1級山岳アルト・デ・カピレイラで繰り広げられた第70回ブエルタ・ア・エスパーニャ最初の本格山岳バトル。逃げの中から飛び出したベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)が栄光を掴む中、総合有力候補たちの間にタイム差が生まれた。



0km地点に差し掛かる189名の選手たち0km地点に差し掛かる189名の選手たち photo:Tim de Waele
ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第7ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2015第7ステージ image:Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ2015第7ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2015第7ステージ image:Unipublic



アンダルシアの街を抜けるアンダルシアの街を抜ける photo:Tim de Waele2015年ブエルタ・ア・エスパーニャ最初の本格的な標高ある山頂フィニッシュが設定された第7ステージ。「雪の山脈」を意味するシエラネバダ山脈に位置する標高1565mの1級山岳アルト・デ・カピレイラをブエルタは初めて訪れる。

モビスターが牽引するメイン集団がシエラネバダ山脈に向かうモビスターが牽引するメイン集団がシエラネバダ山脈に向かう photo:Tim de Waele1級山岳アルト・デ・カピレイラは登坂距離18.7km/高低差945m/平均勾配5%。残り2kmを切ってから最大勾配14%の急勾配区間も登場するブエルタ前半戦最大の山場であり、総合を狙うオールラウンダーたちに明暗が分かれる結果となった。

連日の晴天によって高気温を連発しているアンダルシア州連日の晴天によって高気温を連発しているアンダルシア州 photo:Tim de Waeleこの日の逃げが決まったのは12km地点。イリア・コシェヴォイ(ベラルーシ、ランプレ・メリダ)、ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)、ジェローム・キュザン(フランス、ユーロップカー)、アメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)、カルロス・キンテロ(コロンビア、コロンビア)の5名が飛び出し、メイン集団とのタイム差をぐんぐんと広げ始めた。

オリカ・グリーンエッジには積極的にタイム差を詰める意思はなく、レース中盤にタイム差は13分を超える。リーダーチームに代わって集団コントロールを担ったのはアスタナやモビスター、チームスカイで、大会最初の本格山岳バトルに向けて緊張感が増すメイン集団を牽引した。

フィニッシュまで54kmを切ったところでようやくタイム差は10分を割り込んだが、時を同じくして逃げグループがギアを一段上げて対抗する。出来る限り大きなタイム差をもった状態で1級山岳アルト・デ・カピレイラに挑もうと、逃げる5名は協力してハイペースをキープした。

モビスターによる徹底コントロールに切り替わったメイン集団から6分リードで先頭5名は1級山岳アルト・デ・カピレイラの登坂を開始する。しかしアスタナのダリオ・カタルド(イタリア)とルイスレオン・サンチェス(スペイン)が集団先頭でペースを上げるとタイム差は見る見るうちに縮まり、登り中腹の平坦区間で3分差に。残り7kmを切って勾配が増したところで逃げグループの協調体制が崩れた。



ハイペースで1級山岳アルト・デ・カピレイラを目指すプロトンハイペースで1級山岳アルト・デ・カピレイラを目指すプロトン photo:Tim de Waele
勝負所に備えるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)勝負所に備えるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waele落ち着いて逃げグループ内で走るベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)落ち着いて逃げグループ内で走るベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Tim de Waele


逃げグループを率いるイリア・コシェヴォイ(ベラルーシ、ランプレ・メリダ)逃げグループを率いるイリア・コシェヴォイ(ベラルーシ、ランプレ・メリダ) photo:Tim de Waele互いの様子を伺う牽制状態の中からペースアップしたキュザンにチュルカ、リンデマン、コシェヴォイが合流し、そこからコシェヴォイがカウンターアタックを仕掛ける展開。アスタナからモビスターにスイッチしたメイン集団が残り4kmアーチを通過したちょうどその頃、先頭コシェヴォイにキュザンとリンデマンが合流して残り3kmアーチを通過した。

ジェローム・キュザン(フランス、ユーロップカー)を先頭に急勾配区間を進むジェローム・キュザン(フランス、ユーロップカー)を先頭に急勾配区間を進む photo:Tim de Waeleペースに強弱をつけるキュザンに対して淡々と一定ペースを刻んだリンデマンとコシェヴォイ。頂上まで2kmを切った最大14%の急勾配区間でも先頭3名は崩れず、そのままフラムルージュ(残り1km)に差し掛かる。残り200mで腰を上げたリンデマンがフィニッシュラインまで力強いスプリントを見せた。

カタルド率いるメイン集団内で走るファビオ・アル(イタリア、アスタナ)カタルド率いるメイン集団内で走るファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele今季ラボバンクデヴェロップメントチームからロットNLユンボに移籍し、ジロ・デ・イタリアに続くグランツール出場となった26歳リンデマンが勝利。得意の逃げでロットNLユンボに今季グランツール初勝利をもたらした。

独走でフィニッシュするベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)独走でフィニッシュするベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Tim de Waele「逃げの中で最も強い選手が勝つわけじゃない。今日は作戦勝ちだった。全開でアタックを繰り返すキュザンとコシェヴォイに食らいついて残り200mでスプリント。簡単に彼らを置き去りにすることが出来たよ」とキャリア最大の勝利を収めたリンデマンは語っている。

一方、逃げ切りを許したメイン集団はアスタナ、モビスター、ティンコフ・サクソのペースアップによって人数を減らし、急勾配区間でティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)やクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が脱落してしまう。

フルーム脱落と同時に勢いよくアタックしたのはファビオ・アル(イタリア、アスタナ)。マイヨロホのエステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)やナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)がペースを作るメイン集団を抜け出したアルがダンシングで登りを突き進み、ステージ優勝したリンデマンから29秒遅れでフィニッシュに飛び込んだ。

36秒遅れ(アルから7秒遅れ)でまとめたチャベスやキンタナ、アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)に対し、フルームは1分03秒遅れ(アルから34秒遅れ)、ヴァンガーデレンは1分25秒遅れ(アルから56秒遅れ)という結果に。

大会最初の山場を終えてチャベスが首位を守り、TTスペシャリストと名高いトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)が10秒差の総合2位をキープ。攻撃を成功させたアルが総合8位に浮上し、総合12位までダウンしたフルームを除いて総合トップ10に大きな変動が起こらなかった。

選手コメントはチーム公式サイトより。



フィニッシュ後に健闘を称えるトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)とファビオ・アル(イタリア、アスタナ)フィニッシュ後に健闘を称えるトム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)とファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waeleライバルたちからタイムを失ったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)ライバルたちからタイムを失ったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele
ステージ優勝を飾ったベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)ステージ優勝を飾ったベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Tim de Waele


Summary - Stage 7 (Jódar / La Alpujarra... 投稿者 la_vuelta

Onboard camera / Cámara a bordo - Stage 7... 投稿者 la_vuelta


ブエルタ・ア・エスパーニャ2015第7ステージ結果
1位 ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)         5h10’24”
2位 イリア・コシェヴォイ(ベラルーシ、ランプレ・メリダ)           +09”
3位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)                   +29”
4位 ジェローム・キュザン(フランス、ユーロップカー)             +34”
5位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)            +36”
6位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
7位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
8位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
9位 ルイス・マインティーズ(南アフリカ、MTNキュベカ)
10位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)
11位 ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)
12位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
13位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
14位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
15位 ミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)                +45”
16位 アメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)               +51”
17位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)              +1’03”
18位 バルト・デクレルク(ベルギー、ロット・ソウダル)
19位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
20位 フランク・シュレク(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)
21位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
22位 ミケル・ランダ(スペイン、アスタナ)
28位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)      +1’25”
99位 新城幸也(日本、ユーロップカー)                   +16’45”

マイヨロホ(個人総合成績)
1位 エステバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)     27h06’13”
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)         +10”
3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)     +33”
4位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、チームスカイ)            +36”
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)            +49”
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)             +56”
7位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)               +57”
8位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
9位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)             +1’18”
10位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)   +1’19”

マイヨプントス(ポイント賞)
1位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)      66pts
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)          61pts
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)           56pts

マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 オマール・フライレ(スペイン、カハルーラル)             13pts
2位 ベルトヤン・リンデマン(オランダ、ロットNLユンボ)          13pts
2位 ワルテル・ペドラサ(コロンビア、コロンビア)             7pts

マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 エステバン・チャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)      8pts
2位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)        17pts
3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)    21pts

チーム総合成績
1位 チームスカイ                           81h31’23”
2位 モビスター                             +3’59”
3位 アスタナ                              +4’04”

ステージ敢闘賞
アメツ・チュルカ(スペイン、カハルーラル)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele