トレックファクトリーレーシングの別府史之とNIPPOヴィーニファンティーニの山本元喜が出場するアムステルゴールド・レースが4月19日、オランダ南部の丘陵地帯で開催される。「アルデンヌ・クラシック」の幕開けを告げるオランダ最大のレースの見どころをチェックしておきましょう。



春色のオランダ南部で開催されるアムステルゴールド・レース春色のオランダ南部で開催されるアムステルゴールド・レース photo:Tim de Waele


カウベルグに至る「1000のカーブ」と「34の登り」を含む251km

アムステルゴールド・レース2015アムステルゴールド・レース2015 image:Amstel Gold Raceいよいよアルデンヌ3連戦が始動する。アムステル・ゴールドレースを皮切りに、3日後の水曜日にフレーシュ・ワロンヌ、1週間後の日曜日にリエージュ〜バストーニュ〜リエージュが開催される。いずれも起伏に富んだコースレイアウトであり、活躍する選手も「北のクラシック」とは異なる。

「グルペルベルグ」を登るプロトン「グルペルベルグ」を登るプロトン photo:Tim de Waeleオランダと聞いて真っ先に思い浮かべるのは、やはり、チューリップが咲き、風車が穏やかに回る風景だ。確かに国土の大半は標高0メートル、もしくはそれ以下。国土の大部分は起伏に乏しい。実際に国名Nederland(英語でNetherlands)は「低地の国」を意味している。

カウベルグでライバルを突き放すフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)カウベルグでライバルを突き放すフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) photo:Tim de Waeleしかしそんなオランダ最大のロードレースであるアムステルゴールド・レースは、登りが勝負の鍵を握る起伏に富んだレースだ。オランダはオランダでも、レース開催地は同国南部に広がる丘陵地帯。ベルギーとドイツに隣接したリンブルグ州を駆け巡る複雑な周回コースが設定されている。登場する短い登りの数は34カ所。251kmのコースはまさにアップダウンの連続だ。

コースは全体的に道幅が狭く、「1000のカーブ」と呼ばれるほどコーナーが連続する。アップダウンとワインディングを繰り返すため「ジェットコースター」とも呼ばれる。下りは次なる登りへの位置取りの場であり、集団が一列棒状に伸びる終盤に後方に下がってしまうと勝負に絡むのは難しい。

合計30カ所の登りをこなした後、選手たちは最後の周回コースに突入する。この周回コースは2012年ロード世界選手権の周回コースと似通ったもので、カウベルグとグールヘンメルベルグ(世界選には登場せず)、ベメレルベルグの3つの坂を通過後、再びカウベルグに挑む。

合計4回通過することになるアムステル名物のカウベルグは、登坂距離1200m、高低差68m、平均勾配5.8%、最大勾配12%。カウベルグの頂上でフィニッシュを迎えるのが通例になっていたが、2013年から2012年ロード世界選手権同様にフィニッシュラインがカウベルグ頂上の1.8km先に変更されている。

断続的に続くアップダウンを“フレッシュな状態”で乗り越え、カウベルグに全力をぶつけることが出来るかが勝負の分かれ道。一瞬の判断ミスが敗戦に繋がることもあり、アタックチャンスを感じ取る優れた嗅覚も問われる。

ちなみに、レース名がオランダの首都アムステルダムに由来すると勘違いしがちだが、その名前はメインスポンサーであるオランダを代表するビール会社、アムステル社からきている。レース公式サイトがビール会社のサイト内に設置されているため、サイトを閲覧するためには年齢を記さなければならない。



アムステルゴールド・レース2015アムステルゴールド・レース2015 image:Amstel Gold Race



ジルベール、マシューズ、バルベルデに注目 日本から別府史之と山本元喜が出場

独走でフィニッシュするフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)独走でフィニッシュするフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) photo:Tim de Waele出場するのは17あるUCIワールドチームにバルディアーニCSF、CCCスプランディポルコウィチェ、クルトエネルギー、MTNキュベカ、NIPPOヴィーニファンティーニ、ルームポット、トップスポートフラーンデレン、ワンティ・グループグベルトを加えた合計25チーム。ユーロップカーがワイルドカードを逃したため、2014年大会で日本人最高位の10位に入った新城幸也は残念ながら欠場する。

マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Tim de Waele2010年と2011年大会の覇者で、2014年に自身3度目の勝利を飾ったフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)が優勝候補の筆頭だろう。ジルベールは同じフィニッシュレイアウトの2012年ロード世界選手権で優勝しており、登りでもスプリントでも勝てる。2014年はカウベルグで決定的なアタックを成功させてフィニッシュまで逃げ切った。

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waele前哨戦ブラバンツ・ペイルを制したベン・ヘルマンス(ベルギー)やサムエル・サンチェス(スペイン)、ダミアーノ・カルーゾ(イタリア)、そしてドーピング疑惑がかけられているグレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー)らがジルベールを支える。

ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ) photo:Tim de Waeleスプリントに持ち込まれた場合は、ブラバンツ・ペイルでジルベールを下しているマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)に勝機が回ってくるだろう。ボルタ・ア・カタルーニャでステージ3勝&総合2位の成績を残したアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)や、ブエルタ・アル・パイスバスコでステージ2勝&総合優勝のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)は「アルデンヌ・クラシック」3連戦を通して強さを見せるはず。パイスバスコ総合2位のセルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア)がチームスカイのエースを担う。

ジルベールの他にも優勝経験者がズラリ。2013年のロマン・クロイツィゲル(チェコ、ティンコフ・サクソ)、2012年のエンリコ・ガスパロット(イタリア、ワンティ・グループグベルト)、2008年のダミアーノ・クネゴ(イタリア、NIPPOヴィーニファンティーニ)らがスタートラインに並ぶ。クネゴのチームメイト山本元喜は初出場だ。

2006年大会の覇者フランク・シュレク(ルクセンブルク)はバウク・モレマ(オランダ)とともにトレックファクトリーレーシングを率いる。ブラバンツ・ペイルに続く出場の別府史之は、ジュリアン・アレドンド(コロンビア)らとともにシュレクとモレマをサポートする。

2004年に「アルデンヌ・クラシック」3連勝の偉業を果たしたダヴィデ・レベッリン(イタリア、CCCスプランディ・ポルコウィチェ)も出場。43歳の大ベテランは、2007年大会覇者ステファン・シューマッハー(ドイツ)とともにポーランドチームを率いての出場だ。

地元オランダの期待を背負うのはモレマの他、トム・ドゥムラン(オランダ、ジャイアント・アルペシン)やウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ロットNLユンボ)ら。世界王者ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)や「アルデンヌ・クラシック」上位の常連ダニエル・マーティン(アイルランド、キャノンデール・ガーミン)、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)、ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)らも勝負に絡んでくるだろう。アウトサイダーとしてはツール・ド・ランカウイを制したヨウセフ・レグイグイ(アルジェリア、MTNキュベカ)の走りに注目だ。

アムステルゴールド・レースの模様はJ SPORTS1にて4月19日(日)21時からライブ放映される。



別府史之(トレックファクトリーレーシング)別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Makoto.AYANO山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ)山本元喜(NIPPOヴィーニファンティーニ) photo:Makoto.AYANO


text:Kei Tsuji