「夢のようなシナリオ。これ以上の展開は望めない」と語るのは、圧倒的な力で今年最初の山岳ステージを制したフルーム。一方で、共にバッドデイにあたったコンタドールとニーバリは「上手く呼吸ができなかった」と口を揃え、白旗を揚げました。



ステージ優勝のクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)

満面の笑みを浮かべてマイヨジョーヌを受け取ったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)満面の笑みを浮かべてマイヨジョーヌを受け取ったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele
アシストに守られながら登坂を続けるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)アシストに守られながら登坂を続けるクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)をぴったりマークするリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)をぴったりマークするリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ) photo:Makoto.AYANOなんてステージだ!確かに積極的に動く必要はなかったが、チームとして休息日明けの今日のステージで何かしたいと考えていた。序盤から逃げがどんどんとタイム差を稼いでくれたことが良かったね。他のチームは追走を迫られるし、逃げに対して受動的に動かなければならなくなる。しかし、ライバルたちが苦しんでいたり、遅れたりという情報を聞いた時、リッチー・ポートとゲラント・トーマスに「ペースアップしよう」と話しかけた。

加えて、休息日後とあってかライバルたちはみな調子が悪いように感じられたから、チームメイトに積極的に終盤の展開を作ってもらった。そして、道が観客でごっちゃになる前の急勾配区間でアタックしたんだ。まさに夢のようなシナリオだったよ。また、リッチーが2位でゴールしてくれたことで、ナイロ・キンタナからボーナスタイムを奪い取ってくれたし、G(トーマス)も上位でフィニッシュしてくれた。つまりはチームとして沢山のオプションがあるということ。これ以上の展開は望めないね。

それでも、まだまだ先は長い。2013年にはコンタドールが横風区間と急勾配区間で僕達に攻撃を仕掛けてきた。恐らく、今年も同様のことが起きると予想している。今日積極的に動いた分が明日に影響しないよう注意していきたい。

2年前、ピレネー2日目でバッドデイにあたったけど、それは絶対に繰り返してはならない。でも一昨日のチームTTで我々がいかに強力であるかをライバルたちは目の当たりにした。既に過去の経験から様々なことを学んできた。油断は禁物。僕は常に最悪のタイミングでのメカトラやパンクを恐れているし、それが致命傷になることもある。加えて、逃げ集団にも常に注意を払っている。とにかく集中していかなければならない。

とにかく接戦は避けたいが、ナイロはグランツールの3週目が得意であることも知っている。彼は2013年のツールで、調子の悪い僕を置き去りにした。現に今日もそうするのかと思った。だからモビスターのペースアップとナイロのアタックを待った。でも実際にはナイロがアタックしなかったので、僕の方から仕掛けた。

2度目の休息日前というわけではなく、1度目の休息日の翌日という違いがあるにせよ、2年前にマイヨジョーヌを着てモンヴァントゥーを制した日も7月14日だった。そして再び7月14日にマイヨジョーヌを着て、山頂ゴールを制すことができて、とても素晴らしい気分だよ。

3位フィニッシュ&マイヨブランを獲得したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)

2013年ぶりのマイヨブランを着たナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)2013年ぶりのマイヨブランを着たナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Makoto.AYANO今日の結果と自分のコンディションはまずまずと言ったところ。今日はライバルたちの調子を見るために、最後の山の麓からペースをあげようと考えていた。フルームは容赦無いほどに、ただただ強い。フルームの登りでのペーシングは、今日の僕の限界よりも遥かに上だった。最後の登りは地獄の様な暑さも手伝って過酷だった。それだけに、どのくらい脚と身体が回復するのかをしっかりとチェックしなければならない。

ここからは現在の総合3位というポジションをキープしつつも、ここまで失ってきたタイムを挽回できる様に、作戦を練って、それを実行していきたい。マイヨジョーヌの可能性は極僅かだけれども、最後まで諦めずに戦っていくつもりだ。2年前には、最終盤でフルームが体調を落としたのを僕は目の当たりにした。今年もフルームのバッドデイを探って行くつもりだ。彼だって人間だし、必ず弱点があるはず。マイヨジョーヌへの挑戦はまだ終わったわけではない。

残り11kmでアタックし、ステージ4位でフィニッシュしたロベルト・へーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)

4位で登る好調ぶりを見せたロベルト・へーシンク(オランダ、ロットNLユンボ)4位で登る好調ぶりを見せたロベルト・へーシンク(オランダ、ロットNLユンボ) photo:Makoto.AYANOとても疲れたが、僕は幸せだ。ライバルが遅れていく中で、自分は良い感触をつかめていたし、とにかく攻めようと考え、それが良い結果につながった。さすがに総合上位勢の加速にはついていくことができなかったが、それは予想していたことだし、実際にその通りになった。

あのアタックはステージ優勝を狙ってのもの。もちろん勝ちたかったが、後ろを振り返ったら、何が起こったか理解できなかったほど後続のペースが上がっていて、諦めざるを得なかった。それでも今日はスーパーデイで、調子も良かったし、満足している。 明日も何かできるんじゃないかとワクワクしているよ。

総合2位をキープしたティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)

ジロ後の復調が問われるアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ)ジロ後の復調が問われるアルベルト・コンタドール(ティンコフ・サクソ) photo:Makoto.AYANOティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) とトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル) ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング) とトニー・ギャロパン(フランス、ロット・ソウダル) photo:Makoto.AYANOスカイは明確に自らのチーム力を示した。一方の僕はとにかく彼らに離されないために、ベストを尽くした。ただ、そこからはペースが上がり過ぎてしまい、最終的には自分のリズムで淡々と踏みながら頂上を目指したんだ。今日は自身にとってベストな日とは言いがたいが、最悪というわけでもない。総合で良いポジションに留まることができている。

グランツールの最初の山岳ステージはいつだってトリッキーだ。僕達はほぼ2週間の間本格的な山岳コースを走っていないわけだから、身体には強烈な負荷がかかる。特に今回は休息日明けだったから尚更。ここからは上手いことレースを展開できると感じている。今の状況には満足しているよ。

2分51秒遅れのステージ11位に沈んだアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)

今日が大切なステージということはわかっていた。大幅にタイムを失うことは避けたかったが、上手く呼吸ができず、ペダルを回すのも精一杯だった。とにかく自分にとってのバッドデイだったとしか言いようがない。総合順位を上げるために、これから何ができるのかを確認することにするよ。今大事なことはリラックスして、しっかりと腰を据えて、状況を冷静に分析し、適切に対処していくことだ。

残り4kmで脱落したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)

完全に遅れたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) 完全に遅れたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Makoto.AYANO
難しい1日だった。上手く呼吸できず、そしてペダリングを上手く調整することもできず、ペースを乱してしまった。なにも自分に強みが無いようにすら見えたよ。とにかくチームメイトの後ろについて最大限のペースで走ったが、残り4kmでメイン集団から脱落。そこからは自分のペースで行くことにした。

知ってのとおり、フルームは我々を叩きのめした。でも、ヴァンガーデレンや(ホアキン・)ロドリケス、そしてコンタドールさえもタイムを失った。そして全員が自身の調子は悪くないと感じているはず。つまり、ここから難しい局面に突入することになる。確かに今の僕は、昨年のヴィンチェンツォ・ニーバリとは程遠い状況だし、これ以上の失敗はできないが、体力は十分にあるし、トライしていくつもりだ。

マイヨヴェールを取り返したアンドレ・グライペル(ロット・ソウダル)マイヨヴェールを取り返したアンドレ・グライペル(ロット・ソウダル) photo:Makoto.AYANOフェドリゴを追走するケニース・ファンビルセン(ベルギー、コフィディス)フェドリゴを追走するケニース・ファンビルセン(ベルギー、コフィディス) photo:Kei Tsujiマイヨヴェールを奪還したアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ソウダル)

1日でマイヨヴェールを取り戻すことができて嬉しい。サガンと自分のポイント差が小さかったので、ジャージを奪い返そうと挑戦したんだ。中間ポイントでスプリントしたライダーが少なく、ポイントを稼ぐのは大変ではなかった。山岳ステージの表彰台に立つのは初めて。とてもハッピーだね。

敢闘賞を獲得したケニース・ファンビルセン(ベルギー、コフィディス)

僕たちはナセル・ブアニを勝たせるためにツールに来たが、残念ながら彼は落車でリタイアしてしまった。チームには他にスプリンターがおらず、僕たちはできる限り地形を利用してレースを進めなければいけない。その中で、敢闘賞を獲得できた事はとても名誉なことだ。これ以上の結果を求めるなら、ラ・ピエール・サンマルタンの麓までに15分以上のタイム差が必要だったよ。

各選手のコメントはチーム公式サイト、レース公式サイト、Twitterなど個人SNSより。

text:Yuya.Yamamoto, Gakuto.Fujiwara
photo:Makoto.Ayano,Kei.Tsuji,CorVos,Tim de Waele