190kmを4時間強で走り抜けるハイペースで進んだパリ〜ニース第5ステージ。パワフルに逃げ続けたトーマス・デヘントは残り500mで吸収され、シッティングで加速したダヴィデ・チモライが勝利。総合順位に変動は無かった。



スタートライン最前列に並ぶミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)とトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)スタートライン最前列に並ぶミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)とトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:A.S.O.逃げる5名のエスケープグループ逃げる5名のエスケープグループ photo:CorVosチームスカイの圧倒的なチームプレーが炸裂した第4ステージから一夜明け、この日もプロトンはニースを目指し南下し続ける。昨日のゴール地点である1級山岳クロワ・ド・ショブレからほど近いサンテティエンヌをスタートし、ラストーへ至る192.5kmが第5ステージの舞台だ。

ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)がこの日も集団を牽引するブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)がこの日も集団を牽引する photo:CorVosスタート直後から1級山岳コート・ド・レパブリック(標高1177m)をクリアすると、125km地点と148km地点にそれぞれ3級山岳と2級山岳が、ゴールに近い184km地点には3級山岳が控え、最後の1kmは50m標高を上げるという、逃げもしくは「登れるスプリンター」向けのコースに向けて154名の選手たちがスタートを切った。

「速くナーバスな一日だった」とミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)「速くナーバスな一日だった」とミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ) photo:CorVosパリ〜ニースはここまで4つのマスドステージ経て、逃げ切り勝利は未だ一つも無し。逃げ切りのチャンスがあるステージだけに、スタート直後からアタッカーたちが活発に動く。コート・ド・レパブリックの登りで山岳ポイントの追加を狙うトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)やアンドリュー・タランスキー(アメリカ、キャノンデール・ガーミン)、ロメン・シカール(フランス、ユーロップカー)、パウェル・ポルヤンスキー(ポーランド、ティンコフ・サクソ)、エゴール・シリン(ロシア、カチューシャ)という5名が逃げグループを作り先行を開始する。

かくしてコート・ド・レパブリックの山頂はデヘントが先頭通過し、タイム差も徐々に開いていく。しかし強力なメンバーが逃げたことも手伝って、エティックス・クイックステップがコントロールする集団は4分以上の差を許さない。

「最初のプランは逃げに加わって、最初のKOMでポイントを稼ぐことだった」と語るのは総合山岳賞獲得を目指すデヘント。「簡単に逃げに乗ることができ、ポイントも獲り、あとは集団に戻ろうと思っていた。でもとても調子が良かったし、強力な逃げメンバーだったので監督と話し合って勝負してみることにした。逃げグループは協調できていたし、彼らのおかげで山岳ポイントを稼ぐことができた」。

2010年、2011年にステージ優勝経験を持つデヘントは、この日も最終的に全てのKOMを先頭通過し、ステージ終了時点で61ポイントと、2位のフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)に対して40ポイント差を稼ぎだしてみせる。

ステージ終了後に多くの選手が「非常に速う、ナーバスなステージだった」と振り返る通り、レースの平均速度は45km/hに迫るもの。集団ではナセル・ブアニ(フランス)を勝利に導きたいコフィディスや、トレックファクトリーレーシングも牽引に加わり、先行する5名のタイム差を徐々に削り取りに掛かる。

一方エスケープグループもデヘントが中心となってペースを上げ続けたため、残り10kmを切ってからの35秒が一向に縮まらない。まずシカールとポルヤンスキー、次にタランスキー、シリンと次々とメンバーが離脱する中、力強く踏み続けたデヘントは、スプリントに入る集団を従えて最終ストレートへと到達。



トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)が逃げグループのペースを整えるトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)が逃げグループのペースを整える photo:CorVosダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)がブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)を抜き去るダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)がブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)を抜き去る photo:CorVos
登りスプリントで今期2勝目を飾ったダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)登りスプリントで今期2勝目を飾ったダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ) photo:CorVos


トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)をヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)が労うトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)をヤン・バケランツ(ベルギー、AG2Rラモンディアール)が労う photo:CorVos山岳賞争いで大きくリードしたトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)山岳賞争いで大きくリードしたトーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル) photo:CorVosしかしブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)を皮切りにスプリント合戦が始まると、残り500mでデヘントは吸収。もがき続けるコカールの番手からダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)がシッティングで加速すると、追いすがるマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)を抑えてガッツポーズ。トロフェオ・ライグエリアに続く今期2勝目を飾った。

「非常にテンポの速いステージだったけれど、調子の良さは感じていた。(マシューズが勝った)第3ステージで2位に入っていたからどうしても勝利を家に持って帰りたかった」とはチモライ。「パリ〜ニースは大好きなレースだし、自分にとってとても重要な勝利」と加える。

一方で「あの状況で勝利を失ったら誰だって落胆するさ。残念だけれど、シナリオを覆すことはできなかった。タイムギャップが3分以上広がらなかったのに、最終的に逃げ切りのチャンスができたことに驚いているよ。200mが遠かった。次こそは勝利を狙いたい」と悔やむのはデヘントだ。一方山岳賞については「今14ポイント差で首位をキープしているけれど、明日のステージでは最大で51ポイントを稼ぐことができる。だから何だって起こりうる。ジルベールやセレンセンが行ったら、僕は彼らをフォローしなければならない。もしポイントを持っていない選手が3人逃げれば僕の山岳賞が決まる」と語った。

また総合上位陣のゴール勝負は発生せず、マイヨジョーヌは1秒差でクヴィアトコウスキーがキープしている。3つの2級山岳と2つの1級山岳、そしてテクニカルかつハイスピードなダウンヒルを経てニースへと至る明日のステージに注目だ。



パリ〜ニース2015第5ステージ結果
1位 ダヴィデ・チモライ(イタリア、ランプレ・メリダ)
2位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
3位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
4位 ナセル・ブアニ(フランス、コフィディス)
5位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
6位 アレクサンドル・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
7位 マッティ・ブレシェル(デンマーク、ティンコフ・サクソ)
8位 ダニエル・マクレー(イギリス、ブルターニュ・セシェ)
9位 サミュエル・ドゥムラン(フランス、AG2Rラモンディアール)
10位 シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)
4h12'09"











個人総合成績
1位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)
2位 リッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)
3位 ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)
4位 ティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)
5位 ヤコブ・フグルサング(デンマーク、アスタナ)
6位 トニー・ガロパン(フランス、ロット・ソウダル)
7位 ルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)
8位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)
9位 ティアゴ・マシャド(ポルトガル、カチューシャ)
10位 ラファル・バルス(スペイン、ランプレ・メリダ)
23h56'20"
+01"
+03"
+27"
+32"
+38"
+41"
+44"
+50"
+51"


ポイント賞
マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)

山岳賞
トーマス・デヘント(ベルギー、ロット・ソウダル)

新人賞
ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、エティックス・クイックステップ)

チーム総合成績
アスタナ

text:So.Isobe
photo:CorVos