残り3.5kmで発生した落車によってリーダージャージのペトル・ヴァコッチやマーク・カヴェンディッシュが戦線を離脱。石畳と登りを含むフィニッシュでエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)が再びスプリント勝利を果たした。



どんよりとした海を横目にスコットランドに向かうどんよりとした海を横目にスコットランドに向かう photo:Kei Tsuji
観客で混雑するスタート地点観客で混雑するスタート地点 photo:Kei Tsujiイエロージャージを着て登場したペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)イエロージャージを着て登場したペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji


ツアー・オブ・ブリテン2015第3ステージツアー・オブ・ブリテン2015第3ステージ image:www.tourofbritain.co.uk開幕から北上を続けたツアー・オブ・ブリテンはイングランドからスコットランドに突入した。第3ステージはコッカーマスからケルソまでの216km。前日同様にアップダウンが連続するステージで、後半にかけて2級山岳が3つ連続する。

ステージ横に座ってスタートを待つマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)ステージ横に座ってスタートを待つマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji連日最低気温は10度を下回り、チームバスがスタート地点に到着する頃にはまだ辺りは深い霧が立ち込める。メカニックたちがバイクの準備を整えると同時に太陽が顔を出し、体感気温がぐっと上がる中をUCIコンチネンタルチームから順に出走サインに向かうパターンが続いている。

レース序盤に形成されたタイラー・ファラー(アメリカ、MTNキュベカ)を含む逃げレース序盤に形成されたタイラー・ファラー(アメリカ、MTNキュベカ)を含む逃げ photo:Kei Tsuji選手たちが走るのはイングランド北部からスコットランド南部に広がる丘陵もしくは山岳地帯。開幕地のウェールズや2014年ジロ・デ・イタリアの開幕地である北アイルランドとともにイギリス(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)という国で一まとめにくくられているが、いずれも州ではなく国(カントリー)として扱われており、国境を越えると文化や言葉も変わる。

スコットランドはイギリスからの独立運動が歴史的に活発で、2014年にスコットランド独立住民投票が行われたことが記憶に新しい(55%の反対票で独立は否決)。この日の沿道ではユニオンジャック(イギリス国旗)ではなく青地に白いX型の十字架のスコットランド国旗が多く振られた。

平坦基調のレース前半にメイン集団を抜け出したのは6名。タイラー・ファラー(アメリカ、MTNキュベカ)、ラッセル・ダウニング(イギリス、クルトエナジー)、アイディス・クルオピス(リトアニア、アンポスト・チェーンリアクション)、マルチン・ビアロブロキー(ポーランド、ワンプロサイクリング)、マシュー・クロンショー(イギリス、マディソン・ジェネシス)、ジョナサン・マクエボイ(イギリス、NFTO)がメイン集団に対して6分差をつけた。

ペトル・ヴァコッチ(チェコ)のイエロージャージキープとマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)のスプリントを担うエティックス・クイックステップがメイン集団の先頭へ。集団牽引役として召集されたヴァコッチがイエロージャージを着たため、本来リードアウト役を務めるはずのマーク・レンショー(オーストラリア)やフェルナンド・ガビリア(コロンビア)がローテーションを行った。



エティックス・クイックステップを先頭に逃げを追うエティックス・クイックステップを先頭に逃げを追う photo:Kei Tsuji
エティックス・クイックステップがメイン集団を牽引するエティックス・クイックステップがメイン集団を牽引する photo:Kei Tsujiカーライル城を通過するプロトンカーライル城を通過するプロトン photo:Kei Tsuji

スコットランドの山岳地帯を進む逃げグループスコットランドの山岳地帯を進む逃げグループ photo:Kei Tsuji


並んで走るマーク・カヴェンディッシュとペトル・ヴァコッチ(エティックス・クイックステップ)並んで走るマーク・カヴェンディッシュとペトル・ヴァコッチ(エティックス・クイックステップ) photo:Kei Tsuji「スコットランドにしては良い天気」という、今にも雨つぶが落ちてきそうな曇り空の下、レース後半の丘陵地帯で先頭はファラー、ビアロブロキー、クロンショーの3名に絞られる。中でも最も積極的に先頭を引いたのはロード世界選手権にアメリカ代表として出場が決まっているファラーで、スプリンターながら逃げ切りに向けて果敢な走りを見せた。

スコットランド国旗が振られるフィニッシュで先頭に出るエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)スコットランド国旗が振られるフィニッシュで先頭に出るエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsujiメイン集団ではエティックス・クイックステップに加えてキャノンデール・ガーミン、ロット・ソウダル、チームスカイが助太刀してペースアップし、残り20kmでタイム差は2分に。ファラーらの抵抗によってタイム差の縮小は鈍く、UCIワールドチームのアシストたちが身を粉にする走りでメイン集団を牽引し続けた。

集団スプリントを制したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)集団スプリントを制したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji逃げ吸収目前、残り4kmを切ったワインディングロードで発生した落車に巻き込まれたのはイエロージャージを着るヴァコッチで、すぐ後ろを走っていたカヴェンディッシュもストップ。カヴェンディッシュは落車を免れたものの、後輪が壊れたため再スタート出来ず。カヴェンディッシュのチャンスはここで潰えた。

残り3.5kmで落車したペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)が遅れてフィニッシュ残り3.5kmで落車したペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)が遅れてフィニッシュ photo:Kei Tsuji残り3km以内の落車ではなかったため、ヴァコッチのタイムロスはそのまま総合成績に反映されることに。左手の人差し指の爪が完全に剥がれ、さらに骨折の疑いもあるヴァコッチは、歓喜の勝利の翌日に総合首位を失った。

結局ファラーを含む逃げは吸収され、チームスカイとロット・ソウダルが積極的にトレインを組んでフィニッシュへ。残り2kmを切って石畳を含む街中に差し掛かったところでロットトレインが発進し、イェンス・デブシェール(ベルギー)のためにアンドレ・グライペル(ドイツ)がリードアウトを行ったが上手く機能しない。

すると登り緩斜面でソンドレホルスト・エンゲル(ノルウェー、IAMサイクリング)が口火を切ってスプリント。21歳エンゲルの加速に落ち着いて対応し、そのままトラックレース出身者ならではの低い体勢でヴィヴィアーニが加速する。ポイント賞ジャージのフアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)は届かず、ヴィヴィアーニのスピードが再び炸裂した。

「216kmという長丁場だったけど、最後まで脚は回り続けた。自分向きのフィニッシュレイアウトだったので、残り150mでスプリントに持ち込めば敵はいないと思っていたよ」と、第1ステージに続く2勝目を飾ったヴィヴィアーニは自信に満ちたコメントを残す。チームスカイにとって創設以来200勝目となる記念すべき勝利となった。

カヴェンディッシュに代わってスプリントしたマッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)がステージ3位。ヴァコッチが10分以上遅れたため、2日連続ステージ2位のロバトが総合首位に立っている。



ステージ優勝を飾ったエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)ステージ優勝を飾ったエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji総合首位に立ったフアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)総合首位に立ったフアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji
ケルソのフロアーズキャッスル前で行われた表彰式ケルソのフロアーズキャッスル前で行われた表彰式 photo:Kei Tsuji




ツアー・オブ・ブリテン2015第3ステージ結果
1位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)            5h08’18”
2位 フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)
3位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)
4位 ソンドレホルスト・エンゲル(ノルウェー、IAMサイクリング)
5位 イェンス・デブシェール(ベルギー、ロット・ソウダル)
6位 オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)
7位 アルベルト・ベッティオル(イタリア、キャノンデール・ガーミン)
8位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール)
9位 アレックス・ピータース(イギリス、イギリスナショナルチーム)
10位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)

個人総合成績
1位 フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)              13h37’04”
2位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、MTNキュベカ)        +10”
3位 フローリス・ヘールツ(オランダ、BMCレーシング)              +12”
4位 ワウト・ポエルス(オランダ、チームスカイ)                 +13”
5位 ディラン・ファンバールレ(オランダ、キャノンデール・ガーミン)
6位 オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)             +14”
7位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール)
8位 ラスムス・グルトハマー(デンマーク、クルトエナジー)
9位 マッテオ・トレンティン(イタリア、エティックス・クイックステップ)     +18”
10位 セルジュ・パウエルス(ベルギー、MTNキュベカ)              +20”

ポイント賞
フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)

山岳賞
トーマス・スチュアート(イギリス、マディソン・ジェネシス)

スプリント賞
ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)

チーム総合成績
モビスター

text&photo:Kei Tsuji in Kelso, United Kingdom

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