2016年のアジア選手権のリハーサル大会となる「2015東京都個人ロードタイムトライアル大会」が、伊豆大島(東京都大島町)にて開催された。男女のロードレース全日本チャンピオンが参加したTTの模様と、アジア選手権ロードコースのプレビューをレポートする。



天気が良い時は、対岸の伊豆半島や富士山が見える事もある海岸沿いのコース天気が良い時は、対岸の伊豆半島や富士山が見える事もある海岸沿いのコース photo:Satoru.Kato
富士山をバックに走る佐野淳哉(那須ブラーゼン)富士山をバックに走る佐野淳哉(那須ブラーゼン) photo:Satoru.Kato海岸に沿って走るコースからは、利島や新島などが見える海岸に沿って走るコースからは、利島や新島などが見える photo:Satoru.Kato2008年に奈良で開催されて以来、8年ぶりに日本での開催が決まったアジア選手権。ロードレースは伊豆大島、トラックは修善寺のベロドロームで開催される。今回のタイムトライアル大会は、そのプレ大会としての位置づけだ。

コースは大島の北西にある海岸沿いのサイクリングロード「サンセットパームライン」に沿って走る公道を往復する10.2km。こまかなアップダウンはあるものの、ほぼフラット。海が荒れていると、波しぶきがコースまで届く場所もある。

地元の方の話では、この時季は西風が強く吹きつける日が多く、船や飛行機が欠航になる事も珍しくないそう。レース前日の17日も暴風が吹き荒れ、コースは常に海側からの強風にさらされる状態だった。しかしレース当日は一転して穏やかな1日となり、横風に弱いタイムトライアルバイクを使う選手にとっては恵みの天気となった。

カテゴリーはジュニア男女と、エリートの男女、それにパラサイクリング。エリート女子には、ロードとタイムトライアルの全日本チャンピオン萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)が、男子エリートには、ロードの全日本チャンピオンである佐野淳哉(那須ブラーゼン)と、伊豆でU23の強化合宿に参加していた徳田優(鹿屋体育大学)や小石祐馬(チャンピオンシステム)、岡篤志(EQA U23)らが出場した。



男子エリートは佐野淳哉が優勝

男子エリート 2位の徳田優(鹿屋体育大学)男子エリート 2位の徳田優(鹿屋体育大学) photo:Satoru.Kato男子エリート 3位の中村龍太郎(イナーメ信濃山形)男子エリート 3位の中村龍太郎(イナーメ信濃山形) photo:Satoru.Kato

男子エリート 優勝した佐野淳也(那須ブラーゼン)男子エリート 優勝した佐野淳也(那須ブラーゼン) photo:Satoru.Kato
午前10時から30秒間隔でスタートした男子エリートは、コースを3往復する30.6km。最後から2番目にスタートした小石祐馬(チャンピオンシステム)が、42分42秒、平均時速42.98kmでトップタイムを出す。最後にスタートした佐野は小石のタイムに30秒近く及ばず2位。小石はオープン参加扱いだったため、佐野が優勝となった。2位に徳田優(鹿屋体育大学)、3位には中村龍太郎(イナーメ信濃山形)が入った。

トップタイムの小石は「2月のタイでのアジア選手権を念頭に早めに調整を始めたので、この時期としては良い状態だと思う」と話す。今年からコンチネンタルチームのチャンピオンシステムに移籍。チームとの合流は2月後半か3月になる予定。「強い選手が多いと聞いているので、成長出来る1年にしたい」と抱負を語る。

一方、「ちょっとどころか、相当不安が残る結果でしたね」と渋い表情で語る佐野。「結果は優勝だけど、本当のトップからは大きく差をつけられてしまっているので、色々と課題が残る結果。気を引き締め直さないといけない」と、反省の弁。ナショナルチームの浅田顕監督からも「アジア選手権に向けてもっと頑張らないといけない」と注文がついた。

女子エリート 日本チャンピオンジャージで走った萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)今年の目標は「ジロ・ローザ出場」女子エリート 日本チャンピオンジャージで走った萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)今年の目標は「ジロ・ローザ出場」 photo:Satoru.Kato
男子ジュニア 優勝した沢田桂太郎(東北高校)男子ジュニア 優勝した沢田桂太郎(東北高校) photo:Satoru.Kato女子ジュニア オープン参加の梶原悠未(筑波大坂戸高校)女子ジュニア オープン参加の梶原悠未(筑波大坂戸高校) photo:Satoru.Kato

女子ジュニア 優勝した細谷夢菜(浦和工業高校)女子ジュニア 優勝した細谷夢菜(浦和工業高校) photo:Satoru.Katoパラサイクリング ハンドリカンベントで出場した奥村直彦(JPCF)パラサイクリング ハンドリカンベントで出場した奥村直彦(JPCF) photo:Satoru.Kato


強化合宿参加の選手を押しのけて3位に入った中村は「このメンバーの中で3位に入れた事は自分でも驚いてる」と喜ぶ。「(新城幸也らが年末年始に合同で行っている)タイ合宿に参加して走り込んできたので、この時期としては他の選手よりも調子は良い方だと思う。このコースはほどよくアップダウンがあるので自分向き。何より景色が良くて、走っていて気持ちよかった」と、満足げに語った。



アジア選手権ロードコースはバランスが取れた12km

タイムトライアル大会の前日、アジア選手権のロードレースコースをサイクリングするイベントが行われ、タイムトライアルに出場する選手も試走を兼ねて走った。

大島支庁前のスタート直後から登りが続き、その後は海岸に向けて一気に下った後、タイムトライアルにも使用した海岸沿いを走り、1周12kmとなる。高低差は167m。浅田監督は「ジュニアからエリートまで同一コースで行うにはバランスの良いコース」と評価する。

ロードのスタート・ゴール地点となる東京都大島支庁舎ロードのスタート・ゴール地点となる東京都大島支庁舎 photo:Satoru.Kato場所によってきつい斜度がある登り区間場所によってきつい斜度がある登り区間 photo:Satoru.Kato

下りきると海岸沿いに出る下りきると海岸沿いに出る photo:Satoru.Kato
試走した面手利輝(EQA U23)は「登りが上に行くほど斜度がきつくなる。集団がばらけるような勝負のポイントになるだろう」と話す。他の選手も、登りが勝負のポイントになると口を揃える。

さらに海岸沿いでは、強風で集団が分断される事も考えられるが、風が無いとしても「海岸沿いはまっ平らではなく、こまかなアップダウンがあるので、先行されると捕まえるのが容易ではない」と佐野は分析する。コースの半分近くを占める部分であるだけに、レース戦略が問われるポイントになりそうだ。



災害からの復興をアピールするアジア選手権に

噴火時に流れ出た溶岩がそのまま残る三原山噴火時に流れ出た溶岩がそのまま残る三原山 photo:Satoru.Kato荒涼とした風景が広がる裏砂漠荒涼とした風景が広がる裏砂漠 photo:Satoru.Kato

コース近くにある「浜温泉」は、夕陽を眺めながら露天風呂につかる事が出来るコース近くにある「浜温泉」は、夕陽を眺めながら露天風呂につかる事が出来る photo:Satoru.Kato大島名物「かしわんば」は大島版柏もち大島名物「かしわんば」は大島版柏もち photo:Satoru.Kato


大島は2013年10月に起きた台風による土砂災害からの復興途上にある。今回のアジア選手権開催には、大島の復興アピールと言う側面もある。また、トライアスロンやマラソンの大会を多数開催してきた経験と実績が、大会誘致の原動力にもなっていると川島理史大島町長は話す。

三原山や裏砂漠など、観光スポットも多い大島。コース近くには夕陽を眺めながら入れる露天風呂もある。島の外周道路は1周42kmで、サイクリングには最適な距離。アジア選の観戦と合わせて、観光してみてはいかがだろうか。



2015東京都個人ロードタイムトライアル大会結果
男子エリート(30.6km)
1位 佐野淳哉(那須ブラーゼン) 43分09秒392 42.54km/h
2位 徳田 優(鹿屋体育大学) 43分14秒604 
3位 中村龍太郎(イナーメ信濃山形) 43分24秒710
4位 岡 篤志(EQA U23) 44分38秒125
5位 ソールスベリー・ポール(イナーメ信濃山形) 45分11秒244
6位 佐藤秀和(サイクルフリーダムレーシング) 46分30秒741
オープン 小石祐馬(チャンピオンシステム) 42分42秒897 42.98km/h

男子エリート・臨時登録(30.6km)
1位 向園裕二(チーム・Y)51分29秒241 35.66km/h
2位 太郎田能之(チームバーニア)52分31秒938
3位 呉 英仁(イオマーレ)55分21秒660

女子エリート(20.4km)
オープン 萩原麻由子(ウィグル・ホンダ)31分36秒835

男子ジュニア(20.4km)
1位 沢田桂太郎(東北高校)30分34秒163
2位 渡辺 歩(学法石川高校)31分38秒821

女子ジュニア(10.2km)
1位 細谷夢菜(浦和工業高校)17分46秒130
オープン 梶原悠未(筑波大坂戸高校)15分47秒624

女子ジュニア・臨時登録(10.2km)
1位 太郎田水桜(東京聖徳大中学校)20分5秒174

パラサイクリングC4(10.2km)
1位 石井雅史(イナーメ信濃山形)16分10秒512

パラサイクリングH4(10.2km)
1位 奥村直彦(JPCF)19分31秒471

text&photo:Satoru.Kato

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