9月6日、イギリス・ウェールズでツアー・オブ・ブリテン(UCI2.HC)が開幕。カヴェンディッシュとグライペルの三つ巴スプリントでエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)が勝利し、イエロージャージに袖を通した。



ボーマリスの古城をスタートしていくボーマリスの古城をスタートしていく photo:Kei Tsuji


ツアー・オブ・ブリテン2015第1ステージツアー・オブ・ブリテン2015第1ステージ image:www.tourofbritain.co.uk気温13度前後のスタート地点に集まったのは120名の選手たち。UCIコンチネンタルチーム、UCIプロコンチネンタルチーム、UCIワールドチームの順に到着し、今にも降り出しそうな空を見上げながらスタートの支度を整えた。

和やかに笑いながら出走サインを終えたロット・ソウダル和やかに笑いながら出走サインを終えたロット・ソウダル photo:Kei Tsujiツアー・オブ・ブリテン初日の第1ステージはウェールズのアングルシー島をスタート。ボーマリスの古城を出発し、1級山岳を含む3つのカテゴリー山岳を越えてレクサムに至る177.7km。ウェールズには大きな山が無い代わりに小さな山が延々と続く。公式レースブックによると獲得標高差は3,164m(選手たちのGPSデータによると実際は2,800m前後)。

1級山岳ランベリス峠を通過する逃げグループ1級山岳ランベリス峠を通過する逃げグループ photo:Kei Tsujiスタートラインに並んだ選手たちの間をUCIコミッセールが忙しく歩き回ってヘルメットをチェックし、後付けのカバーを発見しては没収する。スタート10分前に小雨が降り始めたため一旦スタート位置についていた選手たちが蜘蛛の巣を散らすようにチームバスへと戻り、急いでレインジャケットを着てスタートを切った。

定石通りレース序盤にUCIコンチネンタルチームの選手たちが積極的にアタック。クリスチャン・ハウス(イギリス、JLTコンドール)、コノル・デューン(アイルランド、アンポスト・チェーンリング)、ピーター・ウィリアムス(イギリス、ワンプロサイクリング)、トーマス・スチュアート(イギリス、マディソン・ジェネシス)の4名が抜け出すとメイン集団はペースを落とした。

心配された雨は上がり、太陽が差し込む好天のウェールズを進む選手たち。エティックス・クイックステップやチームスカイ、ロット・ソウダルがメイン集団のコントロールを始めるまでタイム差は広がり続け、先頭4名のアドバンテージは最大9分をマーク。2010年ツアー・オブ・ジャパン伊豆ステージ覇者のハウスが山岳ポイントを量産し、山岳賞トップに立っている。

「ローラーコースター」に形容される断続的なアップダウン。無線がない中でもUCIワールドチームの集団牽引によってタイム差は縮小を続け、フィニッシュまで70kmを残して3分半に。1チーム6名という隙を突いた逃げ切りに向けて4名の逃げグループはペースを上げた。



1級山岳ランベリス峠の頂上に差し掛かるプロトン1級山岳ランベリス峠の頂上に差し掛かるプロトン photo:Kei Tsuji
ペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)が長時間メイン集団を牽引するペトル・ヴァコッチ(チェコ、エティックス・クイックステップ)が長時間メイン集団を牽引する photo:Kei Tsujiトム・シンプソンの世界選手権制覇50年を記念するスペシャルジャージを着るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ)トム・シンプソンの世界選手権制覇50年を記念するスペシャルジャージを着るブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームウィギンズ) photo:Kei Tsuji


1級山岳ランベリス峠の頂上に差し掛かるプロトン1級山岳ランベリス峠の頂上に差し掛かるプロトン photo:Kei Tsujiスプリントポイントとカテゴリー山岳で一時的に協調性を失いながらも終始協力して逃げた先頭4名。チームスカイを中心にした追撃によって残り20kmでタイム差は1分10秒まで縮まったものの、そこから逆にタイム差は拡大する。

先行するマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)にグライペルとヴィヴィアーニが迫る先行するマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)にグライペルとヴィヴィアーニが迫る photo:Kei Tsuji残り13kmでタイム差1分25秒。慌ててエティックス・クイックステップとロット・ソウダルがローテーションに選手を送り込むとようやく残り8kmでタイム差は1分を割り込む。集団先頭を仕切ったエティックス・クイックステップが残り1.5km地点で逃げを全て飲み込むと、そのままカヴェンディッシュのためのトレインを発車させた。

横一線でスプリントするアンドレ・グライペル、マーク・カヴェンディッシュ、エリア・ヴィヴィアーニ横一線でスプリントするアンドレ・グライペル、マーク・カヴェンディッシュ、エリア・ヴィヴィアーニ photo:Kei Tsuji残り2kmから始まるレクサム街中の連続コーナーを先頭で抜けたのは、スタジエールとして走る注目のフェルナンド・ガビリア(コロンビア、エティックス・クイックステップ)だった。「とてもテクニカルなフィニッシュだと聞いていたので、マーク・レンショーと自分を先頭で走らせるようにガビリアに指示した。彼はその通りの仕事をやってみせた」とマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)は新加入スプリンターの走りを評価。残り300mからレンショーのリードアウトが始まった。

グライペルがスプリントを止め、マーク・カヴェンディッシュとエリア・ヴィヴィアーニ先頭でフィニッシュへグライペルがスプリントを止め、マーク・カヴェンディッシュとエリア・ヴィヴィアーニ先頭でフィニッシュへ photo:Kei Tsujiレンショーの後ろから発進したカヴェンディッシュはそのまま先頭でスプリントに持ち込むことに成功する。少し登り基調のスプリント。コーナーの外側から追い上げたアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)の姿を確認したカヴェンディッシュが少し外に膨らんだ隙に、ヴィヴィアーニがコーナー内側を突き進む。

僅差のスプリントを制したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)僅差のスプリントを制したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji「そのまま内側を走っていれば勝てていた。外側(グライペル)ばかり気になってしまったのが敗因」と振り返るカヴェンディッシュもハンドルを投げ込んだが、ヴィヴィアーニが10cmに満たない差で先着。フィニッシュライン通過後に雄叫びをあげたヴィヴィアーニの勝利が写真判定によって確定した。

「今日最も長く集団を引いたのはチームスカイで、その中でもアンドリュー・フェンの引きは素晴らしかった。1チームに6人しかいないのでレースを完全にコントロールするのは難しい。最後はベン(スウィフト)やイアン(スタナード)、ピート(ケノー)のおかげで良いポジションに付けてスプリント。僅差だったので正直言うと先着した確証はなかった」と、開幕ステージを制したヴィヴィアーニは語る。

「イギリスチームなのでプレッシャーは感じるけど、スプリンターの自分にはそのプレッシャーが良い方向に働いている。チームメイトたちの献身が自分の力になるんだ」。

イエロージャージを手にしたヴィヴィアーニは「繰り返すけど、6人のチーム編成なので総合リードを守り続けるのは難しいと思う。6人で逃げを追撃して、それからスプリントに向けて位置取りするのは難しいんだ」と、少人数レースの難しさを語った。

第2ステージはクリザーローからコルネまでの159.3kmで、獲得標高差は第1ステージよりも少ない2,800m。再び逃げグループと大集団の攻防が見られるはずだ。



開幕スプリントを制したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)開幕スプリントを制したエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
イエロージャージに袖を通すエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)イエロージャージに袖を通すエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji山岳賞ジャージを手にしたクリスチャン・ハウス(イギリス、JLTコンドール)山岳賞ジャージを手にしたクリスチャン・ハウス(イギリス、JLTコンドール) photo:Kei Tsuji



ツアー・オブ・ブリテン2015第1ステージ結果
1位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)            4h26’29”
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)
4位 オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)
5位 フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)
6位 ピム・リヒハルト(ベルギー、ロット・ソウダル)
7位 マーク・レンショー(オーストラリア、エティックス・クイックステップ)
8位 タイラー・ファラー(アメリカ、MTNキュベカ)
9位 アルベルト・ベッティオル(イタリア、キャノンデール・ガーミン)
10位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール)

個人総合成績
1位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)            4h26’19”
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)    +04”
3位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)               +06”
4位 オーウェン・ドゥール(イギリス、チームウィギンズ)              +10”
5位 フアンホセ・ロバト(スペイン、モビスター)
6位 ピム・リヒハルト(ベルギー、ロット・ソウダル)
7位 マーク・レンショー(オーストラリア、エティックス・クイックステップ)
8位 タイラー・ファラー(アメリカ、MTNキュベカ)
9位 アルベルト・ベッティオル(イタリア、キャノンデール・ガーミン)
10位 グラハム・ブリッグス(イギリス、JLTコンドール)

ポイント賞
エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、チームスカイ)

山岳賞
クリスチャン・ハウス(イギリス、JLTコンドール)

スプリント賞
コノル・デューン(アイルランド、アンポスト・チェーンリング)

チーム総合成績
チームスカイ

text&photo:Kei Tsuji in Wrexham, United Kingdom

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