連載でお届けするプロバイクレポート。今回から4回に渡って「北の地獄」の異名を持つパリ~ルーベを走ったバイクのディテールに迫る。第1弾は初優勝を果たしたテルプストラ擁するオメガファーマ・クイックステップ、ユーロップカー、モビスター、IAMサイクリング、ネットアップをピックアップする。



オメガファーマ・クイックステップ < スペシャライズド S-Works Roubaix SL4 >

トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)のスペシャライズド S-Works Roubaix SL4トム・ボーネン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)のスペシャライズド S-Works Roubaix SL4 photo:Makoto.AYANO
鉄壁のチームワークでニキ・テルプストラ(オランダ)が初優勝を果たしたオメガファーマ・クイックステップは、全員がスペシャライズドのエンデュランスモデル「S-Works Roubaix SL4 」を使用。フロントフォークとシートステーの途中に挿入されたZERTZ(ゼルツ)と呼ばれる振動吸収材が特徴的なバイクで、従来モデルのSL2とSL3を合わせてパリ~ルーベでは過去10年で5回の優勝を誇る、まさに名車と言えよう。エースのトム・ボーネン(ベルギー)はカスタムジオメトリーのスペシャルバイクを使用したようだ。

ボーネンのサドルはこれまでと同じくスペシャライズドながらもCHICANEからROMINに変更されたボーネンのサドルはこれまでと同じくスペシャライズドながらもCHICANEからROMINに変更された photo:Makoto.AYANOボーネンはジップのフルカーボン製ステム SLスプリントをチョイスボーネンはジップのフルカーボン製ステム SLスプリントをチョイス photo:Makoto.AYANO

タイヤはFMBのケーシングにスペシャライズドのコンパウンドを組合せた30mm幅の特別モデルタイヤはFMBのケーシングにスペシャライズドのコンパウンドを組合せた30mm幅の特別モデル photo:Makoto.AYANOクランクアームはスペシャライズド。チェーンリングにはスラムのロゴがあるものの、市販品とは異る仕様だクランクアームはスペシャライズド。チェーンリングにはスラムのロゴがあるものの、市販品とは異る仕様だ photo:Makoto.AYANO


コンポーネントはスラムRED22をメインに、クランクアームのみスペシャライズドS-Worksとされている。なお、チェーンリングには「SRAM」のロゴが入っているものの、市販品には無い変速ピンの打ち方がなされていた。ホイールは45mmハイトのジップ 303 Firecrestで、組み合わせられるタイヤはロンド・ファン・フラーンデレンより投入される、FMBのケーシング+スペシャライズドのGriptonコンパウンドのスペシャルモデルだ。

タイヤの幅はフロントが28mm、リアが30mmであった。なお、ブレーキアーチはノーマルタイプが装着されており、特にリアタイヤとのクリアランスはごく僅か。小石等が挟まれば即故障になりかねないが、そのリスクを上回る程のメリットがあると判断した上でのセッティングということだろう。

ニキ・テルプストラの優勝バイク  S-Works Roubaix SL4
ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)のスペシャライズド S-Works Roubaix SL4ニキ・テルプストラ(オランダ、オメガファーマ・クイックステップ)のスペシャライズド S-Works Roubaix SL4 photo:Makoto.AYANO
ハンドル、ステム、シートポストはホイールと同じくジップで統一され、バーテープは2重若しくは厚手に巻かれていた。サドルはスペシャライズドで、テルプストラはCHICANEを選択。ボトルケージはタックス TAO。ペダルはカーボン製板バネを搭載するルック KéO Bladeだ。チームでは新旧モデル使用者が入れ混じっていた。



ユーロップカー < コルナゴ Cross Prestage、CX-ZERO >

ビョルン・トゥラウ(ドイツ、ユーロップカー)のコルナゴ Cross Prestageビョルン・トゥラウ(ドイツ、ユーロップカー)のコルナゴ Cross Prestage photo:Makoto.AYANO
アシストブレーキレバーを装着するアシストブレーキレバーを装着する photo:Makoto.AYANOカンチブレーキのインナーワイヤーには有線式サイクルコンピューターのケーブルが巻かれるカンチブレーキのインナーワイヤーには有線式サイクルコンピューターのケーブルが巻かれる photo:Makoto.AYANO


ユーロップカーは前週開催のロンドで投入したコルナゴのエンデュランスモデル「CX-ZERO」に加え、シクロクロスバイク「Cross Prestage」の2モデル体制でパリ~ルーベを戦った。なお、ユーロップカーがCross Prestageを使用するのは前身のブイグテレコム時代からのことだ。

ヴァンサン・ジェローム(フランス、ユーロップカー)のコルナゴ CX-ZEROヴァンサン・ジェローム(フランス、ユーロップカー)のコルナゴ CX-ZERO photo:Makoto.AYANO
コンポーネントはサポートを受けるカンパニョーロで、電動式のSUPER RECORD EPSや先日発表されたばかりの機械式のハイエンドモデルSUPER RECORD RS、旧型RECORDなど選手によって異なる。また、EPS装着バイクの中には、アウトフロア式のサイクルコンピューターマウントのバーエンドシフターを装着し、ハンドル上部での手元変速システムを実現したものもあったようだ。

ホイールもコンポーネントと同じくカンパニョーロで、リムハイトは選手によって異なる。また、50mmハイトのBORAを履いたバイクの中にはプロユースモデルの「TWO ULTRA」ではなく、ハブ素材をカーボンからアルミに変更し販売価格を抑えた「ONE」が装着されたバイクの姿も。破損する可能性が高いパリ~ルーベにおいては懸命なアッセンブルと言えよう。組み合わせられるタイヤはラインと杉目を組合せたトレッドを持つのハッチンソンで、銘柄や太さなどは明記されていなかった。

ジェロームは機械式のSUPER RECORD RSをチョイスジェロームは機械式のSUPER RECORD RSをチョイス photo:Makoto.AYANOラインと杉目を組合せたトレッドを持つのハッチンソンのタイヤラインと杉目を組合せたトレッドを持つのハッチンソンのタイヤ photo:Makoto.AYANO

ボトルケージはタックス UMA。紙やすりを用いて固定力の向上が図られているボトルケージはタックス UMA。紙やすりを用いて固定力の向上が図られている photo:Makoto.AYANOチェーンリングの歯数は53×42Tの組み合わせチェーンリングの歯数は53×42Tの組み合わせ photo:Makoto.AYANO


ハンドル周りはデダ・エレメンティが基本だが、コルナゴオリジナルのシートポストを装着したバイクも見られた。サドルはセライタリア。サイクルコンピューターはシグマで、ビョルン・トゥラウ(ドイツ)のバイクには今となってはほとんど見られない有線式モデルが装着されていた。ボトルケージはタックスTAOもしくはUMAで、悪路での飛び出し防止のため紙やすりのテープが巻かれていた。



モビスター < キャニオン ULTIMATE CF SLX>

フランシスコホセ・ベントソ(スペイン、モビスター)のキャニオン ULTIMATE CF SLXフランシスコホセ・ベントソ(スペイン、モビスター)のキャニオン ULTIMATE CF SLX photo:Makoto.AYANO
モビスターは全選手が前週開催のロンド・ファン・フラーンデレンとほぼ同じセッティングでパリ~ルーベを走った。バイクはドイツを拠点とするキャニオンのオールラウンドモデルで、グランツールの山岳ステージでも使用される「ULTIMATE CF SLX」。トップチューブには石畳の位置が記されたメモが貼られた。

コンポーネントは電動式のカンパニョーロSUPER RECORD EPSで、ホイールは同じくカンパニョーロのロープロファイルモデル、HYPERONで統一される。タイヤだけはロンドから変更されており、28mm幅のコンチネンタルCOMPETITION PROLTDを使用。トレッドはセンターがスリック、サイドがヤスリ目という市販品には無いプロ供給品だ。

トップチューブに貼られたパヴェの情報トップチューブに貼られたパヴェの情報 photo:Makoto.AYANOバーテープはチームカラーのリザードスキン DSPで、2重に巻かれるバーテープはチームカラーのリザードスキン DSPで、2重に巻かれる photo:Makoto.AYANO

ボトルケージはチームカラーのエリート CANNIBALで統一されたボトルケージはチームカラーのエリート CANNIBALで統一された photo:Makoto.AYANOスリック+ヤスリ目のトレッドパターンを持つ28mm幅のコンチネンタル COMPETITION PROLTDスリック+ヤスリ目のトレッドパターンを持つ28mm幅のコンチネンタル COMPETITION PROLTD photo:Makoto.AYANO


ハンドル周りはフレームと同じくキャニオンで、製造はリッチーが行っているとのこと。ステムは無骨なアルミ製。バーテープはグリップ力に優れるリザードスキンDSPを2重巻きにして衝撃吸収性を高めている。ボトルケージはチームカラーの1つであるグリーンを纏ったエリートCANNIBALで統一された。



ネットアップ・エンデュラ < FUJI ALTAMIRA SL >

ブラス・ヤルク(スロベニア、ネットアップ・エンドゥーラ)のFUJI ALTAMIRAブラス・ヤルク(スロベニア、ネットアップ・エンドゥーラ)のFUJI ALTAMIRA photo:Makoto.AYANO
ロンドに続きワイルドカードとして出場を果たしたドイツのネットアップ・エンデュラは、日本にルーツを持つFUJI(フジ)の軽量オールラウンドモデル「ALTAMIRA SL」を駆った。多くの他チームと同じくタイヤやバーテープを変更し石畳対策を行っている。

コンポーネントは機械式の9000系デュラエースをメインとし、ライダーによって7900系デュラエースをベースとしたSRMクランクを組み合わせた。ホイールはオーヴァルコンセプツ製であるものの、ブラス・ヤルク(スロベニア)のバイクには銘柄の明記がなく、市販品には無い50mm程度のリムハイトを持つホイールが装着されていた。
中にはハブやリムの形状がヴィジョンと酷似するホイールの姿も。タイヤは北のクラシックでは定番のヴィットリアPAVE EVO CG。幅は28mmを選択している。

サドルはプロロゴで、座面に滑り止め素材を配したCPCモデルが多用されるサドルはプロロゴで、座面に滑り止め素材を配したCPCモデルが多用される photo:Makoto.AYANOネットアップはほぼ全員が機械式デュラエースを使用するネットアップはほぼ全員が機械式デュラエースを使用する photo:Makoto.AYANO

ペダルはドロやジャリの影響を受けにくいスピードプレー ZERO PAVEペダルはドロやジャリの影響を受けにくいスピードプレー ZERO PAVE photo:Makoto.AYANOタイヤは北のクラシックである定番のヴィットリア PAVE EVO CGタイヤは北のクラシックである定番のヴィットリア PAVE EVO CG photo:Makoto.AYANO


ホイール同様にハンドル周りもサポートを受けるオーヴァルコンセプツを使用するが、ヤルクのバイクにはFSAのステムとシートポストがアッセンブルされていた。ペダルはスピードプレイのスペシャルモデルであるZERO PAVE。サドルはプロロゴ、ボトルケージはタックス TAOだ。



IAMサイクリング < スコット ADDICT、Foil>

ハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)のスコット Foilハインリッヒ・ハウッスラー(オーストラリア、IAMサイクリング)のスコット Foil photo:Makoto.AYANO
ボトルケージはエリート CANNIBALボトルケージはエリート CANNIBAL photo:Makoto.AYANOタイヤはシュワルベ ONEのトレッドにコットンケーシングを組合せた特別モデルタイヤはシュワルベ ONEのトレッドにコットンケーシングを組合せた特別モデル photo:Makoto.AYANO
ワイルドカードながら北のクラシック有力選手が揃ったIAMサイクリングは、前週に引き続きスコットのオールラウンドモデル「ADDICT」とエアロモデル「Foil」の2台体制を敷いた。そして、エースのシルヴァン・シャヴァネル(フランス)には自身の愛車をモチーフとしたスペシャルカラーのADDICTが用意された。しかしシャヴァネルは喘息のため不出場。バイクのみチームカーのルーフキャリア上でディスプレイされた。

コンポーネントは電動ではなく機械式の9000系デュラエースがメインに装着され、クランクはノーマルタイプと9000系SRM、7900系SRMとバイクによって異なった。ホイールはDTスイス製で、オーソドックスな三角形断面を持つ46mmハイトのRRC46Tと、カムテール形状の断面を持つ38mmハイトのRC38を主に使用した。組み合わせられるタイヤはシュワルベONEのトレッドにFMBのコットンケーシングを組み合わあせたスペシャルモデルとFMB・PARIS ROUBAIXの2種類で、ロンドよりもスペシャルモデルの使用比率が高まっていたようだ。

シルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)のスコット ADDICTシルヴァン・シャヴァネル(フランス、IAMサイクリング)のスコット ADDICT photo:Makoto.AYANO
ハンドル周りはリッチーで統一され、多くの選手が強度を重視してアルミ製パーツをチョイス。バーテープ及びサドルはプロロゴ。シャヴァネルのバイクには、フレームカラーに合わせた特別カラーのサドルが取り付けられていた。ボトルケージはエリートで、CUSSIE GELやCANNIBALなど選手によって異なっていた。



text:Yuya.Yamamoto
photo:Makoto.AYANO