ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)のスプリント勝利で幕を下ろした第106回ミラノ〜サンレモ。7時間近いレースの末に勝利を争った勇猛な選手たちのコメントをお届けします。



1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)

フィニッシュラインで両手をあげるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)フィニッシュラインで両手をあげるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) photo:Tim de Waele信じられない気持ちで、心の底から感情が溢れ出してきた。昨年、キャリア最大の失望(39位・1分54秒遅れ)を味わって涙を流したレースで、再び泣いてしまった。

優勝トロフィーにキスするジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン)優勝トロフィーにキスするジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・アルペシン) photo:Tim de Waele早めに仕掛けたアレックス(クリストフ)には、残り50mの時点で届かないと思ったものの、自分を信じて踏み続けた。その時点ではスピードとパワーで負けていた。でもフィニッシュライン直前で彼が失速し、自分が先着した。

魔法にかかったみたいだ。ミラノ〜サンレモは、ミラノのニュートラルゾーンから神経質になる選手がいるようなスペシャルなレース。ミラノ市内では中央分離帯や線路、石畳が絶え間なく登場するので気が抜けない。常にリラックスして、落ち着いて、脚を温存し、アウレリア通り(ポッジオ手前の海岸通り)までとにかく力を使わずに走ることが重要。そして(登りでは)前過ぎず後ろ過ぎないバランスの良いポジションにつける必要がある。今日はチームメイト達が絶妙なポジションに連れて行ってくれた。彼らの走りを誇りに思うよ。

勝つためには経験も必要だった。ここに至るまでに4年間の歳月が必要だった。もちろん他のベテランにアドバイスを仰ぐこともできるけど、肝心なところは自分の経験からしか分からない。昨年の自分のような、失望から学んで成熟することだってある。

冬場から良いトレーニングを積んで、準備万端でレースに挑んだ。全てが予定通りだった。パリ〜ニースでは昨年のような活躍を見せることが出来なかったものの、パニックになることもなかった。ロードレースでは何でも起こり得る。調子の良さを感じていたし、ミラノ〜サンレモに100%照準を合わせていた。過去3年間と同じように木曜日にイタリア入りして、金曜日にロングライドに出掛けた。そして今年は勝利した。

1月2日に(息子レオロバートが誕生して)人生が全く別のものになった気がする。まるで人生が完成したような。やっぱり自分の家族をもつのは素晴らしいこと。さっき妻と電話で話したけど、僕がスプリントしている時、息子は寝ていたらしい。

これからハードな4週間が待っている。精神的にも身体的にも準備は出来ている。全てのレースで良い成績を残したいと思う。

2位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)

パオリーニに引かれてポッジオを登るアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)パオリーニに引かれてポッジオを登るアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Tim de Waeleスプリントを開始するのが早すぎた。スプリント開始があと50m遅ければ結果は違っていたと思うけど、すでに先頭に出ていたので他に選択肢は無かった。ルーカ(パオリーニ)の走りは本当に素晴らしく、ポッジオとフィニッシュに至るまでの区間でインプレッシブな働きを見せてくれた。あれ以上のものを望めないと思うほどだ。正直に言うと、スプリント中に「勝った」と思う瞬間があった。でもジョン(デゲンコルブ)のスピードには対応出来なかった。限界だった。僅かながらフィニッシュストレートは登っていて、もう疲労困憊でパワーが出なかった。

とにかくチームの働きは最高だったよ。ルーカを筆頭に、全てのチームメイト達に感謝している。ハードな1日だった。昨年のような調子の良さこそ感じていなかったものの、それでも調子は悪くなかった。チプレッサで難局を迎えたものの、チームのフルサポートで集団前方に復帰。ポッジオではルーカが良いリズムを刻んでくれた。

悔しい。でも、僅かの差で勝利を逃したのだから当然の感情だと思う。後々になって、この2位という結果に喜んでいる自分がいるかもしれない。

3位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

冷たく濡れた1日だったけど、チームはすべきことをした。オリカ・グリーンエッジの全員が僕をサポートしてくれた。チプレッサとポッジオの登りで確認した好調ぶりを勝利につなげることが出来なかったので残念だ。これこそがミラノ〜サンレモ。結果を追い求めた最初の挑戦として、ポジティブに結果を受け入れるべきなのだと思う。僕を信頼して支えてくれたチームに感謝している。

4位 ペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)

平坦区間でアタックを仕掛けるペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ)平坦区間でアタックを仕掛けるペーター・サガン(スロバキア、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele雨の影響もあってタフなレースだった。でも終盤にかけて太陽が出たし、路面が乾いていたので少なくとも昨年よりはマシだった。1日ずっと働いてくれたチームメイト達に今一度感謝したい。調子の良さを感じていたものの、最後の最後でミスを犯してしまった。最終スプリントを前に集団内の位置取りが悪かった。最終コーナーを抜けた時点で後方に下がってしまったので、勝つためには何人もの選手を抜き去る必要があった。

気を取り直して、これからは石畳のクラシックに集中していく。調子も感触もとても良いと打ち明けておく。次のレースでどんな走りが出来るか楽しみだ。

5位 ニッコーロ・ボニファツィオ(イタリア、ランプレ・メリダ)

5位という素晴らしい結果を残すことが出来た。愛する偉大なレースで優勝争いに絡めたことを嬉しく思う。ここで活躍するために毎日トレーニングに明け暮れてきたんだ。幾つもの落車を避けて、良い状態でサンレモに到着。チモライのスプリント発射台として準備万端だったものの、最終コーナーを抜けたところで彼を見失ってしまった。集団前方に位置していたのでそのまま真っ直ぐにスプリントしたんだ。良いチャレンジだったと思う。この結果が将来に向けての貴重な経験になることは間違いない。

7位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)

7位でレースを終えたファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)7位でレースを終えたファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング) photo:Tim de Waele自分の前には6人のトップスプリンターがいた。いわゆるスプリンター以外の選手の中では先頭だったとも言える。(スプリンターのように)誰をマークすべきかを見極めながらポジション取りするような本能を持ち合わせていない。右側でスペースを塞がれてしまうというミスを犯してしまい、良い脚が残っていながら残念な結果になってしまった。

残り500mの時点では良い位置にいた。でも左側から選手が上がってきて前を塞がれた。当然、彼らは本業のスプリンター達なのでドア(スペース)を開けることはしない。自分のミスだった。自分の後ろに誰が付いてきているかをチェックしているうちに、アタックのタイミングを1000分の1秒逃してしまった。

ミラノ〜サンレモは1年の中で最も戦略的なレースであり、そこには数多の可能性がある。スプリントに向けて待ちすぎたのかも知れない。そんなことを考えると、答えよりも問いが多くなってしまう。

でも同時にラッキーだったとも言える。自分の目の前でフィリップ・ジルベールが落車して、危うく自分も巻き込まれるところだったから。沢山の運と戦略が繋がって初めて結果は生まれるんだ。

8位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)

上手くレースを運べていたし、チームの走りも申し分なかった。勝利への強いモチベーションで、寒さや雨、疲労を乗り越えた。残り1kmアーチを前にボニファツィオに連れられて集団前方に上がったものの、300km走った脚は思うように動かなかった。最終コーナーで彼と離れてポジションを落としてしまい、そこからの挽回は不可能だった。表彰台も逃してしまったけど、チームとして良い走りを見せることが出来たと思う。

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、エティックス・クイックステップ)

調子が良いなんて言えない状態だった。(ウィルス性の胃腸のトラブルに)病んだことで数週間前の調子を全て失ってしまった。それでもチームは僕を支えてくれて、良い位置で(チプレッサとポッジオの)登りをこなしたんだ。やってくるかも知れないチャンスを信じて闘い続けたけど、チプレッサの頂上まで1.5kmを残して、少し平坦基調になったところでメカトラ。チェーンが落ちたんだ。そこから集団に復帰するために下りで余分なエネルギーを使ってしまった。

そしてポッジオでは目の前の選手が中切れを起こしてしまった。ミラノ〜サンレモでは中切れがレースの終わりを意味する。ポジションを争いながら積極的に前に出る必要があるポッジオで、中切れを埋める加速を生み出すパワーが残っていなかった。自分の調子の悪さとメカトラの相乗効果で集団後方に下がってしまい、勝負から脱落した。とにかくチームメイトが全員怪我なくフィニッシュしたことを喜ぶべき。そして良いレースだった。デゲンコルブは勝利に値する走りだった。

ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)

遅れてフィニッシュするミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)ら遅れてフィニッシュするミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)ら photo:Tim de Waele大怪我を免れて良かった。明日ベッドから起きた時に(落車の痛みを)何も感じないといいのだけど。今日はスティバルと僕の両方が落車するというついてない1日だった。落車がなければまた違った展開になっていたと思う。

ミラノ〜サンレモでポッジオの勝負に残っていたのは今年が初めて。苦しむことなく快適に登っている時に、カヴェンディッシュが脱落していることを知った。そこから勝負はスティバルと僕に託された。登りでアタックすべきだったのかも知れない。でも落車という悪運によって勝負には絡めなかった。

ゼネク・スティバル(チェコ、エティックス・クイックステップ)

今日は2回落車。本当にアンラッキーだった。カーボベルタの下りで目の前の選手が落車して巻き込まれたものの、幸いすぐに再スタート。そして2度目の落車がポッジオの下りで起こった。その時点で僕のレースは終わった。ポッジオの下りからフィニッシュにかけての区間で勝負に出ようと思っていただけに残念だ。300kmを走った後のスプリントでは何でも起こり得た。でも、OK、それがロードレース。膝と胸部に擦過傷を負ったけど、深刻な怪我ではない。今日という1ページをめくって、明日から次のレースを見据えたい。

選手コメントはレース公式リリースならびに各チーム公式サイトより。

text:Kei Tsuji