若手選手育成チームとしてベルギーを拠点に活動するチームユーラシア・IRCタイヤ。この1年、そして2010年の結成当時からここまでの道のりを橋川健監督の言葉で振り返る。



4月に行われた2日間のステージレース「トィーダークセバン ハーベルストレクト」出走前。写真左から金井誠人、雨乞竜己、中里仁、清水孝将、吉岡直哉、野島遊4月に行われた2日間のステージレース「トィーダークセバン ハーベルストレクト」出走前。写真左から金井誠人、雨乞竜己、中里仁、清水孝将、吉岡直哉、野島遊 (c)ken.Hashikawa
2014シーズンは全59レースに参戦
大学入学を目前に控えた安田京介(京都産業大学)がチームユーラシアの遠征に参加。リタイヤが続いたが1レースだけ完走を果たした大学入学を目前に控えた安田京介(京都産業大学)がチームユーラシアの遠征に参加。リタイヤが続いたが1レースだけ完走を果たした (c)ken.Hashikawaユーラシア‐IRCタイヤにとっての2014年は、これまでチームのメンバーとして成長した選手の多くが抜けたシーズンとなった。チームにとって、選手が抜けてしまうことは強いチームを作る上で「大打撃」に違いないが、選手達がステップアップし、コンチネンタルチーム等へ加入し、プロとして自転車レースで生活していけるのであれば、それはとても望ましいことである。

連日の疲れを見せずに夕食の準備をおこなう選手達。初対面のメンバーが集まるチームで合宿と言う非日常生活を送ることは、選手達にとってコミュニケーションを高めるチャンスとなる連日の疲れを見せずに夕食の準備をおこなう選手達。初対面のメンバーが集まるチームで合宿と言う非日常生活を送ることは、選手達にとってコミュニケーションを高めるチャンスとなる (c)ken.Hashikawaベルギーのトップアマチュアカテゴリーの2日間のステージレースに参戦。初日スタート後1時間で野島、清水、金井、吉岡の4名が遅れ、2時間で中里、雨乞も遅れたベルギーのトップアマチュアカテゴリーの2日間のステージレースに参戦。初日スタート後1時間で野島、清水、金井、吉岡の4名が遅れ、2時間で中里、雨乞も遅れた (c)ken.Hashikawa今年は3月9日から9月23日までの期間に全59レースに参戦。この数字のなかには4つのステージレース、プロと混走するUCIレースが2つ含まれている。スポンサー各社と大会関係者の皆様の協力を得て、これらの充実したプログラムを組む事ができたことに感謝しています。以下、チームの1年を時系列で振り返ります。

3月 シーズン開幕
3月、イクテヘムのレースにおいてベルギーレースの開幕を迎える。京都産業大学に進学予定の高校3年生、安田京介、明治大学の金井誠人も参戦。しかし全員がリタイヤとなった。

選手たちにはレース前に「気負いもあるだろうが、シーズンは長い。先ずは落車だけは避ける。そしてできたら完走すればそれでよい」と伝えたが、残念なことに吉岡が落車してしまった。大学入学を目前に控えた安田京介(京都産業大学)がチームユーラシアの遠征に参加。リタイヤが続いたが1レースだけ完走を果たした。

3月27-30日 合宿+レース
連日の疲れを見せずに夕食の準備をおこなう選手達。初対面のメンバーが集まるチームで合宿と言う非日常生活を送ることは、選手達にとってコミュニケーションを高めるチャンスとなる。

4月 トィーダークセ バン ハーベルストレクト
ベルギーのトップアマチュアカテゴリーの2日間のステージレースに参戦。初日スタート後1時間で野島、清水、金井、吉岡の4名が遅れ、2時間で中里、雨乞も遅れた。初日を完走したのは中里の1名のみ。中里は2日目も最後尾集団となったが完走した。若い選手達にとって厳しい現実を突きつけられた。

練習メニューの組み立て方とその理論について勉強。本当はもっとこのような学習する時間を設けたいのだが、橋川にその余裕が無い(冷汗...)練習メニューの組み立て方とその理論について勉強。本当はもっとこのような学習する時間を設けたいのだが、橋川にその余裕が無い(冷汗...) (c)ken.Hashikawa
写真左から吉岡直哉、小石祐馬、大場政登志、中里仁。この大会ではCプロジェクトから大場政登志、ナショナルチームからは小石 祐馬が参加した写真左から吉岡直哉、小石祐馬、大場政登志、中里仁。この大会ではCプロジェクトから大場政登志、ナショナルチームからは小石 祐馬が参加した (c)ken.Hashikawa5月 ツール・ド・熊野
チームのスポンサーでもあるキナンのチームメンバーとして吉岡、中里が参戦。2名ともリタイヤに終わる。まだまだ実力不足を感じた。また、Cプロジェクトから大場政登志、ナショナルチームから小石祐馬が参加した。他にチームユーラシア出身の選手は愛三からは小森亮平、中根英登が参加。中根が個人総合成績で4位に入っている。

7月 GPペランシエ
今期初めてのUCI1.2レース。難易度の高い石畳が5回ある。事前に試走を行い、IRCの25Cのチューブレスタイヤのセッティングやライン取りなどを確認。レースでは雨乞が104位で完走した。

UCI1.2レースの「GPペランシエ」。難易度の高い石畳が5回あったUCI1.2レースの「GPペランシエ」。難易度の高い石畳が5回あった (c)ken.Hashikawa

写真左から 中井路雅(京都産業大学)、中里仁、鈴木 龍(明治学院大学)、ジェームス・スプラッグ(イギリス)、雨乞竜己、吉岡直哉写真左から 中井路雅(京都産業大学)、中里仁、鈴木 龍(明治学院大学)、ジェームス・スプラッグ(イギリス)、雨乞竜己、吉岡直哉 (c)ken.Hashikawa8月 ツール・ド・ナミュール
この5日間のツアーもベルギーのトップアマチュアカテゴリーに属し、ベルギーのコンチネンタルチーム7チームに加え、ロット・ベリソルやオメガファーマ・クイックステップのサテライトチームなどが参戦することでレベルが高い。明治学院大学の鈴木龍、京都産業大学から中井路雅が遠征に加わった。鈴木は結果は残せなかったが、登坂力に加え集団の位置取りを行うためのスピードとセンスなど、欧州でのキャリアが無い選手の中では高い資質をみせてくれた。

レース中に破壊したリアエンド。しかしこれを何とか修理してレースを続けなくてはならなかったレース中に破壊したリアエンド。しかしこれを何とか修理してレースを続けなくてはならなかった (c)ken.Hashikawaゲストライダーとして加わったジェームスが初日メカトラを起こし、リアエンド及びリアメカを破損させてしまった。幸いチームバイクのMUURで使うスペアエンドの形状が一部適合したので、ヤスリで形状を合わせながら乗れる状態に戻した。全てを用意できるプロチームであれば話は別だが、限られた予算、機材、人員の中で行うアマチュアの活動は様々な事を予測し、対応しなくてはならない

ツール・ド・ギアナではスタッフ全員にベルギー人を採用した。選手には英語力が問われるツール・ド・ギアナではスタッフ全員にベルギー人を採用した。選手には英語力が問われる (c)ken.Hashikawaツール・ド・ギアナ第2ステージA で区間優勝したジェームス・スプラッグツール・ド・ギアナ第2ステージA で区間優勝したジェームス・スプラッグ (c)ken.Hashikawaシーズンの総括
今年のチームはゲストで参加したイギリス人選手スプラッグがツール・ド・ギアナで区間優勝するなど、成績は残すことができたことで大会関係者からは一定の評価をいただいたが、肝心の日本選手の成績は雨乞竜己の10位が最高位。数字だけを見れば悪くはないが、チーム全体のレースの内容と成績を見た場合「このままではいけない」という危機感を私も感じている。


チーム発足当時は欧州を拠点とした日本人のための若手育成チームが存在していなかったが、現在ではナショナルチームの活動、他クラブ等いくつかのチームが欧州での活動を行っています。他チームの動向も踏まえ、新たな形態を模索しながら活動して行きます。

2015シーズンについて
・現在チームユーラシアが有する欧州での拠点を他クラブ、大学などとコラボしな がらより才能のある選手にチャンスが与えられる環境を作っていきます。
・夏休み等を利用したユース(U17 及び U19)の欧州遠征のサポートを行います。
・橋川が来期ベルギーを拠点とするコンチネンタルチーム「チームチャンピオンシステム」の現場で指揮を取ることで、ユース、U23の選手たちが直接的に欧州コンチネンタルチームレベルを意識し、流れとしてU17~U19~U23~エリート~欧州コンチネンタルチーム~プロコンチンネンタルチーム(NIPPOヴィーニファンティーニ)と、一貫した育成を行える体制を関係者の方たちと協力しながら整えて行きたい。 来年に成果が出るとは思っていないし、U17の選手がプロコンチレベルに到達するまで10年くらいはかかると思っているが、毎年修正しながら現実と理想をすり合わせていこうと思う。



参考記事
チームユーラシアの生い立ち 〜2010年チーム創設から2013年までの活動を振り返る〜


2010年のチームユーラシア設立時のメンバー 左から中山卓士、伊藤翼、外勢健一郎、中根英登、榊原健一、中村玄太、竹之内悠。チームアドバイザーのヨハン・ムセーウ氏2010年のチームユーラシア設立時のメンバー 左から中山卓士、伊藤翼、外勢健一郎、中根英登、榊原健一、中村玄太、竹之内悠。チームアドバイザーのヨハン・ムセーウ氏 (c)ken.Hashikawa2010年、株式会社NIPPOがサポートするアマチュアチームとしてチームユーラシアが発足。イタリアを拠点にコンチネンタルチームとして活動していた「Team NIPPO」の育成チームという位置づけで、U23の選手を中心に選手が招集された。

この設立当時のメンバーは、中山卓士、伊藤翼、外勢健一郎、中根英登、榊原健一、中村玄太、竹之内悠。ヨハン・ムセーウ氏がチームアドバイザーを引き受けてくれた。当時のメンバーは、現在、竹之内悠がベルギーのコンチネンタルチーム「ベランクラシック‐ドルティーニ」で、中根英登が愛三工業レーシングで活躍している。

竹之内悠はU23の4年目、21歳。欧州活動1年目にして9位入賞。レース展開に加わりながら入賞することは、集団でのスプリントで入賞すること以上の評価。もちろんスプリントに備えて、考え・走ることはとても重要だが、彼らのような経験の浅い選手達にはもっと学ぶべきことがたくさんある。仮にそのままプロで通用するだけのトップスピードと持久力が備わったとしても、スプリントになった時に集団に残っていなくてはならない。先ずは集団にきちんと残るための学習だ。

ベルギーで2勝を挙げた竹之内悠。7月のバンブラハよりベルギーで2勝を挙げた竹之内悠。7月のバンブラハより (c)ken.Hashikawa左から中山卓士、竹之内悠、大場政登志。欧州2年目の竹之内はベルギーのクラブチームに在籍していた左から中山卓士、竹之内悠、大場政登志。欧州2年目の竹之内はベルギーのクラブチームに在籍していた (c)ken.Hashikawa


2011年には朝日大学を卒業した大場政登志が加入。大学時代はトラック競技を専門(主に1000mと団体追い抜き)にしていたが、そのスピードを活かせるようになるまでには「高い集団密度の中でのハンドリングスキル」や「集団の中でラインを見極める能力」など多くの課題を残したままシーズンを終えた。欧州2年目の竹之内は当時ベルギーのクラブチームに在籍していた。選手を自立させることも育成チームの役割である。

2014シーズンよりヴィニファンティーニ‐NIPPOに所属した小石祐馬。写真はウェストフランドル3日間レースより2014シーズンよりヴィニファンティーニ‐NIPPOに所属した小石祐馬。写真はウェストフランドル3日間レースより (c)ken.Hashikawa2012年には竹之内、大場に加え、高校を新卒した小石祐馬が加入。竹之内がアマチュアレースで2勝し、ヨーロッパーツアーで入賞した数少ない日本人のなかの一人となった。竹之内の活躍に引っ張られるように、大場、小石が成長していったのはとても良い流れがあったと思う。最終的に大場は9月13日に行われたベルギーのアマチュアレース「ウェストケルケ」において2位入賞。自ら動いてレースの流れをつくり入賞したことは高く評価できるレース展開だった。

翌シーズン、大場は日本のコンチネンタルチーム「キャノンデール・チャンピオンシステム」に移籍。全日本選手権個人タイムトライアルで優勝し、全日本チャンピオンとなっている。

2013年よりメインスポンサーがIRCタイヤ(井上ゴム工業株式会社)となった。竹之内と大場は抜けてしまったが、小森亮平がチームを引っ張ってくれた。欧州レースでの小石の活躍は日本のレース関係者には目に留まるものはなかったが、大門宏氏(ヴィーニファンティーニNIPPOデローザのゼネラルマネジャー)により抜擢され、2014シーズンから同チームに加入。拠点をイタリアに移して活動している。U23の3年目の選手としては出世したが、その期待に応えツール・ド・コリア第5ステージで区間4位に入賞し、UCIポイントも獲得している。



次回は2015シーズンの展望と活動予定についてレポートします。 今後もチームへのご声援をよろしくお願いします。

橋川 健 (Team Eurasia- IRC Tire監督)

チームビデオ on Youtube
チームのFacebookページ
チームユーラシアIRCタイヤ公式ブログ

最新ニュース(全ジャンル)