ベルギーを沸かす北のクラシックとアルデンヌクラシックが一段落するといよいよグランツール月間が始まる。悪天候続きのジロ・デ・イタリアまで、4月から5月までのロードシーンを振り返ります。



4月

フランドルの旗が翻る中でのゴールスプリントフランドルの旗が翻る中でのゴールスプリント photo:Tim de Waele

後続を突き放すファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)とセプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキン)後続を突き放すファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)とセプ・ファンマルク(ベルギー、ベルキン) photo:Tim de Waeleベルギーのクラシック熱はロンド・ファン・フラーンデレンで最高潮に。ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)は「オウデクワレモント」で決定的な動きを作りながらも、いつもの独走パターンには持ち込めず。しかし彼が最強であることに変わりなく、4名によるスプリントで3度目の勝利を飾った。

独走でヴェロドロームにフィニッシュするニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)独走でヴェロドロームにフィニッシュするニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Tim de Waeleセミクラシックで勝利を重ねながらもUCIワールドツアーで勝利を逃し続けていたオメガファーマ・クイックステップの努力はパリ〜ルーベでようやく実った。難所「カルフール・ド・ラルブル」を終えて先頭集団は依然として11名。そこから残り6kmでニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)がアタックし、疲労と牽制でペースが上がらない精鋭グループを振り切った。オランダ人によるパリ〜ルーベ制覇は13年ぶり。

スプリントで先行するサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)。初のオーストラリア人覇者となったスプリントで先行するサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)。初のオーストラリア人覇者となった photo:Cor.Vos石畳&平坦系の北のクラシックが終わると、翌週には起伏に富んだアルデンヌクラシックが始まる。アムステル・ゴールドレースでは、最後の勝負どころ「カウベルグ」でアタックを成功させたフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)が独走で自身3度目の優勝を果たす。そして新城幸也(ユーロップカー)がトップ10(アルデンヌクラシックにおける日本人歴代最高位)に入る快挙を成し遂げた。

常に集団前方で走るリーダージャージのアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)常に集団前方で走るリーダージャージのアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei Tsuji最大勾配26%の「ユイの壁」にフィニッシュするフレーシュ・ワロンヌで2006年に続く2度目の勝利を飾ったのはアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)。そして新城幸也と別府史之が顔を揃えた第100回リエージュ〜バストーニュ〜リエージュではサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がオーストラリア人として初優勝を飾ってみせた。

第6ステージ 西谷泰治が優勝し、愛三工業レーシングが4位まで独占第6ステージ 西谷泰治が優勝し、愛三工業レーシングが4位まで独占 photo:Takashi Narushimaコルシカ島を舞台にしたクリテリウム・アンテルナシオナルで優勝したのは、3ヶ月後のツール・ド・フランスで大活躍することになるジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)。

スペインでは ブエルタ・アル・パイスバスコが開催され、新城幸也が第3ステージで6位に入る活躍。トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)が山岳ステージと個人TTで2勝を飾る中、初日の山岳ステージで勝利したアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が最終日まで総合リードを守り切り、3度目の総合優勝を果たした。

トルコを舞台にしたツアー・オブ・ターキーでは新星が登場。山頂フィニッシュを制した21歳のアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)がターコイズブルーのリーダージャージを獲得し、最終日に終着地イスタンブールに凱旋した。平坦ステージではマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)とエリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデール)が激突。それぞれステージ4勝と3勝を飾っている。

日本から4チームが出場したツアー・オブ・タイランドでは日本勢が大活躍。第5ステージでセバスチャン・モラ(スペイン、マトリックスパワータグ)が優勝すると、第6ステージでは愛三工業レーシングの4名が西谷泰治を先頭にワンツースリーフォーフィニッシュ。中島康晴(愛三工業レーシング)が総合優勝に輝いた。



5月

ステルヴィオ峠の頂上に近づくダリオ・カタルド(イタリア、チームスカイ)ステルヴィオ峠の頂上に近づくダリオ・カタルド(イタリア、チームスカイ) photo:Kei Tsuji

観客に覆われたチームプレゼンテーションのステージ観客に覆われたチームプレゼンテーションのステージ photo:Kei Tsuji5月に入ると人々の注目はグランツールに移ろう。ジロ・デ・イタリアの前哨戦ジロ・デル・トレンティーノでカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)が総合優勝。

マリアロッサのナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)がステージ3勝目マリアロッサのナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)がステージ3勝目 photo:Kei Tsuji続くツール・ド・ロマンディではミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)が怒濤のステージ3勝を飾り、最終個人TTでトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)を下したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が2年連続総合優勝に輝いている。

スタートを待つ新城幸也(ユーロップカー)と別府史之(トレックファクトリーレーシング)スタートを待つ新城幸也(ユーロップカー)と別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji雨の北アイルランドで開幕したジロ・デ・イタリアはオリカ・グリーンエッジのチームTT勝利とマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)のスプリント2連勝で幕開ける。しかし休息日を挟んでイタリアに移動するとキッテルは体調不良でリタイアした。

延々とスイッチバックが続くステルヴィオ峠の下り延々とスイッチバックが続くステルヴィオ峠の下り photo:Kei Tsuji新城幸也と別府史之が顔を揃えた3週間の闘いは悪天候続きだった。落車が頻発し、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)らが早々にリタイア。ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)がスプリントで勝利を重ね、マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)がレース序盤に保持したマリアローザはレース中盤にカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)の手に。マイケル・ロジャース(オーストラリア、ティンコフ・サクソ)がモンテゾンコランを含むステージ2勝を飾るなどオーストラリア勢の快進撃が続いた。

ウランとともにフィニッシュするナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)ウランとともにフィニッシュするナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji第12ステージの個人TTで最速タイムをマークしたリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)がマリアローザを獲得すると、レース後半はコロンビア勢が活躍する展開に。雪降りしきるガヴィア峠とステルヴィオ峠を越えるクイーンステージを制したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が総合首位に立ち、山岳個人TTで総合リードを拡大。その登坂力は他の追随を許さず、キンタナがコロンビア人初のジロ制覇を果たした。

日本人選手2人はともに連日アタックに加わったものの決定的な逃げには乗れず。別府史之はジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)のステージ優勝と山岳賞獲得をサポート。新城幸也は相次ぐ落車に見舞われながらも3週間を走り切った。

海外勢の活躍が目立つ結果となったが、新星ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)がステージ優勝&総合3位の活躍でイタリアの面目を保っている。

アメリカ最大のステージレースであるツアー・オブ・カリフォルニアではカヴェンディッシュがスプリント2勝。大会2日目の個人TTで圧勝したブラドレー・ウィギンズ(イギリス、チームスカイ)がリーダージャージを獲得すると、その後の山岳ステージでライバルたちの攻撃を押さえ込んで総合優勝。ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)やテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)らもステージ優勝を掴んだ。

ツール・ド・フランスに向かって加熱する6月から7月にかけてはプレイバックvol.3でお伝えします。