ツール・ド・北海道第1ステージ、ラスト17kmでブリヂストンアンカー5人が攻撃を仕掛けると集団は分裂。10人で迎えた上りゴールは、アジア圏に初めて来たというレオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)が優勝。

レオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)が優勝レオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
スターターの綿貫民輔ツール・ド・北海道協会会長による号砲で100人が出走スターターの綿貫民輔ツール・ド・北海道協会会長による号砲で100人が出走 photo:Hideaki TAKAGI9月14日(土)、ツール・ド・北海道(UCI2.2)が開幕。初日はニセコと羊蹄山を巡る180km。厳しい山岳コースだが、勝敗を分けた展開は終盤の平坦区間での攻撃だった。

山岳ポイント(KOM)が2つ、ホットスポットが1つある第1ステージ。朝までは大雨だったが開会式の頃から小降りになり、スタート時に雨はやんだ。その後は曇りからやがて晴れ間が覗き、蒸し暑いほどの天気に。この蒸し暑さとその後の風が選手を苦しめることに。
ニセコチセヌプリのKOMを取る阿部嵩之(チーム右京)ニセコチセヌプリのKOMを取る阿部嵩之(チーム右京) photo:Hideaki TAKAGI
阿部嵩之(チーム右京)が2つの山岳ポイントを先頭で通過

スタート後から集団前方ではアタックが常にかかるが決まらない。序盤の上り途中で阿部嵩之(チーム右京)が単独抜け出し、その後に4人が合流し先頭は5人に。阿部、池部壮太(マトリックスパワータグ)、森本誠(Cプロジェクト)、オリバー・ビア(ヴェロクラブ・メンドリシオ)、カール・エバンス(チームバジェット・フォークリフト)だ。
117km地点、13人の先頭集団117km地点、13人の先頭集団 photo:Hideaki TAKAGI
KOMまで5kmほどでエバンスが抜け出しさらに阿部も合流。KOMの争いは阿部が先着しそのまま高速ダウンヒル区間へ。先行していた阿部にエバンスが追いつき先頭2人とメイン集団の構図に。差は3分ほど。補給地点を過ぎ、2つ目のKOMは阿部が単独で先頭通過。今日だけで15点を獲得し、2日目までの山岳リーダーを確定させる。

分裂したメイン集団
126km地点、合流した大集団から清水都貴(ブリヂストンアンカー)がアタック126km地点、合流した大集団から清水都貴(ブリヂストンアンカー)がアタック photo:Hideaki TAKAGI
いっぽうでメイン集団は2つ目のKOMへの緩い上り区間で清水都貴(ブリヂストンアンカー)が仕掛け、この動きで集団は分裂。13人の追走集団ができる。ここに清水、NIPPOは福島晋一とピニツォット、シマノレーシングは畑中勇介と西村大輝、西谷泰治(愛三工業レーシングチーム)、飯野智行(宇都宮ブリッツェン)、黒枝士揮(鹿屋体育大)そしてOCBCシンガポールが3人と、エース格の選手が入る。
128km地点、追走集団の足並みが揃わない128km地点、追走集団の足並みが揃わない photo:Hideaki TAKAGI
取り残されたメイン集団はおもに土井雪広(チーム右京)が引いて1分以上あった差を詰めていく。先頭に阿部がいるが、逃げたあとに吸収された状態で勝負できる脚でないため、土井が引いたもの。そして125km過ぎて先頭13人にようやくメイン集団が追いつく。

125km地点での攻防

この125km地点から数キロは、3年前に決定的なアタックがかかった場所。1kmと長めの上りののちに平坦の横風区間に入るポイント。吸収のタイミングでトマ・ルバ(ブリヂストン・アンカー)、ビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)、ホセ・ビセンテ(チーム右京)、ピニツォットらが積極的に仕掛け、その中から清水が単独アタック、差を広げ独走する。

各チームの主力はそれぞれのチームメイトを待つため牽制と攻撃が繰り返され、結局は半分ほどに減った集団に落ち着く。先頭の清水とメイン集団は1分近くにまで広がるが、30km以上を逃げ続けたあとに吸収される。ゴールまで20kmを切って30人ほどの集団となる。あとは羊蹄山を巡る平坦直線状の道とゴールまでの上りだけ。

163km地点、ブリヂストンアンカー5人が攻撃を仕掛ける163km地点、ブリヂストンアンカー5人が攻撃を仕掛ける photo:Hideaki TAKAGI
ラスト17kmでアンカー勢5人の攻撃

倶知安町内をゴールへ向かう先頭集団倶知安町内をゴールへ向かう先頭集団 photo:Hideaki TAKAGIこの直線区間で、上りのあとの平坦区間、しかも横風の強い区間でブリヂストンアンカー勢5人全員が前に出てペースを強烈に上げる。横風でも左側車線しか使えないため中切れが発生、8人の先頭集団ができる。アンカー5人全員とホセ・ビセンテ、中根英登(チームNIPPO・デローザ)、ジョン・アンダーソン(チームバジェット・フォークリフト)。さらに後方からピニツォットとビセンテ・ガルシアが合流し10人の先頭集団ができる。
第1ステージ表彰第1ステージ表彰 photo:Hideaki TAKAGI
アンカー勢5人のみが先頭を引く10人の集団は、後続に30秒以上の差をつけゴールへ向かう。そしてゴールまで400mの上り坂で抜け出したのはピニツォット。ビセンテ・ガルシアとホセ・ビセンテを抑えて優勝。アンカー勢5人は6位から10位に。後続集団は、58秒後に18歳の西村を先頭に窪木一茂(マトリックスパワータグ)らが続いた。

NIPPOとアンカーの戦い
個人総合山岳リーダーの阿部嵩之(チーム右京)個人総合山岳リーダーの阿部嵩之(チーム右京) photo:Hideaki TAKAGI
逃げができても要所でおもに福島が動いて集団をコントロールしたNIPPO。そして危険な逃げには常にピニツォットが入り、特にラスト17kmのアンカー勢の攻撃時には、最後に合流しそして見事に優勝。プロ4年目の26歳は、昨年の所属チームは無かった。今年2月に大門監督がチームに招きいれて、その恩に応えた。
個人総合リーダーのレオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)は26歳、昨年は所属チームが無かった個人総合リーダーのレオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)は26歳、昨年は所属チームが無かった photo:Hideaki TAKAGI
アンカー勢は、3年前のこのコースの覇者、清水が積極的に動き、さながら"ミヤタカデー"と呼ぶにふさわしいほどの動き。ラスト17kmで5人が揃って抜け出したのは、事前の下見で決めいていた作戦だった。しかし清水はそれまでの独走で疲弊、ほか4人も差をつけるべく全開で引いたためゴールでは上位に入れず。しかし後2ステージを考えると、総合上位に5人全員がいることは大きな強みだ。

翌第2ステージのスタート/フィニッシュは第1ステージと同じ。神恵内村までの往復コース。しかし選手間ではこの第2ステージが最も厳しいと見る向きが多い。それは終盤に控える山岳がゴールまで近いこと。ピークからゴールまで12kmの急坂+カーブで、差を詰める平坦は短くすぐに上りゴール。上りピークでどれくらいの差をつけるかがポイントだ。

NIPPOが優勢であることに変わりは無いが、アンカー勢の層の厚さ、そして2位3位のマトリックスと右京もアドバンテージがある。翌第2ステージで1分以上の差を彼らにつけるのは難しいのが普通。総合上位争いは実質数チームに絞られた。

結果
第1ステージ
 180km
1位 レオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)4時間36分27秒
2位 ビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)
3位 ホセ・ビセンテ(チーム右京)
4位 中根英登(チームNIPPO・デローザ)
5位 ジョン・アンダーソン(チームバジェット・フォークリフト)+05秒
6位 清水都貴(ブリヂストンアンカー)
7位 トマ・ルバ(ブリヂストンアンカー)+13秒
8位 ダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)+17秒
9位 初山翔(ブリヂストンアンカー)
10位 伊丹健治(ブリヂストンアンカー)+27秒

個人総合成績 第1ステージ終了時点
1位 レオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)4時間36分17秒
2位 ビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)+04秒
3位 ホセ・ビセンテ(チーム右京)+06秒
4位 中根英登(チームNIPPO・デローザ)+10秒
5位 清水都貴(ブリヂストンアンカー)+12秒
6位 ジョン・アンダーソン(チームバジェット・フォークリフト)+15秒
7位 トマ・ルバ(ブリヂストンアンカー)+23秒
8位 ダミアン・モニエ(ブリヂストンアンカー)+27秒
9位 初山翔(ブリヂストンアンカー)
10位 伊丹健治(ブリヂストンアンカー)+37秒

個人総合ポイント賞
 第1ステージ終了時点
1位 レオナルド・ピニツォット(チームNIPPO・デローザ)25点
2位 ビセンテ・ガルシア(マトリックスパワータグ)20点
3位 ホセ・ビセンテ(チーム右京)16点

個人総合山岳賞 第1ステージ終了時点
1位 阿部嵩之(チーム右京)15点
2位 カール・エバンス(チームバジェット・フォークリフト)8点
3位 池部壮太(マトリックスパワータグ)6点

チーム総合時間賞 第1ステージ終了時点
1位 ブリヂストンアンカー 13時間49分56秒
2位 チームNIPPO・デローザ +33秒
3位 マトリックスパワータグ+1分31秒

photo&text:高木秀彰
関連ファイル
2013tdh_1st.pdf (588.35 KB)

最新ニュース(全ジャンル)