序盤に形成された19名の逃げから抜け出したルトセンコとバケランツ。追いすがる集団を振り切って二人のスプリントを制したのは、元U23チャンピオンの矜持を見せたルトセンコだった。



ベルンのシンボルである大時計のあるマルクト通りを走る集団ベルンのシンボルである大時計のあるマルクト通りを走る集団 photo:CorVos


スタート前に談笑するマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)とジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)スタート前に談笑するマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)とジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) photo:CorVosスイス国旗が並べられたコーススイス国旗が並べられたコース photo:CorVosベルン市内の橋を走るプロトンベルン市内の橋を走るプロトン photo:CorVosメイン集団をFDJとスカイがコントロールするメイン集団をFDJとスカイがコントロールする photo:CorVosアレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ)に追いすがるヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)アレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ)に追いすがるヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール) photo:CorVos残すところ2日となったツール・ド・スイス。最終ステージは個人TTとなるため、この日が最後のロードレースステージとなる。スイスの首都であるベルンに設けられた一周30㎞弱の周回コースを4周する152.5kmのレース。アップダウンが激しく、平坦なところがほとんどないクラシックレースの様なレイアウトだ。

逃げに向いたコースレイアウトということもあり、序盤から積極的な動きを見せるプロトン。スタート直後に12名の逃げが集団に対して、少しのリードを築くことに成功する。

地元スイスチャンピオンのマルティン・エルミガー(スイス、IAMサイクリング)や、同じくスイスのミハエル・アルバジーニ(オリカ・グリーンエッジ)、フランク・シュレック(ルクセンブルク、トレックファクトリーレーシング)に昨ステージも逃げた世界チャンピオンのミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)らが含まれる強力な逃げだったが、ペーター・サガン(スロバキア)で勝利を狙うティンコフ・サクソがペースを上げ集団に吸収される。

その後も、有力選手たちが次々とアタックを仕掛けた末に、19名の逃げが決まる。この逃げには、最初の逃げに乗っていたクヴィアトコウスキーとアルバジーニをはじめワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)やビネル・アナコナゴメス(コロンビア、モビスター)、ユルゲン・ルーランズ(ベルギー、ロットソウダル)らが加わり、ゴールへと向かって協調体制を組み上げる。

最初の逃げを吸収したティンコフ・サクソもこの中にダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)を送りこむことに成功。目立った追走を仕掛けるチームもしばらく現れず、この日の逃げが決まった。

メイン集団では、ティボー・ピノ(フランス)のリーダージャージを守るべく、FDJがコントロールを開始。4分52秒差に付けるワレン・バーギルを警戒し、ゲラント・トーマス(イギリス)の総合順位を気にかけるチームスカイも逃げとのタイム差を調整すべく、コントロールに協力する。

最終ラップに差しかかったころに、逃げ集団は活性化。アタックの応酬を経て、残り20km移転で2012年のU23チャンピオンのタイトルホルダーであるアレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ)が番手に付けていたクヴィアトコウスキーが反応出来ないほど力強い加速を見せ、抜けだしに成功する。

そこに反応出来たのは、ヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)ただ一人。しかし、ブリッジをかけたバケランツも追いつくのに力を使い果たしてしまったのか、ルトセンコが先頭固定のまま逃げ続ける。一方、2人を追う先頭集団は散発的にブリッジをかけようとする動きもあり、ローテーションを回しきれない。

残り1km地点で、先頭集団には牽制が入り2人の逃げ切りは確実に。残り500mでルトセンコがスプリントに備え、バケランツを前に出す。最終コーナーを曲がり、腰を上げるバケランツをルトセンコが軽々とパス。バケランツも脚の差を分かっていたのか、潔くサドルに座り2位に甘んじた。そして先頭集団の頭をバーギルが獲得し、3位に入った。



20kmにわたって逃げを成功させたアレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ)20kmにわたって逃げを成功させたアレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ) photo:CorVos


ポディウムに登るアレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ)ポディウムに登るアレクセイ・ルトセンコ(カザフスタン、アスタナ) photo:CorVos力強い逃げを見せ、自身のキャリアで初となるワールドツアーでの勝利を得たルトセンコ。「ツールに向けたテネリフェ島での合宿からこのスイスを走っているから、最高に調子が良かった。今日のベルンの周回のようなクラシック風のコースは僕にもぴったりだったしね。二人のスプリントになれば勝てるとは思っていた。だからどちらかというと先頭集団に捕まえられないかが心配だったよ。」とコメントする。

この日も総合上位勢に大きな順位の変動はなしく、ティボー・ピノがリーダージャージのまま、最終ステージの個人TTに臨むこととなる。コースは今日の周回コースをほぼそのまま使用するというもので、テクニカルなコーナーやアップダウンをどう処理できるかが勝敗に大きく影響するだろう。



ツール・ド・スイス2015第8ステージ結果
1位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)
3位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)
4位 グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
5位 アルノー・デマール(フランス、FDJ)
6位 ユルゲン・ルーランツ(ベルギー、ロット・ソウダル)
7位 セプ・ファンマルケ(ベルギー、ロット・ソウダル)
8位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
9位 マルコ・マルカート(イタリア、ワンティ)
10位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
3h28'11"
+1"
+17"
+22"








個人総合成績
1位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)                 
2位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
3位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)
4位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、AG2Rラモンディアール)
5位 ミゲルアンヘル・ロペスモレーノ(コロンビア、アスタナ)
6位 トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)
7位 スティーブ・モラビート(スイス、FDJ)
8位 セバスティアン・レイヘンバッハ(スイス、IAMサイクリング)
9位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、チームスカイ)
10位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・アルペシン)
29h25'28"
+34"
+47"
+50"
+1'14"
+1'24"
+2'29"
+2'43"
+2'46"
+2'51"



ポイント賞
ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)

山岳賞
ステファン・デニフル(オーストリア、IAMサイクリング)

ベストスイスライダー賞
スティーブ・モラビート(スイス、FDJ)

チーム総合成績
チームスカイ

text:Naoki.Yasuoka
photo:CorVos


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