カンタブリアとアストゥリアスの本格山岳ステージを経て、ブエルタ・ア・エスパーニャは閉幕地ガリシア地方に向かう。立て続けに登場する山頂フィニッシュでマイヨロホ争いは加熱。最終日にサンティアゴ・デ・コンポステーラ前でマイヨロホを受け取るのは誰だろうか。



9月3日(水)第11ステージ
パンプローナ〜サンミゲル・デ・アララル 153.4km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第11ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第11ステージ image:Unipublic牛追い祭で有名なナバーラ州のパンプローナをスタートする第11ステージ。スタート後2時間ほどは平坦路が続くが、2つ目のスプリントポイントを越えたところでコースは山岳地帯に向かう。121km地点の3級山岳ではまだ動かない。勝負は1級山岳サンミゲル・デ・アララルで決するだろう。

登坂距離9.9km/平均勾配7.5%という登りで再びクライマーにスポットライトが当てられる。標高1,210mの修道院に向かう長く険しい山道で集団は人数を減らし、最大勾配が14%に達する残り2km地点で優勝候補が飛び立つ。脚に個人TTのダメージを残している選手は苦しむことになるだろう。この時点でマイヨロホ候補は数名に絞り込まれているはず。しかし山頂フィニッシュはまだ5つも残されている。



9月4日(木)第12ステージ
ログローニョ〜ログローニョ 166.4km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第12ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第12ステージ image:Unipublicグランツールにしては珍しく、1つの街を発着する周回コースでレースは行なわれる。ワインの産地として有名なラ・リオハ州の州都ログローニョ市内をスタートし、郊外をぐるっと回って戻ってくる21kmの周回コースが設定された。この周回コースは2012年大会の第5ステージと共通で、合計8周する点も同じだ。

1周につき高低差100mほどをこなすことになるが、これはスプリンターたちにとって全く問題にならないレベル。残されたチャンスが少なくなっているだけに、スプリンターチームが使命感をもってレースをコントロールするだろう。市街地のコーナーに警戒しながら、総合上位陣は束の間の休息を取る。



9月5日(金)第13ステージ
ベロラド〜オブレゴン 188.7km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第13ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第13ステージ image:Unipublicブエルタは大西洋に面したカンタブリア州に到着。内陸のベロラドをスタートし、3つのカテゴリー山岳をこなして高度を下げる。総合争いが加熱するような山岳ステージではないが、残り2.5kmを切ってから高低差100mの登りが登場する。レース主催者は「急勾配ではない」と説明しているが、ピュアスプリンターには厳しすぎるだろう。

デゲンコルブのような軽量スプリンター擁するチームが徹底的にタイム差をコントロールすれば話は別だが、この日は逃げ切りが決まる可能性が高い。フィニッシュ地点はカバルセノ自然公園内。ちょうど激坂ペーニャカバルガの山の反対側にあたる。



9月6日(土)第14ステージ
サンタンデル〜ラ・カンペロナ 200.8km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第14ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第14ステージ image:Unipublic海沿いの大都市サンタンデルから内陸の山岳を目指す長い長い1日。2012年大会の第17ステージでコンタドールが逆転総合優勝に繋がるアタックを決めた2級山岳ラ・オス峠を越え、続く登坂距離20.9km/平均勾配5.8%という1級山岳サングロリオ峠で一気に高度を上げる。

最後を締めくくるのは、ブエルタ初登場の1級山岳ラ・カンペロナ。登坂距離8.3km/平均勾配7.5%という登りの前半は緩やかだが、後半にかけて様相が一変する。残り2kmを切ってから急激に勾配が増し、残り1km付近で最大勾配が19.5%に達する激坂だ。なお、公式サイト内には「最大24%」という説明も有る。いずれにしても激坂であることに変わりはない。3連続山頂フィニッシュは初日から荒れそうだ。



9月7日(日)第15ステージ
オビエド〜ラゴス・デ・コバドンガ 152.2km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第15ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第15ステージ image:Unipublic北京五輪金メダリストのサンチェスやF1ドライバーのアロンソの出身地であるオビエドから大西洋に向かい、そこから海岸線に沿って東を目指す。第15ステージの大半は平坦だが、残り35km地点の2級山岳トルノ峠で海岸線とお別れ。アストゥリアス山脈に向かって舵を取る。最後に待ち構えているのはブエルタ定番の、史上19回目の登場となる超級山岳ラゴス・デ・コバドンガだ。

アストゥリアス山脈の絶景が広がる頂上に向かって、急峻な崖を縫うようにして登坂距離12.2km/平均勾配7.2%の登りが続く。下り区間が2カ所登場するため実質的な平均勾配は10%前後。残り3kmのテクニカルな下りを経て登り返し、コバドンガ湖を横目に最大勾配17.5%の激坂を登ってフィニッシュを迎える。



9月8日(月)第16ステージ
サンマルティン・デル・レイ・アウレリオ〜ラ・ファラポーナ 160.5km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第16ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第16ステージ image:Unipublic2回目の休息日を前にしたこの第16ステージこそが今年のクイーンステージ。全長160.5kmのコースに、1級山岳が4つと2級山岳が1つ詰め込まれている。立て続けに1級山岳コリャドナ(7.4km/平均6.7%/最大11.7%)、1級山岳コベルトリア(10km/平均8.8%/最大16%)、1級山岳サンロレンソ(10.1km/平均8.5%/最大13%)が登場。スタートしてすぐ登りが始まるため、グルペットで制限時間内にフィニッシュしたいスプリンターにとってもタフな一日になる。

最後は1級山岳ラ・ファラポーナ(16.5km/6.2%/12.5%)へ。渓谷を離れて徐々に高度を上げると同時に、ぐんぐんと勾配を上げて行く。フィニッシュラインが引かれているのは標高1,705m地点。このアストゥリアス山岳3連戦で第69回大会の王者がほぼ判明しているはずだ。



9月9日(火)休息日 




9月10日(水)第17ステージ
オルティゲイラ〜ア・コルーニャ 190.7km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第17ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第17ステージ image:Unipublic最後の休息日にブエルタは西へと移動。ガリシア地方を舞台にした最終週の闘いが始まる。第17ステージの190.7kmコースにはカテゴリー山岳が1つも設定されていない。アストゥリアス山脈をグルペットで乗り切ったスプリンターが息を吹き返す。大西洋から吹き付ける海風と、ガリシア地方特有の悪天候には要注意だ。

この日がスプリンターにとって実質的に最後のチャンスになるかもしれない。と同時に、まだステージ優勝を手にしていないチームはアタックを繰り返して逃げ切りを狙うに違いない。スプリンターチームの戦力が落ちている場合は大逃げが決まることも充分に考えられる。



9月11日(木)第18ステージ
ラ・エストラーダ〜モンテカステロベ・エン・メイス 157km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第18ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第18ステージ image:Unipublicこの日もブエルタはガリシアの海岸線を行く。内陸のラ・エストラーダをスタート後、リアス式海岸の語源にもなった入り組んだオーシャンロードへ。毎年のようにブエルタに登場するサンシェンショやポンテベドラの街を抜け、終盤にかけて2級山岳モンテカステロベを2度登る。残り40kmを切ってからレースは高速化するだろう。総合上位陣はアシストを残した状態で1回目の登坂を終えたいところだ。

一旦オーシャンロードに戻り、平坦路でのポジション争いを経て、標高515mの2級山岳モンテカステロベに向かって平均勾配7%、最大勾配12%の登りを突き進む。残り700mで最後の頂上通過し、軽く下ってフィニッシュ。特別難易度が高いステージではないが、3週間走り続けた脚は悲鳴を上げる。



9月12日(金)第19ステージ
サルバテーラ・デ・ミーニョ〜カンガス・ド・モラーソ 180.5km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第19ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第19ステージ image:Unipublicポルトガル国境に面したサルバテーラ・デ・ミーニョから内陸を走り、昨年第2ステージのフィニッシュ地点が置かれた2級山岳モンテ・ダ・グローバを逆側から登る。海風が吹き付けるオーシャンロードを北上し、リアス式の湾をグルリと回ってフィニッシュに向かう。

勝負の鍵を握るのは残り15km地点に位置する2級山岳モンテファロだ。5km足らずで高低差400mを駆け上がる急勾配の登りでピュアスプリンターたちは振るい落とされるだろう。フィニッシュ地点カンガス・ド・モラーソにやってくるのは逃げ切りを成功させた数名のグループか、それとも登りで絞り込まれた小集団か。港に面した海岸通で大会最後のスプリントが繰り広げられる。



9月13日(土)第20ステージ
サンタエステボ・デ・リバス・ド・シル〜プエルト・デ・アンカレス 185.7km


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第20ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第20ステージ image:Unipublic2014年ブエルタの山岳決戦は、超級山岳アンカレス峠でクライマックスを迎える。レース中盤から断続的なアップダウンが続き、フィニッシュ22km手前の1級山岳フォルゲイラス・デ・アイガス峠で本格的なセレクションがかかる。

最後は登坂距離12.7km/平均勾配8.7%の超級山岳アンカレス峠を駆け上がってフィニッシュ。なお、コース設定はロドリゲスとコンタドールが一騎打ちを繰り広げた2012年大会第14ステージと似通っており、89km地点のスプリントポイント以降のレイアウトはほぼ同じだ。当時は標高1470mの峠にフィニッシュしたが、今年はロード世界選手権の舞台であるポンフェラーダ方向に向かってコースを約3km延長。見晴らしの良い標高1655m地点にフィニッシュラインが引かれている。



9月14日(日)第21ステージ
サンティアゴ・デ・コンポステーラ 9.7km(個人TT)


ブエルタ・ア・エスパーニャ2014第21ステージブエルタ・ア・エスパーニャ2014第21ステージ image:Unipublicブエルタは1994年から一貫してマドリードで閉幕を迎えていたが、2014年の閉幕地はサンティアゴ・デ・コンポステーラ。世界的なキリスト教の巡礼地で第69回大会はフィナーレを迎える。郊外をスタートし、サンティアゴ・デ・コンポステーラ市内に向かう9.7kmコースはほぼ平坦。大きなタイム差は生まれないが、最後まで総合変動のチャンスは残されている。

フィニッシュ地点は、ユネスコ世界遺産に設定された「巡礼路」と同様、サンティアゴ・デ・コンポステーラ大聖堂の真ん前に位置するオブラドリオ広場だ。普段から巡礼者や観光客でごった返す広場に、3239.9kmを最短時間で駆け抜けた王者が凱旋する。



text:Kei Tsuji