最大勾配14%の1級山岳サンミゲル・デ・アララルで繰り広げられた総合争い。残り1kmで果敢に飛び出したファビオ・アル(イタリア、アスタナ)がステージ優勝を掴み取り、アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がライバルを押さえ込む結果となった。



落車したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)は肩甲骨骨折によりリタイア落車したナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)は肩甲骨骨折によりリタイア photo:Unipublic


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第11ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第11ステージ image:Unipublic牛追い祭で有名なナバーラ州のパンプローナをスタートする第11ステージ。スタート後2時間ほどは平坦路が続くが、2つ目のスプリントポイントを越えたところでコースは山岳地帯に向かう。勝負はブエルタ初登場の1級山岳サンミゲル・デ・アララルで決する。

逃げグループを形成するヨアン・レボン(フランス、FDJ.fr)ら5名逃げグループを形成するヨアン・レボン(フランス、FDJ.fr)ら5名 photo:Tim de Waele標高1,210mの修道院に向かう長く険しい山道は、登坂距離9.9km/平均勾配7.5%。しかも最大勾配が残り2km地点で14%に達するという。前日の個人TTでタイムを失ったクライマーたちが攻撃に出た。

1級山岳サンミゲル・デ・アララルに向かって独走するヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)1級山岳サンミゲル・デ・アララルに向かって独走するヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ) photo:Unipublicスタート後すぐ、アタック合戦継続中の集団内で大落車が発生する。およそ15km地点で発生したこの大落車には、総合1位から総合11位にダウンしたナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)らが巻き込まれた。

2日連続の落車となったキンタナは病院へと搬送(肩甲骨の骨折)。同じく落車したマキシム・ブエ(フランス、AG2Rラモンディアール)、スティーブ・モラビート(スイス、BMCレーシング)とともにブエルタを去っている。大会1週目からウィルス性の疾患にかかっていたティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)もバイクを降りた。

集団ではボーナスタイムを懸けたペースアップ(最初の1時間は平均50.0km/h)が図られ、一時的に32名が飛び出す展開に。59km地点のスプリントポイントを総合2位アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)が先頭通過した。

スプリントポイント通過後にようやく集団は落ち着き、ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)、エリア・ファヴィッリ(イタリア、ランプレ・メリダ)、ヨアン・レボン(フランス、FDJ.fr)、ピム・リヒハルト(オランダ、ロット・ベリソル)、ペイオ・ビルバオ(スペイン、カハルーラル)の5名を先行させる。ステージ距離の短さから、タイム差の広がりは4分止まりだった。

先頭では2年連続逃げ切りステージ優勝を狙うキリエンカが独走に持ち込み、メイン集団ではティンコフ・サクソに代わってカチューシャのペースアップが始まる。およそ1分/10kmペースでタイム差は縮まり続け、1級山岳サンミゲル・デ・アララルに差し掛かってすぐに先頭キリエンカは吸収された。



チームメイトとともに走るマイヨロホのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)チームメイトとともに走るマイヨロホのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Unipublic先頭で1級山岳サンミゲル・デ・アララルに差し掛かったヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)先頭で1級山岳サンミゲル・デ・アララルに差し掛かったヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ) photo:Tim de Waele

残り2kmでアタックするアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)残り2kmでアタックするアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele


集団から飛び出すロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)とワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)集団から飛び出すロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)とワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ) photo:Tim de Waeleティンコフ・サクソやカチューシャに加えて、トレックファクトリーレーシング、キャノンデールも集団先頭で積極的にポジション取り。そこからチームスカイが強力なリズムで引き始める。フィリップ・ダイグナン(アイルランド)とダリオ・カタルド(イタリア)の引きによって集団は10名強にまで絞り込まれた。

先頭で1級山岳サンミゲル・デ・アララルを登るファビオ・アル(イタリア、アスタナ)やロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)先頭で1級山岳サンミゲル・デ・アララルを登るファビオ・アル(イタリア、アスタナ)やロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン) photo:Unipublicエースのクリス・フルーム(イギリス)までも苦しめたカタルドの引きが終わると、残り6kmで総合15位ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)アタック。間髪入れずに総合9位ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)が飛び出し、そのままヘーシンクが先頭独走態勢に。

残り1kmでアタックを成功させたファビオ・アル(イタリア、アスタナ)残り1kmでアタックを成功させたファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele灰色のコンクリート道は徐々に勾配を増し、総合トップ10の中では総合4位ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)と総合10位ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)が脱落してしまう。

最大勾配14%に差し掛かると、それまで集団後方で苦しい表情を見せていたフルームが一転ペースアップ。そこからマイヨロホのアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)がアタックすると、それまで先頭で逃げていたヘーシンクやダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)は吸収された。

互いに警戒しながら残り1kmアーチが見えたところでアタックしたのは「ジロが終わってからこのブエルタに目標をスイッチしていた」というアルだった。ジロ・デ・イタリアの山岳ステージを制し、総合3位に入ったサルデーニャ生まれの24歳が快走。そのままビッグネームを6秒振り切ったアルがガッツポーズでフィニッシュした。

「偉大なチャンピオンたちを引き離せて感激している」。ジロに続いてブエルタでも登坂力を見せつけたアルは語る。タイム差6秒とボーナスタイム10秒を獲得し、総合7位に浮上。「まだキャリアは経験を積む段階だけど、この勝利はとても重要。信じられない気持ちだ。ティラロンゴの教え通り、エネルギーをセーブしながら走って、正しいタイミングを見極めてアタックしたんだ」。

コンタドール、バルベルデ、ロドリゲス、フルームは6秒差でフィニッシュし、コンタドールが危なげなくマイヨロホをキープ。コツコツとボーナスタイムを稼いでいる総合2位バルベルデとのタイム差は20秒にまで縮まり、総合3位リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)とのタイム差は広がった。総合8位まで順位を下げたアナコナを除いて順位に大きな変動は見られなかった。

選手コメントはレース公式リリースより。



後続を6秒振り切ってフィニッシュするファビオ・アル(イタリア、アスタナ)後続を6秒振り切ってフィニッシュするファビオ・アル(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waele
6秒遅れでフィニッシュするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ら6秒遅れでフィニッシュするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ら photo:Tim de Waeleマイヨロホを守ったアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)マイヨロホを守ったアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele




ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第11ステージ結果
1位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
4位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
5位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
6位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
7位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
8位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
9位 ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)
10位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)

11位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
12位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)
13位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
14位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
15位 セルヒオ・パルディージャ(スペイン、MTNキュベカ)
16位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
17位 ゴルカ・イサギーレ(スペイン、モビスター)
18位 プリジミスラウ・ニエミエツ(ポーランド、ランプレ・メリダ)
19位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)
20位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
3h41'03"
+06"



+13"
+15"

+16"
+21"

+25"
+49"
+56"
+1'14"

+1'35"
+1'46"
+2'07"

+2'11"


マイヨロホ(個人総合成績)
1位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
5位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
6位 サムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)
7位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
8位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
9位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)
10位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
40h26'56"
+20"
+1'08"
+1'20"
+1'35"
+1'52"
+2'13"
+2'22"
+2'55"
+3'51"


マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)
3位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
87pts
74pts
71pts


マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)
2位 ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
20pts
18pts
18pts


マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
3位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
9pts
12pts
20pts


チーム総合成績
1位 モビスター
2位 カチューシャ
3位 オメガファーマ・クイックステップ
121h03'40"
+3'35"
+5'03"


ステージ敢闘賞
ヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ、チームスカイ)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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