衝撃の現役復帰を果たした、ツール・ド・フランス7連覇の偉業達成者ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)が、若手育成の新チーム「TREK-Livestrong U-23 team」を結成した。この世界NO1若手チームにはU23日本チャンピオンの小森亮平も所属。今後の展開に注目が集まる。

ついにアームストロング復活!

現役復帰を果たしたランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)現役復帰を果たしたランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ) 「ツール・ド・フランス7連覇を達成したランス・アームストロングが、プロサイクリストとして復帰する」。2008年9月下旬、世界のロードレース界に衝撃的なニュースが伝えられた。

それから4ヶ月後の1月18日、ランスはプロツアーレース「ツアーダウンアンダー」の前座レースとして行なわれた「キャンサーカウンシル・クラシック」で3年ぶりにプロ選手としての復帰を果た した。

カスタムペイントが施されたアームストロング(アスタナ)のトレック・マドン6.9プロカスタムペイントが施されたアームストロング(アスタナ)のトレック・マドン6.9プロ ランスはこれまでも復帰に関して「純粋に自転車競技が楽しい」とコメントを残しているように、現役から退いてからもMTBやシクロクロスにも参戦してきている。生活のために契約を結んで走るのが普通のプロ選手。しかしランスの場合はチームと無償契約している。では、ただ趣味でレース活動しているのかというと、そうではない。彼の復帰にはもう一つ大きな目的があるのだ。

その目的とは「LIVESTRONG」をグローバルに広め、世界中の人たちに「強く生きろ」というメッセージを訴えかけ、そして癌のリサーチの為の資金を集めるということだ。

それはランスが乗るバイクにも表れている。普通プロチームなら、ジャージやバイクは統一させるものなのだが、ランスだけはやはりチーム内でも特別な存在。彼にはランスオリジナルであるトレック社のマドン6.9プロにカスタムペイントを施したバイクが供給されている。

リブストロングのカラーである、ブラック×イエローで仕上げられたバイクに「1274」と「27.5」のメッセージが付け加えられている。

「1274」はランスが2005年ツール・ド・フランス総合優勝を決めた翌日から、現役復帰した2009年1月18日までの現役から退いていた日数で、「27.5(ミリオン)」とは世界中でその期間に癌でなくなった人の数(2,750万人)である。

将来有望な若手選手を集めた新チーム結成

世界から若手の精鋭を集めたTREK-LIVESTRONG世界から若手の精鋭を集めたTREK-LIVESTRONG もちろん彼自身の復帰がすでに大きなニュースだが、同時にリブストロングに関するもう一つの動きがある。

それは、ランス自身が将来有望な若手選手ばかりを集めた「TREK-Livestrong U-23 team」を結成したことだ。このチームの大きな目標は2つ。まずはツール・ド・フランスで優勝出来る選手を育成すること。そしてもう一つは、先にも挙げたようにロードレースを通してのリブストロングの活動になる。

TREK-LIVESTRONGが使用するトレック・マドン6.9TREK-LIVESTRONGが使用するトレック・マドン6.9 チームの特徴は、メンバーが18歳から21歳の若手での構成になり、そのほとんどがナショナルチャンピオンまたは世界戦、オリンピックでのメダリストという精鋭集団なのだ。

その中でもエースとして走るタイラー・フィニーは父がツール・ド・フランスで区間2勝を挙げたデービス・フィニー、そして母はロスアンゼルスオリンピック、ロードレース金メダリスト、コニー・カーペンター・フィニーというサラブレッドだ。

体格にも恵まれ190cmを超える身長はもちろんチームトップ。そんなサラブレッドを指揮するのは、こちらもベルギーのサラブレッド、アクセル・メルクスだ。もちろん父はあの有名なエディー・メルクスで、本人もプロ選手としてジロ・デ・イタリアステージ優勝やアテネオリンピック銅メダル獲得など、輝かしい実績を残している。

このチームのマネージメントを務める「キャピタルスポーツ&エンターテインメント」代表のバート・クナッグス氏は「このチームにはタイラー以外にも、父がプロロード選手として活躍した2世が3名いる。だからこそアクセルにしか出来ないサポートがあるし、また様々なチーム、国で活動してきただけあり数ヶ国語を話すことが出来るのは監督として非常に頼もしい」と語っている。

U23日本チャンピオンの小森が加入

U23日本チャンピオンの小森亮平(TREK-LIVESTRONG)U23日本チャンピオンの小森亮平(TREK-LIVESTRONG) ほとんどの選手が将来を約束されているような選手達だが、今回日本人選手もメンバーとして加入している。

幸運にも世界中が注目しているこの世界NO1若手チームのメンバーに選ばれたのは、2008年度、地元広島にてU23全日本選手権大会で見事優勝を飾った小森亮平選手だ。

おそらく誰?と思われる方も少なくないだろう。ここで少し彼の紹介をしておこう。

チームメイトたちと走る小森亮平(TREK-LIVESTRONG)チームメイトたちと走る小森亮平(TREK-LIVESTRONG) 小森選手は中学までサッカーに打ち込んでいたが、高校時代にマウンテンバイクの魅力から自転車競技への興味が目覚めた。同時にお世話になってたショップからロードバイクを譲り受け、ロードレース参戦を始める。本格的にロードを始めるに至ったのは、梅丹本舗・GDRの福島晋一選手に出会ったのがきっかけだ。

福島選手の勧めで、高校卒業と同時に渡欧し、フランスのアマチュアチームにて2年間レース活動を行なってきた。フランスではアマチュアカテゴリーではあるが、若干19歳にして4勝をあげるなど、頭角を現した。全日本選手権ロードレースに帰国した小森選手は、パンクというトラブルに遭いながらも、見事他を引き離して独走勝利を飾った。

ランス・アームストロング(アスタナ)と小森亮平(TREK-LIVESTRONG)ランス・アームストロング(アスタナ)と小森亮平(TREK-LIVESTRONG) リブストロングのグローバルの展開を考えると、やはりアジア方面での活動も無視出来ない。そこで白羽の矢がたったのがこの全日本チャンピオンだった。

先日サンタローザにて行なわれたアスタナ、リブストロング合同トレーニングキャンプでは、小森選手はチームオーナーであるランス・アームストロングに初めて会い、一緒にトレーニングを行なった。

「ランスに挨拶すると、すでに自分のことを知ってくれていて感激でした。フランスで活動していたことも、全日本チャンピオンであることも。」と満面の笑みで語ってくれた。「トレーニングでは、やはりランスは強かったです。自分のバイクに装着されてチームスポンサーであるパワータップの表示は380Wを超えており、自分は15分ほど頑張ったが切れてしまった。500W近くで走り続けられるランスの凄さを本当に肌で感じました。」

こんな環境でトレーニング出来る、日本人の若者が他にいるだろうか?アクセルの指導のもと、年齢の近いアメリカ人選手達と生活を共にし近い将来ツール・ド・フランス出場を目指す。まずは3月1日から始まるVuelta Telmex Mexicoに出場する。

その後、アメリカを中心にヨーロッパへの遠征も予定されている。小森選手が日本で走るのはとりあえず6月に開催される全日本選手権の予定だ。