アルバセテにフィニッシュする今大会最長ステージは総合系チームによる横風攻撃によって白熱の展開に。40名の集団スプリントで、平均スピードが46.2km/hに達する高速バトルを制したのはナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)だった。



レース前半はスプリンターチームが率いる平坦ステージらしい展開レース前半はスプリンターチームが率いる平坦ステージらしい展開 photo:Tim de Waele


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第8ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第8ステージ image:Unipublicアンダルシア地方を離れ、ブエルタはカスティーリャ=ラ・マンチャ地方を目指す。今大会最長207kmのロングステージにカテゴリー山岳は登場しない。高確率で大集団スプリントに持ち込まれる。何しろこの日を終えると翌日から4日間はスプリンターに出番が回って来ないのだ。

逃げるエリア・ファヴィッリ(イタリア、ランプレ・メリダ)とハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)逃げるエリア・ファヴィッリ(イタリア、ランプレ・メリダ)とハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル) photo:Tim de Waeleカスティーリャ=ラ・マンチャ地方は風の強い地域として知られており、アルバセテにフィニッシュする際にはいつも風が大きなファクターを担ってきた。獲得標高差が1400mに満たない単純な平坦ステージと侮るなかれ、ステージ優勝争いだけでなく総合争いにも響く集団分裂が起こり得る。

アンダルシア州を離れ、カスティーリャ=ラ・マンチャ州へアンダルシア州を離れ、カスティーリャ=ラ・マンチャ州へ photo:Unipublic誰もが警戒感を強める平坦ステージで、"ブエルタのミスターエスケープ"ことハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)がエリア・ファヴィッリ(イタリア、ランプレ・メリダ)とともに今大会2度目の逃げ。最大7分のリードを得た2人を、スプリント狙いのFDJ.frとジャイアント・シマノ率いるメイン集団が追撃する実に平坦ステージらしい展開となる。

スプリントポイントではポイント賞ジャージを着るジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)が動き、集団先頭通過で1ポイント獲得。僅かながらも着実にポイントを重ねて行く。

残り50km地点でタイム差は1分半に。ここからレースは1時間足らずでフィニッシュすることとなる。逃げていたアラメンディアとファヴィッリは残り40km地点であっけなく吸収された。

そのままスプリンターチームの独壇場になると思いきや、チームスカイやカチューシャ、ティンコフ・サクソ、モビスターがにわかに集団先頭に上がってポジション争いを開始させる。残り30km地点を切ったところで突如コースは遮るもののない吹きっさらしに。イギリスチャンピオンのピーター・ケノー(イギリス、チームスカイ)によるゴールスプリントさながらのペースアップを皮切りに、横風地獄が始まった。



チームスカイやBMCレーシング率いるメイン集団が後続を引き離すチームスカイやBMCレーシング率いるメイン集団が後続を引き離す photo:Tim de Waele
トザットやベンナーティとともに集団ペースアップを試みるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)トザットやベンナーティとともに集団ペースアップを試みるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleマイヨロホのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)も集団ペースアップに加わるマイヨロホのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)も集団ペースアップに加わる photo:Tim de Waele



チームメイトとともに集団先頭に陣取るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)チームメイトとともに集団先頭に陣取るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waeleティンコフ・サクソ、チームスカイ、BMCレーシング、オメガファーマ・クイックステップ、ベルキン、ジャイアント・シマノ、トレックファクトリーレーシング主導のペースアップによって集団は瞬く間に一列棒状に。60km/h近いスピードで巡航する集団は大きく分けて3つに分裂した。

集団分裂を狙ってペースを上げるカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)集団分裂を狙ってペースを上げるカデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング) photo:Tim de Waeleエシュロンを形成する後続を引き離した60名ほどの先頭集団を、チームスカイやBMCレーシング、ティンコフ・サクソが継続的にペースアップして更なる分裂を目論む。フィニッシュまでの距離が猛烈な勢いで少なくなる中、残り12km地点で先頭集団が割れ、ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)やダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)、デゲンコルブが脱落した。

先頭でフィニッシュするナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)とマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)先頭でフィニッシュするナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)とマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Unipublicキンタナ集団は一時的に10秒のタイムを失ったが、スプリント狙いのジャイアント・シマノの牽引によって残り5km地点で何とか復帰。最終的に60名に満たない集団によるスプリント勝負に持ち込まれ、オメガファーマ・クイックステップとオリカ・グリーンエッジが競り合いながら残り1kmを切る。

マシューズをかわして勝利したナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)マシューズをかわして勝利したナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr) photo:Tim de Waeleするとフィニッシュラインまで250mを残してブアニが6番手から発進。急激な加速で一気にライバルを引き離したブアニが、マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)の差し込みをかわして勝利した。207kmの大会最長ステージにも関わらずレース時間は4時間半弱。平均スピードは46.2km/hだった。

ステージ2勝目を飾ったブアニは「最低1勝出来ればいいと思っていたので今夜は祝杯だ。前回のスプリントでは進路を妨害されて2位だったので、今日は何としても勝ちたかった。集中力を切らさずに勝負に挑み、向かい風のスプリントで早めに仕掛けた。フィニッシュまで300mあったけど、何とか耐え凌いだんだ」とコメントする。

今大会の三大スプリンターであるブアニ、マシューズ、デゲンコルブの中で、スピードが要求される平坦コースとの相性の良さを見せたブアニ。ポイント賞ジャージはデゲンコルブが守ったが、三強が16ポイント差にひしめく混戦状態だ。

総合トップ10は全員メイン集団内でフィニッシュしたため、予想された大変動は起こらなかった。しかし総合15位セルヒオ・パルディージャ(スペイン、MTNキュベカ)や総合16位ダニエル・ナバーロ(スペイン、コフィディス)、総合19位ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)、総合20位ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)が53秒遅れるなど、総合10位以下の成績に大きく影響。大会2回目の本格山岳フィニッシュを前にしたナーバスな一日が終わった。

選手コメントはレース公式リリースより。



ステージ2勝目のナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)がシャンパンを開けるステージ2勝目のナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)がシャンパンを開ける photo:Unipublic



ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第8ステージ結果
1位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)
2位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
4位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
5位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ベリソル)
6位 ロバート・ワグナー(ドイツ、ベルキン)
7位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、MTNキュベカ)
8位 ロベルト・フェラーリ(イタリア、ランプレ・メリダ)
9位 トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
10位 ヤスパー・ストゥイフェン(ベルギー、トレックファクトリーレーシング)
4h29'00"










マイヨロホ(個人総合成績)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
5位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)
8位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
9位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)
10位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
3h21'20"
+15"
+18"
+20"
+41"
+45"
+55"
+58"
+1'02"
+1'06"


マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)
3位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
87pts
74pts
71pts


マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 ダン・クラーヴェン(ナミビア、ユーロップカー)
18pts
10pts
10pts


マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
10pts
15pts
28pts


チーム総合成績
1位 ベルキン
2位 モビスター
3位 カチューシャ
93h37'53"
+45"
+2'28"


ステージ敢闘賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele