汎用性が高いミディアムプロファイルのリム、テンションバランスの良いG3スポークアレンジ、軽さと空力特性を両立したエアロアルミスポーク等の採用で人気の高いEURUSに、チューブレスとクリンチャーの2種類のタイヤが使える「2-WAY FIT」バージョンが加わった。丸一日、徹底的にテストしてわかったこととは?

フロントハブはラジアル組みだ。スポーク数は16本。フロントハブはラジアル組みだ。スポーク数は16本。 リヤホイールはG3スポークパターンを採用する。スポーク数は21本。リヤホイールはG3スポークパターンを採用する。スポーク数は21本。


ロードレースの世界にチューブレスタイヤが初めて投入されたのは2003年のことだ。フランスのタイヤメーカーの雄・ミシュランが供給チームでテストを繰り返したのが始まりである。以来、IRCやハッチンソンといったメーカーが試作&テストを繰り返し、やっとここにきて普及し始めた感がある。

チューブレス普及がなかなか進まなかった要因は、タイヤメーカーだけの責任ではない。それを装着するホイールが充実していなかったのだ。つい最近まで、正式な市販品はシマノのみというお寒い状況だったのである。

フリー側2本のスポークに対して、反フリー側1本のスポークを組み合わせる「G3スポークパターン」。理想的なテンションバランスを実現する。フリー側2本のスポークに対して、反フリー側1本のスポークを組み合わせる「G3スポークパターン」。理想的なテンションバランスを実現する。 リムに入る「2-WAY FIT」のロゴ。チューブレスと通常のクリンチャーの両方が使えるという意味。リムに入る「2-WAY FIT」のロゴ。チューブレスと通常のクリンチャーの両方が使えるという意味。


しかし、ここにきてイタリアの巨人・カンパニョーロから、次々と魅力的なチューブレス対応ホイールがリリースされるようになってきた。カンパニョーロはとても慎重なメーカーだ。自信を持ってリリースできる製品が完成されない限り、決してそれを売り出すことはない。カンパニョーロがチューブレス対応ホイールをリリースしたということは、我々も安心してチューブレスを使えるようになったと解釈して間違いない。

今回テストしたEURUS 2-WAY FITは、カンパニョーロの最も新しいチューブレス対応ホイールだ。上級モデルのシャマル同様、「アルミ製エアロスポーク」や「G3スポークアレンジ」が採用され、極めて魅力的なスペックを持っている。

ラジアル組みのスポークを支える専用フロントハブ。回転性能の高さは、他社の追随を許さない。ラジアル組みのスポークを支える専用フロントハブ。回転性能の高さは、他社の追随を許さない。 G3スポークパターンを支える専用リヤハブ。フリーボディは写真のカンパニョーロ用のほか、シマノ用も用意されている。G3スポークパターンを支える専用リヤハブ。フリーボディは写真のカンパニョーロ用のほか、シマノ用も用意されている。


驚くべきはその重量だ。フロントが660g、リヤが890gという重量は、一昔前の超軽量ホイールの重量に匹敵する。それをアルミリムで実現してしまったのだから、技術の進歩を感じずにはいられない。

カンパニョーロ指定のハッチンソン・フュージョン2を装着してインプレした。カンパニョーロ指定のハッチンソン・フュージョン2を装着してインプレした。 価格も大きな魅力だ。カーボンホイールが良いのはわかるが、いかんせん高嶺の花である。その点EURUS 2-WAY FITは、かなり手の届きやすい価格だと言えるだろう。

耐久性もカーボンホイールと比べるとずっと高いので、ガンガン乗る人にとっては最良のチョイスということができるかもしれない。

今回はテストに当たって、プロ選手の評価も高いハッチンソン FUSION 2 ROAD TUBELESSタイヤを使用した。カンパが正式に認めているチューブレスタイヤのレーシングモデルであり、2WAY-FTホイールの開発段階から製品開発に参画したタイヤだ。

はたしてこの組み合わせはどのような性能を発揮するのか?





― インプレッション ―

「あらゆる走行シーンをカバーしてくれる優等生的なホイール」  仲沢 隆

踏み出しの軽さは、鮮烈というほどではない。しかし、いったんスピードに乗せて、平坦路を一定ペースで流してみると、チューブレスのメリットは誰にでも体感できるはずだ。とにかく、転がり抵抗が小さいのである。

インプレライダー・仲沢隆が丸一日、テストライドに取り組んだインプレライダー・仲沢隆が丸一日、テストライドに取り組んだ タイヤメーカーの説明によると、チューブレスはチューブが入ってないため、タイヤ接地面における変形時の摩擦抵抗が、クリンチャーやチューブラーと比べて少ないのだそうだ。結果として、ころがり抵抗が小さくなるというのである。これにEURUS 2-WAY FITのエアロ効果が加わるのであるから、まさに鬼に金棒だと言えよう。

このフィーリングは、特に中高速で巡航する時に良い感じだ。30km/hくらいで長距離を巡航しようと思った時、間違いなくこのホイールは素晴らしい相棒になる。レースだけでなく、ファストラン的なロングライドでも威力を発揮するだろう。

激坂をトルクをかけながら上るようなシーンで、このホイールは最高の性能を発揮してくれる。アルミ製の極太エアロスポークでガッチリと組まれたEURUS 2-WAY FITは、とても剛性感がが高く、トルクをかけて上る時でもホイールの変形がまったく感じられないのだ。まさに、踏んだ力がすべて推進力に変換され、路面に伝えられる感じだ。

ホイールの高い能力にハッチンソンのチューブレスタイヤもしっかり答えてくれる。満足できるペアリングだホイールの高い能力にハッチンソンのチューブレスタイヤもしっかり答えてくれる。満足できるペアリングだ 下りも素晴らしい。もともとエアロ効果が高いだけに、ハイスピードで下っている時には「ああ、このホイールは風を切っているな」と体感できるのである。実際、風を切っている音がかすかに聞こえてくるので、嫌がおうにもその気にされられる。

このホイールは用途を選ばない。レースからエンデューロ、週末のロングライドまで、平坦の高速走行からヒルクライム、ダウンヒルまで、あらゆるシチュエーションで優等生の顔を見せてくれる。

予算に余裕のある人は「ヒルクライム用の超軽量カーボンホイール」「平坦の高速走行用のディープリムホイール」など複数のホイールを揃えるという手もあるが、EURUS 2-WAY FIT1本があれば、あらゆる走行シーンをカバーしてくれるハズだ。





― スペック ―

EURUS 2-WAY FIT
リム チューブレス&クリンチャー 2-WAY FIT ウェルデッドジョイント マシーンンドサイド
フリーボディ カンパニョーロUD シマノHG
スポーク素材 アルミニウム
スポーク形状 エアロ
スポーク数 フロント 16本 リヤ 21本
スポークパターン フロント ラジアル リヤ G3ジオメトリー
重量 フロント660g リヤ890g 価格(税込み)161,700円


HUTCHINSON(700X23C)FUSION2-ROAD-TUBELESS
サイズ:700X23C
重量:290g
カラー:ブラック/シルバー/グレー
CASING:127TPI
ALL WEATHER

取り扱い:ダイナソア



インプレライダーのプロフィール

仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)仲沢 隆(自転車ジャーナリスト) 仲沢 隆(自転車ジャーナリスト)


ツール・ド・フランスやクラシックレースなどの取材、バイク工房の取材、バイクショーの取材などを通じて、国内外のロードバイク事情に精通する自転車ジャーナリスト。2007年からは大学院にも籍を置き、自転車競技や自転車産業を文化人類学の観点から研究中。



test&edit:仲沢 隆
test&photo:綾野 真