8月23日に開幕するブエルタ・ア・エスパーニャの出場メンバーは例年以上に豪華だ。ジロやツールをも凌ぐトップレーサーたちがアンダルシアのスタートラインに並ぶ。マイヨロホ(総合リーダージャージ)の候補に挙げられる選手たちをピックアップしてみよう。



ブエルタ総合リーダーの証、マイヨロホ(レッドジャージ)

ブエルタ覇者の証、マイヨロホブエルタ覇者の証、マイヨロホ photo:Kei Tsujiブエルタ・ア・エスパーニャ最高の栄誉、それがレッドジャージを意味するマイヨ・ロホだ。長年にわたって金色のマイヨ・オロが採用されていたが、ツール主催者ASOがブエルタ主催者Unipublicに資本参入を開始したことを受け、2010年にスペインのナショナルカラーである赤色に変更された。

ツールのマイヨ・ジョーヌ、ジロのマリア・ローザにあたる個人総合成績のリーダージャージであり、毎日のステージ成績を積算し、その最も少ない選手が翌日のステージでマイヨ・ロホを着る。つまり最終日にマイヨ・ロホを着る選手がブエルタ総合優勝の栄冠に輝く。昨年から引き続きジャージスポンサーを務めるのは売り上げ世界2位のスーパーマーケットチェーン「カルフール」だ。

ボーナスタイムは今年も健在。ブエルタでは各ステージの上位3名(1位10秒、2位6秒、3位4秒)と中間スプリントポイント上位3名(1位3秒、2位2秒、3位1秒)にボーナスタイムが与えられるため、頂上ゴールで活躍する選手が加速度的に総合リードを広げるだろう。



総合優勝候補の豪華さは2014年グランツールナンバーワン

クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele昨年のブエルタでグランツール総合優勝の史上最年長記録を打ち立てた42歳のクリストファー・ホーナー(アメリカ、ランプレ・メリダ)は、ディフェンディングチャンピオンとしてスタートに降り立つ予定だった。アシストとしてニエミエツやクネゴ、セルパらが揃い、昨年よりも手厚いバックアップを受けての出場。しかしホーナーは開幕前のドーピング検査でMPCC(サイクルスポーツ倫理団体)が定める基準値よりも低いコルチゾンの値が検出されたため急遽出場をキャンセルした(詳しくは追ってお伝えします)。

ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)ナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター) photo:Kei Tsuji総合優勝候補の筆頭に挙げられるのは、ツール・ド・フランスを落車リタイアしたクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)と、ジロ・デ・イタリアを制してツールをパスしたナイロ・キンタナ(コロンビア、モビスター)だ。この2人の存在が飛び抜けているとホーナーは認めている。

リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)リゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Kei Tsuji連覇が懸かったツールを不本意な形で去ったフルームはブエルタ出場について「ツールの落胆を払拭するために必要なチャレンジだ。失望感に苛まれてばかりはいられない。気持ちを素早く切り替えて、次なる目標に眼を向けている。今年のブエルタには強力なライバルが揃っているけど、チームスカイにも強力な布陣が揃っている」とコメントしている。

ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Vuelta a Espana/Graham Watsonフルームは過去に2度ブエルタに出場しており、2011年大会総合2位、2012年大会総合4位。復権を狙うフルームを、ニエベやカタルド、ダイグナンらがサポートする。

アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waeleアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とのダブルエース体制で挑むキンタナは、ジロに続くグランツール制覇を狙う。キンタナは2012年に続く2回目のブエルタ挑戦。2009年大会の覇者バルベルデは9回目の出場だ。

ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr) photo:Tim de Waeleジロ以降は沈黙を貫いていたキンタナはブエルタ・ア・ブルゴスで総合優勝して好調をアピール。ジロでもツールでも実現しなかったフルームvsキンタナのバトルがブエルタで巻き起こる。

成長著しいコロンビアからはリゴベルト・ウラン(コロンビア、オメガファーマ・クイックステップ)やジュリアン・アレドンド(コロンビア、トレックファクトリーレーシング)、カルロスアルベルト・ベタンクール(コロンビア、AG2Rラモンディアール)らが出場。キンタナ以外にも、有力クライマー系オールラウンダーが揃う。特に、初日のチームTTや個人TTでリードを広げると見られるウランは注目の存在。

地元スペイン勢としてはホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)やアルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)にも注目。グランツール表彰台の常連ロドリゲスは現在35歳。今年はジロを落車リタイアし、調整レースとして出場したツールの山岳で一暴れした。ブエルタには過去10回出場し、2度総合表彰台に登り、ステージ通算8勝。キャリア終盤に差し掛かった今、一花咲かせたいところだ。

2008年と2012年大会の覇者コンタドールは、ツールで右脛骨を骨折してリタイア。何とかブエルタ出場に間に合わせてきたが、当然骨折の影響でトレーニングを思うようにこなせていない。そのため総合優勝候補には挙げかねる。コンディションを上げながら走り、3週目のステージ優勝狙うとコンタドールは公言している。

ツール・ド・フランスを総合3位で終えたティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)は、昨年大会総合7位フィニッシャー。ツールの山岳で見せた調子の良さを持続出来ていれば、ブエルタでも総合争いに絡んでくるだろう。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネを制しながら、度重なる落車でツールをリタイアしたアンドリュー・タランスキー(アメリカ、ガーミン・シャープ)はマーティンやヘシェダルを率いての出場。心臓不整脈によって一時的にレースを離れていたロバート・ヘーシンク(オランダ、ベルキン)は、昨年ツール以来のグランツール出場となる。ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)は鉄人ハンセンを従えての出場だ。地元アストゥリアスでの活躍が期待のサムエル・サンチェス(スペイン、BMCレーシング)はエヴァンスとのベテランタッグを組む。

ジロを総合3位で終えた24歳ファビオ・アル(イタリア、アスタナ)や、昨年ステージ2勝を飾った22歳ワレン・バーギル(フランス、ジャイアント・シマノ)、ツアー・オブ・ターキーの覇者22歳アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)ら、次世代を担う若手も揃っている。



ブエルタ歴代総合優勝者
2013年 クリストファー・ホーナー(アメリカ)
2012年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2011年 ファンホセ・コーボ(スペイン)
2010年 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)
2009年 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 デニス・メンショフ(ロシア)
2006年 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)
2005年 デニス・メンショフ(ロシア)
2004年 ロベルト・エラス(スペイン)
2003年 ロベルト・エラス(スペイン)
2002年 アイトール・ゴンザレス(スペイン)
2001年 アンヘル・カセロ(スペイン)
2000年 ロベルト・エラス(スペイン)
1999年 ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)
1998年 アブラハム・オラーノ(スペイン)
1997年 アレックス・ツェーレ(スイス)
1996年 アレックス・ツェーレ(スイス)
1995年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1994年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1993年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1992年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1991年 メルチョル・マウリ(スペイン)
1990年 マルコ・ジョヴァネッティ(イタリア)

text:Kei Tsuji