2012年8月22日に行なわれたブエルタ・ア・エスパーニャ第5ステージと全く同じコースレイアウトで行なわれた第12ステージ。ログローニョの周回コースで再び輝きを放ったのは、すでにステージ2勝を飾っているジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)だった。



なだらかなアップダウンのあるログローニョ周回コースなだらかなアップダウンのあるログローニョ周回コース photo:Tim de Waele


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第12ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第12ステージ image:Unipublicグランツールにしては珍しく、1つの街を発着する周回コースで行なわれた第12ステージ。ワインの産地として有名なラ・リオハ州の州都ログローニョ市内をスタートし、郊外をぐるっと回って戻ってくる21kmの周回コースが設定された。

長時間独走したマティアス・クリセク(オーストリア、キャノンデール)長時間独走したマティアス・クリセク(オーストリア、キャノンデール) photo:Unipublic1周につき高低差100mほどをこなすことになるが、これはスプリンターたちにとって全く問題にならないレベル。前日まで総合争いを繰り広げた選手たちにとっては束の間の休息となる。

安全に集団前方で走るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)安全に集団前方で走るアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleこの周回コースは2012年大会の第5ステージで採用されたものと同じで、合計8周する点も同じ。1名の選手が序盤からソロエスケープを試みる展開も同じ。レース1周目からマティアス・クリセク(オーストリア、キャノンデール)が果敢に飛び出し、スプリンターチーム相手に最大9分差で逃げた。

街中のラウンドアバウトやコーナーがいくつも設定されているもののコースの大半は平坦&直線基調。2011年のオーストリアチャンピオンで、グランツール初出場の25歳クリセク(来季の移籍先は未定)が中継カメラを長時間独占したが、逃げ切るには圧倒的不利な状況が続く。

FDJ.frとジャイアント・シマノの連合軍が淡々とペースを刻み、先頭クリセクとのタイム差を調整しながら落ち着いて追撃。1分半のリードで最終周回に入ったクリセクを残り12km地点で飲み込んだ。

引き続きスプリンターチームが集団先頭を陣取り、危険回避のためにティンコフ・サクソもアルベルト・コンタドール(スペイン)を連れて先頭へ。完全に主導権を奪うチームが現れないまま残り1kmの最終コーナーに差し掛かる。そこで集団を大きく分断する落車が発生した。



葡萄畑が広がるログローニョ周回コース葡萄畑が広がるログローニョ周回コース photo:Tim de Waele
最大9分リードで逃げたマティアス・クリセク(オーストリア、キャノンデール)最大9分リードで逃げたマティアス・クリセク(オーストリア、キャノンデール) photo:Tim de Waeleボーネンに雨を降らせるファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)ボーネンに雨を降らせるファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング) photo:Tim de Waele



スプリントで競り合うトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)とジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)スプリントで競り合うトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)とジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ) photo:Tim de Waeleポジション争いを繰り広げていたナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)やマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)、アンドレア・グアルディーニ(イタリア、アスタナ)が落車によってチャンスを失い、落車を切り抜けた15名が先行する形でスプリントへ。

平坦スプリントで3勝目をマークしたジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)平坦スプリントで3勝目をマークしたジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ) photo:Tim de Waeleリードアウトのために先頭に立ったロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)が下がると、発射台ラモン・シンケルダム(オランダ、ジャイアント・シマノ)が先頭へ。ほぼ完璧なリードアウトを受けたデゲンコルブがトム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)と同時にスプリントを開始する。ショーツとヘルメットを緑に統一したポイント賞ジャージのスプリントが伸びた。

豪快にシャンパンを開けるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)豪快にシャンパンを開けるジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ) photo:Tim de Waeleログローニョ周回コースで2年ぶりの勝利、ならびに今大会ステージ3勝目を飾ったデゲンコルブは「落車の音は聞こえたけど、自分のスプリントに集中していたので落車自体は見ていない」と、混乱のスプリントを振り返る。「ラモン・シンケルダムのリードアウトは素晴らしかった。フィニッシュ前の少し混乱した状況を切り抜けて、チームの仕事を完璧にこなすことが出来てよかったよ」。

スプリントに絡めなかったブアニらに対し、ポイント賞のリードを広げることに成功したデゲンコルブ。「数日前に落車して、その影響が残っている。山岳ステージで苦しんだし、この先のステージで脚の調子が戻れば良いけど。世界選手権を見据えるならば、もっと調子を上げる必要がある」とコメントしている。

落車によって集団は分断されたが、残り3km以内の落車に対する救済措置によってタイム差は付かず。アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)が総合リードを1秒も失うことなく首位を守っている。

選手コメントはレース公式リリースより。






ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第12ステージ結果
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
3位 ジャコポ・グアルニエーリ(イタリア、アスタナ)
4位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
5位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)
6位 ヤニック・マルティネス(フランス、ユーロップカー)
7位 ロイド・モンドリー(フランス、AG2Rラモンディアール)
8位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)
9位 ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレックファクトリーレーシング)
10位 ギヨーム・ボワヴァン(カナダ、キャノンデール)
4h11'18"










マイヨロホ(個人総合成績)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
7位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
8位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
9位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)
10位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
44h38'14"
+20"
+1'08"
+1'20"
+1'35"
+1'52"
+2'13"
+2'22"
+2'55"
+3'51"


マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)
3位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
112pts
78pts
71pts


マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)
2位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
20pts
18pts
18pts


マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
9pts
12pts
20pts


チーム総合成績
1位 モビスター
2位 カチューシャ
3位 オメガファーマ・クイックステップ
133h37'34"
+3'35"
+5'03"


ステージ敢闘賞
マティアス・クリセク(オーストリア、キャノンデール)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele