2014年も残すところあと少し。シーズンの総まとめとして海外ロードレースに焦点を合わせて季節毎に振り返る恒例のシリーズ第1弾。初回は1月から3月まで、UCIワールドツアーレースを中心に振り返ります。



1月

盛夏のオーストラリアを舞台にしたツアー・ダウンアンダー盛夏のオーストラリアを舞台にしたツアー・ダウンアンダー photo:Kei Tsuji

エヴァンスを引き離すサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)エヴァンスを引き離すサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Kei TsujiUCIワールドツアー初戦としてすっかり定着したオーストラリアのツアー・ダウンアンダーで2014年シーズンは始動。寒さに震えるヨーロッパを抜け出して、季節が逆の南半球で乗り込みを兼ねたレース出場を行なうのが近年のトレンドだ。UCI(国際自転車競技連合)が推し進める自転車競技の国際化を体現するイベントが増えており、それに伴いロード選手のシーズンは長くなっている。

ツール・ド・サンルイスを制したナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター)ツール・ド・サンルイスを制したナイロ・クインターナ(コロンビア、モビスター) photo:www.toursanluis.com気温40度を超える暑いツアー・ダウンアンダーには新城幸也(ユーロップカー)が出場し、アタックでレースを盛り上げるシーンも。マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)とアンドレ・グライペル(ドイツ、ロット・ベリソル)の二大ジャーマンスプリンターがしのぎを削る中、地元オーストラリア出身のオールラウンダーたちが活躍。第1ステージでサイモン・ゲランス(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、第3ステージでカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)、第5ステージでリッチー・ポート(オーストラリア、チームスカイ)が勝利を収め、僅か1秒差でゲランスが3度目の総合優勝を果たしている。

同じく南半球のアルゼンチンで行なわれたツール・ド・サンルイスでは南米勢の活躍が目立ち、トレックファクトリーレーシングに移籍したばかりのジュリアン・アレドンド(コロンビア)がステージ2勝を飾り、難関山岳フィニッシュを制したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)が総合優勝に輝いた。



2月

砂漠とプロトン、高層ビルのコントラスト砂漠とプロトン、高層ビルのコントラスト photo:Cor Vos

テイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)自らがメイン集団を率いるテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)自らがメイン集団を率いる photo:Tim de Waele2014年に新規開催されたレースと言えばアラブ首長国連邦のドバイツアーが挙げられる。ジロ・デ・イタリア主催者RCSスポルトが手がける中東第3のレースとして産声をあげたレースにはビッグネームが勢揃い。日本からはヴィーニファンティーニ・NIPPOの宮澤崇史と石橋学が出場し、初日の個人TTを制したテイラー・フィニー(アメリカ、BMCレーシング)が初代王者に。残りの3ステージはいずれもキッテルによるスプリント圧勝に終わった。

先頭でフィニッシュラインに姿を現したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)先頭でフィニッシュラインに姿を現したクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele中東の伝統レースツアー・オブ・カタールでは今年もオメガファーマ・クイックステップが大活躍。初日の個人TTを制したニキ・テルプストラ(オランダ)がそのまま総合優勝。さらに王様トム・ボーネン(ベルギー)がスプリント2勝。ステージ3勝、総合優勝、ポイント賞、ヤングライダー賞、チーム総合優勝という結果を残したオメガファーマ・クイックステップ。チームとしては大会3連覇。過去13年間で実に7回大会制覇を果たしている。

ゲンティンハイランド名物の門の前を通過するミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)ゲンティンハイランド名物の門の前を通過するミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル) photo:Kei Tsujiドバイやカタールと比べて山がちなコースで行なわれたツアー・オブ・オマーンにはグランツールレーサーが挙って出場。グライペルやペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)がシーズン序盤から好調ぶりを見せる中、クイーンステージでライバルを蹴散らしたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が大会連覇を達成した。

ヨーロッパではツール・メディテラネアンブエルタ・ア・アンダルシアが開催され、別府史之(トレックファクトリーレーシング)もシーズンイン。アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)がアンダルシア3連覇でシーズンをスタートさせた。

マレーシアではティンコフ・サクソやオリカ・グリーンエッジ、ベルキン、そして愛三工業レーシングが出場するツール・ド・ランカウイが開催。テオ・ボス(オランダ、ベルキン)がスプリント4勝、アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)がスプリント2勝を飾り、最終ステージで西谷泰治(愛三工業レーシング)が4位に絡む。総合優勝を飾ったのは名物ゲンティンハイランドで圧勝したミルサマ・ポルセイェディゴラコール(イラン、タブリスペトロケミカル)だった。




3月

丘陵地帯を縫うストラーデ・ビアンケを走るプロトン丘陵地帯を縫うストラーデ・ビアンケを走るプロトン photo:Cor.Vos

チームメイトに守られて走るマイヨジョーヌのカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)チームメイトに守られて走るマイヨジョーヌのカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waele3月に入るといよいよヨーロッパでもロードシーズンが本格始動。未舗装路を走るストラーデビアンケではミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)が、コロッセオ前にフィニッシュするローママキシマではアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が勝利。

「ムーロ・ディ・グアルディアグレーレ」を先頭で登るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)「ムーロ・ディ・グアルディアグレーレ」を先頭で登るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:RCS Sportパリ〜ニースではカルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)とトムイェルテ・スラグテル(オランダ、ガーミン・シャープ)がそれぞれ2勝ずつ飾り、ゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)やルイ・コスタ(ポルトガル、ランプレ・メリダ)と総合争いを繰り広げたベタンクールが南米勢初の総合優勝を飾っている。

ゴールスプリントを制したアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)ゴールスプリントを制したアレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ) photo:Cor Vos新城幸也も出場したティレーノ〜アドリアティコには豪華オールラウンダー陣が集結。グランツールを見据えるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が本格山頂フィニッシュ最大30%の「壁」で連勝を飾って総合優勝を果たした。

ヘント〜ウェベルヘムを制したジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)ヘント〜ウェベルヘムを制したジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ) photo:Tim de Waele「プリマヴェーラ」ことミラノ〜サンレモは雨の中の集団スプリントに持ち込まれ、アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)が勝利。最終的にシーズン14勝を飾るクリストフの怒濤の活躍はここから始まった。

別府史之出場のボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ1級山頂フィニッシュを制したホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)が、超級制覇のティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)やコンタドールらを振り切って地元カタルーニャで2度目の総合優勝。

ベルギーではオンループ・ヘットニュースブラッドクールネ〜ブリュッセル〜クールネを皮切りにクラシックシーズンが始動。続くドワーズ・ドア・フラーンデレンを含めて、セミクラシックではオメガファーマ・クイックステップのチーム力が目立つ結果に。UCIワールドツアーに組み込まれたE3ハレルベークヘント〜ウェベルヘムではそれぞれペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)とジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)がそれぞれ勝利を掴んだ。

おとなり台湾で行なわれたツール・ド・台湾には日本ナショナルチームが出場し、宮澤崇史が連日スプリントで上位に。第2ステージで逃げた内間康平が総合9位とアジアンリーダー賞を獲得している。

4月のクラシックシーズン以降の模様はvol.2で!




text:Kei Tsuji