白い街並で有名なフィニッシュ地点アルコス・デ・ラ・フロンテーラに至る短い登りで、クライマーとスプリンターが肩を並べて競り合った。総合成績にも響く集団分裂が起こる中、ライバルの動きを落ち着いてマークしたマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が勝利した。



飾り付けられたアンダルシアの田舎町を行く飾り付けられたアンダルシアの田舎町を行く photo:Tim de Waele
揚陸艦兼空母の「フアンカルロス1世」で戦闘機に触れるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)揚陸艦兼空母の「フアンカルロス1世」で戦闘機に触れるアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele戦闘機に乗るフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング)戦闘機に乗るフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシング) photo:Tim de Waele



ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第3ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第3ステージ image:Unipublicブエルタ・ア・エスパーニャ3日目は、カディスからアルコス・デ・ラ・フロンテーラまで、アンダルシア地方を象徴するような白い村が点在する地域を走る。気温35度の暑さと強烈な太陽と闘いながら、選手たちは200km近いコースをおよそ5時間以上走り続けた。

揚陸艦兼空母「フアンカルロス1世」をスタート揚陸艦兼空母「フアンカルロス1世」をスタート photo:Tim de Waeleスペイン海軍が誇る揚陸艦兼空母「フアンカルロス1世」の甲板で出走サインを行ない、格納庫からスタートする刺激的なセレモニーを経て第3ステージは動き出す。カディス港に上陸してアクチャルスタートが切られ、10km地点で5名の逃げが決まった。

荒涼としたアンダルシア州の内陸部を行く逃げグループ荒涼としたアンダルシア州の内陸部を行く逃げグループ photo:Tim de Waeleダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシング)、ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)、ジェローム・クザン(フランス、ユーロップカー)、ジャック・ヴァンレンスバーグ(南アフリカ、MTNキュベカ)、ジョナサン・フュムオー(スイス、IAMサイクリング)が意欲的にエスケープ。8分のリードで中盤の山岳地帯へと入って行く。

前半2つの3級山岳はクザンが先頭で登頂し、3つ目の3級山岳で逃げグループは早くも崩壊する。先頭ではカハルーラルのマスボネが独走を開始。逃げの使命を負ったカハルーラルのライダーがそのまま後半2つの3級山岳を立て続けにクリアし、山岳ポイント数でクザンとタイに。規定により総合成績が上位のマスボネが山岳賞ジャージ着用の権利を得た。

モビスター率いるメイン集団は淡々とペースを刻み、中盤からはオリカ・グリーンエッジがメンバー総動員で集団をコントロール。メイン集団は人数を減らすことなく、ピュアスプリンターを残した状態で全ての3級山岳をクリアする。その後の長い下りと平坦路で逃げとのタイム差を詰め、フィニッシュまで25kmを残して先頭マスボネを捕らえた。



レース中盤にかけて4つの3級山岳をクリアするレース中盤にかけて4つの3級山岳をクリアする photo:Tim de Waele
チームメイトと並んで走るマイヨロホのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)チームメイトと並んで走るマイヨロホのアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waeleオリカ・グリーンエッジが徹底的に集団をコントロールオリカ・グリーンエッジが徹底的に集団をコントロール photo:Unipublic



レース後半にかけて独走するルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)レース後半にかけて独走するルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル) photo:Unipublic沿道のスタッフから補給を受け取ろうとした際にアドリアーノ・マローリ(イタリア、モビスター)とヨナタン・カストロビエホ(スペイン、モビスター)が落車した他には、特に大きなトラブルは起こらず。オリカ・グリーンエッジ率いる集団は60km/h近いスピードで巡行する。

残り13kmでアタックを仕掛けるアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)残り13kmでアタックを仕掛けるアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル) photo:Tim de Waele緩やかな登りに差し掛かった残り13km地点でアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)が勢いのあるアタックを仕掛けたものの、グランツール10戦連続出場中のオージーは集団に引き戻される。オリカ・グリーンエッジやチームスカイ、オメガファーマ・クイックステップ、ジャイアント・シマノがスピードを上げながらアルコス・デ・ラ・フロンテーラに向かった。

先頭で登りに向かうジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ)先頭で登りに向かうジョン・デゲンコルブ(ドイツ、ジャイアント・シマノ) photo:Tim de Waele残り5kmを切って始まるテクニカルな街中を経て、残り2kmからフィニッシュまで高低差70mの登りがスタート。ジョン・デゲンコルブ(ドイツ)を引き連れるジャイアント・シマノが先頭に上がったものの、平均6%ほどの登りでエーススプリンターは失速してしまう。代わってジャンパオロ・カルーゾ(イタリア、カチューシャ)が飛び出した。

登りスプリントを繰り広げるマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)とダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)登りスプリントを繰り広げるマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)とダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ) photo:Tim de Waele持ち前の登坂力で後続を引き離したカルーゾを追って、クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)をはじめとするオールラウンダーがペースアップ。そこからダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)が抜け出し、残り150m地点で先頭カルーゾをパスする。

スプリントを制したマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)スプリントを制したマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Tim de Waele先頭をダンシングで突き進んだマーティンだったが、勾配が緩んだところで後方からマシューズがスプリントを開始。下ハンドルを握ってペダルに力を込めたマシューズのスピードが冴え渡った。

マーティンを下し、ステージ1勝目を表す1本指を挙げてフィニッシュしたマシューズは「メンバー全員が全力を尽くした末の勝利なので格別だ。今日は気温が高く、最後の登りがハードだと分かっていたので、大集団のスプリントにはならないと踏んでいた。チームメイトのおかげでパーフェクトなポジションをキープして、そこから自分の仕事に取りかかったんだ」とコメントする。

マシューズは2013年大会の第5ステージと第21ステージでも勝利を飾っており、これがブエルタステージ通算3勝目。同時に、ボーナスタイム10秒を獲得したことで総合首位に立った。

ジロ・デ・イタリアで6日間マリアローザを着たマシューズが、ブエルタのマイヨロホに袖を通す。「夢が叶ったよ。まさか出場した2つのグランツールでリーダージャージを切るなんて」と、新総合リーダーは語っている。翌日も翌々日もスプリンター向きのステージが控えており、マシューズが第6ステージまでマイヨロホを着ることになりそうだ。

この日、登りでバラけた集団内にはタイム差が発生。トップ10に絡んだロドリゲスやエヴァンス、フルーム、ウラン、サンチェス、キンタナ、ヘーシンク、コンタドールらは同タイムでフィニッシュしたが、バルベルデやヘシェダル、アル、ファンデンブロックらが7秒タイムを失う結果となっている。

選手コメントはレース公式リリースより。



マイヨロホに袖を通したマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)マイヨロホに袖を通したマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Tim de Waele



ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第3ステージ結果
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
2位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
3位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
4位 ウィルコ・ケルデルマン(オランダ、ベルキン)
5位 ポール・マルテンス(ドイツ、ベルキン)
6位 カデル・エヴァンス(オーストラリア、BMCレーシング)
7位 ロイド・モンドリー(フランス、AG2Rラモンディアール)
8位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)
9位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
10位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
5h12'14"










マイヨロホ(個人総合成績)
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
2位 ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
4位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)
5位 ダミアーノ・カルーゾ(イタリア、キャノンデール)
6位 エスデバン・シャベス(コロンビア、オリカ・グリーンエッジ)
7位 ジョージ・ベネット(ニュージーランド、キャノンデール)
8位 ジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)
9位 アイマル・スベルディア(スペイン、トレックファクトリーレーシング)
10位 ジャンルーカ・ブランビッラ(イタリア、オメガファーマ・クイックステップ)
9h27'53"
+04"
+11"
+15"
+17"

+20"


+22"


マイヨプントス(ポイント賞)
1位 ナセル・ブアニ(フランス、FDJ.fr)
2位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)
33pts
29pts
20pts


マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)
2位 ジェローム・クザン(フランス、ユーロップカー)
3位 ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシング)
9pts
9pts
6pts


マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)
2位 ダニーロ・ウィス(スイス、BMCレーシング)
3位 ヴァレリオ・コンティ(イタリア、ランプレ・メリダ)
114pts
145pts
148pts


チーム総合成績
1位 ベルキン
2位 BMCレーシング
3位 チームスカイ
27h55'44"
+09"
+22"


ステージ敢闘賞
ルイス・マスボネ(スペイン、カハルーラル)

text:Kei Tsuji
photo:Tim de Waele

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