今週末に迫った全日本選手権。男子エリートは別府史之(トレックファクトリーレーシング)をはじめ優勝経験者5人が出場する。清水都貴(ブリヂストンアンカー)や、増田成幸(宇都宮ブリッツェン)ら、ここ3年の表彰台経験者がどう戦うかにも注目だ。



岩手山を臨むロードレースのコース岩手山を臨むロードレースのコース photo:Hideaki.TAKAGI
6月27(土)、28日(日)に岩手県八幡平市で行なわれる全日本選手権個人ロードレース。コースは2011年、2012年に行われたものと同一で、その2年とも最後の坂を駆け上がた先で実力者によるゴール勝負となっている。現チャンピオンの新城幸也(ユーロップカー)はツール・ド・フランス出場へ専念するため欠場し、2006年と2011年のチャンピオン、別府が出場する。特に2011年と同じ岩手の会場であり、途中逃げ続け、吸収後にさらに抜け出して4人のゴール勝負を制している。今年も優勝の最有力候補だ。

女子は現チャンピオンの與那嶺の力が抜きん出ているが、集団走行に有利な区間の長いこのコースで、いかに独走しての勝利を狙うか、そしてライバル達はいかに戦うかが見どころだ。



過去に八幡平でチャンピオンとなった別府史之と土井雪広が出場

TTとロードの2冠を狙う別府史之(トレックファクトリーレーシング)TTとロードの2冠を狙う別府史之(トレックファクトリーレーシング) (c)Makoto.AYANO2年前の八幡平を制した土井雪広(チーム右京)2年前の八幡平を制した土井雪広(チーム右京)


宮澤崇史(ヴィーニファンティーニ・NIPPOデローザ)は秋丸湧哉と山本元喜を従え出場宮澤崇史(ヴィーニファンティーニ・NIPPOデローザ)は秋丸湧哉と山本元喜を従え出場 photo:tourdetw/Sonoko.Tanaka今年は5人の全日本チャンピオン経験者が出場する。ツール・ド・フランス出場に注力する現チャンピオンの新城幸也(ユーロップカー)は欠場だが、ここ八幡平での2011年チャンピオン別府史之(トレックファクトリーレーシング)と2012年チャンピオンの土井雪広(チーム右京)には特に注目が集まる。

今大会最多の9名をエントリーさせた愛三工業レーシングのエースは西谷泰治今大会最多の9名をエントリーさせた愛三工業レーシングのエースは西谷泰治 photo:Kei.Tsuji2011年の別府は自力で逃げへのブリッジを成功させ、集団に戻ってから力勝負で優勝という圧倒的な力を示した。懸念材料は単騎での参戦であることだが、2011年に継ぐTTとロードの2冠へ向けてコンディションは万全だ。土井は6月22日まで行われたツアー・オブ・イランで総合10位となっており、八幡平へ直接乗り込んでいる。

全日本で2年連続表彰台を獲得している増田幸成(宇都宮ブリッツェン)全日本で2年連続表彰台を獲得している増田幸成(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki TAKAGI2010年チャンピオンで今年のアジア選手権4位の宮澤崇史(ヴィーニファンティーニ・NIPPOデローザ)は秋丸湧哉、2010年2011年U23チャンピオン、そして先のTTでエリート3位となった山本元喜とともに出場する。

2009年チャンピオン西谷泰治率いる愛三工業レーシングは、最大勢力となる9名で出場する。急速に頭角を現している中根英登らとともに、イランから帰国したそのままで現地入りする。2002年チャンピオンの鈴木真理(宇都宮ブリッツェン)は一昨年の大腿骨骨折から復帰途中にあり、1週間前のレースでは僅差の2位に。チームとしては2012年2位、2013年3位の増田成幸を中心に戦う見込みだ。

ブリヂストンアンカーは7名をエントリーリストに連ねた。全日本を3位、3位、2位と実績のある清水都貴を中心に、チームは2004年の田代恭崇氏以来のタイトル獲得に向け一丸となり挑む。1週間前のレースでチームも清水も好調さを確認できており、有力候補の一角だ。

シマノレーシングは畑中勇介を中心に、展開により吉田隼人、力をつけている入部正太朗を軸に戦う。復調の兆しを見せ、TTでは別府に継ぐ2位に入った佐野淳哉(那須ブラーゼン)はコース的にも適性がある。

全日本で3度の表彰台経験を持つ清水都貴(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム)全日本で3度の表彰台経験を持つ清水都貴(ブリヂストンアンカーサイクリングチーム) photo:Hideaki TAKAGI調子を上げつつある佐野淳哉(那須ブラーゼン)。金曜日のTTで2位に入った調子を上げつつある佐野淳哉(那須ブラーゼン)。金曜日のTTで2位に入った (c)Makoto.AYANO

前週のJBCF西日本クラシックを制した畑中勇介(シマノレーシング)前週のJBCF西日本クラシックを制した畑中勇介(シマノレーシング) photo:Hideaki TAKAGIMTBクロスカントリーからスポット参戦する山本幸平(スペシャライズド)MTBクロスカントリーからスポット参戦する山本幸平(スペシャライズド) (c)Makoto.AYANO


また、MTBクロスカントリーで全日本6連覇中の山本幸平(スペシャライズドレーシングチーム)は注目度ナンバーワンの存在。単騎でのロード参戦だが、抜きん出た体力がすべてをカバーしそう。その走りは全体の展開さえも左右する可能性がある。そしてふだん海外のコンチネンタルチームで走る選手も帰国参戦し、アモーレ・エ・ヴィータに所属する菱沼由季典や、ヴェランクラシック・ドルチーニ所属のシクロクロス全日本王者、竹之内悠がスタートラインに並ぶ。



若き女王、與那嶺恵理が連覇を狙う女子エリート

新たなスポンサーを獲得し、連覇へ意欲を高める與那嶺恵理(サクソバンクFX証券)新たなスポンサーを獲得し、連覇へ意欲を高める與那嶺恵理(サクソバンクFX証券) (c)Makoto.AYANO女子エリートは現チャンピオンの與那嶺と、萩原麻由子(Wiggle HONDA)が有力候補だろう。與那嶺にとってここ八幡平は2012年に2位となりメジャーデビューした場所だ。

当初は與那嶺が絶対的に有利かと思われていたが、先のTT選手権では萩原麻由子(Wiggle HONDA)が1分差をつけて優勝しており、現状では単純な独走力であれば萩原のほうが上か。昨年2位の金子広美(イナーメ信濃山形)、3週間前の学生個人ロード覇者・合田祐美子(早稲田大)、崎本智子(ナカガワAS.K'デザイン)、牧瀬翼(チームあさひ)、針谷千紗子(Live GARDEN BICI STELLE)らが続く。展開次第では與那嶺に対抗するに十分足りる実力がある。

TTに続きロードレースでも女王奪還を目指す 萩原麻由子(Wiggle HONDA)TTに続きロードレースでも女王奪還を目指す 萩原麻由子(Wiggle HONDA) (c)Makoto.AYANO昨年2位の金子広美(イナーメ信濃山形)も女王の座を狙う昨年2位の金子広美(イナーメ信濃山形)も女王の座を狙う photo:Hideaki TAKAGI

カテゴリーの枠を越え、エリートでも活躍を見せる黒枝士揮(鹿屋体育大)カテゴリーの枠を越え、エリートでも活躍を見せる黒枝士揮(鹿屋体育大) photo:Hideaki.TAKAGIJBCF富士山ヒルクライムで2位に入り、U23リーダージャージを着る堀孝明(宇都宮ブリッツェン)JBCF富士山ヒルクライムで2位に入り、U23リーダージャージを着る堀孝明(宇都宮ブリッツェン) photo:Hideaki TAKAGI


また男子U23はエリート以上に展開の読めない混戦となるはず。有力候補が多く、展開によって着順が大きく左右されるだろう。鹿屋体育大学は黒枝士揮(ヴィーニファンティーニ・NIPPOデローザ)、現チャンピオンの徳田鍛造、インカレチャンピオンの徳田優、昨年のジュニアチャンピオンでありツール・ド・シンカラでステージ3位に入った黒枝咲哉と強者が揃う。

男子ジュニア最有力候補の石上優大(横浜高校)男子ジュニア最有力候補の石上優大(横浜高校) photo:Hideaki TAKAGI対するは日本大勢から近谷涼か。個人追い抜きを4分35秒で走り、上りゴールのチャレンジロードU23クラスで優勝している。続いて片桐善也は学生個人ロード2位。その覇者・秋田拓磨(朝日大)も有力。Jプロツアーで2位など上位に食い込む堀孝明(宇都宮ブリッツェン)、金井誠人(明治大)らにも期待がかかる。

金曜のTTを制した梶原悠美(筑波大付属坂戸高)金曜のTTを制した梶原悠美(筑波大付属坂戸高) (c)Makoto.AYANO男子ジュニアもJCF強化指定選手を中心に強豪が揃う。まずは6月22日まで行われたネイションズカップでステージ6位総合14位とポイント獲得の石上優大(横浜高)。さらに山本大喜(鹿屋体育大)、2012年のU17チャンピオン・松本祐典(明治大)、橋詰丈(昭和第一学園高)、小山貴大(前橋育英高)ら。強豪の北桑田高からは孫崎大樹、草場啓吾、安田開らが名を連ねる。

男子U17・15では日野竜嘉(松山聖陵高)、蠣崎優仁(EQADS)、大町健斗(チームサイクルプラス)、黒澤虎南(VC FUKUOKA)ら。女子ジュニアは金曜のTTを制した梶原悠未(筑波大坂戸高)を筆頭に、坂口聖香(日本体育大)、谷伊央里(日本体育大)らが有力候補だ。

最有力候補の別府史之と與那嶺恵理の両名は順当に全日本を制すことはできるのか、あるいはそれを阻止するのは誰か。単調なコースだけに天候も気になるところで、土曜日は曇りながら雨はふらない見込みで、日曜は弱い雨が終日降り続く予報だ。長距離かつ雨天となれば、悪コンディションに強いタフな選手に展開が向くだろう。今年も6月最終週末が熱い。



全日本選手権個人ロードレース2014 日程

6月28日(土)
7:00~ 7:45 U23、MJ、MU17+MU15、WJ+WU17 コース試走
7:30~ 道路交通規制開始
7:00~ 7:40 MU17+MU15、WJ+WU17 出走サイン 岩手山焼走り国際交流村:駐車場
7:50~ MU17+MU15、WJ+WU17 開会式スタート地点
8:00~ MU17+MU15 スタート 79.0 km (15.8 km× 5 周)
8:05~ WJ+WU17 スタート 63.2 km (15.8 km× 4 周)
10:00~ 10:40 U23、MJ 出走サイン 岩手山焼走り国際交流村:駐車場
10:45 (予定) MU17+MU15、WJ+WU17 表彰式:岩手山焼走り国際交流村:焼走りの湯特設テント
11:00~ MU23 スタート173.8 km (15.8 km× 11 周)
11:05~ MJ スタート126.4 km (15.8 km× 8 周)
16:00 (予定) MJ、U23 表彰式:岩手山焼走り国際交流村:焼走りの湯特設テント
15:30~ 16:00 ME、WE ライセンスコントロール・ゼッケン配布
16:30~ 17:00 ME、WE ライダーズ・ミーティング
17:00~ 17:30 メディア・ミーティング

6月29日(日)
7:00~ 7:45 ME、WE コース試走
7:30~ 道路交通規制開始
7:00~ 7:45 ME、WE 出走サイン岩手山焼走り国際交流村:駐車場
7:50~ ME、WE 開始式 スタート地点
8:00~ ME スタート252.8 km (15.8 km×16 周)
8:05~ WE スタート126.4 km (15.8 km× 8 周)
15:20 (予定) ME、WE 表彰式:岩手山焼走り国際交流村:焼走りの湯特設テント



text:Hideaki.Takagi, So.Isobe