第102回ツール・ド・フランスはオランダ・ユトレヒトで開幕する。ベルギーや北フランスのクラシックレース風ステージをこなし、自転車人気の高いブルターニュ地方へ。チームタイムトライアルが設定された第9ステージまでのコースを紹介します。



7月4日(土)第1ステージ
ユトレヒト(オランダ)〜ユトレヒト(オランダ)13.8km(個人TT) →コースマップ


ツール・ド・フランス2015第1ステージツール・ド・フランス2015第1ステージ image:A.S.O.オランダ中部ユトレヒトの街中をTTバイクが駆け抜ける。ラボバンクが本社を置く同国第4の都市でツールは開幕。初日は13.8kmの個人タイムトライアルだ。なお、UCIルールによって8km以上の初日個人TTはプロローグではなく第1ステージとしてカウントされる。

運河が張り巡らされた街中を走るコースは完全にフラット。コーナーは多めだが、特別テクニカルなコースだとは言えない。第102回大会に登場する個人TTはこの第1ステージだけ。地元オランダのトム・ドゥムラン(ジャイアント・アルペシン)を始めとするスペシャリストたちがマイヨジョーヌ獲得を狙って高速巡航する。主催者が予想する優勝タイムは15分強。総合優勝候補たちの間でも数十秒のタイム差が生まれるだろう。



7月5日(日)第2ステージ
ユトレヒト(オランダ)〜ゼーラント(オランダ)166km →コースマップ


ツール・ド・フランス2015第2ステージツール・ド・フランス2015第2ステージ image:A.S.O.ツール主催者は第2ステージのフィニッシュ地点を「海の中」と表現している。ユトレヒトを発った一行は南西に向かい、ロッテルダムを通過後に「海の国」を意味するゼーラント州へ。166kmの大半が海抜0mというド平坦コースであり、当然山岳ポイントは無し。つまりマイヨアポアの持ち主はまだ決まらない。

広大なデルタ地帯を駆けるステージ後半は海風に警戒しなければならない。北海と内海を分かつ防潮水門を兼ねた大橋を立て続けに越え、浮島を形成するウェルカイラント・ネールチュジャンスにフィニッシュ。ピュアスプリンターによる優勝争いが濃厚であり、ボーナスタイム(10秒、6秒、4秒)によるマイヨジョーヌの移動も考えられる。



7月6日(月)第3ステージ
アントウェルペン(ベルギー)〜ユイ(ベルギー)159.5km →コースマップ


ツール・ド・フランス2015第3ステージツール・ド・フランス2015第3ステージ image:A.S.O.オランダに別れを告げ、ベルギーを駆ける一日。ツール史上初めて「ミュール・ド・ユイ(ユイの壁)」の激坂フィニッシュが登場する。アントワープ(オランダ語:アントウェルペン、フランス語:アンヴェルス)を出発後しばらくは平坦路が続くが、残り50kmから丘陵地帯に突入。レース主催者は平坦ステージに分類しているが、後半はさながらフレーシュ・ワロンヌだ。

4級山岳コート・デレッフ(2100m/5%)、4級山岳コート・ド・シュラーブ(1300m/8.1%)、3級山岳ミュール・ド・ユイ(1300m/9.6%)の組み合わせはフレーシュ・ワロンヌと共通。断続的なアップダウンでセレクションがかかった状態で、最大勾配19%の「壁」に挑む。サガン、デゲンコルブ、マシューズといった軽量スプリンターが勝負に残ることも考えられるが、マイヨジョーヌはパンチャーやクライマーの手に渡る可能性が高い。



7月7日(火)第4ステージ スラン(ベルギー)〜カンブレー 223.5km →コースマップ

ツール・ド・フランス2015第4ステージツール・ド・フランス2015第4ステージ image:A.S.O.「アルデンヌ・クラシック」の翌日は「北のクラシック」。今大会最長223.5kmコースのうち、ベルギー・ワロン地域を駆ける前半は、ナミュールの街を見下ろす要塞への登り(4級山岳シタデル・ド・ナミュール)を除いて難所は無し。やがてフランス国境が近づくと、パヴェ(石畳)が選手たちの目の前に現れる。

2年連続の登場となるパヴェが7セクター/合計13.3km設定されており、そのうち6セクターがラスト45kmに詰め込まれている。パヴェの全長は1200〜3700mで、フィニッシュが近づけば近づくほど難易度が上がる。最後のセクター1からフィニッシュまでは13km。ピレネーやアルプスの難関山岳以上に危険を秘めたステージであり、落車やメカトラによってマイヨジョーヌ争いから脱落する選手が出てくるかもしれない。2014年のように雨が降れば危険度はさらに上がる。



7月8日(水)第5ステージ アラス〜アミアン 189.5km →コースマップ

ツール・ド・フランス2015第5ステージツール・ド・フランス2015第5ステージ image:A.S.O.海風、激坂、石畳が続いたツールは5日目にしてようやく平穏を取り戻す。コースプロフィールは細かく波打っているが、スプリンターが遅れるような登りはゼロ。スプリンターチームがアクセル全開でアミアンの街に向かうはず。フィニッシュ手前に危険なコーナーは登場しない。残り500mの緩い右コーナーを抜けると、そこから道幅のある最終ストレートがフィニッシュラインまで続いている。

ステージ0勝のペーター・サガン(ティンコフ・サクソ)がマイヨヴェール(ポイント賞ジャージ)を獲得した2014年大会の反省を踏まえ、レース主催者はポイント配分に変更を加えた。平坦ステージの優勝者に与えられるポイントが45ポイントから50ポイントにアップし、よりピュアスプリンターに有利な配分になっている。



7月9日(木)第6ステージ アブヴィル〜ル・アーヴル 191.5km →コースマップ

ツール・ド・フランス2015第6ステージツール・ド・フランス2015第6ステージ image:A.S.O.オート=ノルマンディー地域圏の美しき海岸線を行く第6ステージ。67km地点で海岸線に出ると、そこから英仏海峡を右目に見ながら西進する。エトルタ断崖を含む風光明媚な海岸線がこの日のトピックだが、選手たちには風景に目を移す余裕はない。4つの4級山岳を含むアップダウンと、海から吹き付ける風が集団分裂を巻き起こすかもしれない。

最後に待ち構えるのは残り1.5kmから始まるアングヴィルの登り(850m/7%)だ。軽量なスプリンターやパンチャーに有利なコースレイアウトであり、まだまだマイヨヴェールの行方は分からない。マイヨジョーヌ候補たちにとってはストレスフルな一日になるだろう。



7月10日(金)第7ステージ リヴァロ〜フージェール 190.5km →コースマップ

ツール・ド・フランス2015第7ステージツール・ド・フランス2015第7ステージ image:A.S.O.フランスの中でも自転車競技熱が高いブルターニュ地方に突入。休息日までの3日間、ツールは同地域で声援を受け続ける。第7ステージは平坦ステージにカテゴライズされているが、カテゴリーのついていない細かいアップダウンが逃げ切りの背中を押す可能性もある。特にワイルドカード枠で出場する地元ブルターニュ・セシェは逃げてアピールするはずだ。

この日を終えると、次にスプリンターが勝負に絡むのは1週間後の第13ステージ。ピレネー山岳ステージで脱落する選手が出ることも考えられるため、この日がツール前半戦スプリント勝負の締めくくりとなる。ピュアスプリンター向きのステージは早くも残り3〜4ステージに絞られている。



7月11日(土)第8ステージ レンヌ〜ミュール・ド・ブルターニュ 181.5km →コースマップ

ツール・ド・フランス2015第8ステージツール・ド・フランス2015第8ステージ image:A.S.O.第102回大会には2つの壁フィニッシュが登場する。1つは第3ステージの「ミュール・ド・ユイ(ユイの壁)」。そしてもう1つがこの第8ステージの「ミュール・ド・ブルターニュ(ブルターニュの壁)」だ。ベルナール・イノーやルイゾン・ボベゆかりの地を走り、全長2000m/最大勾配15%/平均勾配6.9%の壁を駆け上がってフィニッシュを迎える。

本家ユイほどの破壊力はなく、2011年に登場した際にはアタックが決まらず10名のスプリントに持ち込まれている(エヴァンスがコンタドールを下す)。登れるスプリンターであればこなせる壁であり、侵入口の残り2kmコーナーに向けたポジション争いは熾烈を極めるはずだ。



7月12日(日)第9ステージ ヴァンヌ〜プリュムレック 28km(チームTT) →コースマップ

ツール・ド・フランス2015第9ステージツール・ド・フランス2015第9ステージ image:A.S.O.総合争いの行方を大きく左右する28kmのチームタイムトライアル。スタートからフィニッシュまでアップダウンが断続的に登場する。加えて細かいコーナーや道幅が狭い箇所も多めで、最後は過去にフランス選手権の勝負所として何度も登場したコート・ド・カドゥダル(2000m/6.2%)を駆け上がる。1985年ツールでベルナール・イノーがプロローグを制し、2008年ツール第1ステージでアレハンドロ・バルベルデが勝利を掴んだ場所だ。

チームの総合力と団結力が問われる難易度の高いコース。5番目にフィニッシュした選手のタイムが記録されるため、登りでばらけることは許されない。なお、レースが終わると選手たちはその日のうちに飛行機もしくは電車で休息の地ポーまで移動。チームスタッフやその他の関係者は陸路で670kmを移動する。



7月13日(月)休息日 ポー



text:Kei Tsuji in Utrecht, Holland

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