウィフトとウリッシが心理戦を繰り広げる。後方からはフローリス・ゲルツ(オランダ、BMCレーシング)も追いつき、先頭は9名で最終周回のジャンを聞いた。
最後の古賀志林道でアタックしたのもウリッシだった。しかしエナオゴメスとモレマが追い、悲鳴にも近い声援を受けた新城も10秒遅れでKOMを通過し、下りで合流に成功する。そのままゴールに向かいたかった4名だがローテーションが思うように回らず、その間にゲルツとポランクも復帰。献身的に牽いたポランクとエナオゴメス、モホリッチが千切れ、残った4名が一塊で最終コーナーを駆け抜けた。
観客たちが固唾を飲んで見守るホームストレートで先頭に立ったのはモレマだった。ウリッシは2番手から、スローパンクを抱えていたという新城は後方からゲルツをパスしたものの、先頭で突き進むモレマの勢いは一向に衰えない。結局「ラスト3周で脚を攣っていたので自分でも驚いた」という伸びを見せたモレマが先着。トレックファクトリーレーシングのジャージが2日連続でゴールラインを先頭で駆け抜けた。
今年のツール・ド・フランスを総合7位で終え、9月前半のツアー・オブ・アルバータでも総合優勝しているモレマ。「スプリント力で言えばフミだが、最終盤の展開は自分向きだったので逃げ切りを目指した」と語り、日本のファンに対しては「シーズン終盤だったけれど、たくさんの声援のおかげで気持ちよく走れた。ツール以外で一番観客が多いレースだった」とメッセージを残した。
そしてウリッシに次いで3位に入った新城はアジア最優秀選手賞に。「スプリントには自信がありましたが、足が残っていませんでした。最後は僕も足を攣っていたので最後の1周は苦しみました。後で気がついたら自転車の前輪がスローパンクしていた。脚が重いのかと思ったら自転車が重かった」とレース後の会見でコメントした。
また日本人選手としては畑中勇介(チームUKYO)が後続集団の頭を獲って10位に入りUCIポイントを獲得。同タイムの14位には初山翔(ブリヂストンアンカー)が入った。
その他の写真はフォトギャラリーを、また上位3選手のコメントは追って掲載する記事をご覧下さい。
ジャパンカップ2015ロードレース結果
1位 バウク・モレマ(オランダ、トレックファクトリーレーシング) 3h53'40"
2位 ディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)
3位 新城幸也(日本ナショナルチーム)
4位 フローリス・ゲルツ(オランダ、BMCレーシング) +1"
5位 ヤン・ポランク(スロベニア、ランプレ・メリダ) +11"
6位 マティ・モホリッチ(スロベニア、キャノンデール・ガーミン) +16"
7位 セバスティアン・エナオゴメス(コロンビア、チームスカイ) +22"
8位 ベンジャミン・プラデス(マトリックス・パワータグ) +44"
9位 ベン・スウィフト(イギリス、チームスカイ) +1'22"
10位 畑中勇介(チームUKYO) +1'54"
11位 ミヒャエル・シェアー(スイス、BMCレーシング)
12位 マヌエーレ・モーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
13位 ピエルパオロ・デネグリ(イタリア、ヴィーニファンティーニNIPPO・デローザ)
14位 初山翔(ブリヂストンアンカー)
15位 ハビエル・メヒヤス(スペイン、ノボノルディスク)
16位 ホセ・ヴィセンテ・トリビオ(マトリックス・パワータグ)
17位 増田成幸(宇都宮ブリッツェン)
18位 伊藤雅和(愛三工業レーシング)
19位 リュウ・シュウミン(台湾、アタック・チームガスト)
20位 早川朋宏(愛三工業レーシング)
山岳賞
3周目 青柳憲輝(宇都宮ブリッツェン)
6周目 エリック・シェパード(オーストラリア、アタック・チームガスト)
9周目 エリック・シェパード(オーストラリア、アタック・チームガスト)
12周目 初山翔(ブリヂストンアンカー)
text:So.Isobe
photo:Kei.Tsuji
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