第19ステージの厳しいゴールを制したのは、ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)。遅れを喫したニーバリ(イタリア、アスタナ)に変わって、総合1位の座は3秒差でホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)へと移行した。第20ステージの"魔の山"アングリルが、3秒をかけた最終決戦の舞台となる。

ステージ優勝、総合4位のホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)

独走でフィニッシュラインを目指すホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)独走でフィニッシュラインを目指すホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Kei Tsujiこの勝利を待ち望んでいた。信じてもらえるそうもないが、今日は2~3回くらいチームメイトに牽くのをストップするように言った。チームメイトたちのペースが速かったのと自分の体力に自信がなかったこともあって、最後の登りが険しいと感じていたからだ。

アストゥリアスの帽子を受け取ったホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)アストゥリアスの帽子を受け取ったホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ) photo:Kei Tsujiだけど、スタート地点からチームメイトたちがずっとアシストしてくれていたおかげで、かすかながら今日の優勝への希望はあった。今日のような勝ち方は2つの意味がある。自分への自信が深まったことと、勝利を目指そうという気持ちになったことだ。できるなら、今日のようなパフォーマンスが望めるなら、明日もまたがんばりたい。

アングリルのゴールはすべてのクライマーにとって美しい場所だ。あの場所で勝利のサインをすることは特別な意味がある。今日のステージ優勝で大きく自信がついた。また勝てたらいいと思うが、総合優勝は難しくなってしまったようだ。そうはいっても(今日のような)イリュージョンを披露し続けたい。

他の総合ライバル勢にも疲れがたまっている。アングリルの容赦ない厳しさを考えると、すべてが変わってしまう可能性がある。表彰台を目指して可能な限り戦うつもりだ。そういう夢を信じたい。だけど、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)という存在が大きな障壁となっている。


総合1位、複合賞、ステージ5位のクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)

ニーバリを引き離してゴールするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)ニーバリを引き離してゴールするアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)とクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) photo:Kei Tsuji3秒差という呪文を唱えてもらったので、明日も脚の調子は良いままで、この総合ジャージもキープできることを願う。タイム差は本当にわずかしかないし、ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)はとても強い選手だ。さらにアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)もいる。彼はぼくのキャリアを通してもずっと好敵手だった選手のひとりだ。

マイヨロホに袖を通しながら「It's back」と小さく叫ぶクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)マイヨロホに袖を通しながら「It's back」と小さく叫ぶクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) photo:Kei Tsujiもちろん彼のほうが、ぼくより少し若い。だから、彼のキャリアのすべてを見てきたし、彼の作戦も熟知している。それからロドリゲスとは前にチームメイトだったこともある。だから彼のことを良く知っているし、彼のレースの仕方もわかっている。

今日は戦略的な駆け引きが重要だった。最後の登りまで決して全力で走ることはしないで、タイムボーナスを獲得するためのスプリントもしなかった。それだけでは勝てないとわかっていたからだ。だけど、精神的にも肉体的にも、最後の登りでは好調だった。

このマイヨロホを獲得することは考えていなかった。走り終わったら(マイヨロホが)付いてきた感じだ。自分自身の調子は良いし、今現在の両脚もファンタスティックな状態だ。今日マイヨロホを獲得するとは予想していなかったけど、獲得できてとてもうれしい。残り1つの明日のステージで防衛できることを期待したい。

山岳の麓までは、チームメイトたちがしっかりサポートしてくれる。だから、後は大きな脅威であるニーバリやバルベルデに充分に警戒するだけでいい。それから表彰台狙いで、プリト(ホアキン・ロドリゲス)がバルベルデにアタックする動きもありそうだ。

明日のことはまったく悩んでいない。明日、充分な脚があって総合優勝できたなら、それはそれで素晴らしい。でも、そうならなかったとしても、素晴らしいブエルタだったと言える。自分くらいの年齢になれば、3秒差で勝つか負けるかが心配で眠れないことはない。勝利と同様に、敗北にも慣れている。ただ、今回のケースは自分のキャリアで最大の勝利になることは明らかだ。自分の人生では大きな驚きをいくも体験しているが、これで総合優勝できれば確実に最大の驚きになると思う。


ポイント賞、総合3位、ステージ6位のアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)

マイヨプントスを着続けるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)マイヨプントスを着続けるアレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター) photo:Kei Tsuji優勝を狙って走っていたが、プリト(ホアキン・ロドリゲス)は手持ちのカードをうまく使った。彼のチームメイトたちは素晴らしい。彼らを祝福したい。ぼく自身はプリトからそれほど離されてはいなかったけど、あれ以上は走れなかった。後は明日の決戦となるステージが残るだけだ。アングリルは本当に厳しい。作戦はただひとつ。自分のペースを押し通して、他人の存在は無視することだ。総合優勝はホーナーが大本命になった。


山岳賞のニコラ・エデ(フランス、コフィディス)

マイヨモンターニャはニコラ・エデ(フランス、コフィディス)が守るマイヨモンターニャはニコラ・エデ(フランス、コフィディス)が守る photo:Kei Tsuji今日のステージは速いペースだった。ニコ・シーメンス(ベルギー、コフィディス)が素晴らしいアシストをしてくれた。彼は2年前に、ダヴィ・モンクティエ(フランス)がマッテオ・モンタグーティ(イタリア、アージェードゥーゼル)の山岳賞ジャージを争ったときにも、同じようにアシストをしていた(2011年のブエルタはコフィディスに在籍したモンクティエが山岳賞を獲得)。

今日の目的は山岳賞ポイントをいくつか稼ぐことだった。1ポイント獲得できたが、逃げていたエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)とゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、アルゴス・シマノ)の2名の選手が脅威だった。1ポイントでもいいから山岳賞ポイントを稼げれば、今日のステージは充分だと思っていた。ともかく、昨日より脚の調子も良いので、明日には(山岳賞争いに)決着を付けてしまいたい。


敢闘賞のエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)

エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)とゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、アルゴス・シマノ)が逃げるエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)とゲオルグ・プレイドラー(オーストリア、アルゴス・シマノ)が逃げる photo:Vuelta a Espana/Graham Watsonもっと大きくリードを広げることができれば良かったと思う。昨日はヴァシル・キリエンカ(ベラルーシ)が逃げきってステージ優勝が可能だということを証明してくれたので、自分も同じことを試すつもりだった。残念ながら、メイン集団が全力で後ろから追ってきてしまった。コンディションは徐々に上がってきていて、世界選手権のころには良い仕上がりになると思う。


総合5位、ステージ10位のニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)

メイン集団からアタックを仕掛けるニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)メイン集団からアタックを仕掛けるニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) photo:Vuelta a Espana/Graham Watson自分としてはゴールは完璧だった。アタックするつもりだったけど不発に終わった。残り1kmまで牽引してもらって、そこでアタックするつもりだった。ガッカリだ。今日のフィードバックを活かして、明日はまた仕切り直すつもりだ。アングリルについては、過去のことを思うと複雑な気持ちになる。2008年では好調だったし、2011年は不調だった。非常にタフな山岳だ。なにが起きても不思議ではないステージのひとつだ。


ステージ2位のディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)

ステージ2位に入ったディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)ステージ2位に入ったディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ) photo:Kei Tsujiブエルタでのステージ優勝の機会を逃してしまって、非常に残念だ。だけど、あそこまで偉大なチャンピオン(ホアキン・ロドリゲス)なら2位でゴールするのは恥ずかしいことではない。今日の走りには納得している。現時点で最も重要なのは、今後に控える世界選手権に備えて調子を整えることだ。この3日間の経験から、素晴らしい調子に仕上げて、世界選手権でベストな姿を披露できると思う。


ステージ3位、総合10位のダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)

ロドリゲスをアシストし、ステージ3位に入ったダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)ロドリゲスをアシストし、ステージ3位に入ったダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) photo:Kei Tsuji今日の作戦はプリト(ホアキン・ロドリゲス)をステージ優勝させることだった。チームとしてベストを尽くして、そのミッションを達成した。彼がアタックしたときは、他のライバルたちが追走しないようにフォローしようとした。だけど、実際には誰も追走できなかった。

自分自身もステージ3位に入れてうれしい。さらにボーナスタイムを獲得できたことも大きい。ただ、他の総合トップ10入りを狙うライバルたちとの大差が付いたわけではなく、これからは数秒差が重要になってくる。

ホアキンのステージ優勝は本当にうれしい。彼はこの勝利にふさわしいし、ぼくたちも彼がベストな成績を残せるように最後の最後まで戦っていくつもりだ。


最終決戦への意欲を見せるジュゼッペ・マルティネッリ監督(アスタナ)

ジュゼッペ・マルティネッリ監督(アスタナ)ジュゼッペ・マルティネッリ監督(アスタナ) photo:Cor.Vosこの3週間のあいだ毎日ずっとヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)は、このレースで最強だということを示してきた。だけど、今日の最後は、1名の選手が個人的に強かったというだけのことだ。ブエルタは今日で終わりではない。われわれはマイヨロホを失ったが、まだ残り1ステージある。

ブエルタの序盤のことを振り返ってみよう。われわれは皆、口を揃えて、今年のブエルタは最終日のアングリルで総合優勝が決まると言っていた。今日の結果には満足している。今日のヴィンチェンツォのパフォーマンスも、この19日間のレースを考えれば充分なものだ。

今日はアングリルの前日で、われわれは総合1位から3秒差の順位にいる。今年のブエルタは明日で決するだろう--この言葉が本当になろうとしている。


※ソースはレース公式リリース、チーム公式ウェブサイト、選手個人のウェブサイトおよびTwitter、Facebookなど。

translation & text: Seiya.YAMASAKI