今季オリカ・グリーンエッジからトレックファクトリーレーシングに移籍した別府史之。引き続きフランスに拠点を置いて活動するプロ10年目のフミは、5月のジロ・デ・イタリアに向けてコンディションを作っている。ボルタ・ア・カタルーニャを終えたフミに話を聞いた。



ジロ・デ・イタリアに向けて乗り込む別府史之(トレックファクトリーレーシング)ジロ・デ・イタリアに向けて乗り込む別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji


トレックファクトリーレーシングへの移籍について
古巣に戻ったという感覚はないです。同じベースのチームなのかなと思って入ってみると、知っているスタッフが2割ぐらいしか残っていなかった。だから「知っている選手と知っているスタッフがいるかな」ぐらいの感覚です。ストレスなく走れています。

4度目のカタルーニャ一周出場となる別府史之(トレックファクトリーレーシング)4度目のカタルーニャ一周出場となる別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsujiチーム移籍に伴い、フミに求められるものの変化は?
去年までのオリカ・グリーンエッジは、マシュー・ゴスをはじめとするスプリンター中心のチーム作りがなされていました。だからスプリンターを勝たせるためのお膳立てが主な仕事だった。ガンッとスピードを上げてハイパワーを1分間出し続けるのが自分の長所だったので、集団内でポジション取りしながら、スプリンターたちを前に連れて行くのが仕事でした。発射台ではなく、発射台とともにスプリンターを引き上げる役割です。

スタート前にアームウォーマーを装着する別府史之(トレックファクトリーレーシング)スタート前にアームウォーマーを装着する別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsujiトレックファクトリーレーシングでの役割は?
去年まではスプリントに向けてのスピードを重視して、短時間でもいいから最大のワット数を上げることが目標でした。逆に今年は高出力を出しながらも長時間乗れる身体作りをしています。去年はスプリントで、今年はエンデュランスですね。体重で言うと、昨年と今年の間には2kgの差があります。もっと絞れるけど、ほぼベストな状態です。フレッシュな状態を保ちつつ、ジロに向けてもう少し絞って行きます。

チームのギャロパン監督の存在は?
同じアラン(ギャロパン監督)に見てもらっていたレディオシャック時代の2011年には、今年と同様にジロ・デ・イタリアを見据えてコンディショニングしていました。ティレーノ〜アドリアティコやサルデーニャなどの登りのレースを多く走ってベースを作り、非常に良いコンディションで気持ちよくジロに入れた。決して満足のいく成績は残せなかったけど、チームTTも良かったし、他の年と比べると手応えがありました。キャリアの中で一番良いシーズンだった。

トレーニングプログラムを組むトレーナーが別にいるのですが、アランは昔から知っているし、フランス語でコミュニケーションを取れるし、どうやって走るべきかを的確に言ってくれる。アランが指揮を執る時は、スプリントのステージでエースを任される時もある。シャトールークラシックではエースを任されて4着に入ったり、自分を良く理解してくれている存在です。

出走サインに向かう別府史之(トレックファクトリーレーシング)出走サインに向かう別府史之(トレックファクトリーレーシング) photo:Kei Tsuji今シーズンここまで走った感触は?
今年は2011年と同じようなスケジュールをこなしています。2012年と2013年は少し苦労したけど、その2年間のおかげで力はついている。体重やSRMのワットを見ても、2011年よりもレベルが一つ上がっている感じはします。実際に走っていても、春先から良い手応えを得ています。

別府史之(トレックファクトリーレーシング)が使用するトレック・マドン7別府史之(トレックファクトリーレーシング)が使用するトレック・マドン7 photo:Kei Tsujiジロを見据えて、チームから求められているものとは?
集団内で登りを走っていると、周りからの当たりが激しいんです。だから単独ではなくグループで走っていないとポジション取りが難しい。"すいみい"のように集まってチームの場所をアピールする必要がある。だからカタルーニャではロバート(キセロフスキー)やジュリアン(アレドンド)と常に近くで走っていました。山岳ステージでは登りでエースをサポートする役割も担います。

ピュアスプリンターとの力勝負だと、パワーの数値を見ていても差を感じる。でも登りをこなした後の小集団スプリントなら狙えると思います。ツール・ド・フランスの時(2009年第3ステージ8位、第19ステージ7位)もそうだったけど、みんなが疲れている状態でのスプリントだとチャンスはある。

今年は「北のクラシック」出場の予定はゼロですか?
「北のクラシック」自体は好きで、エースを支える仕事はこなせるけど、勝負に絡んで良いところに行くかと言ったらそれは難しい。身体の細さと走りを見て、自分は石畳のクラシックよりもアルデンヌクラシックや登りのレース向き。そのことをアランも理解してくれています。

今年はジロに向けて調整をしているので「北のクラシック」には出場しない予定です。残念ではあるけど、すべてはジロでステージ優勝するという挑戦のため。ジロで最高のパフェーマンスを出すことが最大の目標であり、他のレースのことは考えていません。

text&photo:Kei Tsuji

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