ナーバスなアップダウンコースで、実績ある4人が序盤からエスケープ。追い上げる集団を振り切って、ツール総合敢闘賞のアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール)が元イタリア代表監督に捧げる独走勝利を飾った。



暑いアンダルシア州のステージが続く暑いアンダルシア州のステージが続く photo:Tim de Waele


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第7ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第7ステージ image:Unipublicブエルタ初登場のアレンディンとアルカウデテの街を結ぶ169kmは起伏に富んでいた。3級山岳と2級山岳を含むアップダウンコースの獲得標高差はおよそ2500m。カテゴリー山岳には指定されていないものの、残り5kmから平均勾配5%ほどの登りが続く。

逃げグループを率いるライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)逃げグループを率いるライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ) photo:Tim de Waeleオールラウンダーが総合争いを繰り広げるほど高い難易度ではなく、スプリンターが絡めるほど低い難易度でもない。この逃げ切りが決まりやすいコースで豪華な逃げグループが形成された。

落車で右半身に打撲を負ったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)落車で右半身に打撲を負ったクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele39.8km地点の3級山岳でライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)、アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール)、ユベール・デュポン(フランス、AG2Rラモンディアール)、ヨハン・チョップ(スイス、IAMサイクリング)の4名が先行。

マイヨロホを着て走るアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)マイヨロホを着て走るアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Unipublic総合ですでに遅れている4名(最高位は総合43位・7分49秒遅れのヘシェダル)は、瞬く間にメイン集団とのタイム差を7分以上に広げた。

この日はレース序盤から落車が多発し、イヴァン・サンタロミータ(イタリア、オリカ・グリーンエッジ)、ブライアン・ノロー(フランス、ユーロップカー)、アレクセイ・サラモティンス(ラトビア、IAMサイクリング)の3名が落車リタイア。複合賞ジャージを着るクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)も落車してしまう。フルームは右腰から流血しながらもレースを続行した。

メイン集団ではトレックファクトリーレーシングがコントロールを開始。ファビアン・カンチェラーラ(スイス)やジュリアン・アレドンド(コロンビア)が献身的な走りで集団を率いたものの、2年前にジロを制したオールラウンダー(ヘシェダル)、今年ツール総合敢闘賞のルーラー(デマルキ)、4年前のジロで総合12位に入っているグランツール16回目のクライマー(デュポン)、5年前のジロで山岳ステージ優勝したクライマー(チョップ)とのタイム差が思うように縮まらない。

残り50km地点でタイム差は依然として6分。逃げが捕まらないことに危機感を感じたランプレ・メリダが集団牽引に合流する。ダミアーノ・クネゴ(イタリア、ランプレ・メリダ)らのペースアップによって残り35km地点でようやく5分に。オリーブが茂る丘を縫うように進むアップダウンコースでメイン集団の人数は絞られ、2級山岳で多くのスプリンターが姿を消した。



メイン集団を牽引するファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング)メイン集団を牽引するファビアン・カンチェラーラ(スイス、トレックファクトリーレーシング) photo:Tim de Waele
レース序盤に落車したアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)レース序盤に落車したアダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ) photo:Unipublicマイヨロホを着て走るアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)マイヨロホを着て走るアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Unipublic



チョップと先行するアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール)チョップと先行するアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール) photo:Tim de Waeleタイム差が3分台まで縮まったところで、フィニッシュまでおよそ15kmを残して逃げグループからデュポンが脱落。するとスリッピーな左コーナーでヘシェダルが落車する。「何故落車したのか分からない。突然タイヤがスリップした」というヘシェダルは、スリップしたバイクを中継モトに踏まれるというハプニングもあり、再スタートに手間取った。

フィニッシュに向かって独走するアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール)フィニッシュに向かって独走するアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール) photo:Tim de Waele図らずも早々に2人になってしまったデマルキとチョップ。すぐにデマルキが独走をスタートさせ、3分20秒リードで残り10kmに差し掛かる。フィニッシュに向かう登りに入ってもデマルキのペースは落ちず、追走グループを形成するヘシェダル、チョップ、デュポンやメイン集団を振り切って勝利。「(月曜日に亡くなった元イタリア代表監督の)アルフレード・マルティーニのため」に天を指差してフィニッシュした。

独走でフィニッシュに飛び込むアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール)独走でフィニッシュに飛び込むアレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール) photo:Tim de Waeleメイン集団は結局2分以上遅れてフィニッシュにたどり着き、スプリントしたフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)とダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)が3秒、クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)が2秒飛び出した状態でフィニッシュ。スプリント中の集団内で落車したワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)は肘や腰に打撲を負ったものの、自力で歩いてフィニッシュしている。

肩を落としてフィニッシュするライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)肩を落としてフィニッシュするライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ) photo:Tim de Waeleステージ優勝を飾ったデマルキは逃げのスペシャリストとして知られる28歳。アンドローニからキャノンデールに移籍した2013年にクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでステージ優勝を飾り、今年のドーフィネでは山岳賞を獲得。ツール・ド・フランスでは2度敢闘賞を獲得し、最終的に総合敢闘賞を獲得した。

「この成功に至るまで数えきれないほどアタックしてきた。いつもステージ優勝に届かなかった。初出場のブエルタでステージ初優勝することは運命だったのかも知れない。今日は全てが完璧に動いた。幸せな気持ちに包まれているよ」とデマルキは語る。

一緒に逃げながらも落車でチャンスを失ったヘシェダルについて「彼と僕の2人が逃げグループをリードしていた。前を引く時間も他の2人より長かったと思う。だから彼とステージ優勝を争うことになると予想していた」と言う。「しばらくペースを落として待ったけど、ステージ優勝を逃すわけにはいかなかった」。

デマルキは来季BMCレーシングと契約済み。イタリアとキャノンデールに今大会初勝利をもたらした。

フルームがスプリントで2秒獲得したこと以外、総合上位陣の成績に変動は無し。次に総合争いが加熱するのは第9ステージの1級山岳アラモン・バルデリナレス山頂フィニッシュだ。

選手コメントはレース公式リリースより。



スプリントで先行したフルームを追うアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)らスプリントで先行したフルームを追うアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)ら photo:Tim de Waele



ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第7ステージ結果
1位 アレッサンドロ・デマルキ(イタリア、キャノンデール)
2位 ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)
3位 ユベール・デュポン(フランス、AG2Rラモンディアール)
4位 ヨハン・チョップ(スイス、IAMサイクリング)
5位 フィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)
6位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
7位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
8位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
9位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
10位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
4h01'52"
+1'34"
+1'35"

+2'17"

+2'18"
+2'20"



マイヨロホ(個人総合成績)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
3位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
4位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
5位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
6位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
7位 ロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)
8位 ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)
9位 ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)
10位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
26h52'20"
+15"
+18"
+20"
+41"
+45"
+55"
+58"
+1'02"
+1'06"


マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)
72pts
51pts
49pts


マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)
2位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
3位 ジェローム・クザン(フランス、ユーロップカー)
18pts
10pts
10pts


マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
2位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
9pts
15pts
27pts


チーム総合成績
1位 ベルキン
2位 モビスター
3位 カチューシャ
80h10'53"
+45"
+2'28"


ステージ敢闘賞
ライダー・ヘシェダル(カナダ、ガーミン・シャープ)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

最新ニュース(全ジャンル)