2014年国内レースを振り返る第2弾は6月から9月まで。なんといっても全日本選手権。TTとロードの各クラスで見られた感動の復活劇。そして真夏の高校生と大学生の頂上決戦。北の大地を駆け巡る9月のツール・ド・北海道まで振り返ります。

6月

個人TT優勝の別府史之(トレックファクトリーレーシング)個人TT優勝の別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Makoto AYANO個人TT優勝の萩原麻由子(Wiggle HONDA)個人TT優勝の萩原麻由子(Wiggle HONDA) photo:Hideaki TAKAGI全日本選手権タイムトライアル
ロードレースと同日程同会場となった今年の個人TT。コースはロードの一部と同じで緩いアップダウンがあり、例年の平坦とは違う。6月27日に行われた男子エリートは別府史之(トレックファクトリーレーシング)が圧倒的な速さを見せて優勝。3度目の2位は佐野淳哉(那須ブラーゼン)。佐野は全体の2/3までは別府と変わらないタイムで、もはや完全復活。3位山本元喜(NIPPO)は22歳、5位岡篤志(EQA U23)は18歳と若手も活躍。男子U23は石橋学(鹿屋体育大)、男子ジュニアは山本大喜(鹿屋体育大)、男子U17は沢田桂太郎(東北高)が優勝。

女子エリートは昨年彗星の如く現れ初優勝した與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)と一昨年まで5連覇していた萩原麻由子(ウィグルホンダ)の走りに注目が集まった。萩原は男子並のフォームでタイムを稼ぎ、終わってみれば與那嶺に50秒もの大差で圧勝しタイトルを取り戻した。女子ジュニアはアジア選ロードでも2位の梶原悠未(筑波大付属坂戸高)が、女子U17は細谷夢菜(浦和工高)が優勝。
表彰台で涙を流した 佐野淳哉(那須ブラーゼン)表彰台で涙を流した 佐野淳哉(那須ブラーゼン) photo:Makoto AYANO
全日本選手権ロードレース
無冠の帝王だった最強の男がついにビッグタイトルを手にした。
6月29日に行われた男子エリートは1周目にできた11人の逃げが数を減らして逃げ切り、佐野淳哉(那須ブラーゼン)が優勝。2度目の2位に井上和郎(ブリヂストンアンカー)、3位にTTでも活躍した山本元喜(NIPPO)が。メイン集団から上がってきた選手の最上位は4位の清水都貴(ブリヂストンアンカー)。別府史之(トレック)はマークされ9位に沈んだ。

佐野は前年にプロコンのヴィーニファンティーニから全日本に出場したが、極度の不調でリタイア一人目。一時は引退も考えたというが今年はクラブチームの那須ブラーゼンへ移籍。心機一転復活を目指し準備してきた。表彰台で男泣きの佐野へ、会場の皆から暖かい拍手が送られた。

歓喜の雄叫びを上げてゴールに飛び込む佐野淳哉(那須ブラーゼン)歓喜の雄叫びを上げてゴールに飛び込む佐野淳哉(那須ブラーゼン) photo:Makoto AYANO
男子U23は徳田鍛造(左)が大会連覇、弟の優は2位に男子U23は徳田鍛造(左)が大会連覇、弟の優は2位に photo:Hideaki TAKAGI男子U23は鹿屋体育大の徳田鍛造が連覇、弟の優と兄弟ワン・ツーフィニッシュを決めた。男子ジュニアは松本祐典がU17以来2年ぶりのタイトル獲得。松本も故障でおよそ2年間思うように走れておらず、復活の勝利。U17は沢田桂太郎(東北高)がTTとのダブルタイトル達成。女子ジュニアは梶原悠未(筑波大付属坂戸高)が同じくTTとのダブルタイトル達成。

女子エリートは昨年覇者の與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)と一昨年まで3連覇した萩原麻由子(ウィグルホンダ)の走りにTT同様注目が集まった。勝負はラスト2周の上り。上りを得意とする與那嶺が仕掛けるとすぐに差が付き30秒以上に。単独で追う萩原は低いフォームで踏み倒し、平坦区間ではその差が広がるのが止まる。

萩原麻由子(Wiggle HONDA)が與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)をかわして優勝萩原麻由子(Wiggle HONDA)が與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)をかわして優勝 photo:Hideaki TAKAGI
ラスト4kmの上り区間で40秒差をつけて先行していた與那嶺。誰の目にも與那嶺の連覇が濃厚と思われたが、萩原もあきらめずに追い上げる。その差はアナウンスされるたびに5秒ずつ縮まっていく。そしてラスト100m、ついに萩原は與那嶺をかわして優勝。前年にダブルタイトルの座を奪われた萩原は、執念でふたたびTTとのダブルタイトルを取り返した。

7月

全日本MTB選手権
7月20日に行われたXCO男子エリートは、最後尾スタートだった武井亨介(チーム・フォルツァ!)が昨年まで6連覇の山本幸平(スペシャライズドレーシングチーム)を破りチャンピオンに。武井は1ヶ月前の全日本ロードでも逃げ集団を積極的に牽引しており、むしろ勝利は予想された結果とも。敗れた山本は5月に鎖骨脱臼と胸骨骨折しており、それ以降完全に調子を戻せていなかったことも影響した。3位には3年連続表彰台の斉藤亮(ブリヂストンアンカー)が入った。

先行した山本幸平(SPECIALIZED RACING TEAM)の後ろから武井亨介(チーム・フォルツァ!)が狙う先行した山本幸平(SPECIALIZED RACING TEAM)の後ろから武井亨介(チーム・フォルツァ!)が狙う photo:So ISOBE武井亨介(チーム・フォルツァ!)が歓喜の表情でゴールに飛び込む武井亨介(チーム・フォルツァ!)が歓喜の表情でゴールに飛び込む photo:So ISOBE

男子U23は沢田時(ブリヂストンアンカー)が連覇達成。女子は昨年2人の優勝者となった與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)と中込由香里(team SY-Nak)、そして前日のDHIで15連覇を決めた末政実緒(Unior Tools LITEC)に注目が集まった。1周目から独走したのは與那嶺。そのまま優勝し、2位争いは中込が制した。

独走で2年連続のU23勝利を飾った沢田時(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)独走で2年連続のU23勝利を飾った沢田時(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) photo:So ISOBE女子エリート優勝の與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)女子エリート優勝の與那嶺恵理(サクソバンクFX証券) photo:So ISOBE

7月19日に行われたDHIは雷雨の影響で滑りやすいマッドコンディションに。男子は4年前に3冠達成のまま一度は引退した安達靖(ダートフリーク/サラセン) が復活の優勝。女子は末政実緒(ダートフリーク/サラセン)が転倒したものの9秒差をつけて前人未踏の15連覇を達成。

優勝した安達靖(ダートフリーク/サラセン)。優勝した安達靖(ダートフリーク/サラセン)。 photo:Hiroyuki NAKAGAWA15連覇達成の末政実緒(ダートフリーク/サラセン)15連覇達成の末政実緒(ダートフリーク/サラセン) photo:Hiroyuki NAKAGAWA

阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が逃げ切り優勝阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)が逃げ切り優勝 photo:Hideaki TAKAGIJBCF湾岸クリテリウム
東京・お台場のシンボルプロムナード公園セントラル広場という絶好のロケーションで7月27日に行なわれた湾岸クリテ。2分に1回巡ってくる選手たちのスピードに、通りかかった人たちも足を止めて観戦。華やかな中で繰り広げられたP1クラスタは、序盤にできた4人の逃げがフィニッシュまで逃げ切るという展開に。阿部嵩之(宇都宮ブリッツェン)がこれを制し、逃げ屋の本領発揮。女子は上野みなみと塚越さくら(JBCF J-Feminin、鹿屋体育大院)がワン・ツー。日本を代表する女子選手2人が別格の強さを見せた。

京都・北桑田高が4分24秒908の大会新で優勝京都・北桑田高が4分24秒908の大会新で優勝 photo:Hideaki TAKAGI8月

全国高校総体自転車競技
高校生頂点の戦いがインターハイ。今年は8月6-9日に山梨県笛吹市で行われた。各校が最も力を入れる4kmチームパーシュートは、京都・北桑田高が4分24秒908の大会新で優勝。草場啓吾、村田瑞季、孫崎大樹、安田開のロードでも活躍するメンバーで大会記録を樹立。チームスプリントは2015年に地元で国体を控える和歌山北高が優勝。またスプリント優勝の太田竜馬(徳島・小松島西)は、予選の200mFTTで10秒596の大会記録を樹立。競輪の道へ進む。

齊藤瞭汰(前橋工)がインターハイロードを制する齊藤瞭汰(前橋工)がインターハイロードを制する photo:Hideaki TAKAGI
笛吹市郊外の公道で行われたロードレース。JCF強化指定選手を中心に激しいアタックが繰り広げられ、最終的に5人のスプリントへ。これを齊藤瞭汰(前橋工)が制し嬉しい全国大会初優勝。学校対抗総合は京都府立北桑田高校が優勝。

全日本大学対抗選手権自転車競技大会
4kmチームパーシュート 1位の中央大、4分10秒347の学連記録更新4kmチームパーシュート 1位の中央大、4分10秒347の学連記録更新 photo:Hideaki TAKAGI大学生頂点の戦いがインカレ。今年は8月28-31日に伊豆修善寺の伊豆ベロドロームと5kmサーキットで行なわれた。インカレとしては初の250m屋内木製バンクでのレース。予想通り好記録が続出した。圧巻は4kmチームパーシュート。決勝は中央大が4分10秒347の学生新記録・大会新記録で優勝。2位鹿屋体育大も4分11秒892とハイレベルな戦いに。トラック7種目のうちほかタンデムスプリントは朝日大が制し、残り5種目はすべて鹿屋体育大が制する圧巻の強さを見せた。

続く最終日のロードレースはまさに鹿屋体育大の独壇場。大会初日にジャパンU23遠征のヨーロッパから帰国するなど、ハードスケジュールの鹿屋体育大メンバーが終盤に先頭へ集結。ここから抜け出した2年生の徳田優が昨年に続いて連覇達成。兄の鍛造は2位で、全日本選手権ロードに続いて兄弟ワン・ツー再び。大学対抗総合成績でも鹿屋体育大は満点の122点に近い110点を獲得し総合連覇達成。以下、中央大49点、日本大45点と続いた。

徳田優(鹿屋体育大)がインカレロード2連覇達成徳田優(鹿屋体育大)がインカレロード2連覇達成 photo:Hideaki TAKAGI
JBCFの個人TT優勝のホセ・ビセンテ(チーム右京)。JBCFの個人TT優勝のホセ・ビセンテ(チーム右京)。 photo:Hideaki TAKAGI9月

JBCFタイムトライアルチャンピオンシップ
9月7日に栃木県渡良瀬遊水地で行なわれた実業団個人TT。全くの平坦コースをホセ・ビセンテ(チーム右京)が平均時速47.9キロで優勝。6秒差でダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカーサイクリング)が、7秒差で佐野淳哉(那須ブラーゼン)が続いた。女子は豊岡英子(パナソニックレディース)が優勝。4月の2度の肘骨折からまだリハビリ中での参戦だったが、JISSでのトレーニングで体力をキープしていたことを示した。

ツール・ド・北海道
北海道第3ステージをコントロールするNIPPOとバジェットフォークリフト。中央右が優勝のプリート北海道第3ステージをコントロールするNIPPOとバジェットフォークリフト。中央右が優勝のプリート photo:Hideaki TAKAGI
個人総合優勝はジョシュア・プリート(チームバジェット・フォークリフト)。2位アレッサンドロ・マラグーティ(ヴィーニファンティーニNIPPO)、3位内間康平(ブリヂストンアンカー)個人総合優勝はジョシュア・プリート(チームバジェット・フォークリフト)。2位アレッサンドロ・マラグーティ(ヴィーニファンティーニNIPPO)、3位内間康平(ブリヂストンアンカー) photo:Hideaki TAKAGI9月13-15日に道東を舞台にした今年のツール・ド・北海道(UCI2.2)。大きな峠は第1ステージのみ。その第1ステージで3人が逃げて大勢が決まった。ステージはアレッサンドロ・マラグーティ(ヴィーニファンティーニNIPPO)が、さらに内間康平(ブリヂストンアンカー)、ジョシュア・プリート(バジェット・フォークリフト)が続いた。4位以下のメイン集団は黒枝士揮らNIPPO勢が上位を占め、NIPPO優勢かと思われた。

しかし第2ステージでプリートを含む逃げが決まりプリートがリーダーに。最終第3ステージでは総合6秒差3位の内間が起死回生の逃げを敢行するがかなわず集団ゴールへ。ここでマラグーティは3位でも逆転優勝できたが、ゴール前50mで先頭を引くチームメイトとまさかの接触、プリートが総合優勝。内間の強さと、一流選手のマラグーティでさえ失敗するレースの怖さが表に出る結果に。

JBCF経済産業大臣旗ロードチャンピオンシップ

内間康平(ブリヂストンアンカー)が優勝。チームも輪翔旗を手に内間康平(ブリヂストンアンカー)が優勝。チームも輪翔旗を手に photo:Hideaki TAKAGI
9月21日に広島県中央森林公園で行われた輪翔旗杯ロード。実業団最高峰の大会であり経済産業省製造産業局車両室の小川祥直室長も会場に足を運んだ。レースは3周目に決まった逃げから抜け出した内間康平(ブリヂストンアンカー)と入部正太朗(シマノレーシング)の一騎打ちに。ゴールスプリントに持ち込まれた勝負は内間に軍配が上がった。5日前のツール・ド・北海道では第3ステージで内間は入部らとともに逃げたが逃げ切りはかなわなかった。「2人で北海道のリベンジを」と逃げ続けた勝負だった。

アジア大会自転車競技
アジア大会オムニアムで金メダルを獲得した橋本英也(鹿屋体育大学)アジア大会オムニアムで金メダルを獲得した橋本英也(鹿屋体育大学) photo:Kenji NAKAMURA4年に一度の大陸別オリンピックであるアジア大会自転車競技が韓国で行なわれた。そのトラック競技のオムニアムで9月22日、橋本英也(鹿屋体育大)が金メダルを獲得。6種目の総合成績で競うオムニアムの5種目終了時点でトップと54ポイント差の8位だった橋本。最終種目で得意のポイントレースで3ラップを決めて大逆転し2ポイント差で優勝。アジアでも差を空けられている中距離種目で本来の強さを見せた。また4kmチームパーシュートでは4分08秒474の日本記録(当時)を出して3位に。メンバーは窪木一茂(和歌山県庁/チーム右京)、一丸尚伍(EQA U23)、近谷涼(日本大)、橋本英也(鹿屋体育大)。

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text:高木秀彰

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