9月28日、埼玉県秩父市で開催された伝統の公道レース「秩父宮杯」。秋晴れの下行われたレースをレポートする。今年は過去最多の572名がエントリーし、各カテゴリーで熱戦を繰り広げた。



久喜秩父市長らを先頭に、秩父市内をパレード久喜秩父市長らを先頭に、秩父市内をパレード photo:Satoru.Kato
コースをパレード走行する集団コースをパレード走行する集団 photo:Satoru.Kato関東圏のレーサーには通称「宮杯(みやはい)」として知られるこの大会は、昭和28年(1953年)に第1回大会が開催されて以来、今年で62回目となる伝統ある大会。「スポーツの宮様」として親しまれた「秩父宮雍仁(やすひと)親王」の秩父宮家より授かった秩父宮杯をかけて、埼玉県内で開催され続けている。

一般男子 集団の先頭を引く高岡亮寛(イナーメ信濃山形)一般男子 集団の先頭を引く高岡亮寛(イナーメ信濃山形) photo:Satoru.Kato秩父宮家とゆかりのある秩父市での開催となって今年で7年目。今年は9つのクラスにこれまでで最多の572名がエントリーした。秩父宮杯は団体戦がある事も伝統となっており、一般男子と高校生のクラスでは、1チーム3人の順位ポイントの合計で争う。

一般男子 1周目 集団に10秒差をつけて独走する相川将(シクロクラブ)一般男子 1周目 集団に10秒差をつけて独走する相川将(シクロクラブ) photo:Satoru.Katoコースは秩父市内の公道を使用した1周10.8kmで、高低差は約100m。スタート直後から3km地点のコース最高点まで8%前後の登りが続き、その後2/3は平坦基調。1km以上ある長いストレートもあり、集団の視界から消えるような逃げは難しい。一般男子、高校生など4つのクラスは、秩父駅前からパレードスタート。周回コースのコントロールラインを越えたところでリアルスタートが切られた。

一般男子 最終周回に再構成された4人の逃げ集団一般男子 最終周回に再構成された4人の逃げ集団 photo:Satoru.Kato一般男子 吸収直前に飛び出した浦佑樹が優勝

最上位カテゴリーとなる一般男子には90人がエントリーし、パレード+6周の75.3kmで争われた。

リアルスタート直後からペースが上がり、集団が縦長に引き伸ばされる。1周目終了直前、相川将(シクロクラブ)が集団に10秒差をつけて飛び出すものの、すぐに吸収。この動きをきっかけに5、6人が抜けだしを図るが、2周目の登り区間までにひとつの集団にまとまる。

集団の前方では、高岡亮寛(イナーメ信濃山形)や、金子智哉(早稲田大学)らの動きが目立つ。レース前半では高岡が登り区間でペースアップを図るような動きが見られ、メイン集団はジワジワと人数を減らしていく。しかし勝負を決定付けるような動きが生まれないまま、レースは後半へと入る。

残り2周、平坦区間で相川が再度アタック。これに杉野元基と渡邊雄太(共に駒澤大学)の2人が追いつき、3人の逃げ集団が形成される。メイン集団との差はこの日最大の30秒まで広がり、3人はそのまま最終周回に突入する。

このまま逃げ切りかと思われたが、登り区間で集団が一気に差を詰めて10秒以内に迫る。そこから高岡と浦佑樹(東京大学自転車部競技班)がブリッジをかけて先行する3人に合流。杉野が遅れ、新たに4人の逃げ集団が形成される。メイン集団との差は10秒。

残り2km、逃げる4人の直後に集団がジリジリと迫る。残り1kmを過ぎてメイン集団に吸収される直前、浦がロングスパート。残り30mで後ろを確認すると勝利を確信し、ガッツポーズを決めてゴールした。

一般男子 ロングスプリントを決めた浦 佑樹(東京大学自転車部競技班)が優勝一般男子 ロングスプリントを決めた浦 佑樹(東京大学自転車部競技班)が優勝 photo:Satoru.Kato
浦は「秩父宮杯は初めて。平坦の巡航が得意なので、このコースは自分好み。最後に飛び出した時は後ろが迫ってくるのが見えていたけど、なんとかなるかなと思った。9月はあまり調子が良くなかったので、ここでの優勝は自信になると思う。」とコメントした。

一般男子 結果
1位 浦 佑樹 (東京大学自転車部競技班) 2時間01分37秒
2位 高木三千成 (立教大学自転車競技部)
3位 河合宏樹 (オッティモ) 
4位 鬼塚志洋 (チバポンズ川口農園)
5位 高岡亮寛 (イナーメ信濃山形) +01秒
6位 相川 将 (シクロクラブ)
7位 塩田航平 (早稲田大学)
8位 半澤雄高 (LinkTOHOKU) +05秒
9位 生駒淳平 (大福屋)
10位 杉野元基 (駒澤大学)

一般男子団体戦 結果
1位 早稲田大学
2位 駒澤大学
3位 エスペランススタージュ



高校生 浦和工業高校の1年生がワン・ツー

高校生 中川涼(浦和工業高校)を先頭にピークを通過する先頭集団高校生 中川涼(浦和工業高校)を先頭にピークを通過する先頭集団 photo:Satoru.Katoパレード+3周の42.9kmで争われた高校生のクラスは、2周目の時点で15人が先頭集団に残る。2分前にスタートした一般男子を追い越すほどの速いスピードでレースは展開。その中心はオレンジ色のジャージを着た浦和工業高校1年生の中川涼と渡辺慶太の2人だった。

高校生 最終周回 登りでアタックする鴨澤滉人(栄北高校)高校生 最終周回 登りでアタックする鴨澤滉人(栄北高校) photo:Satoru.Kato最後の登り区間で鴨澤滉人(栄北高校)がアタック。中川を先頭に集団が追いかけ、下り区間で鴨澤を吸収する。この動きで先頭集団は分断され、鴨澤、中川、渡辺、川田竜也(浦和工業高校)、大田尚之(中野立志館高校)、隅園郷史(チーム・Y)の6人が先行する。残り1kmを過ぎて後続が追いつくものの、中川と渡辺の2人が先行。最後は浦和工業高校同士のスプリント勝負を中川が制した。

高校生 浦和工業高校同士のスプリント勝負を、中川涼が制する高校生 浦和工業高校同士のスプリント勝負を、中川涼が制する photo:Satoru.Kato中川涼は「最終周回に渡辺と2人で抜け出した時はそのまま行きたかったけど、行けなかった。最後はスプリントになったので、勝てるかどうかわからなかった。昨年は中学生の部で出場したけど、高校生になって勝てたのは嬉しい。来年も挑戦します。」と語った。

高校生 結果
1位 中川 涼 (浦和工業高校) 1時間08分41秒
2位 渡辺慶太 (浦和工業高校)
3位 鴨澤滉人 (栄北高校)
4位 隅園郷史 (チームY) +01秒
5位 納家一樹 (八王子桑志高校) +02秒
6位 門田祐輔 (美原高校)
7位 大田尚之 (中野立志館高校) +03秒
8位 川田竜也 (浦和工業高校)
9位 鳴海 颯 (成城高校)
10位 安彦統我 (川越工業高校) +05秒

高校生団体戦 結果
1位 浦和工業高校A
2位 栄北高校A
3位 八王子桑志高校



市民レーサーA 清水政人(FITTE)が優勝市民レーサーA 清水政人(FITTE)が優勝 photo:Satoru.Katoその他結果
市民レーサーA (42.9km)
1位 清水政人 (FITTE) 1時間10分11秒 
2位 浅野克朗 (自転車警ら隊)
3位 福吉紳悟 (RT UN O)
4位 井上善裕 (INOUE RACING CYCLE) +02秒
5位 中村 稔 (TEAMGIRO)
6位 石塚将人 +8秒

マスターズ 須藤大輔(VOLCAオードビーBOMA)が優勝マスターズ 須藤大輔(VOLCAオードビーBOMA)が優勝 photo:Satoru.Kato市民レーサーB (42.9km)
1位 松澤卓也  1時間11分32秒
2位 島崎一也 (シャークアイランド) 
3位 大島尚紀 (Boom Boom Cycling)
4位 福島健一 (Caid Cycling Club) +01秒
5位 杉山克憲 (S M bros.)
6位 田中良典  +02秒

市民レーサーC (21.6km)
1位 村田幸希  33分53秒
2位 川野智行 (チームBOSCH)
3位 重田一義 (スズパシゲパワー)
4位 清水祐介 (Zero to TOP) +01秒
5位 林健太郎 (MKⅢ)
6位 谷口 涼  

マスターズ (21.6km)
1位 須藤大輔 (VOLCAオードビーBOMA) 34分32秒
2位 須藤 拓 (レーシングチームUNOレーシンググループ)
3位 松村 悟 (パインヒルズ90)
4位 金子和浩 (Blue Grass)
5位 坂手潤一 (BOUNCE) +30秒
6位 鈴木克明 (チーム・Y)

女子 細谷夢菜(浦和工業高校)が逃げ切り勝ち女子 細谷夢菜(浦和工業高校)が逃げ切り勝ち photo:Satoru.Kato市民レーサーマスターズ(21.6km)
1位 元吉剰人 (Team Splash) 34分55秒
2位 木口勝海 (Team ARI)  +1分01秒
3位 安部秀之 (Honda栃木) +1分04秒
4位 高橋信宏 (Team APEX) +1分08秒
5位 山崎俊太郎 (UGOレーシング)
6位 吉野 実   +1分09秒

中学生 江見俊輔(中央区銀座中学校・チームオーベスト)が優勝中学生 江見俊輔(中央区銀座中学校・チームオーベスト)が優勝 photo:Satoru.Kato女子(10.8km)
1位 細谷夢菜 (浦和工業高校) 18分31秒
2位 岡本二菜 (スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ) +16秒
3位 番場しおり (シャークアイランド) +17秒
4位 小沼美由紀 (Ready Go JAPAN)
5位 島崎典子 (シャークアイランド)
6位 高橋吹歌 (さいたま市立木崎中学校)

中学生(10.8km)
1位 江見俊輔 (中央区銀座中学校・チームオーベスト) 17分42秒
2位 石倉悠之介 (ブランシュ・レーシングチーム) +03秒
3位 田原一機 (東京都立大泉高校付属中学校) +26秒
4位 檜村奏太 ( スミタ・エイダイ・パールイズミ・ラバネロ) +33秒
5位 上野颯斗 (F(t)麒麟山レーシング) +38秒
6位 有田龍平 +1分23秒

text&photo:Satoru.Kato