2014年国内レースを振り返る最終編は10月から12月まで。ジャパンカップからさいたまクリテまでの熱狂と怒涛の2週間、力勝負となったおきなわ、そして泥また泥のシクロクロス全日本選手権まで振り返ります。

10月

4kmチームパーシュート 1位の岐阜県(相馬、矢野、橋本、渡邊)4分22秒437 大会新4kmチームパーシュート 1位の岐阜県(相馬、矢野、橋本、渡邊)4分22秒437 大会新 photo:Hideaki TAKAGI国民体育大会長崎大会
今年の国体は長崎県でロードは壱岐、トラックは佐世保競輪場が舞台。しかし台風19号通過のため壱岐でのロードは中止、選手と関係者の移動もあったため、トラックも1日短縮して10月15日から3日間で行われた。その関係でタイムレースは一発決勝に。4kmチームパーシュートは日本の中距離を代表する橋本英也(鹿屋体育大)擁する岐阜県と、窪木一茂(チーム右京)擁する和歌山県が4分22秒台のハイレベルの戦いを演じ、岐阜県が0.5秒ほど速い4分22秒437の大会新記録で優勝。チームスプリントは岡山県が制した。総合では来年に地元国体を控える和歌山県が81点で2位以下を大きく離して優勝。

ジャパンカップ
本戦1週間前のジャパンカップシクロクロスから幕開けの今年。地元の小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロスチーム)と現日本チャンピオンの宮内佐季子(Team CHAINRING)が優勝しジャパンカップウィークが始まる。土曜日のオープンレース男子はロイック・デリアック(キナンAACA)が古賀志林道を越えてから独走逃げ切り優勝。女子は西加南子(LUMINARIA)が通算3勝目を挙げた。

オープン男子 ロイック・デリアック(キナンAACA)が逃げ切り優勝オープン男子 ロイック・デリアック(キナンAACA)が逃げ切り優勝 photo:Hideaki TAKAGIオープン女子 西加南子(LUMINARIA)が最後の上りで抜け出して優勝オープン女子 西加南子(LUMINARIA)が最後の上りで抜け出して優勝 photo:Hideaki TAKAGI

宇都宮駅前のクリテリウムは今年も大勢の観客が埋め尽くした。最後に抜け出したのはクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)。昨年まで2勝のスティール・ヴォンホフ(オーストラリア、ガーミン・シャープ)をわずかタイヤ差で下しての優勝。

クリテリウム優勝のクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ)クリテリウム優勝のクリストファー・サットン(オーストラリア、チームスカイ) photo:Kei TSUJI
ジャパンカップ本戦には今年もチームスカイ、ガーミン・シャープ、ティンコフ・サクソ、トレック、ランプレ、キャノンデールのUCIプロチームが参戦。彼ら主導でラスト2周から動いた戦いは、例年より多い人数で最終局面へ。9人でのゴール勝負をネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)が制し2011年に続いて2回目の勝利。横一線だった2位にエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、チームスカイ)、3位に日本のコンチネンタルチームのグレガ・ボーレ(スロベニア、ヴィーニファンティーニNIPPO)が入った。

僅差のスプリントを制したネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ)僅差のスプリントを制したネイサン・ハース(オーストラリア、ガーミン・シャープ) photo:Kei TSUJI

メインレースのスタートラインに並んだヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)らメインレースのスタートラインに並んだヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ら photo:Kei TSUJIツール・ド・フランスさいたまクリテリウムpresented by ベルーナ

2年目の開催となったさいたまクリテ。今年も世界のスター選手が勢ぞろい。マイヨジョーヌのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)、マイヨヴェールのペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)、マイヨアポワのラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)、さらにクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が参加。日本からはツール出場経験者の新城幸也(ユーロップカー)と別府史之(トレックファクトリーレーシング)、全日本チャンピオンの佐野淳哉(那須ブラーゼン)らが参加。

まさに夢の舞台。各賞の受賞者が表彰台に大集合まさに夢の舞台。各賞の受賞者が表彰台に大集合 photo:Kei TSUJI
引退を発表した盛一大と西谷泰治、清水都貴、宮澤崇史がステージに上がる引退を発表した盛一大と西谷泰治、清水都貴、宮澤崇史がステージに上がる photo:Kei TSUJIほとんどの観客が放送などでしか見ることのできなかったスター選手たちが、目の前で交互にアタックを仕掛け逃げる様に大きな盛り上がりを見せる。さらに新城、別府、佐野、そして引退する宮澤らがアタックして先頭を走ると今度は、ニーバリやマイカ、サガンらが飛び出し熱気は最高潮に。

そしてゴール勝負はマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)が制し、ツールのステージ4勝の貫禄を見せた。また引退を発表した4人、宮澤崇史(ヴィーニファンティーニNIPPO)、清水都貴(ブリヂストンアンカー)、西谷泰治&盛一大(愛三工業レーシング)のセレモニーが行なわれ、惜しみない拍手が送られた。

JR大分駅前を宇都宮ブリッツェンがコントロールする集団がハイスピードで駆け抜けるJR大分駅前を宇都宮ブリッツェンがコントロールする集団がハイスピードで駆け抜ける photo:Hideaki TAKAGIJBCFおおいたいこいの道クリテリウム
3月から始まったJプロツアーも、21戦目のJR大分駅前クリテリウムが最終戦。県庁所在市の中心部という一等地の大分駅前で初めて開催されたクリテリウムには多くの観客が詰め掛けた。前日に年間成績で宇都宮ブリッツェンがチーム総合優勝を決め、この日は終始集団コントロールを見せる。ゴールへ向けてマトリックスパワータグが主導しエドワード・プラデスが優勝。優勝したプラデスは、スペインのプロコンチネンタルチームのカハルーラルで来シーズン走る。年間成績はホセ・ビセンテ(チーム右京)がこの最終戦で個人総合優勝を決めた。

ツール・ド・おきなわ
11月9日に行なわれた国内最終のロードレース、ツール・ド・おきなわ。市民210kmはヤン・インホン(香港、Total Sports)が高岡亮寛(イナーメ・信濃山形)との2人でのスプリントを制し優勝。UCI2クラスの国際210kmは終始分裂と吸収を繰り返す10~20人の先頭集団を、このレースで引退する清水都貴(ブリヂストン・アンカー)が積極的に牽引。

ラスト10km、独走態勢に持ち込む増田成幸(宇都宮ブリッツェン)ラスト10km、独走態勢に持ち込む増田成幸(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki TAKAGI
最後の勝負どころの羽地ダムを上りきったラスト10km地点で増田成幸(宇都宮ブリッツェン)がアタック。もっともきつく、そして向かい風の強い区間でのアタックに誰も反応できず増田は逃げ切って優勝。Jプロツアー後半は年間総合成績重視のチーム方針のため思うような走りができなかった増田。その増田自身で最強の男が誰かを証明した。

野辺山シクロクロス
11月29、30日とUCIレース2連戦となった野辺山クロス。今や冬場の大運動会とも言えるシクロクロス人気。もちろん野辺山ではしっかりとUCIレースがリスペクトされ、全日本選手権に並ぶレベルのコースと運営そして選手が参加するトップレース。2日間ともに招待選手のイタリアU23チャンピオンのジョエーレ・ベルトリーニ(イタリア、セライタリア・グエルチョッティ)が優勝。

1日目男子エリート 泥レースに向かってスタート1日目男子エリート 泥レースに向かってスタート photo:Kei TSUJI2日連続で3位山本和弘、4位に竹之内悠が2日連続で3位山本和弘、4位に竹之内悠が photo:Kei TSUJI
女子も同じくアリーチェマリア・アルツッフィ(イタリア、セライタリア・グエルチョッティ)が連勝。日本人選手では両日ともに山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)が3位、現日本チャンピオンの竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ)が4位に。女子は宮内佐季子(Team CHAINRING)と豊岡英子(パナソニックレディース)が2位3位を2日間で分け合った。

男子U23 バイクを掲げてフィニッシュする横山航太(シマノレーシング)男子U23 バイクを掲げてフィニッシュする横山航太(シマノレーシング) photo:Kei TSUJIシクロクロス全日本選手権
初めて東北地方で行なわれたシクロクロス全日本選手権。粘土質の泥がまとわりつき最も過酷なコンディションで今年のレースは行われた。男子エリートは序盤から竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ)が独走。後続の混戦から門田基志(TEAM GIANT)が上がってくるが竹之内には届かない。

今季好調だった山本和弘(弱虫ペダルシクロクロスチーム)は1周目から20番手ほどまで順位下げる。終盤にかけて小坂光(宇都宮ブリッツェンシクロクロス)が追い上げるもそれも3位まで。竹之内といえども泥の洗礼を受けたが経験でそれをカバー。4連覇を果たした。

男子エリート 観客の声援に応えながらフィニッシュに向かう竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ)男子エリート 観客の声援に応えながらフィニッシュに向かう竹之内悠(ベランクラシック・ドルチーニ) photo:Kei TSUJI
男子ジュニア 優勝を飾った竹内遼(WESTBERG/ProRide)男子ジュニア 優勝を飾った竹内遼(WESTBERG/ProRide) photo:Kei TSUJI女子は序盤こそ豊岡英子(パナソニックレディース)と宮内佐季子(Team CHAINRING)が競り合うが、やがて泥対策の走りを徹底した豊岡がリードを広げる。宮内もディフェンディングチャンピオンの意地で食い下がるがいったんついてしまった30秒の差が縮まらない。毎周回バイクを交換し泥対策を入念に行なった豊岡の経験の差がここで出た。40分後、豊岡が先頭でフィニッシュラインを越え、3年ぶり8度目のチャンピオンに輝いた。

男子U23は横山航太(シマノレーシング)が圧倒。前田公平(BIORACER OFFROAD TEAM)は食い下がり2位に。朝一番の凍結路面で行なわれた男子ジュニアは竹内遼(WESTBERG/ProRide)が制した。

女子 バイクを担いで「忍者返し」をクリアする豊岡英子(パナソニックレディース)女子 バイクを担いで「忍者返し」をクリアする豊岡英子(パナソニックレディース) photo:Kei TSUJI

text:高木秀彰