今季新結成されたニュージーランド籍のコンチネンタルチーム「CCT p/b チャンピオンシステム」。小石、徳田兄弟の3人の日本人選手が走るチームのシーズン序盤戦を橋川健監督が総括して振り返る。



クールネ〜ブリュッセル〜クールネに出場したCCT p/b チャンピオンシステムクールネ〜ブリュッセル〜クールネに出場したCCT p/b チャンピオンシステム photo:Sonoko TANAKA


シーズンが開幕して早1ヶ月が過ぎる。この間、CCT p/b Champion System(以下、CCTチャンピオンシステム)では8つのUCIレースと4つの非UCIレース合わせて12レースに参戦した。なおチームの誕生から概要はチーム紹介記事を参照して欲しい。チームに所属する日本人選手、小石佑馬、徳田鍛造・優兄弟の3人にスポットを当てて活動状況をお伝えする。

3月1日 1戦目 クールネ〜ブリュッセル〜クールネ

チームに所属する日本人選手、小石佑馬、徳田鍛造・優兄弟の3人チームに所属する日本人選手、小石佑馬、徳田鍛造・優兄弟の3人 photo:Sonoko TANAKA
シーズン開幕レースレースとなったクールネ〜ブリュッセル〜クールネではUCIヨーロッパツアー1.1カテゴリー(※)ながらプロチーム+プロフェッショナルコンチネンタルチームで20チームが参戦し、コンチネンタルチームは僅かに5チームと言う非常にレベルの高いレースとなった。完走率が55%を切っており、レース展開も厳しいレースであった。(※1.1の冒頭の1はワンデイレースを示し、1はカテゴリーを示す。UCIではプロツアーを頂点にH.C.〜1〜2まで4つのカテゴリー分けが行われ、その下にアマチュアを主体としたレースが存在している)

クールネ〜ブリュッセル〜クールネの石畳を走る小石祐馬と徳田優クールネ〜ブリュッセル〜クールネの石畳を走る小石祐馬と徳田優 photo:Sonoko TANAKA
CCTチャンピオンシステムでこのレースで完走したのはベルギー人のトム・フーバルトのみ。徳田鍛造・優兄弟、小石祐馬の日本人3選手も参戦したが、皆120km前後で遅れリタイヤとなっている。レベルが高く、ハードなレース展開だったとは言え、メイン集団には100人が残っており、そのままゴールスプリントに。優勝はマーク・カヴェンディッシュ(エティックス・クイックステップ)で、2位がアレクサンダー・クリストフ(カチューシャ)。

プロの世界で「スプリンター」を目指すということは、この集団に足を残した状態で留まっていなくてはならないことを考えると、改めてプロの世界の厳しさを目の当たりにする。そして改めて宮澤崇史がプロの世界でスプリンターとして名を馳せていた事に敬意を感じた。

徳田鍛造徳田鍛造 photo:Sonoko TANAKAフランドル地方の名物のオウデクラワモントを走る小石祐馬フランドル地方の名物のオウデクラワモントを走る小石祐馬 photo:Sonoko TANAKA




3月8日 2戦目 ラボバンク・ドルペンオムループ・ルックフェン

BMCの育成チームが参戦していた。彼らはUCI登録を行わないアマチュアクラブであるが、完全にレースを支配し優勝したBMCの育成チームが参戦していた。彼らはUCI登録を行わないアマチュアクラブであるが、完全にレースを支配し優勝した photo:Ken.HASHIKAWA2戦目となったオランダの1.2カテゴリーのレース「ラボバンク・ドルペンオムループ・ルックフェン」では、参加するチームのレベルが下がったものの、完走率はやはり60%前後の厳しいレース展開となる。

徳田兄弟はレース前半で遅れリタイヤとなってしまったが、小石祐馬が最終局面まで約80名のメイン集団に残り、最終周回の15名の逃げに加わった。ラストまで10kmを切り、後続のメイン集団も迫っていたことから先頭集団も依然としてペースが落ちることは無く、先頭集団はハイペースでゴールに向けて進んでいたが、横風区間で後手に回ってしまった小石はそこから千切れてしまった。この逃げは最後まで逃げ切ったので惜しい結果となったが、アタックするタイミングや集団での位置取りなどレースの内容的には良い内容であった。



3月29日 8戦目 ロンド・ファン・ヘイベルヘン

オランダで行われたロンド・ファン・ヘイベルヘン(Ronde van Huijbergen)は、アマチュアカテゴリーながらコンチネンタルチームに所属している選手が個人エントリーを行うことができるレースだ。UCI-1.1などのレベルの高いレースを走ることは、その経験を積むうえでとても大事な経験だと思うが、それと同時に「戦える」レベルのレースを走ることも成長の過程ではとても重要である。

逃げに加わり最後まで逃げ切った小石祐馬。高いレベルで勝ちを意識したレース展開に加わる事は良い経験になっている逃げに加わり最後まで逃げ切った小石祐馬。高いレベルで勝ちを意識したレース展開に加わる事は良い経験になっている photo:Ken.HASHIKAWA
徳田優は集団の位置取りなどのテクニックが向上している徳田優は集団の位置取りなどのテクニックが向上している photo:Ken.HASHIKAWACCTチャンピオンシステムからは日本人選手3名を含めた5名が参戦。レースは1周目からCCTチャンピオンシステム、オランダのコンチネンタルチームの選手たちを中心としたアタックが繰り返され、2周目には小石を含めた7名が集団を抜け出すことに成功した。

チームバイクはベルギーの「REVEN」。タイヤに日本のIRCを使用するチームバイクはベルギーの「REVEN」。タイヤに日本のIRCを使用する photo:Sonoko TANAKA冷たい雨が降り続けるなか、集団との差を徐々に広げ、ラスト20kmで後続に1分30秒以上のタイム差を付けたため「勝つこと」を意識させる指示を出したが、残念ながら4位に終わった。結果こそ4位だったが、1〜2位はオランダのコンチネンタルチームに所属する選手であり、質の高いレースで「勝つこと」を意識してレースを走った経験は今後の成長に良い影響を与えると信じている。

徳田鍛造はレース序盤に千切れリタイヤ。シーズンオフ中のトレーニング不足、集団内での位置取りなど、厳しい状況が続いているが、乗り切らなくてはならない。

弟の徳田優はメイン集団で完走。後半は集団の前方で抜け出しを図るなど、これまで以上に余裕を感じた。徐々に集団内での位置取りなど上達しつつあるが、まだ本来の実力を出し切れていない。

※続いて別記事で橋川健が同様に監督を務めるチームユーラシアIRCタイヤの活動についてお伝えします。

text:Ken.HASHIKAWA
edit:Makoto.AYANO
photo:Sonoko.Tanaka,Ken.HASHIKAW



橋川健(はしかわ・けん)プロフィール
チームユーラシアIRCタイヤの橋川健監督チームユーラシアIRCタイヤの橋川健監督 photo:Makoto.AYANO1970年生。1991年にプロチームのモトローラとスポット契約し、欧州での選手活動をスタート。1994年にTonissteinerと契約しプロに。同年全日本プロフェッショナル選手権で優勝。1996年ツール・ド・おきなわ優勝、1998年にも全日本プロフェッショナル選手権で優勝。
1999年にブリヂストンアンカーに移籍。ツール・ド・北海道ステージ3勝&総合優勝などの輝かしい戦績を誇る。
2010年よりチームユーラシアの監督に就任。ベルギー、西フランドル地方のコルトレイクを拠点に活動する。

Team Eurasia-IRCタイヤ 総責任者兼監督
CCT p/b Champion System 監督兼コーチ
UCI(国際自転車競技連盟)公認 レベル1コーチ
日本自転車競技連盟 ロード部会員
平成26年度日本オリンピック委員会強化スタッフ