インカレに並ぶステータスの学生個人ロードは、浦佑樹(東京大)が終盤の25kmを、一時5秒差にまで詰められるも独走して優勝。女子は樫木祥子(駒澤大)が優勝した。



ラスト8km、先頭で逃げ続ける浦佑樹(東京大)に追走集団が5秒にまで迫るラスト8km、先頭で逃げ続ける浦佑樹(東京大)に追走集団が5秒にまで迫る photo:Hideaki TAKAGI
6月13、14日と2日間、長野県木祖村の奥木曽湖周回コースで行なわれた全日本学生選手権個人ロードレース(主催:日本学生自転車競技連盟)。大学対抗のインカレロードよりも、ロードレースとしての純粋な展開がより見られるレース。ステータスはインカレと並び賞されるビッグタイトルだ。

コースは2days race in 木祖村で馴染みの、奥木曽湖周回9kmを女子は11周、男子は20周してから柳沢尾根公園まで8%の上り1kmでフィニッシュするもの。この場所では珍しく2日間とも雨が降らずドライコンディションで行なわれた。初日は長野県国体予選と学連女子のレースが、2日目は学連男子のレースが行われた。

長野県国体予選ロード 少年フィニッシュ長野県国体予選ロード 少年フィニッシュ photo:Hideaki TAKAGI長野県国体予選ロード 成年フィニッシュ長野県国体予選ロード 成年フィニッシュ photo:Hideaki TAKAGI

女子は樫木祥子(駒沢大)が圧倒

初日に行なわれた女子は、11周+フィニッシュで100kmを走る長丁場。序盤は集団で進むが中盤に樫木、齋藤望(日本体育大)、中井彩子(鹿屋体育大)の3人が抜け出す。さらに樫木と齋藤の2人で周回を重ねる。終盤にかけて樫木が上り区間でペースアップをするが齋藤が粘り強く対応して2人の逃げが続く展開に。ラスト1kmの上り区間ですぐに樫木が齋藤を離しトップでフィニッシュ。駒澤大としても学生の大会で初の全国制覇。

「今日は先手で攻撃して上りで仕掛けようと思っていましたがその通りに走れました。次週の実業団富士山でも勝って、そして全日本ロードは表彰台に上がりたいですね」と優勝した樫木は語る。1週間前の実業団栂池でも好タイムで優勝している。

女子 中盤以降は2人の戦いに女子 中盤以降は2人の戦いに photo:Hideaki TAKAGI女子 樫木祥子(駒澤大)が優勝女子 樫木祥子(駒澤大)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI

男子は有力選手たちの攻防から抜け出した浦佑樹(東京大)が優勝

男子は20周181kmのレース。昨年大会覇者の秋田拓磨(朝日大)、インカレロード2連覇の徳田優(鹿屋体育大)、全日本ロードジュニアチャンピオンの松本祐典(明治大)らJCF強化指定選手を中心に強豪がそろった大会に。レースは彼ら有力選手たちが攻撃と牽制を繰り返す中、ラスト4周で抜け出した浦が逃げ切って優勝する結果に。

158人がエントリーした男子。コース後半は狭いブラインドカーブの多いワインディング区間があり、長い隊列となってレースが進む。2周目に橋本英也・山本大喜(鹿屋体育大)、荒井佑太(法政大)の3人が逃げるが4周目に吸収され、野本空(明治大)と再び山本が逃げる。メイン集団は鹿屋体育大と法政大を中心にコントロール。

男子 158人がエントリー男子 158人がエントリー photo:Hideaki TAKAGI6周目のメイン集団、鹿屋体育大と法政大がコントロール6周目のメイン集団、鹿屋体育大と法政大がコントロール photo:Hideaki TAKAGI

山本大喜がアタックを繰り返す

6周目、集団はひとつになりここから徳田優(鹿屋体育大)がアタック、これを秋田が追い松本らも反応して集団へ戻る。7周目に山本が3回目の逃げをつくりここに橋本と小林泰正(日本体育大)が合流し3人が逃げる。9周目にその3人を追ってメイン集団から15人が抜け出して合流。徳田、秋田、松本ら有力選手の入った18人の逃げができる。

抜け出した18人だったが思惑が一致せずペースが上がらない。後方の追走集団さらに浦を含むメイン集団まで1分の差があったが、11周目に後方はすべてまとまり大集団に。先頭は山本と草場啓吾(早稲田大)の2人が抜け出す。山本は4度目の逃げ。先頭には島袋大地(法政大)が加わり、3人が15周目まで逃げ、これに大人数のメイン集団が追う。

6周目、メイン集団から仕掛ける徳田優(鹿屋体育大)に秋田拓磨(朝日大)らが反応6周目、メイン集団から仕掛ける徳田優(鹿屋体育大)に秋田拓磨(朝日大)らが反応 photo:Hideaki TAKAGI8周目へ、先頭は橋本英也、山本大喜(鹿屋体育大)、小林泰正(日本体育大)の3人8周目へ、先頭は橋本英也、山本大喜(鹿屋体育大)、小林泰正(日本体育大)の3人 photo:Hideaki TAKAGI

17周目に浦佑樹と須尭元春が抜け出す

16周目に入り先頭単独となっていた島袋がメイン集団に吸収され集団は50人ほどでひとつに。ここまでメイン集団内にいた浦が上り区間で先頭に上がってペースを作る。ここで徳田が仕掛けるも秋田らが反応して集団に戻る。17周目へ入る補給区間で、浦と須尭元春(京都産業大)が先頭の大集団はペースが緩む。そのまま17周目の上り区間へ入り、浦と須尭はペースの落ちた集団を置いて先頭に出て下りへ。

続く18周目の上り区間で須尭が下がり先頭は浦単独に。浦はメイン集団に30秒ほどのタイム差をつける。メイン集団は鹿屋体育大がコントロールし、後半は他大学も加わり最終盤の決戦へ向けて備える。このメイン集団も上り区間でのペースアップで18人にまで絞られている。

17周目、ペースの落ちた大集団から先頭に出た浦佑樹(東京大)と須尭元春(京都産業大)17周目、ペースの落ちた大集団から先頭に出た浦佑樹(東京大)と須尭元春(京都産業大) photo:Hideaki TAKAGI17周目、メイン集団は鹿屋体育大がコントロール17周目、メイン集団は鹿屋体育大がコントロール photo:Hideaki TAKAGI

先頭の浦佑樹と追走18人

ラスト2周となる19周目には徳田がアタックするがこれを秋田がチェック、松本も加わり優勝候補の3人となるが集団へ戻る。徳田は後に「自分が先行して馬渡などが単独ブリッジしてくるのを待ったが来ないので集団へ戻った」と語っている。変わらず先頭は見えている距離で浦が独走を続ける。

最終周回の20周目に入った時点で浦と集団のタイム差は5秒。吸収されるのは目前だった。だが粘り強く逃げる浦を相手に、集団は思惑が一致せずけん制はしないものの全員が結束して追う動きにはならない。すぐ前方に見える浦をいつでも吸収できる読みもそこにあった。また逃げている選手がいない、または吸収されたと思い込んでいる選手もいた。

19周目、アタックした徳田優(鹿屋体育大)に秋田拓磨(朝日大)、松本祐典(明治大)が反応し集団に戻る19周目、アタックした徳田優(鹿屋体育大)に秋田拓磨(朝日大)、松本祐典(明治大)が反応し集団に戻る photo:Hideaki TAKAGI20周目、先頭で逃げ続ける浦佑樹(東京大)に追走集団が迫るが追いきれない20周目、先頭で逃げ続ける浦佑樹(東京大)に追走集団が迫るが追いきれない photo:Hideaki TAKAGI

浦佑樹が逃げ切る

コース最奥の奥木曾大橋を過ぎてからは、道幅が狭くブラインドカーブの多い緩いアップダウンが連続する区間。ここを先頭の浦は10秒ほどだった差を一気に50秒差にまで広げる。浦がこの区間でペースアップしたためだ。前周回までと同じペースで走行していた前方車両が、追い込まれそうになるほどのハイペースで浦はカーブを攻める。

差を1分にまで広げた浦は独走のまま登坂区間へ。ここで30秒ほど詰められたが、須尭と抜け出してから37km、単独となってから25kmを逃げ切った浦が優勝。2位以下には秋田、松本、徳田らが続いた。有力選手たちが攻防を繰り広げる中、1回のチャンスをものにし、あとはひたすら我慢し続けた浦の走力と精神力がライバルを上回った。

フィニッシュの上りへ向かう浦佑樹(東京大)フィニッシュの上りへ向かう浦佑樹(東京大) photo:Hideaki TAKAGI浦佑樹(東京大)が25kmを独走して優勝浦佑樹(東京大)が25kmを独走して優勝 photo:Hideaki TAKAGI

優勝した浦は「勝った実感がまだ湧かないです。ラスト4周の逃げは自然に決まりました。前で待っておくほうが楽だと思って。最終周回は確かにペースアップしました。後ろに迫っていましたがみんなつらそうだからこれは行ける、と思って。みんなの応援が心強かったです」と感謝する。最終周回の攻める走りは「このコースはこれに備えて2daysにも出ていたので、すべて記憶できていました」と明かす。

有力選手たちの間で繰り広げられた攻防

対する有力候補たちはどう戦ったのか。最もマークされていた徳田は「何度かアタックしたのですが。自分としては先頭で馬渡たちが単独でブリッジをかけてくることを期待していたので、結果としてアタックと吸収を繰り返すことになりました。自分の動きや脚質を、JCFの強化遠征仲間の秋田さんや松本たちが知っていることが動きにくかったですね。自分にもっと力があれば抜け出せたのですが」と語る。

チームメイトに祝福される浦佑樹(東京大)チームメイトに祝福される浦佑樹(東京大) photo:Hideaki TAKAGI積極的に動いたJCF強化選手たち積極的に動いたJCF強化選手たち photo:Hideaki TAKAGI

18人の追走集団は、明らかな牽制はなかったがそれでも有力勢の攻防のため一致協力して浦を追う体制になかった。それは目前に見えている浦との10秒から15秒の差をいつでも詰められる読みもあった。逃げはいないものと誤認している選手もいた。しかし2度の骨折から復帰した橋本が追走に加わってもまだ、カーブを攻める浦の速さが勝った。

東京大学の全国制覇は3人目。西薗良太が2009年に学生個人TTとインカレロードを、安井雅彦が2012年に学生個人TTを制し、今回は浦が学生個人ロードで大学としても初優勝を遂げた。同大の三宅秀一郎監督は「昨年から優勝できる体力はあったが結果が伴っていなかった。今回は積極的に走ってようやく本来の力を発揮してくれた」と喜ぶ。

ツール・ド・北海道推薦校決まる

本大会の結果を受けて、9月に行なわれるツール・ド・北海道の学連推薦枠が発表された。推薦校は鹿屋体育大、明治大、法政大、日本大、朝日大の5校で、補欠は東京大となった。

女子表彰女子表彰 photo:Hideaki TAKAGI男子表彰男子表彰 photo:Hideaki TAKAGI

結果

男子
 181km
1位 浦佑樹 東京大学  4時間34分16秒
2位 秋田拓磨 朝日大学  +32秒
3位 松本祐典 明治大学  +38秒
4位 徳田優 鹿屋体育大学 +42秒
5位 孫崎大樹 早稲田大学
6位 小玉凌 中京大学  +45秒
7位 猿田匠 東北学院大学  +49秒
8位 小林泰正 日本体育大学  +50秒
9位 野本空 明治大学
10位 相本祥政 法政大学  +52秒

女子 100km
1位 樫木祥子 駒澤大学  2時間59分05秒
2位 齋藤望 日本体育大学 +40秒
3位 谷伊央里 日本体育大学 +4分27秒

photo&text:高木秀彰