雨降る最終TTを制したのは貫禄の走りを見せたトニ・マルティン。総合ではカチューシャ勢が好走し、ステージ3位に入ったイルヌール・ザッカリンがワールドツアーレースで初の勝利を収めた。



標高差230mの登りを含む最終タイムトライアル標高差230mの登りを含む最終タイムトライアル (c)http:www.tourderomandie.chトップタイムで優勝したトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)トップタイムで優勝したトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ) photo:http:www.tourderomandie.ch6日間のツール・ド・ロマンディ(UCIワールドツアー)もいよいよ最終日、国際オリンピック委員会(IOC)も本拠を置くローザンヌでの個人タイムトライアルを迎えた。

レマン湖のほとりからスタートするコースの総延長は17.3km。中盤から後半に掛けては標高差230mほどの登りが用意され、その頂上付近には市街地の石畳も登場する。この日は朝から雨が打ち付け、コースをより難しいものにした。

このスピードだけではなく総合力も試されるコースで一番時計を叩き出したのは、元TT世界王者、そして現ドイツ王者の威信を掛けて走ったトニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)。それまで暫定首位につけていたローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)を21秒も上回る平均速度44.56km/hで駆け抜けた。

「今日は雨で滑りやすい石畳もあった。でも自分の機材、特にバイクやタイヤに関して自信があったから、一切の不安は無かったんだ。昨年のこのステージでは下りでミスをして数秒を失ってしまった。だからレース前にはコースの映像で何度も予習したし、いつもより集中力を高めてレースに臨んだんだ。以前の勝利はアルガルヴェにまでさかのぼるから、ようやく勝てたという気分。とても嬉しく思っているよ」と、マルティンは喜びを語る。

そして総合争いでは3位のクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が34秒遅れのステージ13位に終わり、2位のティボー・ピノ(フランス、FDJ)は56秒遅れのステージ20位に沈む。

一方で総合4位のサイモン・スピラック(スロベニア)と、マイヨジョーヌに身を包んで走ったイルヌール・ザッカリン(ロシア)らカチューシャ勢が好走し、ザッカリンは途中でメカトラによるバイク交換を強いられたものの、その前まではあわや優勝に手が届くかというペースで並みいるライバルに対して大きなリードを奪った。



チェーン落ちでストップを強いられたものの、イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)が総合優勝を射止めたチェーン落ちでストップを強いられたものの、イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)が総合優勝を射止めた photo:http:www.tourderomandie.ch好走したサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)は総合2位でフィニッシュ好走したサイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)は総合2位でフィニッシュ photo:http:www.tourderomandie.ch

クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が34秒遅れのステージ13位クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が34秒遅れのステージ13位 photo:http:www.tourderomandie.chティボー・ピノ(フランス、FDJ)は56秒遅れのステージ20位に沈むティボー・ピノ(フランス、FDJ)は56秒遅れのステージ20位に沈む photo:http:www.tourderomandie.ch



ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)は1分差のステージ22位ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)は1分差のステージ22位 photo:http:www.tourderomandie.chこれによって今シーズン、下部組織のラスヴェロから昇格したばかりの25歳ザッカリンがワールドツアーレースで初優勝。2008年のステロイド剤使用による2年間の競技出場停止を拭い去る活躍を見せた。

「正直言って総合優勝できるなんて考えてもなかった。もちろん勝ちたいとは思っていたし、トップ5に食い込めれば大成功だと思っていた。特に昨日と今日は最大限の力を出したことで勝利を掴めたし、自分にとっても驚きの結果なんだ。もともとTTは得意だったけれど、ここ最近は登りを強化するために体重を以前から10kgほど落としていた。一つを伸ばせば他の能力が落ちてしまうものだけれど、今の僕はちょうどいいバランスにあると思う。まだ若いし、たくさんの力をつけていきたいと思っているよ」と驚き混じりに喜びを語った。

また、好走したスピラックはフルームとピノを抜いて総合2位に入ったため、カチューシャは総合ワンツーフィニッシュ。チームスカイのニコラ・ポルタル監督も「フルームも調子が決して悪くなかったが、それよりも強い選手が二人いたということ」とトップツーの走りを讃えた。



ツール・ド・ロマンディ2015総合表彰台ツール・ド・ロマンディ2015総合表彰台 photo:http:www.tourderomandie.ch


ツール・ド・ロマンディ2015第6ステージ結果
1位 トニ・マルティン(ドイツ、エティックス・クイックステップ)
2位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)
3位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)
4位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ソウダル)
5位 ローハン・デニス(オーストラリア、BMCレーシング)
6位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
7位 ヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター)
8位 ステフ・クレメント(オランダ、IAMサイクリング)
9位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
10位 スティーブ・モラビート(スイス、FDJ)
23'17"
+11"
+13"
+19"
+22"
+24"
+25"
+26"
+28"
+31"


個人総合成績
1位 イルヌール・ザッカリン(ロシア、カチューシャ)
2位 サイモン・スピラック(スロベニア、カチューシャ)
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
4位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ)
5位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、エティックス・クイックステップ)
6位 サイモン・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
7位 ラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)
8位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
9位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
10位 ヴィンツェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
18h36'30"
+17"
+35"
+49"
+1'20"
+1'21"
+1'24"
+1'42"
+1'43"
+1'54"


山岳賞
マキシム・ベルコフ(ロシア、カチューシャ)

ヤングライダー賞
ティボー・ピノ(フランス、FDJ)

チーム総合成績
カチューシャ

text:So.Isobe
photo:http:www.tourderomandie.ch


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