フランスに渡り、ヨーロッパ遠征を開始したキナンサイクリングチーム。3月23〜29日に掛けて開催されたツール・ド・ノルマンディー(UCI2.2)へと参加した、チームのレポートをお届けしよう。



3月23日~29日までTour de Normandie UCI2.2に参加してまりました。このレースは、フランスの中でも自転車が盛んなノルマンディー地方で、熱狂的なファンとトッププロを目指す若手選手がしのぎを削り戦うレース。参加チームはフランス、オランダ、ベルギー、ドイツ、デンマーク、ロシアなど体格的に大柄な国が多く、平坦のスピードレースと風に強い選手が多いことが特徴です。

チーム初のヨーロッパ遠征となったツール・ド・ノルマンディーチーム初のヨーロッパ遠征となったツール・ド・ノルマンディー (c)tourdenormandiecycliste.fr


Tour de Normandie 第1ステージ(207km/5h/平均速度40.28km/h)

いきなりの雨となった第1ステージいきなりの雨となった第1ステージ (c)tourdenormandiecycliste.fr出走前のミーティングを行う出走前のミーティングを行う (c)KINAN Cycling Team気温3~6℃の雨の中での207キロと厳しいレースとなった第1ステージ。多くの選手がレース中にチームカーまで下がり雨具をさらに着込む姿が多くみられました。さらにチームカーに積んだラジオツールには数分おきにパンクしたチームが呼ばれるほどで、レース後にあるチームに聞くと1チームで9本のパンクがあったチームもいたほどパンクラッシュのレースでした。

我々は幸いレース中のパンクは1本に留まりパンクの数は群を抜いて少ない状況でした。レースはスタートから逃げを狙うチームが攻撃を繰り返し、一つ目の山岳賞を越えた35キロ過ぎから数名の逃げを容認し、リーダーチームのBMCが3分前後で集団をコントロール。

その後、100キロ地点の補給所を過ぎ、横風区間でBMCが先頭でスピードを上げて攻撃、逃げ集団を捕まえ最終局面へ。それに耐えられない選手が遅れていきます。我々もその集団の分裂にのまれ、5人が遅れ始めます。ロイックデリアクが唯一、先頭集団に残るもゴール前で落車に塞がれ先頭から少し遅れてゴール。

ステージ優勝は、ルーカス・デスタン (フランス、ヴァンデU)
総合リーダーは、トーマス・スカリー (スシス、マディソン ジェネシス)

第1ステージ終了時点での総合順位
87位 ロイック・デリアック +31”
121位 グレゴー・ガズヴォダ +5’16”
133位 野中竜馬 +19’53”
134位 ジャイ・クロフォード +19’58”
135位 伊丹健二 +20’5”
137位 水野恭兵 +20’15”



Tour de Normandie 第2ステージ(166KM/4h/平均速度43.1km/h)

第2ステージを制したクライス・デミトリ(ベルギー、フランダースウィリアムスCT)第2ステージを制したクライス・デミトリ(ベルギー、フランダースウィリアムスCT) (c)tourdenormandiecycliste.frスタートを待つ水野恭平スタートを待つ水野恭平 (c)KINAN Cycling Team天気は晴れ、気温も12℃ほどまであがり天候に恵まれたステージでした。レースはスタートから6㎞地点に山岳賞が設けられるなどスタートからハードなコース。逃げたい選手がアタックを繰り返し、50㎞地点でようやく4人が逃げ出す形に。

その後、BMCを中心に上位チームがコントロールし、3分前後の差をキープしレースは進みますが、残りの距離が短くなるにつれその差は縮まり、ラスト10キロを切ったところで集団は一つになる。それと同時に丘を利用し二人が逃げ出し、一気に20秒の差をつけ集団が追いかける形となりました。

集団は思うように二人との差を縮められず、二人はそのまま10秒差で逃げ切り、クライス・デミトリ(ベルギー、フランダースウィリアムスCT)がステージ優勝、総合トップになります。ロイックとジャイは先頭のメイン集団でゴール。グレゴと野中は第二集団ゴール。水野はスタートから逃げに乗る積極的な走りを見せるも、勝負所でパンクを繰り返し第二集団の後ろでゴール。

この日、100㎞地点の入り組んだ下りで伊丹が落車、出血がひどくリタイアとなりました。外傷のみで本人は元気ですのでご安心ください。伊丹のリタイアは残念ですが、伊丹も含めステージをこなしながら徐々に調子が上がってきているので今が辛抱どころ。

第2ステージ終了時点での総合順位
1位 クライス・デミトリ(ベルギー、ベランダスヴィレムスCT)9h05’01’’
67位 ロイック・デリアック +34”
125位 グレゴー・ガズヴォダ +14’05”
131位 ジャイ・クロフォード +20’14”
136位 野中竜馬 +28’42”
138位 水野恭兵 +30’44”
DNF 伊丹健二 (100㎞地点で落車によるリタイヤ)



Tour de Normandie 第3ステージ(162km/4h /平均速度40.14km)

集団の主導権を握るBMCディベロップメントチーム集団の主導権を握るBMCディベロップメントチーム (c)tourdenormandiecycliste.fr第1ステージ同様に冷たい雨が降る中スタート。前半はいくつもの逃げグループが入れ替わり先行するものの終盤にグループは一つに。後半は雨もやみ日差しも出てきてスピードが上がります。最後に3周回する周回コースに入ると横風区間で集団が分裂。先頭集団は66名に絞られそのままゴールスプリントへ。

優勝は、ダニエル・ホーエルガード (ノルウェー、チームジョーカー ) 4h02'55''
ロイックは先頭集団でスプリントに加わるもラスト500mでの落車で前を塞がれ集団工法でゴール。野中は第二集団。ジャイは第三集団、水野は第四集団でゴール。グレゴは体調不良でDNF

第3ステージ終了時点での総合順位
1位クライス・デミトリ(ベルギー、ベランダスヴィレムスCT) 13h07'56''
49位 ロイック・デリアック +34”
126位 ジャイ・クロフォード +29’09”
128位 野中竜馬 +31’27”
133位 水野恭兵 +44’21”



Tour de Normandie 第4ステージ (168,5km 4h06'59'' /平均速度. 40.93 km/h)

積極的に逃げる選手たち積極的に逃げる選手たち (c)tourdenormandiecycliste.frスタートを待つ選手たちスタートを待つ選手たち (c)KINAN Cycling Team正午には気温が9℃まで上がり天候に恵まれスタートを切りました。天候がいいことからスタートからスピードが上がりアタックの応酬に。23キロ地点で5人の逃げが決まるも、総合で29秒差の上位選手が含まれたことで逃げは容認されず、34キロ地点で入れ替わるように新たな6人が逃げに成功。

このグループは一気に集団との差を広げ、集団も休戦モードに。最大で5分差を付ける。しかし、130キロ地点から始まるアップダウンで吸収されレースは最終局面へ。ゴール地点を3回通過する周回コースに入ると集団のスピードは落ちず、仕事を終えた選手と付いていけない選手が入り混じり大勢遅れていきます。登り基調のゴールでは55名まで減り、長く伸びたままゴールに流れ込みます。その後、遅れた選手が数珠つなぎでフィニッシュ。

ステージ優勝はニコラス・ヴィリケン(ベルギー、チーム3M)。総合リーダーは昨日と変わらず、クライス・デミトリ(ベルギー、ベランダスヴィレムスCT) 。KINAN Cycling Teamはロイック、ジャイが先頭集団でゴールし、野中もグループの後方でゴールしました。水野も大きく遅れずゴール。

これまでのステージはフランス北部独特に平坦の風が強いステージで我々には厳しいレースでしたが、今日は街中のアップダウンという事もあり前で勝負ができる事を確認できました。各選手、日に日に調子が上がってきているので、このままいい調子でレース終盤を迎えられそうです。残すところあと2日、明日は167キロの第5ステージです。

第4ステージ終了時点での総合順位
1位クライス・デミトリ(ベルギー、ベランダスヴィレムスCT)17h15'00''
36位 ロイック・デリアック +35"
116位 ジャイ・クロフォード +29'21"
120位 野中竜馬 +32'59"
126位 水野恭兵 +56'12"



Tour de Normandie 第5ステージ 170 km/4h13'10''/平均速度 40.29 km/h)

ロータリーを走る野中竜馬ロータリーを走る野中竜馬 (c)tourdenormandiecycliste.frフランス軍チームも出走していたフランス軍チームも出走していた (c)tourdenormandiecycliste.fr残すところあと二日。土曜という事もありスタート会場はお祭りのような賑わいがありました。レースはスタート直後に7名の逃げが決まり、その後14㎞地点から始まる海岸線の横風区間、約10㎞で集団はいくつものグループに分断しサバイバルに。

25㎞地点を過ぎたころで横風区間が終了し集団はまとまり始めます。連日の疲労から集団は一時スローペースに。その間にメイン集団に戻れたグループは先行。取り残されたグループはゴールまで130㎞と先が長くその後リタイアに。逃げグループは80㎞地点で最大4分半まで差を広げますが、その後徐々に縮まり吸収。その後繰り返えされる横風とアップダウンで集団は壊れ、ゴールでは3人、10人、38人、その後は集団にならずバラバラのゴール。

最終日前日に20名のリタイヤを出すサバイバルレースとなりました。KINAN Cycling Teamは、野中と水野が横風区間で遅れリタイヤ。ロイックは前方で走るも他の選手との接触がありマシントラブル、一時は走り始めたもののその後リタイヤ。明日は最終第6ステージ、ジャイのみで最終日を走ります。

第5ステージ終了時点での総合順位
1位 アレックス・ペーター(イギリス、SEG Racing)21h28'22''
98位 ジャイ・クロフォード  +40'48''



Tour de Normandie 第6ステージ 155 km/3h35'06''/平均速度 43,24 km/h)

総合優勝を決めたクライス・デミトリ(ベルギー、フランダースウィリアムスCT)総合優勝を決めたクライス・デミトリ(ベルギー、フランダースウィリアムスCT) (c)tourdenormandiecycliste.fr最終ステージとなる第6ステージは、コースの最後に平坦の周回部分が設けられた平坦基調のコース。この日もスタートから強風と雨で集団はいくつにも分かれ生き残りの厳しいレースになります。先頭は常に少人数のグループが逃げる状況。集団後方では横風に耐えられえず遅れる選手が続出しました。

冷たい雨と最終日という事もあり早々にレースを降りる選手が目立ちます。いくつもの集団に分かれては、また一緒になりを繰り返し、ゴールではBMCのフローリス・ゲルツ(フランス) が僅差で一人逃げきり、その後第1集団は26人、以降大集団はなく続々と少人数でゴールする形に。この日のリタイヤは33名、最終完走者66名。ジャイは後方の6名程の集団でゴールし、ジャイは総合63位でレースを終えました。

総合成績
1位クライス・デミトリ(ベルギー、ベランダスヴィレムスCT) 25h03'27''
63位 ジャイ・クロフォード +44'36''




「良い流れがチーム内に生まれた欧州遠征」キナンサイクリングチーム 石田監督

「良い流れがチーム内に生まれた欧州遠征」キナンサイクリングチーム石田監督「良い流れがチーム内に生まれた欧州遠征」キナンサイクリングチーム石田監督 (c)KINAN Cycling Team
TTを走る水野恭平TTを走る水野恭平 (c)tourdenormandiecycliste.frヨーロッパレースらしい、荒れた道を行くヨーロッパレースらしい、荒れた道を行く (c)KINAN Cycling Teamチームバイクのヨネックス CARBONEXチームバイクのヨネックス CARBONEX (c)KINAN Cycling Team今回参加したチームは、その名称に“development”と付くチームも多く、その名の通り若手選手を発掘・開発すべく存在しているチームばかり。その多くがプロツアーチームの傘下やグループチーム。とても分かり易くここで頑張ればプロツアー入りが待っている。そんな組織化されたチーム運営が印象的で学ぶ部分が多いレースでした。

我々KINAN Cycling Teamとしては初めて経験する事が多くいろいろな事を試み、現状のチーム状態の確認と問題点を発見する事が目的でした。フランスでのレースはもちろん初めて、海外勢を含めてのレース、ステージレースもこのメンバーで挑む事は初めて。まずはすべてのスケジュールをスタッフ含め乗り切る事が重要です。

出だしは本当に厳しいものでした。選手は高強度かつ独特の集団の動きに体を慣らすまで、レースに絡む事は出来ず集団に留まる事にエネルギーを使います。そしてステージを毎日こなすにつれ調子を上げていき展開に絡んでいく選手と、レースに慣れ始める事と疲れが溜り動けなくなる間で苦しむ選手。

ヨーロッパでは天候が目まぐるしく変わる事も、1日で何度もパンクをする事も、期間中の移動が長い事、思い通りに物が手に入らない事も常です。日本では起きないトラブルにも幾度とぶつかりました。それをひとつひとつ解決していき、それが次第にトラブルとは思わず、ストレスに感じなくなるというステップを繰り返します。スタッフも酷使される選手をサポートする難しさ、イレギュラーへの対応力、アイデア、他チームとのコミュニケーション力、すべてがタフでなければ選手をいい状態で送り出すことはできません。

前半はいろいろな問題を抱えたチームで皆がストレスを隠しませんでしたが、ステージを重ねるにつれ徐々に環境に慣れ、話を幾度と繰り返し改善していく中でよい流れが出来ていきます。今回は、そうしているうちにレースは終わり、結果としては唯一ジャイのみが完走という大変厳しい状況ですが、見えてきた課題、改善点や、いい事で続けていきたい事も沢山見つけられました。

この結果は想定内で、これから明確に見えてきた問題点をひとつひとつ丁寧に整えていきたいと考えています。監督、チーム体制としてもまだ至らない部分が多い中、選手には大変な思いをしてもらっていると思います。去年まで形のないKINAN Cycling Teamに来てくれた選手がいるから今戦える。今いる選手の為によい環境を整えていきたいと強く思います。そして何より実績のないチームに多大なサポートをしてくださっている株式会社キナン様、そしてスポンサー様サプライヤー様に喜んでいただけるように。

スタートアップ用のオイルを塗りこむスタートアップ用のオイルを塗りこむ (c)KINAN Cycling Team[img_assist|nid=162890|title=出走前にサプリメントを摂取する|desc=(c)KINAN Cycling Team|link=node|align=left|width=230|height=]


そして小さなクラブチームから応援してくださっているファンの方々、選手についてきてくださって新しくKINAN Cycling Teamを応援してくださっている方々に、早く活躍する姿をお見せしたい、そんな思いでレース活動をしています。Tour de Normandieがツアー・オブ・ジャパン、ツール・ド・熊野へ向けて着実なステップであると確信しています。

今後のスケジュールは以下の通りです。残り3レースを走り帰国します。レースをこなしていく中で、選手個々のコンディションアップとチーム力、スタッフの流れを確立し、来るべき時に備えます。

4/3 Route Adélie de Vitré(UCI1.1)フランス
4/5 GP AdriaMobil(UCI1.2)スロベニア
4/15-19 Tour du Loir et Cher E Provost(UCI2.2)フランス

text:加藤康則(キナンサイクリングチームGM)