ロデーズのフィニッシュラインに向かう平均勾配9.6%の登りスプリント。マイヨヴェールのサガンを振り切ってグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)が勝利した。



ヒマワリ畑を通過するクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)ヒマワリ畑を通過するクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Kei Tsuji
ツール・ド・フランス2015第13ステージツール・ド・フランス2015第13ステージ image:A.S.O.ツール・ド・フランス2015第13ステージツール・ド・フランス2015第13ステージ image:A.S.O.


ヒマワリ畑を横目にアタックを成功させるトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)ヒマワリ畑を横目にアタックを成功させるトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:Kei Tsujiピレネーとアルプスを繋ぐステージはスプリンター向きの単調な平坦コースになりがちだが、2015年は一味違う。例年の平野部ではなく北側の中央山塊(マシフ・サントラル)を通過するため、スプリンターを悩ませるアップダウンが組み込まれているのが特長だ。

ロデス出身のアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)が逃げるロデス出身のアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)が逃げる photo:Tim de Waeleツール第13ステージには、残り100kmを切ってから3級山岳や4級山岳を含む起伏が登場。しかもロデーズのフィニッシュ地点はパンチのある登り基調だ。残り570mから登りに転じ、平均勾配9.6%という斜面を駆け上がってフィニッシュに至る。

プロトンの通過をファンが暖かく迎えるプロトンの通過をファンが暖かく迎える photo:Kei Tsuji正式スタートとともに飛び出したのは、フィニッシュ地点ロデーズ出身のアレクサンドル・ジェニエ(フランス、FDJ)とトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)、シリル・ゴティエ(フランス、ユーロップカー)、ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)という4名。ここにネイサン・ハース(オーストラリア、キャノンデール・ガーミン)とピエールリュック・ペリション(フランス、ブルターニュ・セシェ)が合流し、合計6名でエスケープを開始する。

メイン集団はジャイアント・アルペシンのコントロール下に置かれた。ジョン・デゲンコルブ(ドイツ)の勝利を目指すジャーマンチームは、先頭を追走していたペリグ・ケムヌール(フランス、ユーロップカー)とアンドレー・グリブコ(ウクライナ、アスタナ)を吸収するとともに、タイム差を4分台に抑え込んだ。

スプリントポイント(92.5km地点)を集団先頭で通過したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)がポイント賞の首位に返り咲く。照りつける太陽によって気温は37度まで上昇。アシストたちは忙しなくチームカーとプロトンの間を行き交った。

レース後半に入るとティンコフ・サクソも集団コントロールに加わり、アップダウンをこなしながら逃げを追走する。横風によってナーバスな状態となった集団では残り61km地点でジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)が落車。ペローは左半身に大きな擦過傷を負いながらもレースに復帰し、集団から遅れながらも完走している。レース後の検査で骨折は見つからず、ペローは第14ステージも出走予定だ。



逃げを見送ったメイン集団がヒマワリ畑を通過逃げを見送ったメイン集団がヒマワリ畑を通過 photo:Kei Tsuji
レース後半にかけて起伏が増え、アップダウンを繰り返すレース後半にかけて起伏が増え、アップダウンを繰り返す photo:Tim de Waele気温37度の暑さに耐えかねて即席のシャワー気温37度の暑さに耐えかねて即席のシャワー photo:Tim de Waele
熱い太陽に照らされるヒマワリ熱い太陽に照らされるヒマワリ photo:Kei Tsuji


激しく落車したジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)激しく落車したジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waeleレースもいよいよ残り25kmを切り、タイム差が2分を切ったところで先頭グループからハースがアタック。約6kmにわたって独走したハースの動きが封じ込められると、カテゴリー山岳ではないラ・プリモーブの登り(残り12km)で逃げグループ内にセレクションがかかる。

レース後半にかけてペースを上げるネイサン・ハース(オーストラリア、キャノンデール・ガーミン)らレース後半にかけてペースを上げるネイサン・ハース(オーストラリア、キャノンデール・ガーミン)ら photo:Tim de Waeleケルデルマンのアタックに反応したのはデヘントとゴティエで、先頭3名でメイン集団を1分引き離したままラ・プリモーブの頂上をクリア。メイン集団の先頭ではジャイアント・アルペシンやMTNキュベカがフルスロットルでペースを上げ、残り5kmで逃げとのタイム差を30秒まで詰めた。

逃げグループの人数を絞り込むウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)逃げグループの人数を絞り込むウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Tim de Waeleフラムルージュ(残り1kmアーチ)を過ぎ、勝利を信じて逃げ続けたケルデルマン、デヘント、ゴティエの3名はメイン集団から10秒のリードでフィニッシュへの登りに突入する。

スプリントを繰り広げるペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)とグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)スプリントを繰り広げるペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)とグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji最後の力を振り絞ってダンシングで平均勾配9.6%の登りを駆け上がったが、後方からは軽量なスプリンターたちがミサイルのように飛んでくる。残り400mでアルノー・デマール(フランス、FDJ)がまず先頭に追いつき、その後ろからファンアフェルマートが飛び出した。

登りを突き進むファンアフェルマートの後ろにはペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)やヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)の姿が。構わずペースを上げ続けたファンアフェルマートに対し、勾配が緩んだ残り100mでサガンが仕掛けた。

しかしファンアフェルマートは先頭を譲らなかった。サガンはスプリントで並びかけるも、首を傾げながらペダルの力を弱める。サガンとの一騎打ちでファンアフェルマートが勝利した。

「残り200mの時点で誰かが付いてきていることに気づいたけど、それが誰なのか分からなかった。ペーター・サガンだと分かった時、頼むから追い抜かないでくれと願った。残り100mがとても長く感じたよ」と、登りスプリントで勝利したファンアフェルマートは語る。

ファンアフェルマートにはブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝とポイント賞獲得の経験があるものの、ツールのステージ優勝は初めて。今季ロンド・ファン・フラーンデレンとパリ〜ルーベで3位、アムステルゴールドレースで5位の30歳は「大きな勝利だ。何度も惜しいところで逃してきた勝利をようやく手にすることが出来た」と喜んだ。

チャンスを逃したサガンは「タイミングを待ちすぎてしまった。自分のミスだ」と悔やむ。「チームメイトのおかげで勝負に持ち込めたのに、彼の後ろで待機しすぎた。もっとも早く仕掛けて、フィニッシュラインまで全開でもがくべきだった。マイヨヴェールのキープを狙っていたわけじゃない。今日は勝ちたかった」。今大会4度目のステージ2位を掴んだサガンはレース中盤にグライペルに奪われていたポイント賞トップを守っている。



サガンをスプリントで下したグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)サガンをスプリントで下したグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji
シェアーと勝利を喜ぶグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)シェアーと勝利を喜ぶグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo:Kei Tsujiステージ優勝を飾ったグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)ステージ優勝を飾ったグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング) photo:Kei Tsuji


Résumé - Étape 13 (Muret > Rodez) - Tour de... par tourdefrance


ツール・ド・フランス2015第13ステージ結果
1位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)        4h43’42”
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
3位 ヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)              +03”
4位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)            +07”
5位 ポール・マルテンス(ドイツ、ロットNLユンボ)
6位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
7位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
8位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
10位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)               51h34’21”
2位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)        +2’52”
3位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)                +3’09”
4位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)             +3’58”
5位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)               +4’03”
6位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)         +4’04”
7位 ロベルト・へーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)             +5’32”
8位 トニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル)             +7’32”
9位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)             +7’47”
10位 バウク・モレマ(オランダ、トレックファクトリーレーシング)        +8’02”

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)            285pts
2位 アンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)             261pts
3位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)         228pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)                61pts
2位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)              52pts
3位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)               41pts

マイヨブラン(ヤングライダー賞)
1位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)              51h37’30”
2位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)          +6’44”
3位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)            +14’17”

チーム総合成績
1位 モビスター                               156h04’17”
2位 チームスカイ                               +6’07”
3位 ティンコフ・サクソ                            +27’11”

ステージ敢闘賞
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)

リタイア
無し

text:Kei Tsuji in Rodez, France