久々の雨に濡れたトルコの道路はスケートリンクのように滑りやすい凶器に変わった。ツアー・オブ・ターキー第4ステージは、危険なコースに対する選手たちの抗議により一時中断。状況が改善されたため再スタートが切られ、マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)が3勝目を飾った。



スタートラインに並んだレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)らスタートラインに並んだレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)ら photo:Kei Tsuji
リーダージャージを着て登場したレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)リーダージャージを着て登場したレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス) photo:Kei Tsujiレースディレクターによるレーススタートのサインを待つレースディレクターによるレーススタートのサインを待つ photo:Kei Tsuji


フォトグラファーが見つめる先にプロトンフォトグラファーが見つめる先にプロトン photo:Kei Tsujiエルマリ頂上決戦から一夜明け、いつもより遅めの午後1時にスタートが切られた第4ステージ。大会最短の132kmコースには3級山岳といくつかの小さな登りが設定されている。残り12km地点で標高250mほどの丘を越えて、マルマリスの街に向かって高速ダウンヒルをこなすお決まりのレイアウトだ。

地中海を背にコフィディス率いるプロトンが進む地中海を背にコフィディス率いるプロトンが進む photo:Kei Tsuji海に白波が立つほどの強風に吹かれながら、晴れ渡ったフェティエをスタート。ほどなくしてマキシム・ベルコフ(ロシア、カチューシャ)ら5名の逃げグループが出来上がる。これをスプリンターチームが追う台本通りの展開になると思われたが、32.5km地点の3級山岳突入と同時に降り始めた雨が波乱を呼んだ。

前日のレースレポートでも触れたように、トルコの道路は小石が敷き詰められた凸凹路がほとんど。小石の上を跳ねるように走るため、タイヤは点と点を繋ぐように接地する。走行抵抗が大きいくせに滑りやすいという代物だ。

そこに久々の雨が降ったため、路面に広がっていた油分や汚れが浮かび上がり、極めて摩擦抵抗の小さいスリッピーな路面が出来上がった。

あまりのグリップの無さに、多くの選手が3級山岳の沿道に止まってタイヤの空気圧を下げる姿も。しかし、空気圧以前の問題として、下りが危険すぎた。



逃げていたフレデリック・ベッカールト(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)が登りで止まって空気圧を落とす逃げていたフレデリック・ベッカールト(ベルギー、ワンティ・グループグベルト)が登りで止まって空気圧を落とす photo:Kei Tsuji雨に濡れた下りコーナーで落車が発生雨に濡れた下りコーナーで落車が発生 photo:Kei Tsuji
リーダージャージのレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)が止まれずに突っ込むリーダージャージのレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)が止まれずに突っ込む photo:Kei Tsuji
リーダージャージを着るレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)が下りで落車リーダージャージを着るレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)が下りで落車 photo:Kei Tsuji駆け抜けたメカニックも滑って止まれない駆け抜けたメカニックも滑って止まれない photo:Kei Tsuji


コミッセールらと話すマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)コミッセールらと話すマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Kei Tsuji昨年の大会で別府史之(当時オリカ・グリーンエッジ)が落車リタイアに追い込まれた3級山岳の下りでまたもや落車が多発。雨でブレーキが利かない影響で次から次へと連鎖的に落車が発生する。その中にはリーダージャージを着るレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)の姿もあった。

沿道には穫れたてのオレンジが並ぶ沿道には穫れたてのオレンジが並ぶ photo:Kei Tsujiあまりにも多くの落車が発生し、集団が完全にばらけてしまったため、3級山岳を下りきったところでレースが一時中断する。選手たちがチームカーに避難する中、ポイント賞ジャージを着るカヴェンディッシュが選手を代表してコミッセールやレースディレクターとの交渉にあたった。

リーダージャージのレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)が濡れたコーナーをクリアリーダージャージのレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)が濡れたコーナーをクリア photo:Kei Tsuji「小石混じりの路面は信じられないほど滑りやすい。登っている段階ですでに後輪が滑っていた。数えきれないほど落車が発生して、集団がバラバラになっていたので、レースの中断は賢明な判断だったと思う。選手たちの安全が優先されるべきだ。『最後の下りもこんな様子だったら中止にする』という条件で再スタートした」とカヴェンディッシュは振り返る。

諦めずに逃げ続けるルイス・マスボネット(スペイン、カハルーラル)諦めずに逃げ続けるルイス・マスボネット(スペイン、カハルーラル) photo:Kei Tsuji一時はレース中止も囁かれたが、天候が好転するとの情報もあり、ニュートラル(逃げと集団がまとまって走行)扱いで再スタート。しばらくして雨が上がり、路面がドライに戻ったため、逃げが本来のタイム差を得た状態で再スタートした。

再び3分差で逃げる5名。しかしリーダーチームのコフィディスに加えてオメガファーマ・クイックステップやロット・ベリソルが牽引するメイン集団が淡々とそのリードを削り取り、残り11kmでタイム差はゼロになる。

人口3万人の観光地マルマリスで繰り広げられたゴールスプリント。10x20cmほどのブロックが敷かれた最終ストレートでオメガファーマ・クイックステップのトレインが発進する。ペタッキ、レンショー、カヴェンディッシュの黄金ラインはこの日も他を寄せ付けなかった。

「今日もチームの走りが素晴らしかったので、自分は何もしなくてよかった。残り100mでマーク(レンショー)の後ろからスプリントしただけ。スピードが上がりきっていたので、そこから加速出来なかったほど」と、スプリントで3戦3勝を飾ったカヴェンディッシュ。無敗のハットトリックで勢いづいている。

リーダージャージのターラマエは危険な一日を集団で乗り切った。3級山岳の下りでの落車についてターラマエは「道路は非常にスリッピーだった。あんなにスリッピーな路面は初めて。落車しないように徐行していたのに、あちこちで落車が発生。目の前で落車した選手を避けることが出来ずに落車した。右膝を打ったけど問題ないよ」とコメントしている。

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3本指を立ててフィニッシュするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)3本指を立ててフィニッシュするマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ) photo:Kei Tsuji
第4ステージのトップスリー、3位レンショー、優勝カヴェンディッシュ、2位リケーゼ第4ステージのトップスリー、3位レンショー、優勝カヴェンディッシュ、2位リケーゼ photo:Kei Tsujiリーダージャージを守ったレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)リーダージャージを守ったレイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス) photo:Kei Tsuji



ツアー・オブ・ターキー2014第4ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)
2位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)
3位 マーク・レンショー(オーストラリア、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、MTNキュベカ)
5位 エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、キャノンデール)
6位 イェツ・ボル(オランダ、ベルキン)
7位 アルドイノ・イレシチュ(スロベニア、ユナイテッドヘルスケア)
8位 マルコ・ハラー(オーストリア、カチューシャ)
9位 アフメト・オルケン(トルコ、トルク・セケルスポール)
10位 ミカエル・ファンスタイエン(ベルギー、トップスポートフラーンデレン)
3h14'23"










個人総合成績
1位 レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)
2位 アダム・イェーツ(イギリス、オリカ・グリーンエッジ)
3位 ロメン・アルディ(フランス、コフィディス)
4位 ルイスレオン・サンチェス(スペイン、カハルーラル)
5位 メルハウィ・クドゥス(エリトリア、MTNキュベカ)
6位 アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)
7位 ファンホセ・コーボ(スペイン、トルク・セケルスポール)
8位 ダヴィデ・フォルモロ(イタリア、キャノンデール)
9位 エンリコ・バルディン(イタリア、バルディアーニCSF)
10位 アレクサンドル・ディアチェンコ(カザフスタン、アスタナ)
16h00'54"
+06"
+38"



+43"
+44"



ポイント賞
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、オメガファーマ・クイックステップ)

山岳賞
レイン・ターラマエ(エストニア、コフィディス)

ビューティーズオブターキースプリント賞
マッティア・ポッツォ(イタリア、ネーリソットリ)

チーム総合成績
コフィディス

text&photo:Kei Tsuji in Marmaris, Turkey