「ロードホイールの頂点」。そう目されているのが、泣く子も黙るドイツブランド・ライトウェイトだ。2014年、ライトウェイトはホイールで培った技術を多方面に応用を開始した。今回のインプレッションでは、そうして作り上げられたブランド初となるフルカーボンフレーム「ウルグシュタルト」の性能を紐解いていく。

ライトウェイト URGESTALTライトウェイト URGESTALT (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
「究極の回転体」や、「プロが自費購入してまで使う」ホイールとして、あまりにも有名なライトウェイト。所属チーム(=チームの契約機材スポンサー)に関係無い世界選手権などでは多くの選手が使い、登場時から基本的な構造は変わらないながらも、その性能は絶対的決戦ホイールとしての確固たる地位を築いてきた。

そんなホイールを世に送り出したライトウェイト社は2014年、長年のホイール製造で培ったカーボンテクノロジーを駆使し、重量168gという超軽量の「レンビュゲル」ハンドルや、カーボンスポークの結線技術を使った「エデルファー」ボトルケージなど、エピックな製品を登場させた。新たな境地を切り拓くライトウェイトの情熱は、そうしたパーツのみに留まらず、遂にはブランド初のロードバイクを生み出すこととなる。それがフレーム重量790gを誇る超軽量フレーム「URGESTALT(ウルグシュタルト)」である。

美しいシンプルさ。接合部も妥協無きデザインだ美しいシンプルさ。接合部も妥協無きデザインだ ヘッドは下側に1.5インチの大径ベアリングを採用しているヘッドは下側に1.5インチの大径ベアリングを採用している 比較的ボリュームの高い、角形断面のフロントフォーク比較的ボリュームの高い、角形断面のフロントフォーク


「究極のホイールとシンクロする、究極のフレーム」。とは、ウルグシュタルト開発にあたって掲げられたコンセプト。更に同社の言葉を借りれば、「A frame with more passion for more passion(=飽くなき情熱のための、飽くなき情熱を注いだフレーム」だ。

滑らかな曲線と、エッジの効いたラインをバランスさせたウルグシュタルト。セミグロスブラックを一身に纏うフォルムは「プロトタイプ?」と一瞬思わせるが、ダウンチューブにブラックの濃淡で表現されたネームや、必要最小限に記されたロゴやメッセージのセンスには、流石ライトウェイトだと思わされる。ワイヤー導入口のパーツに光る「LW」マークは、小さいながらも大きくウルグシュタルトの高級感を演出する部分である。

ブラックの濃淡で表現されたバイクのネームブラックの濃淡で表現されたバイクのネーム ワイヤーの導入口パーツにもLWのロゴが。さりげない主張が高級感を演出するワイヤーの導入口パーツにもLWのロゴが。さりげない主張が高級感を演出する

「Handarbeit fur Beinarbeit(=Handmade in Germany)」「Handarbeit fur Beinarbeit(=Handmade in Germany)」 シートポストの固定は臼を用いる。ネジはこの場所にあり、ルックスの向上に貢献シートポストの固定は臼を用いる。ネジはこの場所にあり、ルックスの向上に貢献


剛性と軽さ故のレスポンスの良さ、コーナリングのシャープさに定評があるホイールと組み合わせるためのウルグシュタルトは、ピュアレーシングではなく、しなやかさの活きるヒルクライムやグランフォンド向けのバイクとして仕上げられた。しなやかさを活かしながら、ライダーの力をロス無くホイールへと伝えることを身上としたフレームの単体重量は790g、ヘッドセットやフロントフォーク、シートポストを合計してもわずか1340gという軽量さを誇る。

翼断面形状の前方部分だけを残したような、流行のカムテールデザインに則ったマッシブなダウンチューブや、そのままのボリュームをもって繋がるチェーンステーなど、しばしば「パワーライン」と呼ばれるフレーム下部はいかにも走行性能を求めたライトウェイトの姿勢が見て取れる部分である。

ワイヤーの取り回しを見る。無駄の無い仕上がりだワイヤーの取り回しを見る。無駄の無い仕上がりだ BBはPF86方式。25mmのタイヤまで対応しているBBはPF86方式。25mmのタイヤまで対応している


上1-1/8インチ、下1-1/2インチ径の上下異形テーパードヘッドや、プレスフィット86規格のボトムブラケット、更にケーブルのフル内装、クランプを廃したシートポストなど、最新の流行を余す事無く導入したウルグシュタルト。特に使用するカーボン素材などは公表されていないが、各チューブの接合部分には特殊な構造を用いることで、ハイレベルの重量剛性比を達成しているという。

ジオメトリーは一般的なピュアレーシングバイクよりも若干コンフォート寄りに振られており、若干515mmのトップ長に対して74.5°と若干寝たトップチューブ角や(シートチューブは71.5°)、72mmのハンガー下がりなど、やや直進安定性を重視した設計に。25mm幅のタイヤを装着可能なクリアランスとしている事も共通の設計思想によるものだ。

シンプルな直線で構成されたリアバックシンプルな直線で構成されたリアバック シートチューブに入れられたライトウェイトのブランドロゴシートチューブに入れられたライトウェイトのブランドロゴ ダウンチューブにはDi2バッテリーケーブルの引き込み口が設けられるダウンチューブにはDi2バッテリーケーブルの引き込み口が設けられる


軽さや最新規格の数々を、ライトウェイトらしい高級感あるルックスの中にインテグレーションしたバイクが、このウルグシュタルトだ。テストバイクのコンポーネントはシマノ9000系デュラエース、ホイールはもちろん"完璧なマッチングを誇る"ライトウェイトのマイルンシュタインチューブラー。早速インプレッションに移ろう。



ーインプレッション

「同社のホイールとの組み合わせが良い。所有欲と意欲を満たしてくれるバイク」小西裕介(なるしまフレンド)

ライトウェイト初となるカーボンバイクのフィーリングは、レーシング性能を十分に感じさせてくれるものでした。登りや下り、平地など特に苦手とするシチュエーションが無く、どんなプロフィールのコースでもそつなくこなすことができるでしょう。

フレームはしっかりとした剛性があり、特にBB周りはマッシブなフォルムどおり硬い。ルックスも全体的に太めなチュービングでいかにも剛性を求めていそうですが、剛性バランスが良いため、硬さの中には柔らかさも兼ね備えています。そのマッチングによりトルク型のペダリングをしても、ハイケイデンスでペダルを回しても気持ちよくフレームが応えてくれます。

「同社のホイールとの組み合わせが良い。所有欲と意欲を満たしてくれるバイク」小西裕介(なるしまフレンド)「同社のホイールとの組み合わせが良い。所有欲と意欲を満たしてくれるバイク」小西裕介(なるしまフレンド)
この性格は登りでも共通していますが、シッティングでペダルを回転させる方がより前へ進んでくれる印象がありますね。短い激坂から長い一定ペースのヒルクライムまで対応してくれるでしょう。ジオメトリーも比較的標準的なものですから、コントロールに関してもニュートラルな味付けですね。直進性が強すぎることも、クイック過ぎて不安になることもありません。ダンシングでもそうした性格は変わらないため、バイクを左右に振りやすいですね。

軽量バイクですが、よくありがちな腰高感はほとんど感じませんでした。軽量ホイールとして名高い同社のホイールがセットされていましたが、そうした組み合わせでナーバスになりがちなコーナリングでも不安定さは無く、ダウンヒルのコーナーでも安心してクリアできました。このあたりのマッチングはさすが、ライトウェイトのホイールをセットする事を前提として考えられています。

特にダメ出しをするところの無い、優等生な性格は、ロングライドはもちろんレースにおいても活躍できる実力を感じます。特に、全てのシチュエーションが盛り込まれているような長距離のレースがいいでしょう。軽さを活かしきれるので、疲労を少なくレースに臨めるはず。プロユースでも性能に不満が出ることは少ないと思います。

フレーム性能とコラボするように、スマートなルックスにもクールな印象を受けました。ワイヤーの出し入れの取り回し、シートポストの固定の仕方など、細部までキレイに収まっていてスタイリッシュですね。シンプルなクロモリバイクのように何年乗っても飽きがこないようなデザインだと思います。

ライトウェイトのホイールを既に持っている人、何年も乗っていたいカーボンバイクを探している人には最適なバイクではないでしょうか。街乗りでも映えるスタイリングの良さと、スピードを楽しみたい時にも応えてくれる性能など、気分によってタウンユースからロングライドまで使い分けができる万能性は魅力的ですね。


「比較的ソフトな乗り心地で、ロングライドやヒルクライムにマッチする」江下健太郎(じてんしゃPit)

「比較的ソフトな乗り心地で、ロングライドやヒルクライムにマッチする」江下健太郎(じてんしゃPit)「比較的ソフトな乗り心地で、ロングライドやヒルクライムにマッチする」江下健太郎(じてんしゃPit) ライトウェイトが初めてリリースしたバイク、ウルグシュタルトは、軽量さが活きるしなやかなバイクという印象を受けました。レースとロングライドどちらにも向く高い基本性能があって、特に長いヒルクライムでは軽さを活かした軽快な走りを楽しむ事ができるはずです。

現在のロードバイクのトレンドはフレーム全体で高剛性と振動吸収性をハイレベルで両立することにありますが、このウルグシュタルトはフロント周辺を硬く、リアバックをソフトにすることでしなりを生み出しています。

フレームの造形を見てもフレーム下部が太く四角く、上部が細くなっており、縦方向への剛性バランスが整えてられている印象です。ピュアレーシングバイクと比べると横方向へのしなりがあり、疲労の蓄積を防ぐような設計思想を感じました。

しっとりとしたペダリングを楽しむことのできるバイクですが、スプリントのような爆発的な加速はやや苦手としている雰囲気があります。比較的高めのケイデンスでペダリングした際には好感触があり、ヒルクライムのダンシングのしやすさも特徴的です。

これはリアバックが横方向へとしなることから、ダンシングをしたときの重心が見つけやすく、リズムがとりやすいことに理由があるではないでしょうか。

ハンドリングに関しては直進安定志向。特に何も考えずとも安定してバイクが進んでくれますから、ストレス軽減という意味合いも強くあるはずです。ただしクイックなコーナリングをしようとした場合は横方向のしなりによってロスが生まれ、やや狙ったラインをオーバーしてしまうような雰囲気がありました。ただし慣れの範疇ですから、特に不安に陥るようなことはありません。重心をしっかりと考えてコーナリングすれば問題もありません。

リア周りの柔らかさは振動吸収にも貢献しており、特にロングライドの後半にはその効果を実感できるはず。ハンドリングも直進性が比較的強いため、平地での中速域でのスピードの乗り、軽量性、登りでのダンシングのしやすさなど全体を通じて、ロングライドにマッチしていると思います。

まだまだフレームブランドとしては発展途上でしょうから、これからの展開にも大きく期待したいところです。ライトウェイトと言えば憧れのホイールブランドですから、そのホイールとトータルコーディネイトできることは、とても魅力的だと感じます。高級感ある雰囲気や、すでにライトウェイト社のホイールを所有している方には、食指が動くバイクなのではないでしょうか。

ライトウェイト URGESTALTライトウェイト URGESTALT (c)MakotoAYANO/cyclowired.jp
ライトウェイト URGESTALT
サイズ:XS(460)、S(490)、M(520)、L(540) C-T
チューブ:ハイモジュラスカーボン
BB規格:PFBB86
重 量:790g(フレーム単体)
カラー:マットブラック
価 格:610,000円(税抜)




インプレライダーのプロフィール

江下健太郎(じてんしゃPit)江下健太郎(じてんしゃPit) 江下健太郎(じてんしゃPit)

ロード、MTB、シクロクロスとジャンルを問わず活躍する現役ライダー。かつては愛三工業レーシングに所属し、2005年の実業団チームランキング1位に貢献。1999年MTB&シクロクロスU23世界選手権日本代表。ロードでは2002年ツール・ド・台湾日本代表を経験し、また、ツール・ド・ブルギナファソで敢闘賞を獲得。埼玉県日高市の「じてんしゃPit」店主としてレースの現場から得たノウハウを提供している。愛称は「えしけん」。

じてんしゃPit



小西裕介(なるしまフレンド)小西裕介(なるしまフレンド) 小西裕介(なるしまフレンド)

なるしまフレンド立川店店長。登録レーサーを経験し、メカニックの知識も豊富で走ることからメカのことまでアドバイスできるノウハウを持つ。レース歴は19年。過去ツール・ド・台湾などの国際レースにも出場するなど、トップレベルのロードサイクリストとして活躍した経歴を持つ。脚質はサーキットコースを得意とするスピードマンだ。

なるしまフレンド




ウェア協力:ビエンメ

text:So.Isobe
photo:Makoto.AYANO

Amazon.co.jp 
の画像 Cの科学と技術―炭素材料の不思議 (シリーズ 21世紀のエネルギー)
投稿者: 白石 稔, 京谷 隆, 大谷 朝男, 山田 能生
出版社: コロナ社 (2002)
装丁: 単行本, 134 ページ
の画像 カーボン 古くて新しい材料
投稿者: 稲垣 道夫
出版社: 森北出版 (2011)
装丁: 単行本(ソフトカバー), 228 ページ