2014年7月7日、ツール・ド・フランス第3ステージはロンドン中心部のザ・マルを舞台にした大集団スプリントで締めくくられた。幾重にも連なった観客たちの前で、マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)が再び勝利。イギリスでの3日間を2勝目で締めくくった。



観客で覆われたフィンチングフィールドの街観客で覆われたフィンチングフィールドの街 photo:Tim de Waele


ツール・ド・フランス2014第3ステージツール・ド・フランス2014第3ステージ image:A.S.O.ヨークシャーでの2日間を終えたツールはロンドンまで南下。イギリス最終日はケンブリッジからロンドンまでの155kmだ。ツールがロンドンを訪れるのは7年ぶり2度目。

マイヨジョーヌのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)とクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)マイヨジョーヌのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)とクリス・フルーム(イギリス、チームスカイ) photo:Tim de Waele登場するカテゴリー山岳はゼロ。テムズ川が作り出した低地をプロトンが駆け抜ける。レース終盤はまるでロンドンの観光地巡り。テムズ川沿いから残り2km地点でビッグベンを曲がり、ウェストミンスター寺院からセントジェームス公園を通り、最後はバッキンガム宮殿前のロータリーを曲がって大通りザ・マルに突入する。

逃げるヤン・バルタ(チェコ、ネットアップ・エンデューラ)とジャンマルク・ビドー(フランス、ブルターニュ・セシェ)逃げるヤン・バルタ(チェコ、ネットアップ・エンデューラ)とジャンマルク・ビドー(フランス、ブルターニュ・セシェ) photo:Tim de Waele3日連続で逃げに選手を送り込んだのはブルターニュ・セシェ。集団先頭のビッグネームに混ざってニュートラルゾーンを走っていたジャンマルク・ビドー(フランス、ブルターニュ・セシェ)が飛び出すと、チェコTTチャンピオンのヤン・バルタ(チェコ、ネットアップ・エンデューラ)が合流。ワイルドカード二人組が逃げを試みた。

タイム差が4分15秒まで広がったところでマイヨジョーヌ擁するアスタナが本腰を入れて集団をコントロール。カテゴリー山岳が一つも設定されないスプリンター向きの平坦コースで、ロット・ベリソルとジャイアント・シマノ、FDJ.frが集団牽引に加わった。

ジ・チェン(中国、ジャイアント・シマノ)やジェレミー・ロワ(フランス、FDJ.fr)らの長時間牽引によって、ロンドンが近づくにつれて着々とタイム差は縮まる。主催者ASOが事前に通達していた通り中央分離帯やロータリーが連続するコースでも、集団のスピードは落ちなかった。

先頭ではチェコTTチャンピオンの真価を発揮したバルタが残り10kmで独走に持ち込むも、残り6kmで吸収。平日にも関わらず多くの観客が駆けつけたロンドン市内でスプリンターチームによるバトルが始まった。



声援を受けながらロンドンを目指すプロトン声援を受けながらロンドンを目指すプロトン photo:Kei Tsuji観客で覆われたフィンチングフィールドの街観客で覆われたフィンチングフィールドの街 photo:Tim de Waele
ビッグベンの前を通過するプロトンビッグベンの前を通過するプロトン photo:Kei Tsuji


ロット・ベリソルが積極的にメイン集団を牽引ロット・ベリソルが積極的にメイン集団を牽引 photo:Tim de Waeleカヴェンディッシュに代わるスプリンターとしてマーク・レンショー(オーストラリア)を起用したオメガファーマ・クイックステップが主導権を握り、トニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)先頭でテムズ川に沿って高速巡航。しかしライバルチームの抵抗にあってオメガファーマの隊列は崩れてしまう。

最終ストレートで先行するマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)最終ストレートで先行するマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ) photo:Tim de Waeleロット・ベリソルやジャイアント・シマノ、オメガファーマの三強が集団先頭で競い合い、残り2kmを切ったところでキッテル擁するジャイアント・シマノが先頭へ。教科書通りのリードアウトで、キッテルをザ・マルの最終ストレートで解き放った。

ザ・マルで両手を挙げるマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)ザ・マルで両手を挙げるマルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ) photo:Tim de Waeleペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)やマーク・レンショー(オーストラリア、オメガファーマ・クイックステップ)の追撃は届かず、先頭でスプリントを続けたキッテル。一日中働き続けたチームメイトに感謝しながら、今大会ステージ2勝目を飾ってみせた。

「去年シャンゼリゼで勝った時のような感情があふれている、夢に見たザ・マルでの勝利は格別だ」と、勢いに乗るキッテルは勝利を喜ぶ。これが自身ステージ6勝目。スプリントでは負け無しの強さを見せている。

「ここまで3戦2勝。でも何勝出来るかなんて具体的な数字は出せない。毎日調子を見ながら走って行くよ」。カヴェンディッシュが去った今、キッテルがスプリント戦線の主導権を完全に握っている。

サガンはステージ2位に沈んだものの、着実にスプリントポイントを稼いでポイント賞争いで断トツのトップに。その他、マイヨブラン(ヤングライダー賞)とマイヨアポワ(山岳賞)は持ち主を変えていない。選手たちは足早にロンドンの会場を後にし、フランス上陸の準備を整えた。





ツール・ド・フランス2014第3ステージ結果
1位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
3位 マーク・レンショー(オーストラリア、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
5位 アレクサンダー・クリストフ(ノルウェー、カチューシャ)
6位 ダニー・ファンポッペル(オランダ、トレックファクトリーレーシング)
7位 ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)
8位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、モビスター)
9位 ロメン・フェイユ(フランス、ブルターニュ・セシェ)
10位 ダニエル・オス(イタリア、BMCレーシング)
3h38'30"










マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)
2位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
3位 ミハエル・アルバジーニ(スイス、オリカ・グリーンエッジ)
4位 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー、BMCレーシング)
5位 クリス・フルーム(イギリス、チームスカイ)
6位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキン)
7位 アルベルト・コンタドール(スペイン、ティンコフ・サクソ)
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)
9位 ユルゲン・ファンデンブロック(ベルギー、ロット・ベリソル)
10位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
13h31'13"
+02"









マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
2位 マルセル・キッテル(ドイツ、ジャイアント・シマノ)
3位 ブライアン・コカール(フランス、ユーロップカー)
117pts
90pts
88pts


マイヨアポワ(山岳賞)
1位 シリル・ルモワンヌ(フランス、コフィディス)
2位 ブレル・カドリ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 イェンス・フォイクト(ドイツ、トレックファクトリーレーシング)
6pts
5pt
4pt


マイヨブラン(新人賞)
1位 ペーター・サガン(スロバキア、キャノンデール)
2位 ロメン・バルデ(フランス、AG2Rラモンディアール)
3位 ミカル・クヴィアトコウスキー(ポーランド、オメガファーマ・クイックステップ)
13h31'15"



チーム総合成績
1位 チームスカイ
2位 アスタナ
3位 BMCレーシング
40h33'45"
+12"
+14"


ステージ敢闘賞
ヤン・バルタ(チェコ、ネットアップ・エンデューラ)

text:Kei Tsuji in London, UK
photo:Kei Tsuji, Makoto Ayano, Tim de Waele