中盤過ぎで強烈にペースを上げたのはチームNIPPO・デローザ。メイン集団は二つに分かれるなど粉砕。有力選手らがようやく合流できたのはラスト4km。ヴィーニファンティーニが完璧な展開で2連勝。

ミケーレ・メルロー(ヴィーニファンティーニ)が優勝ミケーレ・メルロー(ヴィーニファンティーニ)が優勝 photo:Hideaki TAKAGI
JR新宮駅前からパレードスタートJR新宮駅前からパレードスタート photo:Hideaki TAKAGIツール・ド・熊野第1ステージ赤木川清流コースが5月31日(金)に和歌山県新宮市で行われた。コースは赤木川沿いの道をおよそ往復する1周15.8kmを7周する110.6kmで基本平坦だが折り返し前後が緩い上りで一部狭く、そしてS/Fライン手前で狭く急峻なKOM地点を通る。2箇所の狭い区間そしてKOMで集団は一列となる。

JR新宮駅前から市内をパレード走行ののち、熊野川沿いの国道168号を経て赤木川のコースへ。昨年は豪雨で被災した国道168号の復旧工事のためパレードはなかったが今年は復活。しかし復旧工事の最中であり、いまだ基礎だけの建物跡や土石流の痕が残る。
2周目、先頭の4人2周目、先頭の4人 photo:Hideaki TAKAGI
2周目に4人の逃げ

リアルスタート後すぐにアタック合戦が始まる。井上和郎(ブリヂストンアンカー)が5kmほど単独逃げるが吸収、代わって阿部嵩之(チーム右京)がアタック。1周過ぎてから阿部に5人が追いつくが、シモーネ・カンパニャーロ(チームNIPPO・デローザ)がネイサン・アール(ヒューオン・ジェネシス)をマークしたためこの2人は下がる。そして阿部、土井雪広(チーム右京)、入部正太朗(シマノレーシング)、タン・ワンイップ(チャンピオンシステム)の4人の逃げが完成。
3周目、コースで一番奥の地点を抜ける3周目、コースで一番奥の地点を抜ける photo:Hideaki TAKAGI
ここではチーム右京が有利に進める。強力な2人を逃げに乗せ、メイン集団でチームメイトを温存する。メイン集団はリーダーチームのヴィーニ・ファンティーニがコントロールし、差は最大2分まで広がる。通常ならばラスト2周くらいでペースアップがこのコースのパターン。

4周目後半にNIPPOがペースアップ、メイン集団は2つに
5周目、ペースを上げたチームNIPPO・デローザ5周目、ペースを上げたチームNIPPO・デローザ photo:Hideaki TAKAGI
しかし今年は違った。4周目の終盤のKOM地点で内間康平(チームNIPPO・デローザ)先頭でペースアップすると、下りを経てメイン集団はバラバラになる。前方は30人ほどに。後方は次第にまとまり40人ほどに。さらに後方に数人ずつの集団が続く。ここからの先頭はNIPPOが隊列を組んでペースを上げ、常に一列棒状となり程なく5周目に先頭の4人を吸収する。
最終周回、割れたメイン集団の後方が追走する最終周回、割れたメイン集団の後方が追走する photo:Hideaki TAKAGI
後方集団に取り残されたのはブリヂストンアンカー、愛三工業レーシングチーム、宇都宮ブリッツェン、マトリックスパワータグら。最大1分まで開いた差を各チームで追走する。先頭はほとんどNIPPOが引くが時折ヴィーニファンティーニも加わる。スプリント勝負したいヴィーニファンティーニと、クライマーなどライバルを疲れさせたいNIPPOの利害が一致する。

ヴィーニファンティーニの完勝

後方集団はラスト4kmでようやく前方の集団に追いつき、大集団でゴールへ向かう。ラストはヴィーニファンティーニのリーダージャージを着るマッティア・ポッゾに放たれたミケーレ・メルローが圧勝しリーダーに。ポッゾとワン・ツー、チームとしては前日のプロローグに続いて2連勝を果たした。
ゴール前、ヴィーニファンティーニが磐石の態勢ゴール前、ヴィーニファンティーニが磐石の態勢 photo:Hideaki TAKAGI
ゴールこそヴィーニファンティーニの完勝だったが、NIPPO圧倒の印象の残るステージだった。NIPPOが取った作戦は、対面通行のトンネル区間が危険なため集団を小さくすること、その動きでクライマーやライバルチームに対して疲れさせることだった。「特に後方集団に誰がいるかとかはチェックしなかった。自分達がペースを上げれば少なくともゴールでタイム差をつけられることはないと思った」と大門宏監督は語る。
ステージ優勝のミケーレ・メルロー(ヴィーニファンティーニ)ステージ優勝のミケーレ・メルロー(ヴィーニファンティーニ) photo:Hideaki TAKAGI
「チームとして最低の走りだった」と厳しく反省するのはブリヂストンアンカー水谷壮宏監督。6人中5人が一時は後方に取り残された。ゴールではタイム差無しにとどめたが、多大なエネルギーを使った。
山岳リーダーの阿部嵩之(チーム右京)山岳リーダーの阿部嵩之(チーム右京) photo:Hideaki TAKAGI
NIPPOの動きと他チームの対応は

今年は純粋なスプリンターを連れてきていないNIPPOにとって、この第1ステージで勝つことは難しい。だがしかし安泰に終わらせることなく、激しい攻撃に出た。しかしながら常に集団の先頭にいてエネルギーを消費したのも事実。先頭を引いたのはほかにヴィーニファンティーニくらいだ。

この第1ステージで防御のために攻撃を仕掛けたNIPPOと、それに応じたチーム、そしてそれらをうまく使ったチーム。第1ステージの動き方が正しかったかどうかは、翌第2ステージで証明される。

結果
第1ステージ 110.6km
1位 ミケーレ・メルロー(ヴィーニファンティーニ)2時間29分56秒
2位 マッティア・ポッゾ(ヴィーニファンティーニ)
3位 ジャン・チャンジェ(チャンピオンシステム)
4位 シモーネ・カンパニャーロ(チームNIPPO・デローザ)
5位 アンソニー・ジャコッポ(ヒューオン・ジェネシス)
6位 畑中勇介(シマノレーシング)
7位 中島康晴(愛三工業レーシングチーム)
8位 マリウス・ヴィズィアック(マトリックスパワータグ)
9位 西薗良太(チャンピオンシステム)
10位 盛一大(愛三工業レーシングチーム)

個人総合順位
 第1ステージ終了時点
1位 ミケーレ・メルロー(ヴィーニファンティーニ)2時間30分37秒
2位 マッティア・ポッゾ(ヴィーニファンティーニ)+03秒
3位 ジャン・チャンジェ(チャンピオンシステム)+08秒
4位 入部正太朗(シマノレーシング)+09秒
5位 アンソニー・ジャコッポ(ヒューオン・ジェネシス)
6位 吉田隼人(シマノレーシング)+11秒
7位 大場政登志(Cプロジェクト)
8位 土井雪広(チーム右京)
9位 大久保陣(チーム右京)
10位 野中竜馬(シマノレーシング)

個人総合ポイント賞 第1ステージ終了時点
1位 ミケーレ・メルロー(ヴィーニファンティーニ)33点
2位 マッティア・ポッゾ(ヴィーニファンティーニ)30点
3位 アンソニー・ジャコッポ(ヒューオン・ジェネシス)21点

個人総合山岳賞 第1ステージ終了時点
1位 阿部嵩之(チーム右京)4点
2位 入部正太朗(シマノレーシング)2点

U23総合順位 第1ステージ終了時点
1位 チョイ・キーホー(ホンコンチャイナ)2時間30分48秒
2位 オスマン・アディク(チャンピオンシステム)+01秒
3位 チャン・ヤットワイ(ホンコンチャイナ)+02秒

チーム総合順位
 第1ステージ終了時点
1位 ヴィーニファンティーニ 7時間32分22秒
2位 愛三工業レーシングチーム +01秒
3位 シマノレーシング +02秒

photo&text:高木秀彰

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