グランツールにおいて、山岳ステージの数とピュアスプリンターの数は反比例する。大会最初の本格的なゴールスプリントに持ち込まれたブエルタ・ア・エスパーニャ第5ステージ。混戦模様の中から抜け出したのは22歳のマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)だった。



ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第5ステージ高低図ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第5ステージ高低図 image:Unipublic大会5日目にして、ようやくスプリンター向きのステージが登場した。第5ステージはガリシア州の海岸を離れ、内陸部のラーゴ・デ・サナブリアにゴールする174.3km。カスティーリャ・イ・レオン州を駆けるコースの難易度は高くない。

ガリシア州からカスティーリャ・イ・レオン州に向かってプロトンは東に進むガリシア州からカスティーリャ・イ・レオン州に向かってプロトンは東に進む photo:Cor Vos2つの3級山岳を含むアップダウンが登場するため、逃げ切り狙いのアタッカーがレース序盤に集団を発つ。ビネル・アナコナゴメス(コロンビア、ランプレ・メリダ)、アルノー・クーテル(フランス、FDJ.fr)、ユルゲン・ヴァンデワール(ベルギー、ロット・ベリソル)、アントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル)、ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)が逃げグループを形成した。

逃げグループを形成するアルノー・クーテル(フランス、FDJ.fr)やアントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル)逃げグループを形成するアルノー・クーテル(フランス、FDJ.fr)やアントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル) photo:Vuelta a Espana先頭5名が稼ぎ出したタイム差は10分。レース中盤に差し掛かると、このタイム差をオリカ・グリーンエッジとガーミン・シャープの2チームが協力して詰めにかかる。にわか雨に見舞われたゴール31km手前の3級山岳で少し追走ペースが落ちたが、タイム差は着実に縮小。オメガファーマ・クイックステップの協力も手伝って、ゴールまでの平坦区間でタイム差は急速に縮まった。

タイム差が1分を切ったところで、フィニッシュラインまで10kmを残して、先頭からクーテルが飛び出し、これにヴァンデワールが合流。最後の抵抗を見せたが、世界TTチャンピオンのトニ・マルティン(ドイツ、オメガファーマ・クイックステップ)らの引きによって残り3kmで吸収される。

ジロ・デ・イタリアやツール・ド・フランスで見られたような屈強なリードアウトトレインによるバトルは見られず、スピードが上がりきらないメイン集団からパブロ・ウルタスン(スペイン、エウスカルテル)やフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)がアタックして飛び出すシーンも見られた。



マイヨロホを着て走るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)マイヨロホを着て走るヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ) photo:Vuelta a Espana複合賞ジャージを着て走るクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)複合賞ジャージを着て走るクリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード) photo:Vuelta a Espana粘り強く逃げ続けたアルノー・クーテル(フランス、FDJ.fr)粘り強く逃げ続けたアルノー・クーテル(フランス、FDJ.fr) photo:Vuelta a Espana



メイン集団を牽引するヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、ガーミン・シャープ)らメイン集団を牽引するヨハン・ファンスーメレン(ベルギー、ガーミン・シャープ)ら photo:Vuelta a Espana最終的にアルゴス・シマノがリードアウトトレインを組んで集団先頭へ。残り200mでスプリンターたちが一斉に腰を上げた。

ゴールスプリントでグランツール初勝利を飾ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)ゴールスプリントでグランツール初勝利を飾ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Vuelta a Espanaチームメイトにリードアウトされたニキアス・アルント(ドイツ、アルゴス・シマノ)の後ろから、マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が発射。一気に先頭に立ったマシューズがそのまま先頭で踏み続ける。

グランツール初勝利を飾ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)グランツール初勝利を飾ったマイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ) photo:Vuelta a Espanaマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)やジャンニ・メールスマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)が追撃を試みたが、伸びやかなスプリントを見せたマシューズが両手を広げてフィニッシュラインを切った。

「登りスプリントでも平坦スプリントでも勝てる。どちらが得意なのかはまだ分からない」と言うマシューズは、2010年にツアー・オブ・ジャパンでステージ優勝を飾り、同年ロード世界選手権のU23ロードレースで優勝。グランツール初出場の22歳は、8月上旬にアメリカで開催されたツアー・オブ・ユタではステージ2勝&2年連続ポイント賞を獲得している。

「初めてのグランツールなので、ステージ優勝を望みながらも、期待していなかった。調子が良いから勝てるという話ではない。今日は20人前後の選手にチャンスがあったと思う。引退したジュリアン・ディーン(現在はチーム監督)が残り20kmを下見して、どう走るべきか助言してくれたんだ。だからプレッシャーを感じず走ることが出来た。100%僕のために走ってくれたチームのための勝利だ」。

山岳ステージの多さから、多くのピュアスプリンターが出場を控えた今年のブエルタ。登りをこなせるオリカ・グリーンエッジのエーススプリンターは今後のステージでも注目の的になるだろう。

この日は集団が割れず、総合上位陣にタイム差はつかず。ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)がマイヨロホを守っている。選手たちはレース後、第6ステージのスタート地点に向けて陸路340kmを移動した。

選手コメントはレース公式サイトやチーム公式サイトより。



ブエルタ・ア・エスパーニャ2013第5ステージ結果
1位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)     4h28'22"
2位 マキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)
3位 ジャンニ・メールスマン(ベルギー、オメガファーマ・クイックステップ)
4位 ニキアス・アルント(ドイツ、アルゴス・シマノ)
5位 タイラー・ファラー(アメリカ、ガーミン・シャープ)
6位 エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)
7位 アントニー・ルー(フランス、FDJ.fr)
8位 グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ベリソル)
9位 ダニエーレ・ラット(イタリア、キャノンデールプロサイクリング)
10位 グレガ・ボーレ(スロベニア、ヴァカンソレイユ・DCM)

敢闘賞
アントニオ・ピエドラ(スペイン、カハルーラル)

個人総合成績(マイヨロホ)
1位 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア、アスタナ)            18h43'52"
2位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)     +03"
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)           +08"
4位 アイマル・スベルディア(スペイン、レディオシャック・レオパード)      +16"
5位 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、モビスター)              +21"
6位 ロベルト・キセロフスキー(クロアチア、レディオシャック・レオパード)    +26"
7位 リゴベルト・ウラン(コロンビア、スカイプロサイクリング)          +28"
8位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)                +31"
9位 ラファル・マイカ(ポーランド、サクソ・ティンコフ)             +38"
10位 ロマン・クロイツィゲル(チェコ、サクソ・ティンコフ)            +42"

プントス(ポイント賞)
1位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)               48pts
2位 マイケル・マシューズ(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)      41pts
3位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)          38pts

モンターニャ(山岳賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)          11pts
2位 ニコラ・エデ(フランス、コフィディス)                  8pts
3位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)               6pts

コンビナーダ(複合賞)
1位 ニコラス・ロッシュ(アイルランド、サクソ・ティンコフ)          7pts
2位 ダニエル・モレーノ(スペイン、カチューシャ)               12pts
3位 クリストファー・ホーナー(アメリカ、レディオシャック・レオパード)    15pts

チーム総合成績
1位 レディオシャック・レオパード                      55h12'07"
2位 サクソ・ティンコフ                              +05"
3位 ベルキンプロサイクリング                          +1'10"

text:Kei Tsuji
photo:Cor Vos

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