前日のゼネク・スティバル(オメガファーマ・クイックステップ)に続いて、またもやチェコ出身選手が勝利。UCIプロコンチネンタルチーム所属のレオポルド・ケーニッヒ(ネットアップ・エンドゥーラ)が1級山岳で勝利した。そんな中、チェコを代表するロマン・クロイツィゲル(サクソ・ティンコフ)は総合争いから脱落した。



ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第8ステージ高低図ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第8ステージ高低図 image:Unipublicアンダルシア州には多くの定番峠が存在しているが、ブエルタ・ア・エスパーニャ第8ステージのゴール地点1級山岳アルト・デ・ペニャスブランカスはブエルタ初登場。今大会最南端ステージのフィニッシュラインは、標高980mの峠に置かれている。登坂距離14.5km・平均勾配6.6%という山道でレースは慌ただしく動いた。

レース前半は横風によって集団が割れるシーンもレース前半は横風によって集団が割れるシーンも photo:Unipublic/Graham Watson前日の落車で頭を強く打ったダニエル・マーティン(アイルランド、ガーミン・シャープ)は、夕食後に目眩に見舞われたため、チームドクターの判断でスタートせず。

逃げグループを形成するダリオ・カタルド(イタリア、スカイプロサイクリング)ら逃げグループを形成するダリオ・カタルド(イタリア、スカイプロサイクリング)ら photo:Unipublic/Graham Watsonレースは激しいアタック合戦とともにスタートする。ようやく逃げが決まったのは34km地点。ベナト・インチャウスティ(スペイン、モビスター)やホルへ・アサンサ(スペイン、エウスカルテル)、バルトス・フザルスキー(ポーランド、ネットアップ・エンドゥーラ)ら13名が逃げグループを形成した。

大所帯の逃げの中には、昨年の超級コバドンガ山頂フィニッシュを制したアントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル)や、同超級クイトゥネグル山頂フィニッシュを制したダリオ・カタルド(イタリア、スカイプロサイクリング)の姿も。2年連続でブエルタ山頂フィニッシュ制覇を目論む彼らの逃げは最大4分のリードを得た。

メイン集団を牽引したのはUCIプロコンチネンタルチームのネットアップ・エンドゥーラ。逃げに乗ったフザルスキーを除くメンバー全員が集団先頭に上がり、逃げグループとのタイム差を詰めて行く。後半にかけて10km/1分のペースでタイム差は縮まり続け、1級山岳アルト・デ・ペニャスブランカスに差し掛かる頃にはタイム差が1分に。

やがて登坂距離14.5kmの登りが始まると、先頭はカタルドとドミニク・ネルツ(ドイツ、BMCレーシングチーム)、ラファエル・バルス(スペイン、ヴァカンソレイユ・DCM)の3人に。1分後方のメイン集団では、キャノンデールプロサイクリングやサクソ・ティンコフ、カチューシャがポジションを上げる。登りに入るとファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)が先頭でペースを刻み続けた。



メイン集団をコントロールするネットアップ・エンドゥーラメイン集団をコントロールするネットアップ・エンドゥーラ photo:Unipublic/Graham Watson1級山岳アルト・デ・ペニャスブランカスでファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)がペースを作る1級山岳アルト・デ・ペニャスブランカスでファビアン・カンチェラーラ(スイス、レディオシャック・レオパード)がペースを作る photo:Unipublic/Graham Watson



残り5kmを切ってから飛び出したイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)残り5kmを切ってから飛び出したイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル) photo:Unipublic/Graham Watson先頭で逃げるカタルド、ネルツ、バルス。残り9kmを切ると、逃げグループから遅れたマシュー・ブッシュ(アメリカ、レディオシャック・レオパード)がカンチェラーラに代わってメイン集団を牽引する。すると、ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)とバウク・モレマ(オランダ、ベルキンプロサイクリング)が相次いで脱落した(クロイツィゲルは5分27秒、モレマは2分33秒遅れでフィニッシュ)。

残り2kmでメイン集団を飛び出すレオポルド・ケーニッヒ(ネットアップ・エンドゥーラ)残り2kmでメイン集団を飛び出すレオポルド・ケーニッヒ(ネットアップ・エンドゥーラ) photo:Unipublic/Graham Watson粘り続けたカタルドとネルツの2人は、互いの健闘を讃え合う握手を交わした後、残り5kmで吸収。すると、間髪入れずにイゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)がカウンターアタック。エウスカルテルジャージが独走を開始した。

追走グループを率いてケーニッヒを追うイヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)追走グループを率いてケーニッヒを追うイヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング) photo:Unipublic/Graham Watson後方ではエロス・カペッキ(イタリア、モビスター)やイヴァン・サンタロミータ(イタリア、BMCレーシングチーム)、クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)らが攻撃を仕掛けたが決まらない。マイヨロホのヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)が全てのアタックに反応し、およそ30名ほどに絞られた状態でメイン集団が登りを進む。

すると残り2kmでケーニッヒがアタックし、単独で先頭アントンの追撃を開始。続いてティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)やイヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)、ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)、ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)、バルト・デクレルク(ベルギー、ロット・ベリソル)がペースを上げると、マイヨロホのニーバリが遅れた。

歯を食いしばって先頭を走り続けたアントンを、飄々とした表情のケーニッヒが抜き去って行く。ニーバリを置き去りにした追走グループは、先頭ケーニッヒを捉える勢いでバッソがペースアップ。ケーニッヒが何度も振り返るその視界の先では、残り200mを切ったところでモレーノがスプリントを開始する。しかしモレーノは届かず、先頭を守ったケーニッヒが渾身のガッツポーズでフィニッシュした。



モレーノを振り切ってゴールするレオポルド・ケーニッヒ(ネットアップ・エンドゥーラ)モレーノを振り切ってゴールするレオポルド・ケーニッヒ(ネットアップ・エンドゥーラ) photo:Unipublic/Graham Watson


「ブエルタに出場した時点で、最初の目標は達成された。これが初めてのグランツールなんだ。そしてこうしてステージ優勝することで、2つ目の目標を達成。ステージ優勝が夢だった。ネットアップのメンバー全員が僕の勝利のために身を捧げてくれた」。チェコ・モラヴスカートジェボヴァー出身の25歳はキャリア最高の勝利を喜ぶ。

マイヨロホに袖を通したニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)マイヨロホに袖を通したニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ) photo:Unipublic/Graham Watsonケーニッヒは2006年にPSKウィールプールでプロデビューし、2011年に現在のネットアップへ。今年ツアー・オブ・カリフォルニアのクイーンステージであるディアブロ山頂フィニッシュで優勝したことが記憶に新しい。

「自分でも驚いている。しかもこのステージ優勝で、当初の目標であった総合トップ10という成績が現実味を帯びて来た」。ケーニッヒは総合5位にジャンプアップ。山岳賞ランキング2位に浮上している。ワイルドカード枠で出場しているUCIプロコンチネンタルチームのネットアップ・エンドゥーラが貴重な勝ち星を掴んだ。

マイヨロホを着るニーバリが27秒遅れたため、ステージ3位のニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)が総合首位に。マイヨロホに袖を通したロッシュは「マドリードまでこのジャージを着続けたいなんて言わない。この1週間はとにかく素晴らしかった。初めてステージ優勝して、初めてリーダージャージを着た。明日からも厳しいステージが続くので、3日間だけでも着ることが出来れば大成功だ」と語る。大きく遅れたクロイツィゲルに代わって、今後はロッシュとラファル・マイカ(ポーランド)の2人がサクソ・ティンコフのエースを担うことになる。総合成績を見ると、ロッシュから17秒遅れでホーナーとモレーノの2人が続いている。

翌日の第9ステージは、「世界で最も厳しい登りの一つ」と言われる最大勾配27%のバルデペーニャス・デ・ハエン激坂ゴール。アンダルシアの3連続山岳ステージで総合成績は動き続ける。

選手コメントはレース公式サイトやチーム公式サイトより。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第8ステージ結果
1位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)       4h09'45"
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)                 +01"
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)            +05"
4位 ティボー・ピノ(フランス、FDJ.fr)
5位 イヴァン・バッソ(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
6位 バルト・デクレルク(ベルギー、ロット・ベリソル)               +08"
7位 イゴール・アントン(スペイン、エウスカルテル)                +13"
8位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)               +19"
9位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)
10位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング)           +23"

11位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)
12位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ)
13位 ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、アージェードゥーゼル)
14位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・レオパード)
15位 セルジオルイス・エナオモントーヤ(コロンビア、スカイプロサイクリング)    +27"
16位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)

敢闘賞
アントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル)

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)         31h39'30"
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)     +17"
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ) 
4位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)              +18"
5位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)        +29"
6位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・レオパード)      +30"
7位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              +31"
8位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング)          +42"
9位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ)             +52"
10位 ホアキン・ロドリゲス(スペイン、カチューシャ)              +1'03"

プントス(ポイント賞)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)               68pts
2位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)          54pts
3位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)      53pts

モンターニャ(山岳賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)          15pts
2位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)       12pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)               12pts

コンビナーダ(複合賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)          4pts
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)               7pts
3位 レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、ネットアップ・エンドゥーラ)       13pts

チーム総合成績
1位 サクソ・ティンコフ                           94h01'21"
2位 レディオシャック・レオパード                        +13"
3位 モビスター                                 +58"

text:Kei Tsuji
photo:Unipublic/Graham Watson