無線機の使用が禁止されたツール・ド・フランス第10ステージ。メイン集団は時間に余裕をもったコントロールを見せ、問題なく集団スプリントに持ち込まれた。優勝は常勝チームコロンビア・HTCに発射されたマーク・カヴェンディッシュ(イギリス)。スプリントで敵無しの3勝目を飾った。

フランス革命記念日に無線機使用を試験的に禁止

スタートラインに並んだ選手たちを撮影するカメラマンスタートラインに並んだ選手たちを撮影するカメラマン photo:Cor Vosこの日は特別ルールとして、選手やスタッフ間で使われる無線機の使用が禁止された。監督の指示通りに動く選手たち判断力が低下していると危惧する声と、パターン化したレース展開を盛り上げるための試みだ。

噂された選手たちのボイコットは起こらず、レースは無事にリモージュをスタート。ゴール地点イスーダンまで北上する194.5kmは旅路は曇りがちで、途中パラパラと小雨が選手たちを濡らした。

ヒマワリ畑を通過ヒマワリ畑を通過 photo:Cor Vosこの日逃げを試みたのはティエリー・ウポン(フランス、スキル・シマノ)、ブノワ・ヴォグルナール(フランス、フランセーズデジュー)、ミハイル・イグナチエフ(ロシア、カチューシャ)、サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)の4名。タイム差は25km地点で早速3分50秒まで広がった。

総合成績ですでに大きく遅れている選手たちの逃げ。通常ならタイム差が10分まで広がってもおかしくない展開だ。しかし無線機使用が禁止されているため、メイン集団はスプリンターチームが余裕をもったペースコントロールを見せ、逃げを常に射程圏内に抑え込んだ。

サミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)を先頭に逃げグループが進むサミュエル・ドゥムラン(フランス、コフィディス)を先頭に逃げグループが進む photo:Makoto Ayanoタイム差が1〜2分を推移したままレースは進み、残り30kmの時点でついにタイム差は1分を切る。逃げグループではそれまで一切先頭交代に加わらなかったイグナチエフの引きによってペースアップ。ここからイタチごっこが始まった。

残り20kmで30秒まで縮まったタイム差は、追い風が逃げグループに味方して残り10kmでも変わらず30秒。しかしスプリンターチームの追い上げには敵わずに、残り1.5kmで逃げは全て吸収されてしまう。最後まで諦めずにアタックして逃げ続けたウポンがこの日の敢闘賞に輝いた。

他を圧倒したカヴェンディッシュが3勝目

フランス革命記念日だけにトリコロールが目立つフランス革命記念日だけにトリコロールが目立つ photo:Cor Vosメイン集団の先頭で主導権を握ったのは、集団を割るほどのハイスピードな引きを見せたチームコロンビア・HTC。ヒンカピー(アメリカ)の強烈なリードにより、気づけば先頭は発射台レンショー(オーストラリア)、本命カヴェンディッシュ(イギリス)、マイヨヴェールのフースホフト(ノルウェー)、伏兵ファラー(アメリカ)の4名が少し飛び出した状態に。

この圧倒的有利な状況の中で、ラスト200mで飛び立ったカヴェンディッシュ。後方のフースホフトを突き放す加速を見せ、先頭のままゴールに飛び込んだ。新調したマイヨヴェールカラーのサングラスをアピールするほど余裕の勝利だった。

トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)を振り切ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)が先頭でゴールへトル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)を振り切ったマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)が先頭でゴールへ photo:Cor Vosステージ2位は、スプリント中しきりに後方を確認していたフースホフト。ステージ優勝を飾ったカヴェンディッシュが大きくポイントを伸ばしたが、山岳ステージでポイントを稼いだフースホフトがマイヨヴェールを6ポイント差で守っている。

平坦コースで優勝してポイントを荒稼ぎするカヴェンディッシュと、平坦コースで上位入賞しながら山岳コースでもポイントをコツコツ貯めるフースホフト。マイヨヴェール争いはこの2人に絞られたと言っていいだろう。

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)がサングラスをアピールマーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)がサングラスをアピール photo:Cor Vos新城幸也(Bboxブイグテレコム)と別府史之(スキル・シマノ)はそれぞれ26位と35位でゴール。Bboxブイグテレコムは8位にウィリアム・ボネ(フランス)、10位にサイード・ハドゥ(フランス)を送り込んだが、スプリント勝負の最前線には絡めなかった。

また、集団は割れてゴールしたため、中切れが起こった52位と53位の間には15秒のタイム差がつけられた。この中切れの被害を被ったのはブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)とリーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)の2人だ。

この日もマイヨジョーヌを守ったリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)この日もマイヨジョーヌを守ったリナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル) photo:Cor Vos山岳で健闘して総合5位につけていたウィギンズは15秒のタイムロスにより総合7位にダウン。ライプハイマーは総合4位から5位にダウン。これにより総合2位から5位までアスタナ勢が独占する形に。リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)は6秒差でマイヨジョーヌを着続けている。

結果的に、大きなトラブル無く無線機禁止の第10ステージは終了。ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)がレース後、つぶやきサイトTwitterで「これまで経験した10回以上のツールの中で、最もリラックスしたステージの一つ」とコメントするほど平穏な一日だった。無線機禁止は第13ステージでも行なわれる予定だ。

レース中盤に落車したクルトアスル・アルヴェセン(ノルウェー、サクソバンク)は、鎖骨に違和感を覚えながらも完走。搬送先の病院で鎖骨骨折の診断を受けたこのノルウェーチャンピオンは、今大会リタイア10号になってしまった。チーム公式サイトによると骨折は深刻で手術を要する。サクソバンクは貴重な戦力を一人失った。

ツール・ド・フランス2009第10ステージ結果
1位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)4h46'43"
2位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)
3位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン)
4位 レオナルド・ドゥケ(コロンビア、コフィディス)
5位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)
6位 ロイド・モンドリー(フランス、アージェードゥーゼル)
7位 ファンケニーロバート・ファンヒュンメル(オランダ、スキル・シマノ)
8位 ウィリアム・ボネ(フランス、Bboxブイグテレコム)
9位 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア、リクイガス)
10位 サイード・ハドゥ(フランス、Bboxブイグテレコム)
26位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)
35位 別府史之(日本、スキル・シマノ)

マイヨジョーヌ(個人総合成績)
1位 リナルド・ノチェンティーニ(イタリア、アージェードゥーゼル)39h11'04"
2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、アスタナ)+06"
3位 ランス・アームストロング(アメリカ、アスタナ)+08"
4位 リーヴァイ・ライプハイマー(アメリカ、アスタナ)+39"
5位 ブラドレー・ウィギンズ(イギリス、ガーミン)+46"
6位 アンドレアス・クレーデン(ドイツ、アスタナ)+54"
7位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)+1'00"
8位 クリスティアン・ヴァンデヴェルデ(アメリカ、ガーミン)+1'24"
9位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+1'49"
10位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+1'54"
145位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)+1h17'56"
155位 別府史之(日本、スキル・シマノ)+1h23'04"

マイヨヴェール(ポイント賞)
1位 トル・フースホフト(ノルウェー、サーヴェロ)147pts
2位 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、チームコロンビア・HTC)141pts
3位 ホセホアキン・ロハス(スペイン、ケースデパーニュ)97pts
28位 新城幸也(日本、Bboxブイグテレコム)30pts
51位 別府史之(日本、スキル・シマノ)18pts

マイヨアポワ(山岳賞)
1位 エゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)78pts
2位 クリストフ・ケルヌ(フランス、コフィディス)59pts
3位 フランコ・ペッリツォッティ(イタリア、リクイガス)55pts

マイヨブラン(新人賞)
1位 トニ・マルティン(ドイツ、チームコロンビア・HTC)39h12'04"
2位 アンディ・シュレク(ルクセンブルク、サクソバンク)+49"
3位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、リクイガス)+54"

チーム総合成績
1位 アージェードゥーゼル 115h59'24"
2位 アスタナ +03"
3位 チームコロンビア・HTC +4'45"

第10ステージ敢闘賞
ティエリー・ウポン(フランス、スキル・シマノ)