8月26日~8月30日の5日間に渡って、ドイツ南部のフリードリヒスハーフェンにて開催された世界最大規模のサイクルショー「ユーロバイク」。現地取材で見えてきた今年のトレンドや傾向、注目のプロダクトをダイジェストでレポートします。(ユーロバイク2014の記事インデックスはこちらから)



ユーロバイクが開催されるメッセ・フリードリヒスハーフェンユーロバイクが開催されるメッセ・フリードリヒスハーフェン バイクやパーツを見定めるバイヤーやプレス関係者の目は厳しいバイクやパーツを見定めるバイヤーやプレス関係者の目は厳しい

一際賑わいを魅せていたガーミンのブース一際賑わいを魅せていたガーミンのブース
国内では緩やかに成長を続けるスポーツサイクル市場。その傾向は世界的にも同様で、サイクルビジネスの勢いを表す指標の1つとされるユーロバイクの出展者数及び来場者数は、24回目の開催となる今年も着実な増加を見せた。

まずはブースから解説していくと54カ国の企業が一堂に会し、昨年比で約120社増となる1320社がブースを構えた。一部の大手メーカーの姿こそ無かったものの、それでも世界中に存在するサイクルブランドのほぼ全てが集まったといっても過言ではないだろう。

メーカー向けブースでは有名ブランドの関係者が商談している光景が多く見られたメーカー向けブースでは有名ブランドの関係者が商談している光景が多く見られた 意外にもメーカー向けの出展が多い。写真はインナーパッド専門メーカーのブース意外にもメーカー向けの出展が多い。写真はインナーパッド専門メーカーのブース

台湾からは主に素材系のメーカーが多く出展台湾からは主に素材系のメーカーが多く出展 これらのパーツは大手メーカーの完成品に組み込まれたり、ブランドロゴを付けられエンドユーザーの手に渡るこれらのパーツは大手メーカーの完成品に組み込まれたり、ブランドロゴを付けられエンドユーザーの手に渡る


また、ユーロバイクの華やかなイメージとは少し離れた材料/素材系の企業やOEMメーカーも少なくなく、その様子はアジア最大規模と言われる台北サイクルショーと近しい雰囲気。台湾系企業が集結したホールでは油圧成型されただけのアルミパイプやロゴなしのカーボンリムなどが、アパレル系企業の集合していたホールではWINDTEXを始めとした高機能ウェア用生地がずらり。もちろん、それらのブースでは有名ブランドの関係者が商談する姿が頻繁に見られた。正に自転車業界の産業構造を垣間見ることのできる瞬間である。

一方の来場者は、メインとなるビジネス向けの最初の3日間が昨年比1,100人増の46,300人を数えた。同時にビジネスショー翌日の一般公開日の来場者も約1,000人増の21,100人に。来場者数もさることながら、会場を見回して見れば、自転車とは縁のなさそうなターバンを巻いた中東系の関係者が来場していたりと、自転車ビジネスは更にその勢いと範囲を加速させているのだ。ちなみに、シクロワイアードを始めとした取材に来た各国のジャーナリストも46カ国より1,852人とこちらも昨年より増えており、ユーロバイクの重要度が高まっていることを物語っている。



世界のプロダクトトレンドはE-Bike、ファットバイク、MTBの27.5インチ化、ディスクBRロード…

高級ホイールでお馴染みのライトウェイトが制作したプロトタイプのE-Bike。20kgを越えるバイクも多い中で15.6kgを実現高級ホイールでお馴染みのライトウェイトが制作したプロトタイプのE-Bike。20kgを越えるバイクも多い中で15.6kgを実現
パナソニックはバイク本体ではなくバッテリーやモーターなどのパーツサプライヤーとしてE-Bike市場に参入パナソニックはバイク本体ではなくバッテリーやモーターなどのパーツサプライヤーとしてE-Bike市場に参入 これまでのスポーツバイクに馴染みの無かった層を狙ったスタイリッシュなデザインのE-Bikeも多いこれまでのスポーツバイクに馴染みの無かった層を狙ったスタイリッシュなデザインのE-Bikeも多い


前置きが長くなったが、ここからはユーロバイクに集まった無数のプロダクトの中から主だったトレンドをピックアップしていきたい。まず取り上げたいのがE-Bike、つまり電動アシスト付きのスポーツバイクだ。日本では道路交通法の関係から全くもって馴染みの無いジャンルの1つだが、実用車が主流の国内と市場規模を比較するとEU加盟国全体で台数はほぼ同等、金額ベースでは2倍ほど。ユーロバイクでは今年からはE-Bikeのみを集めたゾーンが新設された。

E-Bikeとは一口に言っても、ツーリングモデルからフルサス仕様の本格MTB、果てはロードバイクとそのベースとなる車両は多種多様。ブランドについてもジャイアントやスコット、キャノンデール、キューブなど有名どころから、日本では全く聞いたこともない専業ブランドまで実に様々だ。

ユーロバイクアワードを受賞したキューブのフルカーボンMTBベースのE-Bikeユーロバイクアワードを受賞したキューブのフルカーボンMTBベースのE-Bike バッテリーをダウンチューブに搭載するバイクが多い。充電コネクタは統一規格を定められているバッテリーをダウンチューブに搭載するバイクが多い。充電コネクタは統一規格を定められている

モーターなどの駆動パーツで市場を独占しているボッシュモーターなどの駆動パーツで市場を独占しているボッシュ XCやオールマウンテンを問わず本格的なMTBをベースとしたE-Bikeが人気XCやオールマウンテンを問わず本格的なMTBをベースとしたE-Bikeが人気


モーターとバッテリー、制御ユニットについてはドイツのBOSCH(ボッシュ)社が多くのシェアを獲得している。しかしながら、この状況がビジネスチャンスという見方も多く、日本からはパナソニックや日本電産コパルがユーロバイクにブース出展。また、タイヤでお馴染みのコンチネンタルなど異業種からの参入も決して少なくはない。

昨年来のファットバイク人気は今年も健在で、サルサなどがフルサスモデルを発表したり、ボッテキアやコッピなどの伝統的な欧州ブランドがリリースするなどその勢いは留まるところを知らない。その一因としてはロックショックスの専用サスペンション、シュワルベやケンダといった大手タイヤメーカーの専用モデル、HEDのカーボンリムなどパーツが充実してきたことにより、より楽しめる要素が広がったことが挙げられる。

HEDはフルカーボン製ファットバイク用リムをリリースHEDはフルカーボン製ファットバイク用リムをリリース キャニオンはフルカーボン製のレーシーなファットバイクをリリース。リムの肉抜きといいかなり本気だキャニオンはフルカーボン製のレーシーなファットバイクをリリース。リムの肉抜きといいかなり本気だ

ロックショックスが専用サスペンションをリリースしたことに加え、フルサスモデルも登場した。果たしてその乗り味はロックショックスが専用サスペンションをリリースしたことに加え、フルサスモデルも登場した。果たしてその乗り味は
イエティの新型SB6Cなど、オールマウンテンは27.5インチが主流だイエティの新型SB6Cなど、オールマウンテンは27.5インチが主流だ 27.5インチをメインに据えるスコットはこれまで26インチが主流だったDHバイクも27.5インチ化27.5インチをメインに据えるスコットはこれまで26インチが主流だったDHバイクも27.5インチ化


そして、ファットバイク同様にMTBで大きなトレンドとなっているのが27.5インチホイールで、ついにDHバイクまでもが軒並み移行し始めた。その先陣を切ったのがスコットとジャイアント。つい2年前まで見られた29インチの勢いはすっかり消え失せてしまった。

昨年のユーロバイク特集で大きくフィーチャーしたディスクブレーキ搭載ロードは、コンフォートモデルのみならずピュアレーシングモデルも増加中。シマノがメカニカルシフトのレバーを発表したことからミドルグレードをラインナップするメーカーも見られた。また、CEEPOはディスクブレーキ仕様のトライアスロンバイクを発表。機材の縛りが少ないトライアスロン界においてはロードよりも一足早く普及が進みそうだ。

蛍光カラーの人気は継続中蛍光カラーの人気は継続中 ディスクブレーキロードの流れはトライアスロンバイクにも波及ディスクブレーキロードの流れはトライアスロンバイクにも波及

新型となったフォーカスCAYOはディスクブレーキをメインモデルとしている新型となったフォーカスCAYOはディスクブレーキをメインモデルとしている
その他、蛍光色、ツーリング系アイテム、オールマウンテン、ロード/TTバイクにおけるエアロダイナミクスの追求、パワーメーターなども今年のユーロバイクを象徴するトレンドである。詳細は既に公開中のユーロバイクフォトレポートにて紹介している。こちらもぜひ。

text&photo:Yuya.Yamamoto