ブエルタ・ア・エスパーニャには赤・緑・青・白の4色ジャージが揃う。マイヨロホと並行して争われるのが緑のポイント賞「プントス」、青い水玉模様の山岳賞「モンターニャ」、そして白い複合賞「コンビナーダ」を懸けた闘いだ。

プントス(ポイント賞ジャージ)

ツール・ド・フランスと同じ緑色のプントスジャージ(ポイント賞ジャージ)ツール・ド・フランスと同じ緑色のプントスジャージ(ポイント賞ジャージ) photo:Kei Tsujiプントスはスペイン語でポイントの意味。主にスプリンターを対象にしたポイント賞ジャージだ。ステージ上位15名と、中間スプリントポイント上位3名に与えられるポイントの積算により争われる。2009年にジャージカラーがツールと同じグリーンに変更された。ジャージスポンサーはリサイクル企業の「エコピラス」と「アンビランプ」。

エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング) photo:Riccardo Scanferla獲得ポイントはステージ1位で25ポイント、2位20ポイント、3位16ポイント・・・15位1ポイント。中間スプリントポイントでは1位4ポイント、2位2ポイント、3位1ポイント。ツールとは異なり、平坦ステージでも山岳ステージでも同ポイントが与えられる。そのためスプリンターだけではなく、総合上位のオールラウンダーもポイント賞ランキングの上位に名を連ねる。今年は半分以上のステージで頂上ゴールが登場するため、総合上位陣がプントスを着る可能性が極めて高い。

ここではポイント賞候補ではなく、注目のスプリンターにフォーカスしたい。他のグランツールと比べて平坦ステージが少ないため、必然的に他のグランツールよりも出場するピュアスプリンターの数が少ない。どのチームもクライマーを中心に据えた編成であり、リードアウトトレインの威力は弱い。

ピュアスプリンターとしてはテオ・ボス(オランダ、ベルキンプロサイクリング)の名前がまず挙がる。トラック世界選手権で5つの金メダルを獲得しているスプリンターの持ち味は、ハイスピード域からの伸びだ。

オリカ・グリーンエッジはマイケル・マシューズとリー・ハワード(オーストラリア)の2人でスプリントに挑む。その他、コルド・フェルナンデス(スペイン、ガーミン・シャープ)やマキシミリアーノ・リケーゼ(アルゼンチン、ランプレ・メリダ)、グレゴリー・ヘンダーソン(ニュージーランド、ロット・ベリソル)らがスプリント戦線に絡むだろう。

登れるスプリンターとしてエドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ノルウェー、スカイプロサイクリング)にも注目。世界チャンピオンのフィリップ・ジルベール(ベルギー、BMCレーシングチーム)はそろそろ今シーズン初勝利が欲しいところだ。

ブエルタ歴代ポイント賞獲得者
2012年 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
2011年 バウク・モレマ(オランダ)
2010年 マーク・カヴェンディッシュ(イギリス)
2009年 アンドレ・グライペル(ドイツ)
2008年 フレフ・ファンアフェルマート(ベルギー)
2007年 ダニエーレ・ベンナーティ(イタリア)
2006年 トル・フースホフト(ノルウェー)
2005年 アレッサンドロ・ペタッキ(イタリア)
2004年 エリック・ツァベル(ドイツ)
2003年 エリック・ツァベル(ドイツ)
2002年 エリック・ツァベル(ドイツ)
2001年 ホセマリア・ヒメネス(スペイン)
2000年 ロベルト・エラス(スペイン)
1999年 フランク・ファンデンブロック(ベルギー)
1998年 ファブリツィオ・グイディ(イタリア)
1997年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1996年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1995年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1994年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1993年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1992年 ジャモリディネ・アブドヤパロフ(ウズベキスタン)
1991年 ウーヴェ・ラーブ(ドイツ)
1990年 ウーヴェ・ラーブ(ドイツ)



モンターニャ(山岳賞ジャージ)

白地に青玉デザインのモンターニャジャージ(山岳賞ジャージ)白地に青玉デザインのモンターニャジャージ(山岳賞ジャージ) photo:Unipublicモンターニャはスペイン語でマウンテンの意味。山岳の頂上通過順位に基づいて与えられるポイントの積算で争われる。ジャージデザインは青い水玉模様。ジャージスポンサーは国営宝くじの「ロテリアス・イ・アプエスタス・デル・エスタド」。

スペインの厳しい山岳を舞台にした山岳賞争いスペインの厳しい山岳を舞台にした山岳賞争い photo:Kei Tsujiこれまで多くの山岳スペシャリストを輩出してきたクライマー大国スペイン。今年で開催68回目を迎えるブエルタで、実に47回にわたってスペイン人選手が山岳賞を獲得してきた。そのうちの22回は、スペイン人選手が山岳賞ランキングのトップスリーを独占している。

山岳賞争いは本命の総合争いの展開に左右されるため、候補をズバリ言い当てにくい。どれだけ山岳に強いクライマーでも、チーム内に総合狙いのオールラウンダーがいる場合は自由な動きが許されないのだ。ポイント賞同様、狙わずとも総合上位の選手が山岳賞トップに立つ可能性が高い。

獲得ポイントは、「シーマ・アルベルトフェルナンデス(大会最高地点)」に指定された第14ステージのポルト・デ・エンバリラ先頭通過で20ポイント、頂上ゴールで15ポイント、1級山岳10ポイント、2級山岳5ポイント、3級山岳3ポイント。

昨年はサイモン・クラーク(オーストラリア、オリカ・グリーンエッジ)が山岳賞を獲得。クラークはレース中盤に一度山岳賞ジャージを失いながらも、重要な山岳ステージで逃げに乗ってポイントを稼ぎ、オーストラリア人選手として初めて山岳賞を獲得した。

バルベルデやロドリゲスに代表される総合狙いの選手が山岳賞を獲得してしまうのか。それとも、山岳ステージで連日逃げ、コツコツとポイントを積み重ねるクライマーの手に渡るのか。クライマー大国を舞台にしたクライマー対決に注目だ。

ブエルタ歴代山岳賞獲得者
2012年 サイモン・クラーク(オーストラリア)
2011年 ダヴィ・モンクティエ(フランス)
2010年 ダヴィ・モンクティエ(フランス)
2009年 ダヴィ・モンクティエ(フランス)
2008年 ダヴィ・モンクティエ(フランス)
2007年 デニス・メンショフ(ロシア)
2006年 エゴイ・マルティネス(スペイン)
2005年 ホアキン・ロドリゲス(スペイン)
2004年 フェリックス・カルデナス(コロンビア)
2003年 フェリックス・カルデナス(コロンビア)
2002年 アイトール・オサ(スペイン)
2001年 ホセマリア・ヒメネス(スペイン)
2000年 カルロス・サストレ(スペイン)
1999年 ホセマリア・ヒメネス(スペイン)
1998年 ホセマリア・ヒメネス(スペイン)
1997年 ホセマリア・ヒメネス(スペイン)
1996年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1995年 ローラン・ジャラベール(フランス)
1994年 リュク・ルブラン(フランス)
1993年 トニー・ロミンゲル(スイス)
1992年 カルロス・エルナンデス(スペイン)
1991年 ルイス・エレラ(コロンビア)
1990年 マルティン・ファルファン(コロンビア)



コンビナーダ(複合賞ジャージ)

真っ白なコンビナーダジャージ(複合賞ジャージ)真っ白なコンビナーダジャージ(複合賞ジャージ) photo:Kei Tsujiコンビナーダはスペイン語でコンビネーションの意味。つまり複合賞ジャージだ。デザインは白色で、ジャージスポンサーは肥料メーカーの「フェルティベリア」。初登場は1970年で、2度のブランクを経て、2002年に復活した。

以前はツールやジロでも採用されていた賞だが、現在は新人賞に取って代わられている。つまり現在グランツールで複合賞を採用しているのはブエルタだけだ。

総合順位とポイント賞順位、山岳賞順位の3つを合計し、その最も少ない選手が複合賞に輝く。この複合賞だけを狙ってブエルタに出場選手はいない。山岳やスプリント、タイムトライアルでコンスタントに上位を狙えるオールマイティーな選手が必然的に対象となっており、近年は総合1位もしくは総合2位の選手がこの複合賞を獲得するのが通例だ。

ブエルタ歴代複合賞獲得者
2012年 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
2011年 ファンホセ・コーボ(スペイン)
2010年 ヴィンチェンツォ・ニーバリ(イタリア)
2009年 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
2008年 アルベルト・コンタドール(スペイン)
2007年 デニス・メンショフ(ロシア)
2006年 アレクサンドル・ヴィノクロフ(カザフスタン)
2005年 デニス・メンショフ(ロシア)
2004年 ロベルト・エラス(スペイン)
2003年 アレハンドロ・バルベルデ(スペイン)
2002年 ロベルト・エラス(スペイン)

text:Kei Tsuji

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