超級山岳オタカムでクライマックスを迎えた2014年ツール・ド・フランスの山岳決戦。第18ステージを圧倒的な力で制したヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)をはじめ、総合表彰台や山岳賞を懸けて争った選手たちのコメントを紹介します。

ステージ4勝目で総合優勝にまた一歩近づいたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)

ニエベを勢い良く追い抜いたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)ニエベを勢い良く追い抜いたヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waeleステージ4勝を飾るなんてファンタスティック。自分でも信じられない。パリが近づいている今、総合リードは揺るぎないものになっている。落ち着いているよ。昨日までのハードなステージを終えてからも調子は良かった。このピレネーで足跡を残しておきたくて、チームとして逃げグループに大きなタイム差を与えなかったんだ。自分が最強であると見せつけるのと同時に、ステージ優勝したかった。

超級山岳オタカム頂上でマイヨジョーヌを受け取ったヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)超級山岳オタカム頂上でマイヨジョーヌを受け取ったヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Tim de Waeleオタカムは2008年にも登っているのでよく知っていた。まるで山岳タイムトライアルだったよ。早めにアタックしようと思っている時にホーナーがアタック。彼とは因縁のライバル関係で、ステージ優勝を逃したくないという思いからすぐに反応した。ここまで延々とレースをコントロールしてくれたチームに勝利を捧げたい。

ニエベとのタイム差を知りたかったのに、今日は無線の調子が良くなくてうまく聞き取れなかった。ニエベは強力な選手であり、追いついてくると思ったんだ。

このツール・ド・フランスを楽しみながら走っている。2年前とは全く違う。2年前はブラドレー・ウィギンズ向きのコース設定で、距離の長いタイムトライアルで彼はリードを広げ、圧倒的なチーム力で山岳ステージを支配した。2年前と比べると今年のツールはずっと厳しい。第2ステージのような神経質なステージをはじめ、多くの厳しいステージが設定された。そのおかげで戦況が読みにくい複雑なレースになった。

シェフィールド(第2ステージ)からほぼマイヨジョーヌを失わずにここまできた。これもチームのサポート力のおかげだ。グランツールで序盤からリーダージャージを着るのはこれが初めてではない。例えば昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでは序盤から総合リードを得たものの、最終週にロドリゲスやバルベルデの断続的な攻撃を受けて総合首位を明け渡した。その教訓が生きている。緊張感を保ちながら、優位にレースを進める術を身につけた。

今年のクラシックシーズンで思うような結果を残すことが出来なかった。でも周到に準備して、良いチームとともにツールに出場した。7分という総合リードは日々の積み重ねの結果。ライバルたちからタイムを失うことがあっても、その翌日には取り返した。特にパヴェステージ(第5ステージ)で得た2分30秒のリードは大きい。

プレッシャーを感じながら、レースを見極めながら走った。精神的にもタフじゃないと闘えない。シーズンの中心にこのツールを据えたことも大きく影響している。他の選手がシーズンを通して色んなレースに出場しているのを尻目に、自分は完全にツールに集中した。

実を言うと、サイクリストとして自分につけられた最初のニックネームは「ピレネーのノミ」なんだ。子どもの頃、小柄な自分が他のサイクリストたちを蹴落としていく姿を見て、父親の友人が名付けた。でもその後につけられた「メッシーナ海峡の鮫」というニックネームが有名になって「ピレネーのノミ」は下火になった。今こうしてようやくピレネーで勝つことが出来たよ。

ステージ2位に入り、総合2位に浮上したティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)

超級山岳オタカムで攻撃を仕掛けるマイヨブランのティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)超級山岳オタカムで攻撃を仕掛けるマイヨブランのティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr) photo:Tim de Waele本当にもう疲れたよ。でも自分にグッジョブと言いたい。(トゥールマレーの)下りでのバルベルデのアタックは、彼の調子の悪さのサインだと思ったよ。ニーバリがアタックした時もパニックに陥ることなく、彼の動きに反応するのはあまりにもリスキーだと判断した。どうせすぐにレッドゾーンに達して失速するのがオチだ。

バルベルデとペローを引き離すために自分のタイミングでアタック。バルベルデからタイムを奪ったものの、ペローは振り切れなかった。マイヨブラン争いにおいてバルデを引き離せたのは良かった。

タイムトライアルで全てが決まる。総合2位で木曜日の夜を迎えるのも悪くない。でも重要なのは日曜日の夜にどのポジションにいるかだ。開幕からここまで積み上げてきたものを壊したくない。表彰台から陥落するなんてまっぴらだ。でも総合2位と総合4位のタイム差はたったの15秒。しかも3人の中で一番タイムトライアルが苦手なんだ。ここ数年でタイムトライアル能力を改善したので、良い状態で決戦に挑みたい。

山岳賞をほぼ確定させたラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)

ステージ3位に入る力走を見せたマイヨアポワのラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ)ステージ3位に入る力走を見せたマイヨアポワのラファル・マイカ(ポーランド、ティンコフ・サクソ) photo:Tim de Waele昨日のロングエスケープの疲労感が残っていて、調子が良いとは言えない状態だったので早めに動いた。もしかしたら仕掛けるのが早すぎたかも知れない。でもステージ3位に入ることが出来たので結果オーライだ。ここまでステージ2勝して、山岳ステージで2回トップスリーに入り、マイヨアポワ獲得という結果には本当に満足している。初ツール・ド・フランスにしては上出来。将来的にツールで勝てる選手になれるかもしれない。

総合3位に浮上したジャンクリストフ・ペロー(フランス、AG2Rラモンディアール)

バルベルデに対して総合リードを広げることが出来てよかったよ。それが今日の目標だった。脚に力が入らなかったけど今日は気合いで乗り切った。バニェール・ド・ルションでティボー(ピノ)がそうであったように、追い込んだ日の翌日には決まって苦しむことになる。

開幕前には考えられなかった総合表彰台のチャンスがそこにある。チームは一丸となって総合表彰台を狙う。ティボーには少しタイムを奪われたものの、まだ闘いは続く。タイムトライアルが終わるまでは何も分からない。疲労がたっぷり蓄積する3週目なので、総合は簡単にひっくり返ってしまう。

総合2位から総合4位にダウンしたアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)

ライバルたちの攻撃に失速するアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)ライバルたちの攻撃に失速するアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Tim de Waeleここからはリカバリーの闘いだ。今日は失速してしまったけど、今は誰もがリミッター近くで力を絞り出しながら前に進んでいる状態。正直言って疲れ切っているけど、タイムトライアルではその日の体調に大きく左右される。つまり調子の良さを取り戻すことが出来れば総合2位に返り咲くことは可能だ。

今日は決してドラマティックな一日ではなかった。ただただ苦しんで、登りでハンドルにぶら下がっていた。威厳をもってフィニッシュまで走りきるのがやっとだった。

総合6位のティージェイ・ヴァンガーデレン(アメリカ、BMCレーシング)

今日の走りは悪くなかった。「これが今年のツール最後の山岳ステージであり、決して落とすことは出来ない」という気概で挑んだ。オタカムでペースアップした時、振り返るとそこには楽な表情を浮かべるピノの姿があった。ピノは自分よりもずっと爆発力がある。どれだけテンポを上げても彼を引き離すことは出来なかった。

序盤から逃げ、敢闘賞を獲得したミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)

先頭で超級山岳トゥールマレー峠を登るミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)とブレル・カドリ(フランス、AG2Rラモンディアール)先頭で超級山岳トゥールマレー峠を登るミケル・ニエベ(スペイン、チームスカイ)とブレル・カドリ(フランス、AG2Rラモンディアール) photo:Tim de Waele感染症の影響で数日間調子を落としていた。今日は脚の調子が良かったのでアルプスに続いて2度目の挑戦に出た。でもニーバリのアタックは強烈で、総合リードを広げる走りに徹していたのに追いつくのは不可能だった。彼の力は飛び抜けている。ここまでのツールには満足しているよ。

ステージ0勝ながらマイヨヴェールを着るペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)

今日は登りの感触も良く、トゥールマレー峠を良いペースで登り切った。オタカムでは逆にペースをわざと落としたよ。明日から再びスプリンターとしてステージ優勝を狙う。ここまで自分向きのステージもいくつかあったのに、望んでいた優勝にはまだ手が届いていない。残されたチャンスは2回。全力を尽くすよ。ツールは他のレースと勝手が違うんだ。

ニーバリを讃えるアスタナのアレクサンドル・ヴィノクロフチームマネージャー

ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)を祝福するアレクサンドル・ヴィノクロフ氏ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)を祝福するアレクサンドル・ヴィノクロフ氏 photo:Tim de Waele偉大な勝利だ。チームの力を見せつけてくれた。ヴィンチェンツォは彼がボスであることを示したがっていた。そのために最初からステージ優勝を狙っていたんだ。チームメンバー全員を祝福したい。ヴィンチェンツォはチームの仕事を完璧な形で締めくくってくれた。

マイヨジョーヌを着て超級山岳で優勝するなんてファンタスティックだ。フルームとコンタドールとの闘いを想定していたので、彼らのリタイアが残念でならない。残り2日間、指をクロスして(成功を祈って)闘いたい。

text:Kei Tsuji