タイで開催中のアジア選手権もロードレース最終日。130kmで争われた男子エリートレースで内間康平が3位に入り銅メダルを確保。積極的に動きアシスト役を務めた新城幸也は10位に入った。現地の田中苑子によるレポートで紹介します。



出走サインをする新城幸也(ユーロップカー)出走サインをする新城幸也(ユーロップカー) photo:Sonoko.Tanakaエリート男子日本チーム。左から内間康平(ブリヂストン・アンカー)、新城幸也(ユーロップカー)、佐野淳哉(那須ブラーゼン)、中島康晴(愛三工業レーシング)エリート男子日本チーム。左から内間康平(ブリヂストン・アンカー)、新城幸也(ユーロップカー)、佐野淳哉(那須ブラーゼン)、中島康晴(愛三工業レーシング) photo:Sonoko.Tanaka

午後8時、たくさんの観客たちに見守られてスタート地点から選手たちが飛びだす午後8時、たくさんの観客たちに見守られてスタート地点から選手たちが飛びだす photo:Sonoko.Tanaka


積極的にレースを展開する佐野淳哉(那須ブラーゼン)積極的にレースを展開する佐野淳哉(那須ブラーゼン) photo:Sonoko.Tanakaタイ・ナコンラチャシマで開催中のアジア選手権ロードレース。個人ロードレースの最終日となった2月12日は、注目の集まる男子エリートのレースが開催された。天候はこの日も晴れ。しかし、日を追うごとに蒸し暑さが増し、宿泊先のホテルから自走で会場へと到着した選手たちの額には汗が光る。

補給地点補給地点 photo:Sonoko.Tanaka今年のアジア選手権ロードレースは、アジアチャンピオンを決めるだけでなく、上位2カ国に2016年にブラジルのリオで開催されるオリンピックへの出場特別枠が与えられるという規定があり、多くの強豪国がそれを狙っていた。さらに、今大会での日本ナショナルチームの好成績を受け、また新城幸也(ユーロップカー)がスタートリストに名を連ねることから、日本を優勝候補の筆頭と挙げるチームが多かった。

新城幸也と中島康晴を含む13名の追走集団新城幸也と中島康晴を含む13名の追走集団 photo:Sonoko.Tanaka8.1kmの周回コースを16周回、全130kmのコースは完全な平坦だが、これまでのカテゴリーでは、逃げ切りの展開となることも多かった。日本ナショナルチームの作戦は、ピュアスプリンターがチームにはいないため、「先手先手を打ってできるだけ多くのメンバーを前に送る」ことだと浅田顕監督は話す。

日本ナショナルチームのメンバーは、佐野淳哉(那須ブラーゼン)、新城幸也(ユーロップカー)、内間康平(ブリヂストンアンカー)、中島康晴(愛三工業レーシングチーム)の4名。海外勢を見ていくと、今年からランプレ・メリダで走る台湾のフェン・チュンカイやマレーシアの強豪スプリンター、ハリフ・サレーらがスタートラインに立った。

午後8時、たくさんの観客たちに見守られてスタート地点から選手たちが飛び出していくと、序盤にイランのホセイン・アスカリが単独で先行する。その後方のメイン集団ではアタック合戦となり、日本ナショナルチームもチームワークを駆使して、4人全員でアタックに反応。そして内間康平が含まれる9名の選手が先行し、単独で逃げていたアスカリがそこに加わり、10名の先頭集団が形成された。10名の選手はうまく協調体制が取れ、順調に周回数を重ねていく。



追走集団からブリッジを掛ける新城幸也(ユーロップカー)追走集団からブリッジを掛ける新城幸也(ユーロップカー) photo:Sonoko.Tanaka先頭集団で展開する内間康平(ブリヂストン・アンカー)先頭集団で展開する内間康平(ブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko.Tanaka

UAEの選手と先頭集団を追う新城幸也(ユーロップカー)UAEの選手と先頭集団を追う新城幸也(ユーロップカー) photo:Sonoko.Tanaka


ホセイン・アスカリ(イラン)が独走のままゴール。アジア王者に輝いたホセイン・アスカリ(イラン)が独走のままゴール。アジア王者に輝いた photo:Sonoko.Tanaka2位集団のスプリントで内間康平が2着。3位表彰台に入った2位集団のスプリントで内間康平が2着。3位表彰台に入った photo:Sonoko.Tanaka逃げが決まったあとも、メイン集団のハイペースは続き、中盤には新城幸也と中島康晴を含む13名の追走集団が作られた。いいペースで先頭集団を追い、しだいに追いつくかのように思われたが、結果的にその差は縮まらなかった。その原因を「集団のなかで、追いつくだろうと安心してしまって、積極的に追うのをやめてしまう選手が出てきた。韓国が前に乗っていなかったので、韓国に追ってもらいたかったが、今日は調子があまり良くなかったよう」と、浅田監督は分析する。

内間康平(ブリヂストン・アンカー)をねぎらう新城幸也(ユーロップカー)内間康平(ブリヂストン・アンカー)をねぎらう新城幸也(ユーロップカー) photo:Sonoko.Tanaka一向にペースアップしない追走集団から、終盤になって新城幸也がブリッジを図る。飛び出した新城にUAE(アラブ首長国連邦)のミルザアルハッマディが反応し、2選手で先頭集団を追った。コースのUターン路を利用して、新城が猛追していることを知った内間は先頭交代に入るのをやめ、チームメートの合流を待った。その内間を見て、先頭集団に2選手を送り込んでいたイラン勢が攻撃を開始。1人が単独でアタックをかけ、イラン勢を危険視していた内間が追い、一度は集団が吸収するも、残り2周回に入る手前で、もう1人のイラン人選手、序盤に逃げていたアスカリが再度アタックをかけ、アッという間に選手たちの視界から姿を消してしまった。

表彰台に上がった内間康平(ブリヂストン・アンカー)表彰台に上がった内間康平(ブリヂストン・アンカー) photo:Sonoko.Tanaka最終周回、残り5kmを切って、新城幸也とUAEの選手が先頭集団に追いついたが、アスカリの独走に打つ手はなく、2位を狙うゴールスプリントの準備へと入った。新城が集団をうまくコントロールし、ラスト250m、新城から発射する形で内間がスプリントを仕掛けた。「2位に入る自信はあった」と言う内間だが、ノーマークのUAEの選手に先行を許してしまい、結果3位でのゴールとなった。

内間は「五輪枠を取るという目標があったんですが、表彰台に乗れたとはいえ、五輪枠は取れなかった。今回のナショナルチームのメンバーに選んでいただいたのに、残念で悔しい気持ちです」と悔しさを滲ませる。新城も「追走集団はどう考えても追いつくべきだったし、自分が集団から連れてきてしまったUAEの選手が2位に入ったので、悔しい気持ち。でもチームは良く動いていて、内間もよく先頭集団に乗ってくれたと思う。最後に決めるところがうまくいかなかった。悔しいですね」とレースを振り返る。

チームを指揮した浅田監督は「マークが厳しいなかで、みんなよく動いていたと思います。先頭10人に内間が入って、そのあとの追走に2人入った。このグループが合体して、23人中の3人となるところだったんですが、うまくまとまりきれなかったです。最後も、内間がアスカリと一緒に抜け出せたら良かったのかもしれませんが、なかなか難しかったですね。オリンピックの特別枠は取れなかったのですが、意地で3位に入ってくれ、3人がUCIポイント圏内でゴールしているので、それは良かったと思います。これから、地道にポイントを稼いで五輪枠を取っていきたいと思います」と総括。



アジア選手権男子エリー表彰台アジア選手権男子エリー表彰台 photo:Sonoko.Tanaka


男子エリートでは悔しい結果となってしまったが、個人ロードレース種目5つのカテゴリーにおいて、日本ナショナルチームは、3つの金メダルと1つの銅メダルを獲得する好成績に終わった。個人ロードレース種目を終えて、市内中心部から郊外の大学へと会場を変えて、翌日からは個人タイムトライアルが開催される。各カテゴリー各国1名のエントリーで、13日に開催されるU23は小石祐馬、女子ジュニアは梶原悠未、ジュニア男子には石上優大が出場する。



第35回アジア自転車競技選手権大会/第22回アジア・ジュニア自転車競技選手権大会
男子エリート個人ロードレース(130km)

1位 ASKARI Hossein IRI 2時間47分23秒
2位 MIRZA ALHAMMADI Yousif UAE 2時間48分11秒
3位 内間康平(ブリヂストン アンカー)2時間48分11秒
10位 新城幸也(ユーロップカー)2時間48分11秒
12位 中島康晴(愛三工業レーシング)2時間49分00秒
27位 佐野淳哉(那須ブラーゼン) 2時間54分58秒

text&photo:Sonoko.Tanaka