フォーカスの最高峰、イザルコの遺伝子を受け継ぎつつ、より高い汎用性をも兼ね備えた一台がカヨだ。

フォーカス CAYOライトウェイトフォーカス CAYOライトウェイト (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
イザルコ・エクストリーム、イザルコ・チームと比べると、やや肉厚なユニディレクショナルカーボンによるモノコック製フレームは、軽量・高剛性に、堅牢さが加味され、レースに対応する十分な性能を持ちながらも、乗り手のレベルを問わず高い安心感を与えてくれる。

フレームサイズごとに最適な剛性に調整するSSPSシステムや、ブレーキケーブルをごとフレームに内蔵してしまうアウターケーブル・イン・フレームシステムを採用することで、洗練された外観と上級の走りを両立している。

ヘッドチューブ周辺 やや肉厚のチューブにより構成されるヘッドチューブ周辺 やや肉厚のチューブにより構成される 完成車のハンドル周りには日本人に最適設計されたダイワ精工オリジナルのD-Fitがセットされる完成車のハンドル周りには日本人に最適設計されたダイワ精工オリジナルのD-Fitがセットされる


比較的肉厚なチュービングは、より高い振動減衰性を実現し、ロングライドの楽しさをいっそう乗り手に楽しませてくれる。カヨの、コンポーネントやパーツ構成によって用意された各ラインナップは、フレームの仕上げ等にもちろん差はなく、どのモデルもフォーカスクオリティを十分堪能できる一台といえる。

リアブレーキケーブルはトップチューブを貫通させる方式リアブレーキケーブルはトップチューブを貫通させる方式 わずかにスローピングしたトップチューブ。シートへつながるラインが美しいわずかにスローピングしたトップチューブ。シートへつながるラインが美しい


今回のインプレッションではカヨ・ライトウェイトに乗った。完成車ではアルテグラSL仕様だが、2010では新型アルテグラに変わる。本国ではライトウェイトホイールつき完成車でも販売されることからフレームにこのネーミングがされる。

極限性能ばかりではなく、フォーカスらしい高バランスなライディングフィールを長く手軽に味わいたい人には、カヨがベストチョイスかもしれない。

フォーカスがオリジナル設計したカーボンフォークフォーカスがオリジナル設計したカーボンフォーク オーソドックスにして扱いやすいシェイプだオーソドックスにして扱いやすいシェイプだ チェーンステイはオーソドックスな形状チェーンステイはオーソドックスな形状






― インプレッション ―



「ミドルからエキスパートまで満足する性能。走りはイザルコに劣らない」  三船雅彦


カヨの第一印象は、まず使いやすさ。この値段(完成車で約30.5万円)でほぼイザルコと同じ性能が手に入るのは、まさにバーゲンプライスだ。

イザルコからカヨに乗りかえると、さすがにフレームの重量増が気になるが、キャラクター的に両者は一本線の上にある。
加速性能、衝撃吸収性、そしてコーナリングなどなど、全ての要素のバランスに共通項を見出すことができるのだ。

トップグレードとしてのイザルコの位置は不動ではあるが、一般的なユーザーなら、たとえ相当のレベルに達していたとしても、カヨで十分満足できるだろうと思えるほど、フレーム剛性では卓越した性能を持っている。

カヨには、フォーカスオリジナルのフロントフォークがアッセンブルされている。これは別にコスト的な制約での選択などではなく、ともすればイザルコを凌駕しかねぬ、カヨのフレーム剛性とのマッチングを考慮したうえでの結果だと思う。

仮にたとえば、カヨに3Tフンダフォークをアッセンブルしたなら、剛性的なバランスでは劣ってしまうはずだ。フレーム&フォークの良好なバランスは、実際乗っても感じることができる。ダンシング時のフィールや、衝撃吸収の仕方、そしてハンドリングの癖も少ない。

これほどしっかりしたフレームとフォークならば、思い切って硬めのホイールを組み合わせて、ソリッドなライディングフィールを追求すると、カヨのキャラをいっそう際立たせることができるはずだ。ミドルグレードならではの、強度と剛性とのバランスに優れたカヨは、中級者にはもちろん、パワー自慢のエキスパートも、間違いなく満足できるはずだ。



「上位機種にまったく劣らぬ走りが堪能できる」 桜沢淳樹


「毎日ガンガン乗る実践派にオススメしたい」桜沢淳樹「毎日ガンガン乗る実践派にオススメしたい」桜沢淳樹 フレームチューブにやや肉厚なものを使っているというカヨは、踏み込んだ時の「しっかり感」でイザルコに優る。
とはいえ、ミドルグレードモデルの宿命で、やや重量的なハンデを負うカヨは、加速感自体はイザルコ的な潔さに欠ける。剛性的には不満はないから、ペダリングパワーが逃げている感じはまったくしないが、「勢いがつくまでに間がある」とでも言うべきか…。

ともかく、換言すれば感覚的にマイルドとも言えるこのフィールは、しかし加速していくにつれ小さくなり、やがては忘れ去られてしまい、後に残るのは、脚力以上の速度を示したコンピュータの画面だけ。

剛性あふれるフレームは、速度に乗ればここぞとばかり、レスポンシブルに走ってくれる。アタックの頻発するレースなどで、この豪傑キャラは活きてくるはずだ。フロントフォークは、上級モデルのイザルコと同じものがアッセンブルされている。

この高剛性なオリジナルフロントフォークは、カヨとのマッチングによりアドバンテージを感じさせ、強度的にも優位を得ている。一台を長く楽しみたい人や、毎日ガンガン乗りたい向き、あるいはライディングで余計な気を使いたくない場合などは、イザルコよりカヨが優っているだろう。

重量的なハンデだって、大半はアッセンブルパーツによるものだから、お宝パーツ次第でその欠点もほぼ埋まってしまうだろう。もっとも、オリジナルアッセンブルに不満を覚えるようになるには、相当のキャリアを積む必要があるし、そもそもカヨのターゲットは、そうした経験値の少ない人たちのはずだから、問題視すること自体が問題かもしれないが。

剛性、強度の両面でしっかりしているカヨだけに、多少手荒く扱っても、不安や不満は出ないはずだ。例えば、道のギャップに無防備に飛び込んでも、極端には落車しても、いわゆるハイエンドモデルより致命的な損傷を受ける可能性は少なそうだ。

ダウンヒルや集団走行時などでも、過度に正確無比な入力を要求してはこない。過ぎたマスの集中や軽量化が、乗り手の入力に過敏な車体を作り上げてしまうのは、モーターサイクルの世界では知られた話だ。今、レーシングバイクでも各社のトップモデルはそうなりつつある。反応がシビアすぎるのだ。

ところで本国でのカヨ・ライトウェイトには、名前通りにあのライトウェイトカーボンホイールがアッセンブルされているという。
ラインナップ上では中級車種であるカヨに、超実戦ホイールであるライトウェイト仕様のモデルがあるという事実が、その素性を端的に物語っているとは言えないだろうか? つまりカヨはハイエンドバイクとしても認知されているのだ。

闇雲な軽さの追求に、一家言ある向きに、ぜひ乗って欲しいのがカヨだ。






フォーカス CAYOライトウェイトフォーカス CAYOライトウェイト (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp


CAYO LIGHT WEIGHT カヨ・ライトウエイト

<フレームスペック>
カラー:ホワイト
サイズ:48,50,52,54
フレーム:フォーカス ライトUDカーボン
フォーク:レースカーボンUD×カーボンステアー

<完成車パーツスペック>
BBセット:シマノ アルテグラSL
ギアクランク:シマノ アルテグラSL
ブレーキ:シマノ アルテグラSL
フロントディレーラー:シマノ アルテグラSL
リアディレーラー:シマノ アルテグラSL
シフター/ブレーキレバー:シマノ アルテグラSL
スプロケット:シマノ アルテグラSL
ヘッドセット:FSA INTEGRAL 41.8
ハンドルバー:D-FITS
ハンドルステム:D-FITS
サドル:Arione K-IUM black
シートピラー:3T DORIC TEAMcarbon
ホイール:シマノ WH-RS10
タイヤ:VITTORIA
ペダル:NONE

価格
FOCUS CAYO LIGHT WEIGHT ULTEGRA
税込価格 ¥305,550
税込価格 ¥308,700コンパクト

FOCUS CAYO LIGHT WEIGHT FRAMESET
税込価格 ¥250,950



インプレライダーのプロフィール



三船雅彦(みふねまさひこ)三船雅彦(みふねまさひこ) 三船雅彦(みふねまさひこ)

9シーズンをプロとして走り(プロチームとの契約年数は8年)プロで700レース以上、プロアマ通算1,000レース以上を経験した、日本屈指の元プロサイクルロードレーサー。入賞回数は実に200レースほどにのぼる。2003年より国内のチームに移籍し活動中。国内の主要レースを中心に各地を転戦。レース以外の活動も精力的に行い、2003年度よりJスポーツのサイクルロードレースではゲスト解説を。特にベルギーでのレースにおいては、10年間在住していた地理感などを生かした解説に定評がある。2005年より若手育成のためにチームマサヒコミフネドットコムを立ち上げ、チームのオーナーとしてチーム運営も行っている。

過去数多くのバイクに乗り、実戦で闘ってきたばかりでなく、タイヤや各種スポーツバイクエキップメントの開発アドバイザーを担う。その評価の目は厳しく、辛辣だ。選手活動からは2009年を持って引退したが、今シーズンからはスポーツバイク普及のためのさまざまな活動を始めている。ホビー大会のゲスト参加やセミナー開催にも意欲的だ。
マサヒコ・ミフネ・ドットコム


桜沢淳樹(さくらざわ・あつき)桜沢淳樹(さくらざわ・あつき) 桜沢淳樹(さくらざわ・あつき)

本職はフリーのフランス語通訳で、文学書などの翻訳・監修をつとめる。専門誌等のバイクインプレッション記事の編集&ライダ(タ)ー経験が豊富。ツール・ド・フランスの文化や機材に精通しており、ツール現地帯同取材も数度経験。ホビーサイクリストとしても(レースには一切出ないが)トップアマチュアレベルの脚力をもつ。スポーツバイクのコレクターおよびマニアで、2009年には自分でカーボンパイプとエポキシ樹脂を用いてカーボンフレームを自作してしまった。



text:桜澤淳樹
edit&photo:綾野 真