USAプロチャレンジ第6ステージで6名の逃げ切りが決まる。ドーピング疑惑によって難しいシーズンを過ごしてきたロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)が2年ぶりの勝利を手にした。



4級山岳ホーストゥースを走る逃げグループ4級山岳ホーストゥースを走る逃げグループ photo:Tim de Waele


USAプロチャレンジ2015第6ステージUSAプロチャレンジ2015第6ステージ image:www.usaprocyclingchallenge.comロッキー山脈から高度を下げ、標高1500m前後の平野に移動したUSAプロチャレンジ。最終日前日の第6ステージはコロラド州の州都デンバー北部に位置するラブランドからフォートコリンズまでの165kmで行われた。

総合2位ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)と総合1位ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)総合2位ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)と総合1位ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Tim de Waele横風によって集団分裂も発生したレース前半を経て、ネイサン・ブラウン(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)やクロイツィゲルを含む7名の逃げグループが先行を開始。すでに総合で15分以上遅れている選手たちの逃げをメイン集団は見送った。

逃げるネイサン・ブラウン(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)やロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)ら逃げるネイサン・ブラウン(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)やロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)ら photo:Tim de Waele逃げ切りを事実上容認したBMCレーシング率いるメイン集団から4分のリードを得て逃げた先頭7名。ステージ優勝を掴みたいスマートストップやジェリーベリーがメイン集団のコントロールを開始したため、レース後半にかけてタイム差は縮小に転じる。残り54km地点の2級山岳リストキャニオンに差し掛かると、メイン集団から総合5位・1分53秒差のラクラン・モートン(オーストラリア、ジェリーベリー)がカウンターアタックを仕掛けた。

リーダージャージを着て走るローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)リーダージャージを着て走るローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Tim de Waele逃げグループの中からクロイツィゲル、ブラウン、レオナルド・バッソ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)が先行する中、総合ジャンプアップを狙うモートンがハイペースで追走する。しかし危険な動きを許すまいとBMCレーシングがメイン集団を牽引。モートンは逃げグループに追いつくことなく集団に引き戻された。

ユナイテッドヘルスケアがメイン集団を牽引ユナイテッドヘルスケアがメイン集団を牽引 photo:Tim de Waele先頭は再び6名に戻り、ユナイテッドヘルスケア率いるメイン集団から2分リードで残り20kmに突入する。諦めずにモートンが再度アタックしたものの結局は吸収。60名ほどに縮小したメイン集団を積極的にリードするチームは現れず、逃げグループが先行したままフォートコリンズの街にやってきた。

逃げグループ内のスプリントを制したロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)逃げグループ内のスプリントを制したロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleフィニッシュまで4kmを切って最初に仕掛けたのはクロイツィゲルだった。すぐさまブラウンが追いつき、続いてハビエル・メヒアス(スペイン、ノボノルディスク)もジョイン。クロイツィゲルのアタックは決まらずに6名のままスプリントが始まり、先行したメヒアスをクロイツィゲルが追撃した。

「誰もが限界ギリギリの状態だった。最初に仕掛けた選手(メヒアス)に反応して、彼にリードアウトされる形で残り300〜400mでスプリントを開始。誰も追いついてこないことに気づいた時は心底ホッとしたよ」。タイミングを見計らったスプリントでメヒアスを抜き去り、フィニッシュラインで右手を突き上げたクロイツィゲルはそう振り返った。

2011年と2012年のバイオロジカルパスポートの異常値によってUCI(国際自転車競技連合)とWADA(世界アンチドーピング機構)によってドーピング疑惑をかけられたクロイツィゲル。今年6月に証拠不十分としてUCIとWADAがCAS(スポーツ仲裁裁判所)への提訴を取り下げることを発表し、クロイツィゲルの疑惑は晴れている。自身の潔白を証明するための戦いを終えたクロイツィゲルが2年ぶりの勝利を掴んだ。「またこうしてフィニッシュで手を挙げることが出来てとても嬉しい。2013年のアムステルゴールドレース以来の勝利なので必然的にスペシャルな瞬間だった」とクロイツィゲル。

クロイツィゲルはコロラド州の高地に苦しみ続けていたが、標高が下がったこの第6ステージでエスケープを敢行し、最終日を前にステージ優勝を掴んだ。「チームの目標の一つである総合争いで後退した今、もう一つの目標であるステージ優勝を達成することが出来た。標高への順応に時間がかかってしまったものの、モチベーションを失わずにレースを継続。今日ようやく薄い空気に身体が対応して、足に力が入ったんだ」。

クロイツィゲルから44秒遅れの集団内でフィニッシュしたローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)が総合首位をキープ。直近のライバルたちから1秒もタイムを失うことなくデニスは最終日を迎えることとなった。

選手コメントはチーム公式サイトより。



ステージ優勝を飾ったロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)ステージ優勝を飾ったロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele



USAプロチャレンジ2015第6ステージ結果
1位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)        3h50’35”
2位 ハビエル・メヒアス(スペイン、ノボノルディスク)
3位 レオナルド・バッソ(イタリア、トレックファクトリーレーシング)
4位 ディラン・ガードルストーン(南アフリカ、ドラパック)
5位 トム・ジーベル(アメリカ、オプティム・ケリーベネフィット)       +04”
6位 ネイサン・ブラウン(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)        +41”
7位 ジョン・マーフィー(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
8位 ルーカス・アエド(アルゼンチン、ジェーミス・ハーゲンベルマン)
9位 キール・レイネン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)
10位 ローガン・オーウェン(アメリカ、アクセオンサイクリング)

個人総合成績
1位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)         21h33’33”
2位 ブレント・ブックウォルター(アメリカ、BMCレーシング)         +44”
3位 ロブ・ブリットン(カナダ、スマートストップ)             +1’31”
4位 ギャヴィン・マニオン(アメリカ、ジェリーベリー)           +1’49”
5位 ラクラン・モートン(オーストラリア、ジェリーベリー)         +1’53”
6位 タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、アクセオンサイクリング)      +1’58”
7位 ラクラン・ノリス(オーストラリア、ドラパック)            +2’02”
8位 トムス・スクインス(ラトビア、ヒンカピーレーシング)         +2’08”
9位 ヒュー・カーシー(イギリス、カハルーラル)              +2’13”
10位 ジュリアン・ベルナール(フランス、トレックファクトリーレーシング) +2’14”

ポイント賞
キール・レイネン(アメリカ、ユナイテッドヘルスケア)

山岳賞
ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)

ヤングライダー賞
タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、アクセオンサイクリング)

チーム総合成績
BMCレーシング

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele