世界遺産の大聖堂を有するブルゴスの街に、コンスタントに吹き付けた北風。残り30kmを切ってから始まった風との闘いによって集団が35名に絞られる中、バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)がスプリンターの貴重なチャンスを潰すロングスパートを成功させた。



向かい風の中、果敢に飛び出したアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)とハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)向かい風の中、果敢に飛び出したアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)とハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル) photo:Kei Tsuji大会2回目の休息日を過ごしたプロトンは、ラ・リオハ州のカラオラで3週目をスタートさせた。カスティーリャ・イ・レオン州のブルゴスに至る189kmの道のりは、2つの3級山岳を含んでいるものの、スプリンター向きのイージーコースだ。

ラ・リオハ州からカスティーリャ・イ・レオン州に向かうラ・リオハ州からカスティーリャ・イ・レオン州に向かう photo:Kei Tsujiスタートを切ったのは、ブエルタ開幕時の約3/4にあたる150名。真向かいの風の中、道幅のある幹線道路でアタック合戦が繰り広げられ、アダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)とハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)の2人が抜け出すことに成功する。これをスプリンターチームが追撃する典型的な平坦ステージの展開に。

2011年のブエルタから数えて7連続グランツール出場中のハンセンと、ブエルタの逃げの常連アラメンディアによるエスケープ。最大8分まで広がったタイム差を、ランプレ・メリダとオリカ・グリーンエッジの2チームが縮めて行く。すでに多くのスプリンターがリタイアしているため、集団牽引に興味を示したのは上記の2チームだけだった。

残り40kmでタイム差は2分。メイン集団は逃げ吸収に向けて平穏に進んでいたが、残り30kmを切ったところで突如ペースが猛烈に上がる。横風が吹き付ける幹線道路で、サクソ・ティンコフの奇襲ペースアップが始まった。

ランプレ・メリダがレース序盤から積極的に集団をコントロールランプレ・メリダがレース序盤から積極的に集団をコントロール photo:Kei Tsuji
ブドウ畑が広がるラ・リオハ州を行くブドウ畑が広がるラ・リオハ州を行く photo:Kei Tsujiハンドル幅の狭いアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)が逃げるハンドル幅の狭いアダム・ハンセン(オーストラリア、ロット・ベリソル)が逃げる photo:Kei Tsuji



メイン集団のペースアップを図るサクソ・ティンコフメイン集団のペースアップを図るサクソ・ティンコフ photo:Vuelta a Espana/Graham Watsonサクソ・ティンコフの攻撃によって、総合5位のドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)や総合7位のティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)が脱落。この日を最後にリタイアを決めているファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)らも集団牽引に合流し、後方の第2集団や第3集団とのタイム差をじわりじわり広げて行く。

横風区間で集団が大きく3つに分断される横風区間で集団が大きく3つに分断される photo:Vuelta a Espana/Graham Watsonこの集団ペースアップによって先頭のハンセンとアラメンディアは吸収。35名ほどに絞られたメイン集団は、遅れた選手たちを寄せ付けないスピードを維持し、残り9kmでブルゴスを見下ろす丘の登りに突入する。テクニカルな下りを伴うこの丘でディエゴ・ウリッシ(イタリア、ランプレ・メリダ)らがアタックを仕掛けた。

先行するバウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)が後方を確認先行するバウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)が後方を確認 photo:Kei Tsuji軽快なダンシングで登りを突き進んだウリッシだったが、単独では集団に立ち向かえず。続いて飛び出したエゴイ・マルティネス(スペイン、エウスカルテル)やタネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)も引き戻される。勝負は35名の集団によるゴールスプリントに持ち込まれた。

長い最終ストレートに差し掛かると、発射台を失った各スプリンターが牽制する隙を突いてモレマがアタック。緩い登りで一気にリードを広げたモレマがそのまま踏んで行く。牽制によって仕掛けが遅れたスプリンターがモレマを追撃したが時すでに遅し。後方からの追撃が届かないことを確信したモレマが、驚きの表情で両手を広げた。

「ゴール手前でアタックすることが、僕に残された唯一のチャンスだった。振り返ることなく踏み続けた。勝ち方を含めて、この勝利にはとても満足している」。劇的なスパートを成功させたモレマは満足感と安堵感に溢れた表情でシャンパンを開けた。

2011年のブエルタで総合4位&ポイント賞獲得という成績を残し、今年ツール・ド・フランスで総合6位に入っている26歳のモレマ。ベルキンプロサイクリングのエースとしてスペインに降り立ったが、前半から苦戦を強いられ、総合52位に沈んでいた。チームにとってはこれが今シーズンのグランツール初勝利。ベルキンジャージでの勝利は初だ。



両手を広げてゴールするバウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)両手を広げてゴールするバウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング) photo:Kei Tsuji


バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)がステージに上がるバウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)がステージに上がる photo:Kei Tsuji最終的にピノやポッツォヴィーヴォが1分31秒遅れてゴールしたため、総合5位ポッツォヴィーヴォと総合6位ロッシュの順位が逆転した。ツール・ド・フランスでもアルベルト・コンタドール(スペイン)のために横風区間で奇襲作戦を成功させているサクソ・ティンコフ。「あらかじめ地図でコースを確認していたので、集団を破壊しようと横風区間でペースアップした。チームのパワーを見せつけることが出来たよ」と、総合5位に浮上したロッシュは語る。なお、総合トップスリーの順位とタイム差に変動は無い。

いよいよブエルタは最終決戦地アストゥリアス州へ。第18ステージには最大勾配20%の激坂ペーニャ・カバルガの山頂フィニッシュが登場する。マイヨロホを着るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)は「ペーニャ・カバルガが2010年に登場した際には2位だった。登りを詳しく知っているし、コンディションは良い。でも注意が必要な登りだ」と警戒している。




ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第17ステージ結果
1位 バウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)          4h44'28"
2位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)
3位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ)
4位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
5位 ファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)
6位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ヴァカンソレイユ・DCM)
7位 ルーカ・パオリーニ(イタリア、カチューシャ)
8位 ポール・ヴォス(ドイツ、ネットアップ・エンドゥーラ)
9位 ホセ・エラーダ(スペイン、モビスター)
10位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)

37位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)                   +1'31"
39位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)
40位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)
54位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)

敢闘賞
ハビエル・アラメンディア(スペイン、カハルーラル)

マイヨロホ(個人総合成績)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)            68h50'29"
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)      +28"
3位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              +1'14"
4位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)               +2'29"
5位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)           +3'43"
6位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)       +5'09"
7位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)                    +6'08"
8位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)        +6'17"
9位 サムエル・サンチェス(スペイン、エウスカルテル)              +7'33"
10位 タネル・カンゲルト(エストニア、アスタナ)                +10'52"

マイヨプントス(ポイント賞)
1位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              119pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)           111pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)                98pts

マイヨモンターニャ(山岳賞)
1位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)                   37pts
2位 ダニエーレ・ラット(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)       30pts
3位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)     22pts

マイヨコンビナーダ(複合賞)
1位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)     9pts
2位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)              12pts
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)           12pts

チーム総合成績
1位 エウスカルテル・エウスカディ                     205h59'40"
2位 アスタナ                                 +1'07"
3位 モビスター                                +1'26"

text&photo:Kei Tsuji in Burgos, Spain

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